ハッスルは風前の灯火だった。
 前回の『ハッスル2』を見終えた時点では、ハッスルはWRESTLE-1同様このまま尻すぼみになっていくと思った人が大半だったのではないだろうか。しかしDSEには“切り札”があった。ハッスルのエースである小川直也のPRIDE投入である。
 小川のガチンコ嫌いは有名な話で、かつての師・アントニオ猪木からの要請ですら断ったことがあるくらいだ(2001年末の猪木祭り)。その小川をガチンコ(PRIDE)に引っ張り込む手段として、一部ではDSE側が「PRIDE GPに出なければハッスルシリーズを終了する」と言ったとも言われているが、ハッスルは小川が立ち上げた団体(またはイベント)ではない。だから小川がなぜそこまでハッスルに対して思い入れがあるのかがイマイチ分からないが、とにかく小川はハッスル存続のためにPRIDEのリングに上がった。
 小川のPRIDE GP参戦は“高田総統からの査定試合”というカタチだった。PRIDEとハッスルは微妙にリンクしているが、PRIDEのリングに高田総統や島田参謀長は出て来ないし(高田統括本部長と島田レフェリーは出てくるけど、ハッスルでの設定では別人格)、リングアナも「ハッスル査定試合」などとコールもしない。あくまでも「PRIDE GP一回戦」として小川vsレコは行われた。PRIDEもハッスルもDSEが運営するイベントではあるが、PRIDEファンからすると「ハッスルと一緒にするな!」というアレルギー反応があるからだ。
 あくまでも小川はかつてのアレクサンダー大塚のように“プロレス代表”としてPRIDEに出場し、強敵・レコを撃破したのだ。つまりハッスルは小川がプロレスラーであることを世間に認識させる場であり、そのレスラー・小川がPRIDEのリングで勝てば、自ずと小川は“リアル1・2の三四郎”化していくのである。

 小川の勝利によって、ハッスルには一気に追い風が吹き始めた。GPの模様はフジテレビのゴールデンタイムで中継され、小川は番組構成上はメイン扱い。「3・2・1、ハッスル! ハッスル!」の姿までバッチリ放送された。その後は巨人軍の清原選手までもがハッスルポーズをやったり、徐々にではあるが「小川直也=強いプロレスラー=ハッスル! ハッスル!」が浸透してきている。
 また、ライバル(?)である新日本プロレスがK-1と組んで開催した東京ドーム大会の評判が悪かったのも、ハッスルにとってはラッキーだったかもしれない。例えばK-1 MMA『ROMANEX』で中邑がイグナショフを倒した後に、新日本のドーム大会が行われ、そこでサップを倒して中邑がIWGP王者になったら盛り上がったのかもしれないが、新日本のドーム大会が先に行われ、中邑はサップに敗れた。これで中邑がイグナショフに負けたら新日本としては相当キツイだろう。

 追い風の吹き始めたハッスル。過去2大会は明らかに空席が目立っていたが、今回の『ハッスル3』は満員とまではいかないが、横浜アリーナの1階アリーナ部分はまずまず埋まっていた(2階はガラガラ)。そして、小川Tシャツを着込んだお客がかなり多かった。
 そして何よりもビジョンで流される高田総統と島田参謀長のスキット(寸劇)が、徐々に受け入れられているように思えた! 相変わらずお寒い雰囲気は漂うのだが、お客さんもその雰囲気もろとも楽しもうとしているのだ。挙げ句の果てに高田自身が花道に姿を現し演説していると、当然野次が飛ぶのだが、総統は「ありがとう。ありがとう。もっとブーイングを」とお客さんと“対話”するのだから、ちょっと面白い。

 試合のほうも、第2試合のオスカル・ゼビージャ(男)&シンティア・モレノ(女)&ピンピネーラ・エスカラータ(オカマ)&マスカリータ・ザグラダ(ミゼット)vsグラン・アパッチェ(男)&ファビー・アパッチェ(女)&ポルボ・デ・エストレージャ(オカマ)&ミニ・アビスモ・ネグロ(ミゼット)なんかは、ミゼットレスラーが驚くような動きを見せつつ、オカマレスラーがいい味を出しまくってお客を大いに沸かせていた。

 第4試合のゼブラーマンの相手は“悪の中の悪”として伏せられていたが、往年のヒールレスラー、タイガー・ジェット・シンが登場。さすがシンはウマイ! 『ハッスル1』でプレデターが場内を徘徊した際はお客がシラけていたが、シンは客に蹴りを入れたり、お客の荷物を投げ飛ばしたりしながら客席を徘徊し、お客は本気に逃げ回っていた。客をヒートさせる術を知り尽くしている。

 第7試合の金村キンタロー&ザ・グラジエーター&サブゥーvs田中将斗&黒田哲広&本間朋晃の「ダイナマイト・ハードコア ハッスル・ウェポン・マッチ」は、一定時間になると花道にウェポン(武器)が出現するというルールなのだが、出てきた武器が「白いギター」→「自転車」→「アルミ製のゴミ箱」と、ちょっとコミカルなものだったりする。いわゆるデスマッチではないのだが、そこはさすがにハードコアマッチとエンタメプロレスに長けたメンバーが揃っているだけあって、各ウェポンをセンスよく使いこなし、試合を盛り上げた。ちなみに最後のウェポンは「ジャイアント・シウバ」という何とも“規格外”のウェポンだったのも笑えた。

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