いやはや、予想はしていたとはいえ、今回の『PRIDE GP 2004 決勝戦』はとにかく見渡す限り人・人・人。もう詰められるだけ、詰め込んだ感じだ。さすがは「演出プランを大幅に変更して客席を増設」しただけあって、いつものPRIDEは赤コーナー、青コーナー2つの入場ゲートを作るのだが、今回は真ん中に一本だけ。花道も細いし、ステージも限界まで小ぶりに作ってあった。ビジョンも小さなものをいくつか設置しただけで、とにかく客席を1つでも多く作った感じ。何て言ったって、入場ステージの後ろの席までちょっと開放してたんだからスゴイ!(あそこからリングは見えるのだろうか? ビジョンか何かあったのかな)
 その結果、4万7629人というさいたまスーパーアリーナ(以下たまアリ)での、すべてのイベント史上最大の観客を動員! 我々マスコミにも大入り袋が配られた! たぶん決勝は東京ドームでやりたかったのだろうが、野球などの関係で押さえられなかったのだろう。しかしたまアリでも、ここまで人を入れることができたのだから十分だな(10月のPRIDE.28もたまアリだし、今年のPRIDEナンバーシリーズはすべてたまアリだな)。

 もう売店やトイレは長蛇の列だし、小川T、ハッスルT、BTTT、シュートボクセT、ヒョードルT、桜庭Tに吉田Tと、あらゆるPRIDE関連Tシャツを着込んだ若者が、完全に“できあがっちゃった”状態の中、まずは高田統括本部長が登場。本部長、花道を走る走る。本部長が面白いのは、「総統」になると流ちょうにマイクでしゃべるのに、素の「本部長」だと明らかに緊張にしながらしゃべっている。もう本部長自身がワクワクしてるのを押さえきれない様子で、大会の開会を宣言。今回はいつもの「出てこいやー!」ではなく、「言葉はいらない」と静かにつぶやくと、場内が暗転し、ビジョンに幻想的な映像が映し出されるというニクイ演出。
 ドキュメンタリーチックに決勝に進んだ4選手のVTRが流れると、一転、太鼓(&ギター)の演奏によるお馴染みの『PRIDE』のテーマが! これは鳥肌ものの演出だった。私の隣で見ていたブラジルの取材クルーは「ワオ!」「イエー!」と大喜び。前日にアテネ五輪の開会式をTVで見たが、今大会のはなかなか幻想的でいい演出だった。次、日本で五輪が開催されるときは、開会式の演出をDSEに依頼してはどうだだろう。レニーさんの巻き舌で「ブゥゥゥゥゥラジィィィィルゥ」とコールしてもらえば、アテネ五輪以上にいい開会式を演出できると思うが……。

 第1試合は来年のミドル級GP出場者決定戦のような雰囲気で行われた中村vsブスタマンチ。中村のセコンドには桜庭選手もついていた。ブスマンが白いの柔術着を着て入場。中村が青の柔道着を着て入場。奇しくも前日、アテネ五輪の柔道で谷と野村が金メダルを獲得しただけに、中村には期待がかかる。しかし、完全にヘビー級GPに向けてできあがった観客は、なかなか決められない中村に対して苛立ちまくり! 厳しい野次も飛んでいたが、ブスマンは強敵だし、この雰囲気でオープニングマッチを務める中村には、少々酷だったか。

 そして、いよいよ始まったGP準決勝。第1試合はノゲイラvsハリトーノフ。ノゲイラは珍しく花道をダッシュして入場。もうテンションが上がりまくっている様子。試合は打撃戦。隙を見てノゲイラがタックルからグラウンドに持ち込もうとするが、やはりお互い関節技を得意とするので、安易にはグラウンドにいかない。GPの試合は10分・5分の2ラウンド制だったため、両者決め手を欠いたまま時間切れ。決定的なダメージを負わせることはできなかったもの、終始積極的に仕掛けていったのはノゲイラ。よって判定でノゲイラが勝利。これはGP優勝への執念の差かもしれない。ハリトーノフは試合後、「今日は負けたとは思っていない。判定に満足していないというわけではないが……。ノゲイラの打撃もとくに強烈だったものではない」と語っていた。ダメージこそ負ってはいないが、ノゲイラに何もさせてもらえなかったのが、結構ショックだったように見えた。

 続いて準決勝第2試合。紹介VTRは柔道家時代に五輪で苦杯を舐めさせられた小川が、ファンの声援をエネルギーに変え、再び真剣勝負の舞台に帰ってきた姿をドキュメンタリーチックに構成。まるで『Get Sports』を見るかのようだったが、俄然小川への期待が高まってしまう! 対する皇帝・ヒョードルはPRIDEヘビー級のベルトを巻いて入場。そして場内の緊張感を破壊するかの如く、予告通り『ハッスル音頭』が流れる! しかし、小川が入場ステージに姿を現すと、いつも小川のテーマ曲へとチェンジ! もう場内大小川コール!
 しかし、いざ試合が始まるとヒョードルの氷の拳がいきなり小川に襲いかかる。面食らった小川も必死でパンチを返し、組み付いてグラウンドに持ち込もうとするが、ヒョードルは恐ろしいくらいに冷静。ポジションを入れ替えると、スルリと腕を取り、ガッチリと腕十字を極めてしまう。完全に腕が伸びた小川は無念のタップ! この間、わずか54秒。
 柔道時代は負けてもサバサバして様子だったが、さすがに小川もガックリとうなだれ、悔しさをにじませている様子。それでも「負けて申し訳ないけど、ハッスルだけさせてください!」とハッスルポーズ。本当は悔しくて早くリングを降りたいのだろうけど、ファンの声援に応えるためにもプロレスラーとしてキチッと“仕事”をやったという感じだ。桜庭選手もシウバ戦やミルコ戦で、ケガまでして敗れてもマイクを握って挨拶していた。やはりプロレスラーには、勝っても負けてもファンの声援に応える“仕事”(当然いい意味)があるのだ! 全試合終了後、けやき広場でのミニイベントにも参加したという小川、やっぱりお前男だ!

 ヒョードルという「誰が見ても強い」相手なら、勝っても負けても小川の真の実力がこれで分かると思っていたが、正直、ガチンコでの小川の実力はいまだに未知数のままだ。しかし、年に数試合、強豪相手にガチンコの試合を定期的に行ってきたヒョードルと、長いブランクを経てPRIDEに帰ってきた上、プロレスの試合を挟んでいる小川(しかも36歳という年齢)では、かなり差があって当然。できることなら、今後も小川が定期的にPRIDEのリングに上がってくれれば、数少ない日本人ヘビー級ファイターとして活躍はしてくれるとは思うが、あくまでもプロレス重視の小川にそれを求めるのは酷というものか。個人的には真の小川の実力がどのくらいあるのかを見てみたいので、吉田秀彦という小川が最も燃えそうな相手との試合を見てみたいのだが……
 ちなみにインタビュースペースに現れたヒョードルに、「小川選手の印象は?」という質問が飛んだ際、なぜか隣にいたアレキサンダーがニヤリと笑い、ヒョードルもそれを見てニヤリとしながら「試合が短かったのでなかなかまとめられないが、今回私と対戦してくれて本当に感謝しています」とコメントした様子がちょっと気になった(下の写真)。その“ニヤリ”は何なんだ? 「思ったよりオガワサンは弱かったよ」という意味か? もし、そうなら何かムカつく。榊原社長も「できることなら小川選手には今後も上がってもらいたい。これで引き下がらないと思う。ファンが望めば、またPRIDEのリングに上がってくれると思う」と言っていただけに、負けたままPRIDEから去ってしまうのは、やはり勿体ないというか、できることなら「もう一丁!」と言ってほしい。一部報道では、「GPのような1番人気のある舞台でハッスルを広められるなら」今後の参戦もあり得るようなことを言っているらしい。そうなると、大晦日あたりはかなり可能性が高そうだが……

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