2004年の大晦日は雪だった。関東では昼頃までかなり強めに降っていて、屋根や駐車してある車にはちょっと積もるくらい。「電車動いているか心配だな」と思い、早めに家を出たのだが、案の定電車は遅れ気味だった。さいたま新都市駅に着くと、もう人で溢れかえっている。カップルや家族連れも多く見られ、大晦日の各闘技観戦はライブやテーマパークなどで行われる“カウントダウンイベント”と同じようにすっかり定着したのだなぁと実感した。
 いかにも滑りそうな道をヨタヨタ歩きで、さいたまスーパーアリーナ(以下、たまアリ)に向かうと、途中のけやき広場に『男祭りご本尊』を発見。まだ雪が降っているのに、長蛇の列。お賽銭は何に使われるんだろうなぁなどと思いつつも、そのままたまアリに入る。
 会場に入ってみると、すでに客席は満員状態。雪が降っていたこともあって、早めに来たお客さんも多いと思うが、それにしても大晦日に、雪が降っているというのに、たまアリのスタジアムバージョンがここまで埋まるのかと驚いた。正直言ってPRIDEのチケットは高額だと思うのだが、「いま話題のPRIDEを大晦日くらい生で観てみよう」という思いもあるのかもしれない。いやはや、日本は本当に不景気なんだろうか? 「PRIDEのチケットがあるんだけど」と言えば、おねーちゃんを誘えるんじゃないか?

 そして、いざ『男祭り2004』がスタート。捻りハチマキにハッピ姿の高田統括本部長が登場すると、天井から大太鼓が降りてくる。太鼓の前に立った本部長がハッピを脱ぎ捨てると、「現役時代より締まっているんじゃ?」と思うほど、見事な肉体にふんどし一丁姿! 大観衆は早くも大盛り上がり! お馴染みの『PRIDE』のテーマに合わせて太鼓を叩く叩く。しかし、このテーマ曲はよく出来てるなぁ。ナンバーシリーズにも武士道シリーズにも合うし、太鼓をと合わせると、まさに“祭り”という雰囲気で男祭りにもピッタリだ。グワ〜っと盛り上がるいい曲だなぁ。
 太鼓を叩いていた本部長が、クルリとリングの方を向き、お馴染みの「男の中の男、出てこいやーーーー!!!!」と絶叫すると、入場ゲートに出場選手が登場! 客席を少しでも多く作ろうと、入場ステージがいつもより小さめに作られていたため、選手や太鼓演奏者でステージ上が密集状態に! う〜ん、何とも男臭そうだ。レニーさんの絶叫もいつもよりテンション高めっぽいし。これぞ、男祭りだな!

 第1試合には2003年の男祭り同様に美濃輪が登場。相変わらずテンション高めに走って入場。いきなりドロップキック→浴びせ蹴りを放ち(どちらも当たらず)、プロレスラー魂全開の美濃輪。レコ相手に一瞬危ない場面はあったものの、下の体勢からヒールホールドを極めて秒殺! つかみとしては抜群だったのではないだろうか。試合後、日本国旗をマントのようにして、歓声に応える美濃輪を見ていたら、「ホントにこの人はキン肉マンみたいなになりたいんだなぁ」と思った。

 第2試合には2003年の男祭り中継で瞬間最高視聴率をゲットしたシルバと、韓流ナイトフィーバーで最近人気者のチェ様による“オモシロ対決”。チェ様は『冬のソナタ』のテーマ曲を入場テーマのイントロにして入場。チェ様がヨン様なら、シルバはチェ・ジウか? 雪も降ってるし。そんなチェ様がシルバにタコ殴りされながらも、またも耐える男の姿を見せてくれることを期待していたが、終始チェ様が上を取り、結局そのままチェ様が圧勝。途中シルバの腹にヘッドバットを入れて注意されるなど、オモシロ場面はあったが、結構あっけなかった。美濃輪とチェ様に完敗した相手にしか勝っていないことで、ハッスル小川の総合での実力がまた未知数になっちゃったなぁ……。

 第2試合終了後に桜庭がリング上に登場。骨折により、男祭りでのシウバ戦が消滅した桜庭に、いつものような明るさはないが、常々「(2005年の)ミドル級GPには出ません」と言っていた桜庭が、「来年(2005年)はGPで優勝できるように頑張ります!」とGP出陣宣言。ここでシウバ戦が仕切り直される可能性が高いが、今年は桜庭にとって、かなり厳しくも勝負の年になりそうだなぁ。

 第3試合は“裏メイン”と言われていた安生vs(ハイアン)グレイシーの10年越しのリベンジ対決。紹介VTRで安生とグレイシーの因縁、安生がグレイシーに勝たなければならない理由を分かりやすく紹介。安生のバックボーンは桜庭や高山のように「プロレス」ではなく「UWF」。Uインターによるグレイシーへのリベンジという雰囲気は、やはりプロレスファンからすると堪らないシチュエーションだ。秘かに安生は『UWFのテーマ』で入場してくるのでは?と思っていたが、何と高田の現役時代のテーマ曲である『Training Montage』をイントロに、200%男時代のテーマ曲である『James Brown Is Dead』に乗って入場。これはこれで感傷深い。セコンドにはヤマケンの姿も見える。リングイン間際のボディチェックの際、安生と島田レフェリーがさりげなくガッチリ握手していた。普段は某参謀長と某司令官として活躍する二人ではあるが、島田さんもUWFの一人(藤原組出身)ではあることを考えると、ちょっと印象深いシーンではあった。しかもレフェリーは豊永稔。彼もまたUインターの選手だった。
 試合はハイアンの勢いに、何とか安生がガードしていく展開。途中、「ドント・ムーブ」からリング中央で試合を再開する際、ハイアンがレフェリーに食ってかかる場面があったが、豊永レフェリーが毅然とした態度でハイアンを注意。これに怒ったのか、最後ハイアンはかなり強引に腕ひしぎを極め、安生からタップを奪った。安生といえば、桜庭も「インターの頃は安生さんに稽古をつけてもらった。めちゃくちゃ強かった」と語るほどの実力者。しかし10年の月日というのは、もの凄いスピードで進化している総合の世界では、やはり致命的だったかもしれない。ましてハイアンは決して弱い選手ではない。“影の実力者”と言われ続けてきた安生の真価が表舞台で開花することは、ついになかった……
 試合後、リング上では「吉田さんとやる前に、弟子の僕とやってください」とアピールする中村と、「ハイアン、カズとやるのか?」と煽る高田本部長に対し、「中村とはやりたくない! 俺は桜庭、吉田とやりたいんだ」とアングル破り(?)のアピールを駄々っ子のように繰り返すハイアン。それに対し、カズがつっかかっていき、あわや乱闘になりかけていた。リング上がそんな感じで沸いている中、リング下で腕の治療を受け、無念の表情で退場していく安生の姿が何とも寂しく、印象深かった。


 第4試合の長南vsアンデウソンの85キロ級の実力者対決。長南がアンデウソン相手にかなり劣勢に立たされていたが、最後一瞬の飛び付きカニ挟みからのヒールホールドで逆転勝利。軽量級らしい実にスピーディーで鮮やかにフィニッシュだった。試合後、長南はマイクで「こんな強い人とやったのははじめて」と語ったが、それは素直な感想だろう。

 第4試合終了後、リング上に世界レスリング協会(FILA)と日本レスリング協会のエライ人が登場。世界160カ国が加盟しているFILAと、PRIDEがこの度提携したことを発表。FILAに加盟しているアマレスラーのプロ活動を認め、今後世界中のあらゆる階級のアマレスラーがPRIDEのリングに送り込まれることになったそうだ。その第1弾が、今回のルーロン・ガードナー。ヘビー級、ミドル級はもちろんだが、武士道シリーズに軽量級の実力者が送り込まれると、面白くなるかもしれない。
 また、ここで観客動員数が発表された。2003年8月の『PRIDE GP 決勝』で、PRIDE自身が樹立したたまアリの最高動員数である4万7629人を超え、4万8398人を記録したとのこと。入場ゲートも極力小さくし、もう入れられるだけ入れた感じがするので、この記録はそうそう破られないだろう。

 第5試合には、この日がプロ格闘家デビュー戦となる柔道家の瀧本が登場。対するは、予告通り『こち亀』の化粧まわしを着け、四股を踏んでから入場してきた戦闘竜。瀧本は何と、浜崎あゆみの曲※補足>瀧本の入場曲は尼崎まゆみが歌う『そこにあるかもしれない・・・』という曲らしい。パチスロ『吉宗』のサントラに収録されている。『吉宗』の名前は瀧本の柔道着にも入っていたので、タイアップか?)に乗って入場。吉田が元SIAM SHADEの未来の曲を使ったのも、最初「これはどうなの? 合ってなくないか?」と思ったが、瀧本はさらにキャラとは違う感じ。
 試合は終始、スタンドでの打撃戦に。途中グラウンドの展開になることもあったが、瀧本の寝技を警戒して戦闘竜が寝技を振り切り、すかさずスタンド勝負を要求。その割には戦闘竜も思ったより前に出ることはなく、観客からも「もっと突っ込めよー!」「前に出ろー!」と野次が飛ぶ。道衣を血で染めながらも、懸命に打撃で対抗する瀧本だが、結局いいところなく時間切れで試合終了。打撃は戦闘竜のほうがヒットしていたような印象だったが、突っ込んでいかない戦闘竜を消極的ファイトと取り、少ないグラウンドで積極的に寝技に挑んだ瀧本に有効ポイントを与えたのか、瀧本の判定勝ち。この判定には?マークが付く観客も多かったようだが、試合後マイクを取った瀧本は、やや声を詰まらせながら「今日、試合をするまで総合格闘技をナメてました。スミマセンでした!」と叫んだ。瀧本自身が極めて負けに等しい勝ちということを自覚し、お客さんからの野次を真摯に受け止めたということだろう。
 榊原代表は総括で「戦闘竜も(PRIDEに)馴染んできた。瀧本君はハートをしっかり持ったいい選手」と評価した。確かに準備期間が短いながらも打撃戦に必死で対抗した瀧本は、強気なキャラクターの通りハートは強そう。そんな選手が涙ながらに謝ったのだから、次の試合ではしっかりと準備した上で、プロらしい試合を見せてくれることだろう。


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