今回の『PRIDE.29』は昨年大晦日の『男祭り2004』と4月開幕の『PRIDEミドル級GP』に挟まれた、谷間の興行だ。それだけに、ヒョードルもノゲイラ兄もシウバも桜庭も吉田も出ていない。にも関わらず、ミルコはやっぱり出てる! 男祭りの試合後は「体のためにも(2005年は)5試合くらいにする」と言っていたのに、もう今年一発目の試合だ。
 これにはミルコの“PRIDE LOVE”を感じずにはいられない。ミルコはよほどPRIDEという場所(組織)を気に入り、PRIDEでタイトル奪取することを望んでいるのだろう。だから、例え谷間の興行で、(男祭りに出た)ほかのトップ選手が休んでも、PRIDE.29を盛り上げるため、さらに今年上半期に恐らく実現するであろうヒョードルとのタイトル戦のためにも、この大会に出場し、ランデルマン戦後に「やってもいい」なんて言っちゃったコールマンと律儀に試合をすることにしたのだろう。

 さて『PRIDE.29』だが、さいたまスーパーアリーナの一番狭いヴァージョン(アリーナヴァージョン+舞台装置設置のため多くの席を閉鎖)にも関わらず、谷間のせいなのか、同日両国国技館で新日本プロレスがIWGPと三冠ヘビーのダブルタイトル戦を組んできたせいなのか、さすがにフルハウス(超満員)とはならなかったように見えた。
 しかし、4月開幕のミドル級GP出場を見据えたミドル級ファイターの査定試合や、ミルコとハリトーノフという打倒ヒョードルの有力候補2人の試合があったのだから、決して見どころの少ない大会ではない。
 ミドル級GP出場を賭けた査定試合には、横井、金原、高橋、中村が出場。これら日本人ファイターが勝ち上がってきたら、今年のミドル級GPは日本人ファイターだらけになりそうだが、そうは簡単にいかないのがPRIDEである。
 まず第1試合で、マリオ・スペーヒーと対戦した横井。試合前の紹介VTRでは、トレードマークの腹の脂肪は残したまま減量に取り組み(2カ月で12キロくらい落としたそうだ!)、ミドル級戦線に参戦してきた。昨年のヘビー級GPではノゲイラ兄相手にもいい試合をした横井だけに、すでにGP出場当確が出ているパンクラスの近藤が勝利しているスペーヒーにはキッチリ勝ちたいところ。
 ところが、序盤こそ優勢に試合を進めていたように見えた横井だが、捕まってしまうと、カメの状態からほとんど動くことができない。レフェリーからも「横井、動かないとストップするぞ!」と何度も声をかけられる。その声には反応しているものの、やっぱり動けず上からスペーヒーのヒザがガンガン振ってくる。スペーヒーは早くもスタミナ切れをしているようにも見えただけに、この場面から脱出できれば横井にも十分勝機はあったが、残念ながらレフェリーが試合をストップした。試合が終了すると、横井は足を押さえながら倒れ込む。どうやら試合中に足を痛めたのが、動けなかった原因のようだ。
 インタビュースペースに肩を担がれながら現れた横井は、「(スペーヒーは)すごく力強いと思ってたけど、そうでもなかった。足をかけて倒そうとしたときに腿の裏側がブチッって。ヒザ(攻撃)はあまり効いてなかった。立とうとしたけど、(腿の負傷で)力が入らなかった」と無念の表情で語った。

 第2試合にはミルコの寝技コーチであり、柔術世界選手権2連覇という実績を持ったファブリシオ・ヴェウドゥムがPRIDE初登場。相手は白鯨・トムエリ。ヴェウドゥムは遠目だとピーター・アーツにちょっと似てる。トムエリは久し振りのPRIDEで張り切っていたのか、グラウンドでも圧力をかけて場内を沸かせる。スタンドになると、ヴェウドゥムもK-1帰りのトムエリ相手にパンチで応戦。ミルコとの練習の成果なのか、互角に渡り合ってみせた。最後はコーナー付近で倒れるとスルリと背後を取り、裸絞めでキッチリタップを奪ったヴェウドゥム。この試合だけではどれくらい凄い柔術テクニックの持ち主なのかは、まだまだ分からないが、ノゲイラあたりとの対戦は実に楽しみだ。

 第3試合からは再びミドル級GP出場を賭けた査定試合が続く。まずは金原vsショーグン。今までは階級の違う選手とばかり当たっていて、なかなか結果が出ていない金原。とくにシウバとの対戦では本領発揮する前にストップしてしまっただけに、同じシュートボクセのショーグンとの対戦はなかなか楽しみだ。
 ところが、ショーグンの攻めがまさに“怒濤”だった。右フックで金原を倒すと、ミルコばりの顔面蹴り! これを金原が逃げると今度は顔面を狙ったフットスタンプとマウントパンチの連打! 金原がカメの状態になると、顔面蹴り、仰向けになると顔面踏みつけ式のフットスタンプという攻撃をもの凄いスピードで繰り返す。金原に脱出する隙も立ち上がる隙も与えない怒濤の攻撃。ついには顔面蹴りをクリーンヒットさせ、KO勝ちを収めた。金原、無念! シウバ戦同様、本領発揮する前にやられてしまった。
 インタビュースペースで金原は、「長期戦になると思って、前半セーブしていく作戦が仇になった。効いた技はない。意識もあった。でもレフェリーが止めていたから、“まだできるのにぃ〜”と思ったけど、まぁ仕方ないかなと。もっとやりたかった。汗かく前に終わっちゃった」と語った。最後に「連敗地獄にハマっているが、何とか頑張って這い上がりたい」とも語った金原。Uインター→キングダム→リングスでの活躍を知っているファンとしては、その言葉通り何とか這い上がってほしい選手だ。

 第3試合終了後、リング上に高田統括本部長と、前日(19日)にPRIDE参戦&高田道場入門が発表された柔道家のパウエル・ナツラが登場。金メダルを首から提げたナツラは、早くも高田道場のマークが入った柔道着を着ていた。同じ柔道系の吉田道場でも、TKや横井が所属するチーム・アライアンスでもなく、柔道選手のいない高田道場の所属したことは、ナツラにとってプラスになるのかマイナスになるのかは、現段階では分からないが、桜庭との技術交換は興味深いところ。今までの柔道出身のPRIDEファイターとはひと味違うファイターになるかどうか注目だ。
 また、この日はリングサイドには五味や戦闘竜、瀧本、高瀬といったPRIDEファイターのほかに、氣志團(メンバー全員)や浜口京子、吉田沙保里といった女子アマレスラーが観戦していた。たまたまバックステージで氣志團とすれ違ったが、間近で見るとアノ髪型は凄いな。木更津の高校に通っていた私としては、ちょっと嬉しかった。

 続く第4試合には、パンクラスismを離れ、パンクラスヘビー級王座も返上してこの一戦に臨んだ高橋と、ミドル級転向第一戦となるボブチャンチンの一戦。ボブチャンチン、スマートになったなぁ〜。顔つきもかなり違うように見える。2000年のPRIDE GPで桜庭曰く「気が狂いそうになった」という豪腕は健在なのだろうか? 高橋も試合前、「殴り倒すことしか考えていない」と語っていた通り、試合は打撃戦に。しかし、日本人としてハードパンチャーで知られる高橋だが、“北の豪腕”ボブチャンチンとではやはり格が違った。ミドル級でもボブチャンチンの豪腕は衰えておらず、高橋を秒殺KOしてみせた。ボブチャンチンはランペイジあたりと対戦したら、なかなか面白そうだなぁ。

 第5試合には当初ハイアンとの因縁の対決が組まれる予定だった中村カズと、ハイアンの代打出場となったレコの一戦。ハイアンをキッチリ倒して、ミドル級GPに出場したかったであろうカズは、その不満をぶつけるかのように、レコをテイクダウンさせるとタコ殴り! わずか55秒で勝利した。
 マイクを持ったカズは「ハイアンに逃げられちゃったけど、(ハイアンは)ボクがやっちゃいますから! ミドル級GPはボク中心で回していきます。カズでいいんで、中村カズでいいんで覚えてください!」とアピール。しかしインタビュースペースでは「(ハイアン戦消滅を)聞いた日は何もできなかった。道場でも気合いが入らなかった。ハイアンは好きじゃないし、タップなり、KOなりしたい。一昨年のミドル級GPの吉田さんとシウバの対戦が凄く力になっている。(吉田との対戦も)やるなら全然(構わない)」と、ハイアンとの決着はもちろん、先輩・吉田との対戦も視野に入れてミドル級GP制覇を目指す心構えを見せた。願わくば4月の一回戦でハイアンと対戦し、その後吉田との師弟対決も見てみたいところだ。

 第6試合には“裏メイン”とも思える興味深い一戦、ハリトーノフvsチェ様。ハリトーノフの紹介VTRにヴォルク・ハンが登場すると、場内から「オ〜」という歓声。ハン先生曰く「ヒョードルにはまだ教えていない技が1つある。だからハリトーノフならヒョードルを倒せる」というのだから、ヒョードルvsハリトーノフはぜひ見たいところだ。
 試合前、両者がリング中央に来ると、チェ様は“1人Choo Choo train”をするかのように首をグラインドさせながら、なめ回すようにハリトーノフを睨む(?)。これには無表情で相手をボコ殴りするハリトーノフも珍しく「ニカッ」と笑い、これにチェ様も韓流スマイルで返す。う〜ん、試合前から激しい(?)攻防だ……
 殴られても殴られても不屈の魂で立ち上がるチェ様。ハリトーノフのフロントスリーパーは脱出して、殴り合いに挑むが、ハリトーノフのパンチをそう何度も食らっては、そうそう立ち上がれず、3分23秒で轟沈した。
 インタビュースペースでハリトーノフは「気分がいい。次の対戦相手が楽しみです。チェはよく研究していたが、私も対策をキチンとしていた。リスクがなく、自分のやりたいことができた」と、満足いく試合運びができたようでご機嫌だった。


 ここで休憩に入ったのだが、休憩前の6試合はすべて1R早々に決着がつき、実にスピーディーな展開。この日は10試合もあり、長丁場になると見ているほうも結構シンドイのだが、テンポよく試合が進み、なかなかいい感じだったのだが……

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