ハッスル初の両国(国技館)大会となった『ハッスル8』。実はハッスルのナンバーシリーズとしては、東京での初興行でもある。ハッキリ言って、これまでの『ハッスル』は成功とまではいっていない。客席の数が少ないハウスシリーズはともかく、大会場で行われるナンバーシリーズでは空席が目立ち、試合内容に関しては酷評されまくりだった。小川のハッスルポーズや高田総統のマイクパフォーマンスなど、ある程度の評価というか、成果というか、そういうものはあるものの、試合が面白くない以上「これをプロレスと呼んでいいものか?」という疑問が残った。
 しかしDSEとしても、この『ハッスル8』に関してはかなりの力の入れようで、今まで大会前に数回行われていた記者会見=ハッスル劇場が、今大会に関しては数週間前からほぼ毎日のように行われた。恐らくだが、同時期にライバルであるK-1(FEG)側がワールドGPソウル大会や曙のWWE参戦、そしてビッグマウスとの協力で行われることになった『HERO'S』や『W-1』に関する発表や記者会見を連発していたことも関係しているように思われる。とくに前田日明の存在は大きい。前田が表舞台に復帰し、しかもビッグマウスやFEGと次々に協力することで、スポーツ新聞や専門誌が一面や表紙で前田を大フューチャーし出した。これに対抗するためにも、DSEとしてもとにかく毎日何らかの話題を提供して、紙(誌)面をFEG関連に独占させることを阻んだと思われる。DSEが武士道其の六で、ヒョードルvs高阪というリングス風味タップリのカードを組んだことでもそれが分かるし、とにかくDSEはハッスル劇場を中心に、武士道やPRIDE GPの発表を散りばめながら、毎日リリースを各マスコミに送り続けた。
 また、今まで自分のスタイルを貫きつつも、知名度や会場人気の点でハッスルに貢献していた長州が、W-1への参戦を発表した。これにより今後ハッスルにも参戦するかどうかは微妙なところだが(ハッスル8には長州の参戦はナシ)、その代わりに“ハッスルK”こと川田が、“ハッスルI”こと石狩と共に全日本プロレスを退団してフリーとなり、その途端に今まではほとんど出ることのなかったハッスル劇場にも積極的に出演するようになった。
 確かに『ハッスル8』のメインが小川vs川田なのだから、事前告知のためにも川田の露出を増やすのは当然だが、敢えて石狩共々「全日本退団。今後は無所属に」ということを発表したということは、要は川田と石狩がハッスルファミリーの一員になったということだろう。ハッスルは試合数が少ないので、今後も川田と石狩は全日本にも参戦はするが、基本的にはハッスルファミリーとして、試合だけでなく、ハッスル劇場にも積極的に出ていくよということだろう。

 長州(リキプロ)や全日本(カズや小島)との関係は微妙になったが、小川に加えて川田やZERO1-MAX勢が本格参戦して、ある意味“仕切り直し”となった『ハッスル8』。会場に入ってみると、グッズ売り場の売り子から、会場案内係、リング周りのスタッフやマスコミまでもが全員モンスターマスクを被り、ロビー正面には金子ナンペイ氏が描いた高田総統の肖像画が展示されている。そしてグッズ売り場の反対側には、顔の部分がくり抜かれているハッスル出場選手の等身大パネルが展示されていた。観光地でよく見かける、パネルの顔の部分に自分の顔を入れて、記念写真を撮るアレだ。


 そのほかにも島田二等兵vs中村カントクの試合では、二階席からアリーナに向かって、モンスター軍の垂れ幕を使ってすべり台として使用したり、ハッスル仮面にグリーン、イエロー、ピンクを加えて“ハッスルレンジャー”というヒーローショーのようにしたりと、確かに「両国を遊園地のように」と言っていたような演出だった。プロレスマニアからすると「なんだこりゃ?」という演出ではあるが、ハッスルの会場には、ほかのプロレス・格闘技会場ではあまり見かけない親子連れの観客も多く見かけれ、コノ手の演出もそれなりに楽しんでいるようには思えた。
 両国国技館も大会場ではあるが、今までハッスルの聖地的会場だった横浜アリーナに比べるとこぢんまりとはしているし、入場ゲートと大型ビジョンを設置しているため、向正面のマス席をすべて潰していることもあって、比較的ハッスル・ハウスに近い雰囲気。大会開始直後こそ、マス席の空席も目立ってはいたが、平日夜の興行だったことを考えれば最終的にはまずまずの入りになったと思える。
 「ファイティング・オペラ」と銘打っているだけあって、大会開始前はビジョンを使い、島田二等兵が「正しいモンスター軍の応援の仕方」をレクチャー。「総統のお言葉の間に口を挟むと消されるぞ」とか、高田総統自身がビジョンに登場して「お客様は神様です」と言ったり、いわゆる“前説”でお客を暖める感じ(暖まっているかどうかは不明)。続いて臼杵PRが大会スポンサーなどを紹介し、リング上で笹原GMがお馴染みの「アイアム、GM!」を織り交ぜながら観客ジャッジシステムの説明や、今後の大会スケジュールの発表をしていた。もうこれだけで、これからプロレスの試合を見るという雰囲気ではなく、どちらかというと演劇の舞台やTV番組の収録を見るのに近い感じ。ちなみに日時や会場は未定ながら、今秋には首都圏で『ハッスル・マニア』を開催するとのこと。WWEの『レッスル・マニア』の如く、超ビッグマッチということなんだろうが、個人的にハッスルのビッグマッチは両国くらいがベストだと思うのだが、どうなるのか?

 第1試合はハッスル軍vsモンスター軍の対抗戦、中村カントクvs島田二等兵のシングル戦。レスラーではない二人だけに、試合で“魅せる”のは無理だろうからどうするのかと思ったら、エニイウェアフォール・エブリバディレフェリーマッチだけあって、開始早々両者は会場の外へ。この試合の展開は随時ビジョンで報告するということで、そのままリング上で第2試合を始めるという進行に。多少ブーイングはあったものの、逆に言えば、試合に期待できるわけがないので、こういった演出はアリだろう。第2試合終了後には国技館前の道ばたで揉み合う両者が映し出され、レポーターが実況する。第3試合終了後は両国にあるちゃんこ屋でフスマを倒しながら揉み合う両者が映し出され、どさくさに紛れてビールを飲む島田二等兵。そして第4試合終了後は国技館に戻り、2階席から揉み合いながらすべり台を使ってアリーナに戻り、再びリング上へ。解説席にいた青木裕子嬢をリングまで引っ張ってきて、レフェリーにしてしまい、二等兵がスクールボーイで丸め込んだところを裕子嬢が3カウントを取るという“オチ”だった。試合時間は45分49秒……こうやって試合(?)展開を書いていくと、何ともアホらしいようにも思えるが、会場ウケはとくに悪くはなく、ハナから試合で魅せてくれることは期待していないこともあって、個人的にはそれなりに楽しめた。バカボンのパパではないが、「これはこれでいいのだ」といった感じだ。

 第2試合でも試合前のスキットで石狩が崔リョウジの「崔」を「これって何て読むんですか? “じゃく”?」と相変わらずのオトボケぶりにより、試合では石狩の攻撃では「I」コール、モンスター℃の攻撃では「ドシー」コール、モンスターJの攻撃では「J」コール、そして崔の攻撃では「じゃく」コールが飛び交う。途中、客席から「めんどくせー!」という叫びが飛んだりして、それなりに“つかみ”の試合にはなった感じ。
 第3試合ではハッスルレンジャーvsモンスター軍のヒーローショー。ハッスル仮面の新メンバーはイエローが分かりやすいデブキャラで、巨大なスプーンとフォークを持っているという下手な設定。それでも浜……もとい、アリシンZの空中殺法やレンジャー全員が飛び技を見せ、私の席の近くにいた子供は大喜び! 最後は小柄な女子レスラー、ハッスル仮面ピンクがコーナーからの飛び付きウラカン・ラナで3カウントを奪い、大団円。これも「これでいいのだ」って感じ。
 第4試合は“ハッスルあちち”の大谷vsザ・サムー&セコンドの雪女グレ子。サムーは明らかにC・W・○ンダーソン。そこはさすが大谷もツボを心得ていて、試合中「C・Wじゃねーか!」と叫びながら顔面ウォッシュを決め、お客もウケる。「両国に雪を降らす」と言ったザ・サムーだが、試合中グレ子と共に拝み出す(?)と、リング下に設置されていたスノーマシーンから人工雪がリング上に降り注ぐ。途端に寒がって攻撃できなくなる大谷……ってこう書いていると、やっぱり間抜けな感じがするが、大谷は持ち前の“熱さ”で雪攻撃をはねのけ、最後はスパイラル・ボムを狙う。しかしC・W……じゃなくて、ザ・サムーが重たくて失敗。もう1度狙うが、またもや失敗して投げっぱなしパワーボムになってしまう。しかし大谷はこれを「新技だ!」と叫び、そのままフォールして3カウント。大谷のキャラだから許されるな。



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