かぶき座の怪人
初演に引き続き、登場人物の名前は小倉百人一首から引用されています。

役名に因む百人一首

役 名
(役 者)

(訳)

作 者

春杉夏希
(溝口健二)

2.春過ぎ夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山
春があっという間に過ぎて、もうすっかり初夏なのだね。
神聖なあの香具山には、夏になると白い布を干すという慣わしがあるそうで、
もうその布が見られるそうだよ。

持統天皇

山辺秋人
(秋葉陽司)

4.田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
田子の浦まで行って来たんだ。ここから見る富士は素晴らしいと聞いてね。
でも、雪の降り積もる富士の高嶺を一人で見ていたら、
寂しさが積もるばかりだったよ。

山部赤人

八十嶋告世
(植本潤)

11.わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟
私はこれから大海の幾つもの島を巡る大冒険に漕ぎ出すんだ。
だから、ねえ、そこで釣りをしている小舟の海人さん、
私の恋人にそのことを伝えてくれませんか?

参議篁

男女川恋助
(原川浩明)

13.筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる
筑波の山の峰からはね、みなの川という川が流れ出して、
深い淵を作るのだって。みなの川って、“男女川”とも読めるでしょ?
私があなたを想う気持ちも、淵のように深いのよ。

陽成院

山風アラシ
(各務立基)

22.吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風あらしといふらむ
山からの秋風がいよいよ強くなってきたね。
風情ある秋草を萎れさせ、紅葉した木の葉を枯れさせてしまうのだもの。
山風を嵐とはよく言ったものだよね。

文屋康秀

小倉山峰三
(中脇樹人)

26.小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ
小倉山の峰に色付く美しい紅葉さん、もうすぐ帝が行幸でここを通るんだ。
だから、もし、心があるのなら、もう少し散るのを待ってくれませんか?

貞信公

泉河逸美
(嶋倉雷象)

27.みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ
みかの原から湧き出して流れてくるいずみ川をご存知ですか?
“いずみ”って、“いつ見”と同じ響き。
あなたとお会いして、お声を聞いたのはいつのことでしたっけ?
ああ、そんなことを思い出したら無性に恋しくなりました。

中納言兼輔

有明暁
(横道毅)

30.有明のつれなく見えし別れよりばかり憂きものはなし
こんなにあなたを想って、毎夜通い詰めているというのに、
あなたはあの有明の月のようにちょっと顔を見せたきり、
すぐに引っ込まれてしまった。なんてつれない仕打ちだろう。
こうして白々と明けていく暁を見ながら家に帰るの程、虚しくつらいことはない。

壬生忠岑

色出しのぶ
(森川理文)

40.忍ぶれどにけり我が恋は物や思うと人の問ふまで
私のこの恋心、他の誰にも気付かれないようにと、十分気をつけていたのに、
どうしても表情や仕草や、言葉の端々にあらわれてしまうのかな?
“何か悩み事でもあるのですか?”と誰彼となく心配されてしまうのだもの。

平兼盛

松山浪子
(山下禎啓)

42.契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは
私たちずっと一緒にいようねって約束しましたよね?
互いの衣の袖で何度も涙を絞りあったじゃない。
あの末の松山を波が越さない限り、この約束はきっとだからね。

清原元輔

九重八重子
(加納幸和)

61.いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな
昔から、奈良の都に咲いていたという見事な八重桜の銘木です。
今日はこの九重の宮中の庭で、
なんと美しく、そして芳しく咲いているではありませんか。

伊勢大輔

宇治乃川霧
(八代進一)

64.朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木
夜が明けた。宇治川の川面に立ちこめた霧が、所々薄く絶え絶えになって、
瀬々の至るところに網代木がその様子を現し始めた。

権中納言定頼

早瀬岩五郎
(高荷邦彦)

77.にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
川瀬の流れが早いので、岩に当った水はあちらとこちらに割れてしまうけれど、
いつかはまた同じ流れに一緒になれる。
私たちも今は運命のいたずらで離れ離れになるけれど、
お互い想いが強ければ、必ず会うことが出来るはずだよ。

崇徳院

玄上乱十郎
(水下きよし)

80.長からむ心も知らず黒髪れて今朝は物こそ思へ
朝になってあなたが帰ってしまわれると、乱れた私の黒髪のように、
心までも不安で掻き乱されてしまうの。
ずっと愛してくださるという、後朝の返歌にこのようなことを書いてしまうくらい、
あなたとは片時も離れたくない。一緒にいたいの。

後賢門院堀川

劉秋芳(大井靖彦)と藤原綾央(松原綾央)の出典は分かりませんでしたm(__)m

※ ※ ※

『恋助十種の内 姥ヶ池』について

手塚治虫Tezuka Osamu@World Top)
マンガ『安達が原』(1971)<ライオンブックス>サブタイトルリスト
アニメ版『安達が原』(1991)

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