かぶき座の怪人
あらすじ

 今年創立百周年を迎える、国立天地(あめつち)劇場では、新劇文明座の『欲望列車』が上演されている。主役の白森執子を演じる九重八重子(加納)は、役柄同様に、文明座創設のメンバーだった、春杉夏希(溝口)の後を継ぐトップ女優。五十を過ぎた現在も独身を通し、プライベートでは様々な演劇関係者との浮名を流している。
 今回の舞台でも、相手役の若手俳優山風アラシ(各務)との仲が噂され、役柄でも恋敵となってしまった色出しのぶ(森川)は、気が気でない。

 ある日、八重子の楽屋に台湾のノンフィクション作家、劉秋芳(大井)が取材に訪れる。劉の口から“かぶき座の怪人”の話が出る。
 数年前、天地劇場での『道成寺』を最後に亡くなった、名女形、六代目権屋、宇治乃川霧(八代)の幽霊が、かつて死人座の怪人として巷を騒がせた先代権屋のように、死人座無き今、この天地劇場の怪人なのでは?という噂だ。
 事実、怪人の署名で、死人座の時のような要求をしたためた手紙が、劇場の新支配人早瀬岩五郎(高荷)の元にも届くのだが、文化庁から天下りしたばかりで演劇界の内情に疎いし、プロデューサーの小倉山峰三(中脇)も、にわかには信じられずといった風、いずれも誰かの悪戯と本気にはしていない。

 天地劇場の稽古場では、来月の歌舞伎公演、『恋助十種の内 姥ヶ池』の稽古が行われている。封建的な梨園の中では異端児的存在の、二代目男女川恋助(原川)は、今度の舞台で恋寿を襲名し、同時に息子の恋松(桂)に三代目を継がせようと考えている。
 しかし当の恋松は芸の伸び悩みから、自信を無くしている。恋松は恋助の芸養子で、一握りの関係者しか知らない、当人にも知らされていない出生の秘密がある。

 恋松は八重子と出会い、不安や悩みを打ち明けるうちに、急速に惹かれていく。八重子も大事な稽古をサボってでも一緒に居たいと慕ってくる恋松を、いつものように積極的に誘惑するでもなく、かといって厳しく拒むことも出来ない。

 八重子と二人で飲みに行った翌日、稽古に遅刻した恋松は父、恋助が稽古場で倒れたことを知る。公演を中止するわけにはいかず、急遽父の役である岩手を演じることになった恋松は、その重責から、役者を辞めてしまおうとさえ思い詰める。

 八重子は恋松を励ましたいものの、胸に秘めた蟠りが溝となって、恋松の心を更に掻き乱してしまう。
 そして二人が会っている所を、母泉河逸美(嶋倉)に見つかり、激しく叱責される。

 早瀬や小倉山に相手にされない川霧は、霊感と出世欲の強い人気若手女形、八十嶋告世(植本)を唆し、次代の演劇界を背負って立つのはお前しかおらぬとばかりに手紙を届ける。後ろ盾を持たず、人気ばかりが先行している告世は、尊敬する権屋からの直々のお墨付きに、一も二も無く飛びつく。
 だが、その手紙には、皆が信じ始めていた、この天地劇場の怪人は、川霧とは別人というメッセージも書かれていた。

 『欲望列車』千穐楽を明日に控え、しのぶと打ち解けた八重子は、飲み明かした後、いつもの気まぐれで熱海へと車を走らせる。

 翌千穐楽、八重子の劇場入りが遅れていることに心配する関係者一同。そこにいつも通り元気な様子の八重子が現われ、皆一安心。
 しかし、川霧と春杉は、いつもとは違う八重子に気付いている。

 八重子はこれまで通り、最高の舞台を演じ、喝采を浴び、『欲望列車』は幕を閉じる。

 楽屋に帰ってきた八重子は春杉から、恋助危篤の報を聞き、恋松の身と行く末を案じるものの、稽古場へ行くのを躊躇っている。

 一方稽古場では、恋松が相手役の玄上乱十郎(水下)に稽古をつけてもらっている。乱十郎も恋松の出生の秘密を知る数少ない一人で、息子の乱太郎(北沢)を比較に出して、恋松が出自も非凡であること、そして秘められた才能を自覚させ、自ずから引き出させようと画策するものの、恋松にとっては自分の芸の未熟さを思い知らされるだけで、居たたまれず稽古場を飛び出す。

 八重子の楽屋にやってきた恋松を追ってきた乱十郎は二人の仲を察して、恋松に真実を告げる時だと決心するが、逸美が止めに入る。
 八重子は恋松を連れて、稽古場に行き、手取り足取り、岩手の稽古をつけるのであった…

 はたして、『姥ヶ池』の幕は開くのか?そして川霧の言う、本当の怪人とは誰なのか???

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