泪目銀座第9回公演
LOVER SOUL
あらすじ

 病院の癌病棟。内藤幸治(小林正寛)は数週間前から入院し、手術後、抗癌剤の治療を続けている。内藤にはプロポーズまでした恋人がいるが、回復の見込みも立たない、先の見えない今、婚約を取りやめようかと迷っている。待合室の公衆電話で恋人に電話していても、なかなかその話題を言い出せずにいる。
 ある晩、消灯時間の迫る待合室で、同じ病棟の患者、片桐正人(相島一之)と知り合う。癌の他にイボ痔も患ってる片桐は、長い入院生活を続けるうちに昼と夜の生活が逆転して、夜になると病院の中を散歩するのが日課のようになっている。そんな片桐が、最近散歩中に幽霊を見てしまう。主任看護婦の土井麻里子(森若香織)は面白半分だが、同僚の古山智子(柴山智加)は取り合わない。
 消灯時間も過ぎ、待合室で片桐と、利尿剤のせいでなかなか眠れない内藤が話をしていると、数週間前から昏睡状態に陥っていたという我妻みちる(渡辺いっけい)という患者が煙草を吸いにやってくる。我妻の容態を心配していた片桐は、元気な様子を喜び、初対面の内藤を紹介する。片桐から幽霊の話を聞いた我妻は興味を持ち、会ってみたいと出掛けていく。
 内藤は恋人に電話をするため、何度も待合室に来るが、その度に邪魔が入り、話を中断させられてしまう。研修医の岩泉清春(佐藤誓)の愚痴を聞いたり、我妻と片桐の仲違いを心配したり。また、自分の悩みを看護婦の古山に相談しているうちに、夜は更けていく。
 内藤は、古山から、消灯時間の少し前に、容態が急変して亡くなった患者がいると知らされ、我妻なのではないかと疑うが、再び我妻と会い、人違いだと自分を納得させる。
 我妻はある人に渡すつもりだったプレゼントを無くしてしまい、病院内を探しまわっていた。

 無くしたプレゼントは見つかるのか?そして渡すことは出来るのか?癌病棟の夜は深深と更けていく…

かんそう

 “健康である”という定義はとてもあやふやだけれど、健康に生活している人は、病気や怪我、そして死に対して、非常に鈍感だ。
 岩泉先生が、内藤くんに“君は患者の分際で〜”と失礼なことを言う。あの鈍感さだ。

 しかし、少しでも体調が悪くなると、とんでもなく過敏になる。
 偏頭痛が続くと、脳腫瘍かもしれないと怯え、胃が痛いと胃潰瘍を疑い、風邪が長引くと、結核なのではないかと、“家庭の医学”を紐解く。“自分はこのまま死んでしまうのではないだろうか…”と、おぼろげな死の影に怯えてしまう。
 そんな恐怖の中で“まだ死にたくない”という消極的ではあるけれど、生きたいという願望が治癒力を持って、少しくらいの体調の悪さなら、健康体へと回復させる。病院で処方された薬を飲めば、元気になる。
 いずれは死んでしまうということは分かる。しかし、それがすぐ目の前に迫っていることは、生きている人にとってほとんど自覚できていないのだと思う。

 命に関わるような危険に接していないと、平和の有難さが当然であると感じてしまうように。

 “死”を取り扱っていて、とても重いストーリーなのに、被虐的な笑いについつい引き込まれてしまった。

(観劇日9月21日)

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