リチャードU世
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あらすじ
イングランドの王、リチャードU世は、従兄弟のヘンリー・ボリングブルックから、
自分の家来、モーブレーの不正を告発される。
両者は王の前でも互いを非難し合い、事態は決闘にまで及ぶ。
事を重く見たリチャードは、家来のモーブレーには永久追放を言い渡し、
従兄弟のヘンリーには、叔父のゴーントの嘆願により、
六年という期限付きでの国外追放を言い渡す。
ゴーントは息子ヘンリーの身を案じ、悲嘆に暮れながら亡くなってしまう。
リチャードは、アイルランドとの戦争の費用にあてるため、
ゴーントの遺した領地と財産を全て没収してしまう。
その知らせを聞いた追放中のヘンリーは、三千の兵を率いて、イングランドに攻め入る。
以前からリチャードの政治に不満を持っていた国内の貴族たちは、
ノーサンバランド親子を始めとして、ヘンリーの味方につく。
唯一の後ろ盾であった、叔父のヨーク公までがヘンリーの側についてしまい、
ヘンリーは孤立したリチャードに廃位を迫る。
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リチャードU世は、フランスとの百年戦争を始めたエドワードV世の孫で、
鎧の色から“ブラックプリンス(黒太子)”と呼ばれたエドワード皇太子の長子です。
父を1376年に亡くし、翌1377年に祖父が亡くなり、
僅か10歳という年齢で即位した王です。
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かんそう
物語の中に、祖父エドワードや、父黒太子のことは出てこないけれど、
偉大な親たちの不慮の死から、若くして王座についた(つかされた?)、
リチャードの不運な終焉の物語でした。
“王”になる、“王”であるための器量、才能、人望、
リチャードには、そのどれもが足りず、それに気付いた時には、
その王冠はヘンリーのものになってしまった。
時代も国も違うけれど、リチャードは、大河ドラマ『北条時宗』に出てくる、
11歳で鎌倉に連れてこられ、以来、執権の傀儡として利用された、
宗尊親王(吹越満)のように思えた。
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リチャードから武力によって王座を奪ったヘンリーもまた、
王たる器を持たずに王になってしまった感じがする。
暗闇の中に一人で立つ男、
遠くから、嵐のような風の音に途切れながら聞こえてくる、
“ヘンリー・ボリングブルック…”という呼び声。
三年前、『ヘンリー四世』の舞台で、観たその始まりの場面と、
ラストがかっちりと組み合わさった。
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(観劇日:7月16日)
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