『南北オペラ』あらすじ
※下線のある赤い字は、リンク解説があります。

 北関東を中心とする同属間の私闘を続け、常陸国府を襲撃し、公然と朝廷に反抗し、自らを“新皇”と称して関東の分国化を目指した平将門
 西国で海賊討伐を命ぜられたが、自ら海賊を率いる棟梁となり、略奪と放火を行って朝廷に反抗した藤原純友
 この時を同じくして起こった承平・天慶(じょうへいてんぎょう)の乱は、辛くも鎮圧されたが、律令国家の崩壊を象徴していた。

 将門は討伐軍の武将、田原藤太秀郷にこめかみを弓で射抜かれて非業の最後を遂げる。純友は追討軍に追われ、逃げ延びることとなり、金剛丸と名を変えて、陰陽道の修行を積むこと十数年、呪法と我が子十太丸の血、そして三上山の百足が守護していたといわれる、霊力のある独鈷によって、将門の子を孕んだために殺された滝夜叉姫の亡骸に将門を蘇らせることに成功する。
 そしてその場に将門を討った秀郷、謎の盗賊坂東太郎が現われ、宙に浮いた独鈷は秀郷の手に落ちることとなる。

 将門の妹七綾は、文珠丸頼光と恋仲であったが、平氏と源氏の敵同士。しかも七綾姫は朝敵の身内であることから、全国に指名手配されており、乳人、御厨の元に身を寄せていた。
 また頼光は
源家の宝刀村雨を紛失したため、安珍と名乗って諸国を旅している最中、偶然御厨の家に立ち寄り、七綾姫と再会する。
 七綾姫の捕り手が押しかけ、姫の首を差し出すよう迫り、御厨が窮していると、娘のお清が自分が身代わりになると申し出る。お清はかつて、名も知らぬ男(頼光)に一目惚れし、その恋慕のために光を失い、生きる望みも無くしていた。
 御厨が七綾姫の差し出した刀をお清にかざすと、雷が落ちる。頼光が詮議すると、その刀は捜し求めていた宝刀村雨であった。雷に打たれたお清は目が開き、頼光と再会する。お清は七綾姫への嫉妬から、蛇体へと変化して二人に襲いかかる。
 七綾姫を追うもう一人の男、右衛門尉藤原忠文は源氏方の武士として将門を討つ命を受けていたが、かねてより思いを寄せていた七綾姫の願いで将門をわざと討ち損じて逃がしてしまう。そのため秀郷に功を取られた上に、裏切り者として、官位所領を取り上げられてしまった。
橋姫伝説の社で、七綾姫に言い寄るが拒絶され、それでもなお想いが断ち切れない忠文は、頼光と七綾姫の乗る船を追い、生きたまま鬼と化し、行く手を阻んだ寂莫法印を道連れに、河へと身を投じる。

 筑波山、雷ヶ洞に作られた古御所。盗賊、坂東太郎が、かつて将門が建てた相馬の御所をまるごと盗んできてアジトにしている。将門の怨霊が宿った滝夜叉姫が押しかけて、ともに暮らしている。
 滝夜叉姫は兄、源満仲が遣わした上使、神沢弥九郎照宗と乳人しみの戸の言葉にも耳を貸さず、山賊の女房を気取るが、何故か亭主である坂東太郎には指一本触れさせようとしない。
 坂東太郎は、純友の家臣、伊賀寿太郎の息子で、勘当同然で家を飛び出してはいたが、父とともに、主の志を継ぎ、クーデターを起こす機を伺っているという、互いに深いいわくのありそうな夫婦である。
 山中、赤斑の狼から、将門と滝夜叉姫の遺児、将軍太郎を図らずも助けだし、胸に抱いた秀郷が古御所を訪れる。
 秀郷と滝夜叉姫はかつての許婚で、恋心が再燃。しかし、将門と恋仲となり、子を孕み、そして現在は坂東太郎と暮らす滝夜叉姫は、秀郷を殺そうとするが、息子を盾にされ失敗する。坂東太郎と二世三世の契りを結ぶ心立てを示すため、滝夜叉姫は逃げた秀郷を追い、御所を後にする。
 坂東太郎は、父と金剛丸を古御所に招いてもてなし、忠義を示す振りをして、二人に毒を盛る。坂東太郎は、幼い頃産屋で寿太郎の子とすりかえられた、本物の伊予掾藤原純友であった。偽者の純友の首を討って、それを手土産に、源満仲に取りたててもらおうとの計略であったと、瀕死の二人に明かす(照宗としみの戸の命を救ったのもそれが理由)。が、坂東太郎には更なる野望があり、その血祭りとして二人を斬り殺す。

 秀郷が竜宮から貰い受け、寂莫法印が運び、お清が蛇となって取り巻いた、曰く因縁の鐘が供養され、三井寺に建立された鐘楼堂にかけられる日、白雲坊黒雲尼の前に、頼光、七綾姫、そして二人に良く似た花夫花子が現われる。花夫と花子は、将門、滝夜叉姫、忠文、お清らの怨念が凝り固まったものであった。
 花夫の手によって、黒雲尼の正体が秀郷と知れ、花夫が滝夜叉姫の正体を顕す。滝夜叉は同時に将門の魂も内在させているため、秀郷の命を狙う。花子の姿も鬼の忠文と蛇のお清となって、頼光と七綾姫を悩ませる。秀郷は独鈷によって滝夜叉を退け、頼光は宝剣村雨をもって、鐘の中に辛うじて封じ込める。

 白雲坊も百足四天に囲まれて、とうとうその正体、本当の藤原純友であることを見顕した。
 純友の真の目的は、将門と滝夜叉姫の怨霊とともに、国家を転覆させることにあった。

 今再び、呪法によって鐘が開き、将門、滝夜叉姫の怨霊、そして蛇となったお清、鬼となった忠文ら、閉じ込められていたものたちが躍り出し、クーデターが始まる。

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三上の独鈷
 三上山…滋賀県野州郡野州町の南東部にある円錐状の小山。標高432メートル。田原(俵)藤太秀郷の百足退治伝説で、この山に百足が七巻き半していたといわれています。
 蛇や龍を水脈や川の象徴とし、農耕社会が水の守り神である龍神を信仰したように、百足はその金属的な体表のイメージと、鉱脈が岩盤の中を走る様に似ていることから、古来より、山賊や山岳信仰の修験者、また鉱山関係に関わる山の民の守り神であり、象徴とされています。
 独鈷とは、密教で煩悩を破砕し、菩提心を表す金属製の法具、金剛杵の一種で、もとはインドの武器です。修法に用い細長く手に握れる程の大きさで、中程がくびれて両端は太く、先端が割れていないものです。
 田原藤太秀郷が、龍神に頼まれて三上山の百足を退治し、無尽蔵に米の湧く俵や、鐘を貰いうけたという伝説は、藤太が鉱脈を掌握したことで、裕福になった象徴であるとともに、山伏たちの秘法を得たことで難敵平将門(将門は弱点のこめかみ以外全身が鉄で出来ていたという伝説があるように、山の神系の力を持つ武将です)を討てたことだとも考えられます。

七綾
 平将門は、常に身近に六人の影武者を置いていたと言われます。これは、北極星、あるいは北斗七星を神格化した妙見菩薩信仰の影響と見られています。国土を擁護し、災害を滅除し、人の福寿を増すと言われ、特に眼病平癒を祈る妙見本尊は、中世には武士の守護神として、相馬を始め、地方豪族たちの信仰対象でした。
 七綾姫の携えていた宝剣村雨によって、お清の目が開いたり、七綾姫に助けられて、頼光が武運を上げていくなど、七綾姫は妙見菩薩の生まれ変わりなのかもしれません。

橋姫伝説
 嵯峨天皇の代、嫉妬のために宇治川に身を沈めて鬼となり、京中の男女を食い殺したという女が、後に橋を守る女神として、京都府宇治市宇治橋の橋姫神社にまつられました。

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