『ハムレット』かんそう

 わたしはこれまで花組公演と、子供のためのシェイクスピア公演だけでしか植本さんのお芝居を観たことがありません。しかも植本さんの正調男役は外部で、ごく稀にしか観ることが出来ないレアモノなのです。
 2000年に『リア王』で、グロスター伯爵の庶子エドマンドを演じて以来、今回のハムレット役も、とても楽しみにしていました。

 巷では植本さんと言えば、女優以上に女を演じられる女形としての評価が高いようです。わたしも植本さんを役者として初認識したのは『夜叉ヶ池』初演の山椿役で、何だこの可愛いフランス人形の出来そこないは?!という印象でした。
 女形として早くから高水準の完成度にあった植本さんのキャラクターは、それゆえにある意味固定したイメージとなって現在に至っているように思います。それは劇団の上演作に必要とされているものであり、また多くの見物の期待に応えるものなのでしょう。これこそ植本潤!と思われている向きもあります。

 しかし、エドマンドを演じていた植本さんは、何かが違っていました。父親への屈折した愛情と、嫡子の兄エドガーへの嫉妬をモチベーションに、端麗な容姿と狡賢さを武器として、リア王の娘たちを誑し込み、野望を膨らませ、ついには国を一つ転覆させてしまう。そんな翳のある青年エドマンドの生き様は植本さんが演じることによって、主役であるリア王一族の悲劇と肩を並べる存在感を魅せていたのです。
 植本さんを女形のイメージだけで固定させちゃいけない。初めて植本さんを観た頃から十年余り、植本さんがバージョンアップを繰り返し続けていたのだと気付いたのはその時でした。気付くのには十分遅すぎですが、このバージョンアップは、花組芝居の公演ではなかなか気付けない。だって男役を演らないから。

 エドマンドは最期、父の愛情を知ることで、真人間となって死んでいきますが、座内一の腹黒と呼ばれている植本さんにしては、その点で物足りなさが残り、役不足な終わり方だなあ…という気がしてなりませんでした。

 そして今回のタイトル・ロール、ハムレット役では、またさらにバージョンアップしていると気付かせてくれました。

 

 

ポスペのおやついかがですか?

観劇・感激備忘録TOPに戻る

扉に戻る