『ゴクネコ』あらすじ

 草間家家老高尾重左衛門(水下きよし)は馴染みの花魁桧皮屋真木太夫(加納幸和)を身請けし、太守頼高(原川浩明)の側室として下屋敷に住まわせようと画策する。

 三十五万石大名草間家では十五年前、お家騒動が起こって太守家頼が謎の急死。弟の頼高が太守となった。亡君家頼の一人娘滝姫(竜小太郎)が可愛がっていた猫クロが化け猫となり、様々な怪異を起こすとの噂が立ち、今でも猫は忌み嫌われ退治されている。
 多くの仲間を亡くした猫たちトラ(八代進一)ミケ(北沢洋)チビ(大井靖彦)ブチ(松原綾央)はとうとう決起する。

 重左衛門と真木太夫は最後の逢瀬を楽しもうと廓から屋敷に向かう途中、遠出をした先で日が暮れ道に迷ってしまう。たまたま通りかかった村の猟師で、幼い頃から猫の子と陰口を叩かれている與吉(桂憲一)という青年に案内を頼み、村はずれの古刹、無量寺に一夜の宿を乞う。與吉はこの寺を守る老婆お蔦(八代進一)の元に通う娘お仲(竜小太郎)が親の借金返済のために苦界に身売りされようとしているのを助けようと、不本意ながら化け猫退治をやっている。
 一行の前に現れたお蔦は既に亡くなっていて、その正体は化け猫トラ(八代)、この荒れ寺こそ化け猫たちの隠れ家だったのだ。トラ、ミケ、チビ、ブチ四匹の化け猫が一行に襲い掛かるが、與吉の奮闘で退散する。真木太夫はお仲の境遇を憐れんで自分の召使にする。與吉もその腕を買われて草間家に使えることになる。

 二年後、真木太夫は側室となり名をお蒔と改めていた。太守の正室(嶋倉雷象)は懐妊してつわりがひどく寝込んでいて、お蒔は太守の寵愛を一身に受けていたものの、一向に子をもうける様子がない。
 お蒔の部屋に重左衛門が妻竜田(秋葉陽司)の目を盗んでやってくる。操が世継ぎを生めば太守の寵愛を失うと考え、かつて家頼を毒殺した薬を今度は操に飲ませようと相談していると、部屋に一匹の黒猫が迷い込んでくる。重左衛門が殺そうとするのをお仲が命乞いする。お蒔は猫の命を助ける代わりに、お仲に毒を飲ませる役を命じるが、お仲は事の重大さになかなか踏み切れない。

 無量寺を出た四匹の化け猫は草間家下屋敷に入り込み、操付きの奥女中岩浪(八代)敷浦(北沢)高浜(大井)夕汐(松原)に化けて報復の機会をうかがっていた。
 岩浪は太守頼高の小姓で美しい剣の達人鳴沢菖蒲之介(各務理基)にお蒔が恋文を送ったように見せかけて失脚させようと贋の恋文を用意し、桃の節句の際に借りた酒器を返しに部屋にやってきたお仲を捕まえ、恋文を持っていたかのように仕立て責め苛む。それを救ったのは当の鳴沢であった。鳴沢は以前からお仲に想いを寄せていたが、お仲は命の恩人の與吉への義理があるため身持ちを堅固にしていた。しかし助けてくれた鳴沢に急速に惹かれ始める。
 與吉はお仲が操を毒殺するようお蒔に命じられていると知り、自分が毒薬を預かる。その様子を見ていたお蒔に言い寄られる。與吉十七の夏。

 時は七年前に遡り、草間家のお家騒動から十年後のこと。
 元草間家家臣矢部繁保(山下禎啓)は屋敷を追われた許婚の滝姫と落ち延びる途中、離れ離れになってしまうが、猟師として田舎で暮らしていると、突然滝姫がやってくる。滝姫は名をお滝と改め二人は夫婦になり、與吉が生まれる。繁保が家を留守にすると、お滝の美しさに村の男たちが何かと口実を作っては入り込んでくる。そのため與吉は“(どろぼう)猫の子”と村の女や子供たちから白い目で見られている。
 そこに本物の滝姫が母信夫の前(溝口健二)と従者信楽平左(横道毅)とともにやってくる。母と瓜二つの滝姫を見て與吉は自分をからかっているのだと思うが、家まで案内する。
 様子の怪しさに信夫の前と平左が滝姫を隠し、お滝と名乗る女に逢って問い質すと、実はお滝は滝姫の愛猫クロであった。繁保が滝姫との再会を望んでいることを知り、滝姫に化けて妻となり、與吉までもうけたというのである。本物の滝姫が現れ正体が知られてしまった上は、もうここにはいられないと、元の猫の姿に戻り、與吉との別れを惜しみつつ姿を消す。滝姫は信夫の前から事情を聞いて、お滝と入れ替わり繁保の妻となり、與吉を育てる。

 現在に戻り、屋敷では太守が日々遊興に耽っている。
 人目を忍んでお仲と鳴沢は逢瀬を重ねていたが、鳴沢はお蒔に頼まれてお仲を誘惑していた。そのことを知り傷付くお仲を鳴沢は黒猫とともに切り庭の池に突き落とす。
 お蒔のおなかには鳴沢の子が宿っていた。お蒔は重左衛門を騙し鳴沢との子を草間家の跡継ぎにしようと企んでいた。

 化け猫たちは太守を人質に取り、クーデターを起こす。遊興に耽る太守を傀儡とし、家老が草間家の実権を握っていると告発する。
 しかし剣の腕では鬼神と呼ばれる鳴沢にかなうはずもなく、化け猫たちは捕らえられ、太守は鳴沢と化け猫たちの御前試合を酒肴とした宴を開く。
 一同が揃った席で、お蒔の指示で操の飲む酒の中に與吉が毒を注ぐ。御前試合の最中、空が掻き曇り雷鳴が轟き、殺されたはずのお仲が現れる。
 お仲は鳴沢との御前試合を申し出る。鳴沢と互角に戦うお仲には與吉の母クロが憑依していた。
 毒酒を飲んだ操が苦しみだし、與吉に嫌疑が掛かり、口止めとして鳴沢が手打ちにしようとするが、竜田が首謀者は他にいると推理し、お仲が全てはお蒔の策略であると告げる。

 正体を現した化け猫トラ、ミケ、チビ、ブチに囲まれているうちに、鳴沢が太守を斬り、さらに重左衛門を殺す。お仲が銃を與吉に渡し、襲い掛かる化け猫たちと闘っている鳴沢を撃つ。さらに化け猫たちを狙うがお仲に猫たちを撃ってはいけないと止められ、躊躇していると瀕死の鳴沢に斬られる。
 親子の再会を果たし、與吉はお仲(クロ)の腕の中で息絶える。

 実はお蒔もクロと同類の化け猫で、人に化けては騒動を嗾けて楽しんでいた。
 人を愛し、信じ、寄り添って生きようとするクロ。
 人を恨み、仇なすトラ、ミケ、チビ、ブチ。
 三者三様に生きる猫たちの想いと人々の欲望が錯綜したその先にあるものは…

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