〇水島友(『義血侠血』)
| 水芸の太夫滝の白糸は、金沢の浅野川に掛けられた見世物小屋の中でも一際の人気を博していました。 ある夜、夕涼みに橋に出かけた白糸は、橋の上で寝ている男を見つけます。 この男は以前、越中高岡から石動(いするぎ)の間で乗り合い馬車の馭者をしていた男で、白糸とは顔見知りでした。白糸が人力車と馬車の競争を頼んだのが原因で、馭者の仕事を解雇され、馬丁の職を探しに金沢に出て来たのですが、あても無く、野宿をしていたのです。 白糸は、男の態度などから、馬丁などするような人品ではないと見抜きます。 男は金沢の士族でしたが、仔細があって一家で高岡に引越しました。自分一人金沢の学校で学んでいたのですが、三年前に父親が亡くなり、学業を途中でやめて実家に帰り、馭者の仕事で家族を養っていたのです。しかし、いずれは復学し、法律の勉強をして、法律家になりたいのだと白糸に語ります。 男の思いに心打たれた白糸は、東京で勉強できるだけの仕送りと、男の留守中、高岡の母親の世話をすると申し出ます。男が立派な人物になれるのが恩返しと、酔狂交じりで申し出たことでしたが、白糸は男に生涯親類のように暮らしたいと、心のうちを告げます。 男の名は村越欣也、白糸は水島友。欣也は白糸から貰った三十円を持って、そのまま東京に発ちます。 夏は景気の良い水芸ですが、冬は仕事も無く、白糸は前借などをして、金の工面を続け、二年が経ちます。 さらに翌年の夏、白糸は金沢に興行に来ました。あちこちに負債を作っていましたが、何とか前借が出来、欣也とその母に送金できる予定でした。 間もなく、現場に残った出刃包丁と浴衣の片袖から、南京出刃の見世物小屋の男が殺人強盗犯として捕らえられます。 金沢裁判所の新任検事代理として村越欣弥が赴任してきます。 公判が開かれ、白糸、水島友が法廷に引き出されます。 |