〇美女(『海神別荘』)

 貧しい漁師は、海の幸の身代に、浦一番の美女であるを差し出すという契約を海神と結びます。

 そして契約通り、捨て小舟に乗せられ沖に流された美女は新妻として、海神の若き世継ぎである公子の元に迎えられます。

 美女は自分が息災であること、そして宮殿で女王として贅を尽くした不自由の無い暮らしをしていることを、陸で悲しんでいるであろう父親に会って伝え、安心させたいので、一度だけで良いから陸に帰らせて欲しいと公子に頼みます。公子は、美女に財宝を自慢したりするような、見栄はすべきでないと、反対しますが、美女の親を思うという気持ちに折れ、陸にも自由に行けることを教えます。
 ただ、人間の目には既に元の姿ではなく、恐ろしい蛇身として映るということも告げます。

 公子の言葉を信じられない美女は、喜んで陸に戻るのですが、変わり果てた自分の姿に怖れを成し、攻撃までする人々の様子を見て、逃げるように宮殿に帰って来ます。
 
美女は全ては公子の魔法であろうと恨み言を述べ、遂に公子を怒らせてしまいます。

 黒潮騎士によって錨に縛られた美女は死を覚悟し、公子の手によって殺されたいと望みます。
 
美女の願いを聞き入れ、公子が剣を構えた時、初めて両者は目と目を見交わします。
 公子の真の姿を見て、
美女は故郷への未練も、何もかもを忘れ死に臨むと莞爾微笑みます。

 公子は美女の縛めを解き、互いの血をくみ交わして終生を盟うのでした。

この画面を閉じる