言い伝え

いろいろと温泉にまつわる言い伝えがあります。私達は一つずつ検証してきましたが、大半はまだ手付かずです。温泉医学研究をしていた国立大学分院は行財政改革により全て廃止されてしまいました。今後、温泉の効用を研究していくのは困難となりましたが、私達は引き続きなんとか研究していくつもりです。研究予算はありませんがーーー。

      
           草津温泉 湯畑

いくつか古より言い伝えられていることを説明してみます。

熱の湯
保温効果があり湯冷めしにくい温泉という意味で、芒硝泉(Na2SO4)などを指します。芒硝泉には保温効果の他に血管拡張作用もあり末梢循環を改善し四肢末端まで温めます。

冷の湯
炭酸泉(CO2)を指します。炭酸ガスのため清涼感があり、皮膚についたガスが気化熱を奪うため冷えやすい。

傷の湯

芒硝泉を指します。芒硝泉(Na2SO4)には殺菌作用、角化作用、肉芽形成作用、被覆作用があり、創傷治癒に有用で、痔疾、褥瘡、術創にも効果があります。芒硝泉だけでなく、硫黄泉食塩泉重曹泉なども傷の湯と伝えられている地域もあります。

中風の湯脳卒中の湯
芒硝泉を指します。血管拡張作用により血圧を下げる効果があり、脳卒中の最大の危険因子である高血圧に有用です。また血管拡張作用により末梢循環が改善するので脳卒中で麻痺した手足の機能回復訓練(リハビリテーション)にも有用です。

たんの湯
芒硝泉(Na2SO4)、重曹泉(NaHCO3)、食塩泉(NaCl)には吸入により、喀痰の粘稠度を低下させて(痰をサラサラにして)排出しやすくします。肺気腫、慢性気管支炎、慢性喘息などに有用です。ただし硫黄泉(SO2, H2S, S)には刺激臭があり、喘息の発作を誘発する危険がありますので注意して下さい。

子宝の湯
意味不明です。卵巣機能、子宮機能、女性ホルモン、性欲などに関しての研究が散見されますが、科学的に客観性のある新知見はないようです。泉質も千差万別です。
     蒸ノ湯(秋田、酸性硫黄泉)、孫六(秋田、単純硫化水素泉)、
     東鳴子(単純硫化水素泉)、五色(山形、単純泉)、
     栃尾又(新潟、単純ラジウム泉)、宝川(群馬、弱アルカリ単純泉)、
     吉奈(静岡、含
芒硝苦味泉)、有馬(兵庫、含鉄食塩泉)ーーー。
 単に、日常を離れて夫婦が一緒に入浴して愛し合いやすくなるだろうというのが子宝の湯の理由ではないかともいわれていますーーー???

胃腸の湯
重曹泉、食塩泉には飲泉により、胃腸粘膜の血流を増加させ消化機能を高めます。また胃腸粘膜の保護作用もありますので、胃腸の湯といわれています。

年寄りは一番風呂に入れるな
湧出したばかりの温泉あるいは沸かしたばかりの湯は不純物が少なく温熱作用や化学作用が高く、高齢者には副作用も強くでます。何人かが入浴すると湯のなかには皮脂(垢)や汗などが混入して温熱作用や化学作用が弱まり、高齢者には良い湯加減となります。

宝水
水浴により静水圧がかかり、下半身にあった血液が低圧部(肋骨で囲まれて静水圧のかかりにくい胸郭)へ押し出され移動していきます。このため心臓に血液が集まり心臓は血液(水分)過剰、つまり心不全と勘違いをして水分を体外に排出するために利尿ホルモンを分泌して、腎臓に尿を産生させます。その結果、水浴後は尿意をもよおします。また発汗や排尿により体内の水分が失われ脱水状態となり、血液の濃度は高まり(血液粘度の上昇)、ドロドロとして流れにくくなります。血管に血液が詰まりやすく、また血液が固まりやすくなり(血液凝固)、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を引き起こしやすくなります。これを予防するために入浴後に水を飲み水分を補給して血液粘度の上昇を抑えます。入浴後に飲む水のことを脳卒中を防ぐ命の水という意味で「宝水」といいます。

硫黄に解毒作用あり
硫黄を含むアミノ酸は含硫黄アミノ酸(メチオニン、システイン、グルタチオンなど)といわれて、グルタチオンペルオキシダーゼになり活性酸素を中和します。
また含硫黄アミノ酸はメタロチオネインという蛋白質となり、金属イオン(カドミウム、水銀、鉛、銅など)と結合して、爪や毛に排出されていきます。
さらに硫黄はシアンと結合してチオ硫酸ナトリウムとなり尿に排泄されていきます。
このようなことから古より硫黄は解毒剤といわれてきました。
しかしながら硫黄泉にどのくらいの解毒効果があるのかの科学的な検証はされていません。

熊の湯、鶴の湯、鹿教湯(かけゆ)
言い伝えではなく実在する地名です。傷を癒すために熊、鶴、鹿などの動物が温泉に浸かっていたことからこのような温泉名がついたそうです。

なおし湯、仕上げ湯
強い酸性の草津温泉で湯ただれした皮膚を、隣の沢渡温泉の柔らかい湯で治していきました。このように強い温泉に入って湯負け(酸性泉浴湯皮膚炎)など湯ただれした皮膚を癒すために入る柔らかい泉質の温泉のことを「なおし湯」とか「仕上げ湯」といいます。

 

       
       草津分院開設時(昭和26年 白根山を背にして)

 

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