旅日記(4)<葛城古道を歩く---奈良県>
1998.3.2


*1998年3月2日(月) 

・北宇智駅から葛城古道を歩きはじめる

 西吉野温泉からの帰路、五條駅よりJR和歌山線に乗ったが、私は、次の無人の北宇智駅で下車して葛城古道を歩くことにしていた。天気もよく暖かな陽射しがあってハイキングには好適だ。踏切を渡って、国道24号線に出て、それに沿ってしばらく歩いたが、ダンプカーやトラックがスピードを上げて通りすぎ、ちょっと危険だし、排気ガスを浴びて気分もよくない。しかし、きちんとした地図がなく、「るるぶ奈良」が頼りなので、国道を外れると道が分からなくなりそうで、仕方なしに、歩道もない国道脇をおっかなびっくりと歩いていった。途中東佐味の信号から国道をそれ、さらに高鴨神社の手前からは葛城古道の散策路に入ってやっとハイキングらしくなってきた。高鴨神社の案内板には鴨一族のことが書いてあり、各地にある加茂の地名がその一族に由来することを知った。その神社の境内は時期外れの平日のこととて、人影もなく静まり返っている。静かに参拝して、帰りかけるとさくら草についての説明板が目に止まった。昔から園芸用として愛でられていたようで、この神社にはたくさんの鉢植えが持ち込まれてくるという。そんな所にも、古代からの伝統を感じ、再び葛城古道を歩きはじめた。

高鴨神社 高天原神社の参道
林間を行く葛城古道

・別世界のような高天原神社

 昔からの道はもっと狭かったのだろうが、所々で自動車用に拡張され、一部では工事の真っ最中だった。この道は昔ながらのままのほうが良いとは思ったが、地元の人にしてみれば狭くて曲がりくねっていると自動車用には不便なのだろう。ちょっと残念な気がしながらどんどん歩いていった。奈良盆地から見ると結構高いところを行く道で、見晴らしがとても良く、のどかな田舎風景が広がっている。途中からさらに山の方へ向かう道をとり、高天原神社を目指した。その半ばくらいから車の通れない、完全な山道となって、林の中を上っていく。ほんとうに、こんなところにあるのだろうかと思いながら標識に従って、歩いていったが、息が切れる。薄暗い、木立の中を抜けるとぱっと視界が開け、前方に神社らしい森と参道の並木が見えてきた。その手前に見事に開花した梅の木がある。なんだか、別世界に紛れ込んできたようなのどかな風景が展開していた。高天原神社に近づくと右手のほうに集落が見えてきた。ほーこんなところに人家がといった風情で、古から連綿と変わらぬ生活を続けているのではと思わずにはいられない。とにかく、絵になるような田舎の光景なのだ。

・神話的な風情をかもしだす橋本院周辺

 のんびりと、神社への参拝をすませ、漫然とこの集落の気分に浸っていると、昔ながらの懐かしさがこみ上げてくる。その中をゆっくり歩みながら、橋本院の方へ道をとった。陽射しも心地よく、めったに人も通らないのではと思える野道が続いている。ここら辺が天孫降臨神話ゆかりの高天原なのだ。何百年も変化していないのではと思えるような田舎の光景だ。かえって、それが神話的な風情をかもしだしているといえるかも知れない。橋本院はそんな一角に建っていた。境内は静まり返って、人一人いない。ただ一匹の飼い犬が吠えることで、人の営みを感じ取れるぐらいだ。その寺院を通りすぎると、道は急に森の中に入り、完全な山道に変わる。来たときと同じようにこの地域を外界と区分しているかのようだ。それからの道は狭くて険しく、かなりの勾配で曲がりくねりながら高度を下げていく。時々、木々の間から下界?奈良盆地の広がりが感じられる。そして、その森を通り抜けるとまたのどかな田園風景が広がっているのである。

・住吉神社、名柄神社と立ち寄ってから昼食休憩 

 ほんとうに別世界から帰還してきたように感じるのだから不思議なものだ。「今見てきた風景はなんだったのだろう」と妙な気分にさせられる。現実の世界に戻って、急に喉に渇きを覚えて、酒屋の前の自動販売機で缶紅茶を買って潤した。ベンチにすわって、前方を眺めるとさっき降りてきた葛城山の山麓が目に入った。夢のような光景を反芻しながら、立ち上がって、さらに葛城古道を歩きはじめた。住吉神社に参拝し、田舎道を道なりに歩いていくと、昔ながらのたたずまいを残す、名柄の集落に至る。この中にある名柄神社に立ち寄り、さらに歩きつづけたが、そろそろ脚に疲れが出てきた。すでに、昼をだいぶ過ぎていたので、昼食休憩の場所を探したが、なかなか見つからない。やっと、田んぼの真ん中の道沿いにドライブインのようなそば屋徳兵衛を見つけて、昼飯をとることにした。畳の上に足を延ばし、一息ついたが、もう3時間、10km以上歩いただろうか?でも、なかなか印象深いコースだった。

名柄の民家 一言主神社参道

・とうとう六地蔵までたどりつく

 まだ、2km強の距離が残っているので、再び歩きはじめた。一言主神社、九品寺と立ち寄り、さらに歩き続けて、とうとう六地蔵までたどりついた。もう、いいかげんに歩き疲れてきた。よくここまで歩けたものだと、来た道を振り返ってみたが、とても良い散策路だったようにも思う、なんだか、古人の気持ちになったような...。猿目橋のバス停まで行ってみたら、葛城ロープウエイ乗り場行きのバスまで十数分待てば良さそうなので、ついでに山上から、この地域を見下ろしてみることにした。バスはカーブを曲がりくねりながらゆっくりと上っていって、ロープウエイ乗り場に連れていってくれた。

九品寺 六地蔵
葛城山ロープウェイ
「葛城山ロープウェイ」の仕様
三線交走式 ゴンドラ 51人乗 2輛
所要時間 5分
距離(斜長) 1,421m
水平長 1,305m
速度 秒速5m(時速18km)
高低差 561m
開通日 1967年3月26日

・葛城山頂から葛城古道を望む

 この季節、葛城山に登る人も少ないのか、ロープウェイの乗客もまばらで、眼下に今歩いてきた葛城古道を望みながら、高度を上げていった。このロープウェイは、距離1,421m、高低差561mを約5分で運んでくれ、山頂駅に着いた。周辺には、残雪があり、遊歩道にも一部凍結があって、滑らないように注意して、山頂を目指した。山頂付近からの見晴らしは良かったが、もう帰りを急がないと今日中に自宅にたどり着けない時刻となっていた。ほんの少しの時間山頂付近に止まっただけで、再び、ロープウェイの下りの時間を気にしながら、今きた道を足早に引き返していった。なんとか下りの出発時刻に間に合って、再び眼下に葛城古道を見ながら高度を下げていったが、遠景には奈良盆地が広がっていて、なかなかの景色だ。今日は、本当に満足できる旅だったように思う。

・帰途につく

 心地よい疲れを感じながら、連絡していた奈良交通のバスに乗り換え、近鉄御所駅へと向かった。その後、近鉄線を尺土駅、橿原神宮前駅と幾度か乗り換えて、京都駅まで至った。それからは、JR東海道新幹線に乗って、帰途についた。


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