2002年へ。 2004年へ。
-全鑑賞List-:日本映画/外国映画
      1.1.(Wed)
    - Iris - シネスイッチ銀座
  アルツハイマーという症状がその過酷さ故に明確にするのは例えばこの夫妻の代償を 
 必要ともしない絆のような剥き出しの人間関係なのだろう。ジム・ブロードベント演じ
 る老いた夫が時に苛立ちまたユーモアたっぷりに過ごす日常にこそ献身や博愛の理念を
 二の次にした生活そのものが覗える。
  ジェームズ・ホーナーの抑揚の効いたリリカルなメロディも切なく深く響く。
    - TRICK 劇場版 - ニュー東宝シネマ
  テイストはTVシリーズそのまま。ひとつのエピソードを映画の尺で完結させたもので 
 あるだけだから普段以上の力みがあるわけでもなく、自然な流れとして製作されている
 その姿勢は観ていて十分納得できた。故に、DVD鑑賞で十分なのかもしれない。
  1.2.(Thu) - AIKI -   脊椎損傷というダメージが身体以上に精神に与える大きさは計り知れないものである   はずだ。青春を描く題材としてリアルなその姿を追う中からユーモアと爽やかさを抽出  する演出の確かさ、そして加藤晴彦、ともさかりえを筆頭に俳優陣がその役を生きる姿  に思わず感情移入し目頭が熱くなる。この作品と出会えてよかった。 - Jam Films - シネ・リーブル池袋   現在、通常の興行形態では映画のショートフィルムが観客によって評価される場など   どこにもない。ただ、ここ数年新しい日本映画を切り拓こうとしてきた才能は例えばCF  やPVなど、映像を表現手段に実験を繰り返せる土壌から生まれている事実もある。この  試みが単なるネームヴァリューで成立するのではなく、一人歩きできる環境が出来て欲  しい。で、今回集結した7人+紹介CG製作原田大二郎氏の作品、それぞれ楽しめた。 - DRIVE - 飯田橋ギンレイホール   SABU監督作品を劇場で観るのはこれが初。クセのある各キャラクターが自在に勝手な   行動をとり独特のテンポで妙な出来事が面白く転がって展開するパターンは既に馴染み  のものだが、特に寺島進演じる説教坊主の顛末が楽しかった。
  1.11.(Sat) - 刑事《でか》まつり - シネマ下北沢   当日券1000円、尺は10分以内、製作は自腹、上映はキャパ50人のシネマ下北沢のみ、  という自殺的とも言える興行が実現したこと自体、奇蹟である。作品がまさに手造りで   産み出されているその鮮度のみで勝負。深夜番組素人投稿ネタというクオリティの低さ  にこの監督、参加しちゃって平気?という凄まじさ。余りに豪快である。 - 刑務所の中 - シネクイント   映像は実に淡々と事実をゆったりとした長閑なテンポで描いていくだけ。とにかく、  その細部への視点(恐らくは原作者:花輪和一氏が克明に記録したもの)が不思議に軽  やかで毒気を含んだ強烈なギャグとして映し出される。その日常が何しろこれだけ面白  ネタ満載なのだから映画化するのに小手先の技術などいらない。ただ、山崎努氏の存在   があってこその深みのある味わいである。見逃さないでよかった。
  1.15.(Wed) - GANGS OF NEW YORK - シネプレックス10幕張   19世紀末のニューヨークの混沌が現在に投影する姿はマーティン・スコセッシ監督の   ライフワークともいえるテーマ。暴力と権力が民主思想を粉砕し義侠の精神も朽ち滅び  消えていく。その遷移を俯瞰により眺める映像叙事詩は夥しい数の死体によって築かれ  る圧倒的な迫力。『エイジ・オブ・イノセンス』をまた観てみたくなる。
  2.1.(Sat) - 壬生義士伝 -   「竜馬の妻とその夫と愛人」に続いての出演作、本当に現在の中井貴一が放つ俳優と   しての華と艶がたっぷりと堪能できる。「秘密」「陰陽師」と小説の映画化が続く滝田  洋二郎監督の描く人間の生の根源的なドラマはごく単純に日本の風景と暮らしの中から  湧き上がる情感として素直に心を揺さぶられ、その結末に慟哭してしまう。 - MINORITY REPORT -   トム・クルーズ+スティーブン・スピルバーグ。プロジェクトの発端が大メジャーで   印象として派手に見えても製作の本質が真摯で精緻な娯楽活劇は可能であることを証明  した。未来像のデザインも突飛なものではなく、かといって余りにダークでもない配分  のバランスがスピルバーグらしさ。リアルなキャラクター設定で描かれているこの絶妙  なキャスティングも魅力的。大当たりしなくていいから、永く評価されてほしい作品。 - 黄泉がえり -   あの「害虫」の塩田明彦監督がこういった切ないファンタジーを撮るとは意外だった。  この現象のアイデアが示す幾つかの約束事に理屈で説明過多に陥らなかった脚本の処理  は群像劇として描くことで成立しているし、軸となる2人の関係性も演じる草g+竹内  の爽やかなキャラクターで自然と納得できた。 - T.R.Y. - シネプレックス10幕張   織田裕二主演作となると、どうしても他のキャラクターとイメージが重複する。この  作品の主役:井沢修は実在の人物らしいが、1世紀前の上海を舞台に脚本は架空の活劇  を魅力的に描いていく。これは『実写版・カリオストロの城』である。面白かった。
  2.16.(Sun) - RED DRAGON -   原作自体は既に過去映画化されていたがホプキンス版レクター博士3部作はこの作品   で完成。観終えると「羊たちの沈黙」を観たくなる構成は見事だし順序が逆だからこそ  印象を残す加えられた台詞の工夫も凝っている。登場しないFBI研修生クラリスの姿が  ありありとイメージできる。抑制の効いたエドワード・ノートンの存在感も良かった。 - GOSFORD PARK - シネプレックス10幕張   群像劇を得意とするアルトマン監督が初の英国撮影で描く1930年代の上流階級の虚飾   と階下の使用人たち、その何気ない会話の言葉が脚本の意図する展開とは無関係な配分  で洪水の如く溢れている。体裁は殺人ミステリーだが謎解きや真犯人探しは重要でなく  複雑に絡む本音と建前の人間模様の裏腹が主軸。意外な結末の温かみに驚いた。
  2.26.(Wed) - IRREVERSIBLE(アレックス) -   時間経過の不可避性・不可逆性をテーマに、扇情的で不安定なカメラが激情に溺れる   暴力、陵辱、退廃を延々描写する冒頭からフィルムのようには決して遡ることなど出来  ない穏やかな安らぎと溢れる光の日常へ。プロローグで既に結論は提示してあるがこの  対極にも思える違いすぎる光景は起こった順序がどうであれリアルに等価に存在する。   否定する気はないが、この作品をもう一度観たいとは思わない。 - THE PIANIST(戦場のピアニスト) - シネプレックス10幕張   極限状態でのサバイバルという意味では「キャスト・アウェイ」が思い浮かんだが、  この実話の主人公はあくまで窓越しの観察者に徹し自らを虚無に帰しながら偶然の奇跡  が命を救った。その運命のいたずらを齎したドイツ人将校が不遇の死を遂げている事実  のやりきれぬ悲痛。その理不尽こそが戦争の狂気そのものである。
  2.26.(Wed) - アカルイミライ -   「回路」以来という事で黒沢清監督久々の長編。(「刑事まつり」はカウント外)   オダギリジョーのすっきりとしたシルエットがどこか共通するイメージの浅野忠信と   重なるスリリングな映像が結構重要なポイントだった。「河童」「ACRI」を観て決めた  という藤竜也のオフビート感が絡む3人の人間模様から切ない情動が溢れる後半の場面  はリアルでよかった。更にこの3人とアカクラゲとの距離感もなんだか納得。 - 曖昧な未来 黒沢清 - 渋谷シネ・アミューズ   充実の本編(というのも変だけど)を鑑賞後、続けてレイトでこのドキュメント作品  を味わう。監督の言葉は実に明快で、「自分でもよくわからない」というその境界をも  くっきりと示す。フィクショナルなドキュメントとリアルなフィクションは、こうして  境界を必然的に曖昧にしていく。
  4.1.(Wed) - My Sassy Girl(猟奇的な彼女) - 日比谷シャンテ・シネ1   作品のコミカルな味がどうしてもイメージに残るが、清楚で瑞々しさが実に魅力的な   チョン・ジヒョンも柔和な表情が自然なチャ・テヒョンも等身大で多義的な生身の人間  の奥深さが見え隠れする。これは脚本とかキャラクター設定以前の持ち味の部分なので  あろう。伏線の効果的なラブ・ストーリーそれ自体がキュート。面白かった。 - RABBIT-PROOF FENCE(裸足の1500マイル) - シネスイッチ銀座   オーストラリア移住白人のアボリジニ民族への偏見と侵略。違う大陸でも同様の歴史   が刻まれている。この実話を描く作品はその背景の悲しみが普遍的なテーマとして誰に  でも訴えかける説得力を持っている。そして、自然は大らかで余りに厳しい。
  4.6.(Sat) - 帰ってきた!刑事《でか》まつり - シネマ下北沢   奇蹟の興行再び、である。今回も濃い。自主制作で映倫すら無関係となって噴出する   際どい表現や描写、そして志は高くクオリティは問わず。掟の3箇条は変わらず主人公  が「女」刑事とすると変更したただこの点でこれほど業の深さに唸らせられる作品群が  揃うというのは凄い。やはり豪快である。
  5.1.(Thu) - 魔界転生 - シネプレックス10幕張   お気に入りの平山秀幸監督なので、「リメイク」のこの作品は正直不安半分であった   がそれは杞憂で実に魅力的な娯楽作品であり業の深い人間ドラマを堪能できて満足。   特に國村隼、長塚京三、柄本明、中村嘉葎雄といった味のある俳優陣の配役と対する  柳生十兵衛=佐藤浩市との殺陣をはじめとする熱演の迫力、そして麻生久美子の超然と  した美貌の妖しさと窪塚洋介の軽やかな佇まい。密度の高い106分間の至福である。
  6.8.(Sun) - THE MATRIX RELOADED - シネプレックス10幕張   脚本・監督のウォシャウスキー兄弟がいかに心の底からジャパニメーションを敬愛し   この独特の作品世界が構築されているのかがよく分かる第2作。ハイテンションな編集  の計算し尽くされた語り口で一気に締め括る力技も凄い。複雑化した人物相関も完結編  への期待を十分残しながら配分よく描かれていて誠実な仕事ぶりである。
  6.14.(Sat) - 恋愛寫眞 Collage of Our Life - シネプレックス10幕張   ここ数作のTVドラマ演出を含め、堤監督のカラーはほぼ確立して独特の面白さを醸し   出す細かなネタは例えばTRICKシリーズをじっくり楽しんできた人に向けたサービス。  だから「ココ、判らなくてもいいです」というお馴染みのスタイルで進みながら今回は  ぐっと切ない後半の語り口で本当に見事だった。広末涼子+松田龍平のリラックスした  自然な表情も柔らかくて体温を感じさせるリアルでピュアな佇まいが際立っている。   二度登場する蜜柑を食べるシーンが切なく深く深く印象に残る。沁みる。
  6.16.(Mon) - The Hours(めぐりあう時間たち) - シネマックス千葉   シリアスに自分を見つめる時代を隔て重なり合う女性たちの姿。人生の機微は理不尽   な現実や近しい人の喪失によって痛ましくも確認され、それでも歩んでいくことの意味  を静かに訴える深刻なテーマ性も自在に時間を往き来する見事な編集で一気に見せる。   豊穣な味わいのあるしっかりと手応えの残る作品に出会えた。
  6.28.(Sat) - ホテル・ハイビスカス - 千葉劇場   「ナビイの恋」以来ということで4年振りの中江監督。相変わらず天真爛漫な脚本は   ふと矢口史靖監督の脚本とも共通するイメージ、と思ったら西田尚美登場。今回舞台を  前作の粟国島から沖縄本島の北側半分:辺野古〜名護、東村あたりへと移し島の現実も  きっちり描きつつ突き抜けた陽のエネルギー満載で物語が展開。満足できた。 - CHARLIE'S ANGELS FULL THROTTLE -   判りやすい。前作を観ていなくても全く関係なく実に明快なアクションが展開。   映像・撮影技術の凝り方はつい「本家」マトリックスと比べてしまうがこちらは目的  が手段そのものだけに内へ内へと向かうサイバーパンクで閉塞的な世界観とは好対照。 - MOONLIGHT MILE - シネプレックス10幕張   死を悼み弔う行為は死者が近しい存在であるほどひどく混乱を招き時間をかけて自己  へと自然に語りかける作業になる。シルバーリング監督自身が経験した重大なきっかけ  がなければ生まれ得なかった脚本。色を添える1970年代ロックの渋い選曲も効果大。   この作品には出会っておいてよかった。改めて前作「シティ・オブ・エンジェル」の  テーマ性がリメイク元とは別に浮き彫りになってくる。
  7.5.(Sat) - ABOUT SCHMIDT - 新宿武蔵野館   退職のその後に始まった自分探しの旅の顛末。ジャック・ニコルソンがそのヨレ具合   も絶妙に余りに救いがたい人物をユーモラスに表現。インディペンデントな製作だって  これだけ誠実な良質のドラマを語れるのである。脚本も兼ねるアレクサンダー・ペイン  監督の今後に期待。生音の響きが心地よいスコアも好み。
  7.6.(Sun) - SF/ Short Films - テアトル池袋   中野裕之監督の劇場用作品としてはこれで4本目、緩い形態そのものが魅力の短い尺   で例のよってピースフルな映像群が展開。今回初監督の作品が登場のピエール瀧、芹澤  康之そして安藤政信の伸びやかな表現の個性が渾然一体となって成立している。   中野監督自身の作品も伸びやかでキュートでほのぼの。全面的にロケーション協力と  なった千葉県山武郡の風景も嬉しい。 - PEOPLE I KNOW(ニューヨーク 最後の日々) - 日比谷スカラ座   以前、同じくNYの舞台裏を描いた「訣別の街」同様、ここでのパチーノは自己矛盾に  果敢に挑む孤高の男の姿を映し出している。日本では前作として公開された順番になる  「インソムニア」での疲弊しきった“老いた精神と肉体”表現の共通点も確かに認めら  れるが、より静かに命の炎を燃焼させるこの地味な印象が個人的には好き。
  7.26.(Sat) - 踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ! -   キャスティングの見事なアンサンブルは相変わらず素晴らしくより高くなったはずの   ハードルもしっかりクリア。それにしてもこの脚本そして本広監督の揺るぎ無い信念の  演出は凄い。クライマックスの展開で「サトラレ」を経た後だと感じる既視感も納得。   ゲスト陣では登場時間が短くても鍵を握っている小西真奈美の存在感が光る。 - バトル・ロワイアルU【鎮魂歌】 - シネプレックス10幕張   深作欣二監督の遺作となったこの映像、解釈自体はそれほど困難でもない。圧倒的な  暴力による映像表現はまるでプライベート・ライアンから引用した島への上陸の映像、  あるいはシン・レッド・ラインを思わせる平原での銃撃戦。結果としてテロリズム容認  になる主張がリアルに響くとは思えず、無駄死にする子供たちの切なさも前作程は描き  きれなかった印象。これが通過点であるなら健太監督の今後への期待は大きい。
  8.9.(Sat) - TERMINATOR 3:RISE OF THE MACHINE -   このシリーズは初めて今回スクリーンで鑑賞した。生身のアクションで体当たりして   見せているのが実は機械という設定の逆転。シリアスなハイテンションのマトリックス  に比べるとユーモラスな動作や表情がうまく配分されているのも人物を実際に撮影する  ことで出来た要素である意味この手法が新鮮に思える。ILM大活躍は抜きにできないが。 - PIRATES of the CARIBBEAN THE CURSE OF THE BLACK PEARL - シネプレックス10幕張   ディズニーランドのアトラクションからかなり飛躍した想像が生み出した魅惑の設定  で何よりヨレ具合が絶妙なジョニー・デップと深い悲しみと人間の業に説得力を滲ませ  るジェフリー・ラッシュを筆頭に配役が素晴らしい。娯楽活劇としてのまずは1作目が  成功(という企画が既に進行中らしい)。
  8.10.(Sun) - さよなら、クロ - 渋谷シネ・アミューズ   松本深志高校に実在したクロのエピソードを脚色化した松岡錠司監督の確かな演出力   で、淡々と引き締まったドラマは感動を売り物にしていない潔い手法。特に井川比佐志  氏の味のある存在感と伊藤歩の澄んだ表情の力強さは印象的で受けの立場になった妻夫  木聡の力みの無い自然体も説得力があった。これはきちんと出会えてよかった作品。 - 白百合クラブ東京へ行く - 渋谷シネ・ラ・セット   ホテル・ハイビスカスを堪能したばかりで早くも中江監督の新作(今度はドキュメント)  がもう届くとは思いもしなかった。撮らずにはいられなかった衝動で全くの自主制作的  に完成したこの“ウチナー・ビスタ白百合クラブ”。ただそこにあるものを移しただけ  なのに心が揺さぶられ和み、力を与えられた。これも見逃さないでよかった。
  9.7.(Sun) - 沙羅双樹 - 渋谷シネマ・ソサエティ   河瀬監督自身の故郷・奈良の古都ならではのひっそりとした路地裏の佇まい、そして   バサラ祭りのエネルギッシュな現代へと暮らしの時系列は渾然とし神隠しを受け入れる  家族の姿に悲痛さはない。だからこそ切ない。そして俯瞰の景色に響くUAの歌声。 - 座頭市 - ユーカリが丘マイカルシネマズ   北野作品初となった余りにも有名な時代劇は「請け負い仕事」故の大胆さなのか比類   なき娯楽活劇として圧倒的なエネルギーを放出。殺陣を表現するのにここまで徹底的に  使える技術を総動員して描ききったからこそ流れる血、そして傷口がヒリヒリ傷む感覚  がリアルに伝わってくる。そして鈴木慶一氏のパーカッシヴなスコアがクール。
  9.7.(Sun) - THE LIFE OF DAVID GALE - 日比谷シャンテ・シネ2   法廷で下された死刑判決の是非を確信的に冤罪でありながらも受容する意思が何処に   由来するものだったのか。サスペンスとして緊張感溢れる構成と先読みする余地を与え  ず圧倒的に突き進む情報の洪水のような映像編集。面白かった。そして余りに純粋なる  思想を見事実行した“デヴィッド・ゲイルの生”に心を揺さぶられるラスト。 - SIMONE - シネプレックス10幕張   デビューを飾った「ガタカ」に次ぐアンドリュー・ニコル監督作で主演はおよそ過去   の作品からは想像できないコミカルな配役のアル・パチーノ。脚本担当のトゥルーマン  ショーも含め一貫して自己という迷宮を漂流する主人公の姿から辛辣で寓話的な風刺が  5分後の未来を冷静に俯瞰する世界観を形成している。
  9.29.(Mon) - 月の砂漠 - テアトル池袋   「名前のない森」同様枯れた色彩の印象が強い赤〜アンバー・セピアの温かみのある   背景が深く包み込む人間の業の強さゆえの苦悩の姿。都会での虚像と自我が乖離した先  に自然に欲した家族との結びつきを満身創痍でも獲得することに間に合った三上博史の  優しい眼差しに安堵。
  10.1.(Wed) - LARA CROFT TOMB RAIDER THE CRADLE OF LIFE - シネプレックス10幕張   前作は未鑑賞のため比較は出来ないがヤン・デ・ボン監督の拘りの躍動感溢れる映像   のダイナミズムはまさに当たり役のアンジェリーナ・ジョリーの魅力的なヒロイン像に  周到な練られた脚本と相乗効果をもたらし爽快な冒険譚を紡いだ。ほぼ人力アクション  の無類の楽しさ満載である。
  10.19.(Sun) - 陰陽師U - シネプレックス10幕張
  シリーズ続編が早くも登場。晴明=萬斎のキャラクターはすでに確立しているし脚本   により含みを持たせることが可能だったためこの神話的な要素もすんなり受け止められ  る。前作のような平安京の混乱する描写は少なく、よりファンタジー色が濃厚だし娯楽  アクション作品にそしてウェットな情感も少なめになった印象。
  11.15.(Sat) - IN THIS WORLD -   英国大使館が発行したビザ整理番号M1187511。この作品の当初予定していた仮の題名   である難民キャンプのパキスタン少年に与えられた映画出演の機会は現実の生活を本当  に違ったものに変えてしまった。不法移民ルートを実際に撮影しながら淡々と辿る手法  でドキュメント的側面としての迫力を獲得する目的は達成され問題提議できたとしても  虚構としての映像作品であるという乖離は解消しない。難しい課題だ。 - POLLOCK(ポロック 2人だけのアトリエ) - 日比谷シャンテ・シネ2   エド・ハリスが自ら演じ製作し監督した実在の人物の破滅的な行く末はしかし、穏や  かな日常に柔らかく取り囲まれふと考えたくなる余韻を残す。気難しい芸術家の生涯を  その特殊さではなくありふれた視点として描いたどちらかといえば徹底的に地味な演出  はユニークだしあえて挑戦する意義はあったと思う。まるごとエド・ハリス作品という  のは実はこれが初なんだと改めて気づいた。
  11.23.(Sun) - 昭和歌謡大全集 -   ブラックなギャグ全開の篠原哲夫監督版「博士の異常な愛情」である。でもまさか、  安藤くん、ほんとにこれでいいのかという強烈な印象を残す無様な姿に唖然とする。  配役は豪華だし少しずつはみ出した表現だけど、意外に全体的には下品ではない描写の  匙加減は逆に味気ないとも思える。もっと毒入り危険な作品でも良かった。 - 幸福の鐘 -   線路沿いの道を行く姿に始まり家路へ。折り返す道行きに出会う他人事への関わり方   にこそSABU監督の描きたかった視点があり寺島進氏が表現する寡黙な佇まいの雄弁さが  ある。淡々としたストーリーテリングだし、ごくありきたりな結論かもしれないけど、  清々しくも新鮮な後味の余韻が素敵だった。もう一度みたい。 - Seventh Anniversary - 渋谷シネ・アミューズ   公園の濃い緑の美しさやどこかメッセージ性を秘めたオレンジの月、そして暖色系の  照明の室内と行定監督らしい映像にちょっと岩井監督にも通じる思春期特有の甘美さを  漂わせる切ない脚本テイスト。人間の業の深さを苦々しく描く終盤も納得の決着。
  11.24.(Mon) - THE MATRIX REVOLUTIONS - シネプレックス10幕張   複雑に枝葉を伸ばし深化した作品世界を収束し結論として導かれたのは禅の境地にも   近い明快で簡潔な世界観。偶像的な救世主としての役割から脱却して個的な存在として  純化することで揺るぎなき深遠を獲得するに至ったネオの姿はジョン・レノンにも似て  普遍的なメッセージを放つ。納得できる着地点。
  12.13.(Sun) - ジョゼと虎と魚たち - 渋谷シネ・クイント   これまでのイメージと違い終始低いトーンで話す池脇千鶴の存在感に何より強く惹き   つけられるにしても対する妻夫木聡の佇まいの素晴らしさはそのごく普通の目線にある。  リアルで儚く脆い青年期特有の恋愛関係の危うさが結晶化する海の情景が美しかった。
  12.20.(Sat) - アイデン&ティティ - シネセゾン渋谷   監督:田口トモロヲ、原作:みうらじゅん、脚本:宮藤官九郎の青春ロック恋愛映画  製作がこうして実現して作品として面白くならないはずがない。主演バンドSPEEDWAYの  顔ぶれも個性的でリアルだし何しろ言葉はディランだから(説明になってない)。最高。  そして麻生久美子演じる「彼女」は実在する。
  12.21.(Sun) - 幸福の鐘 -   この作品上映を記念してクリスマス特別企画オールナイトが実現。至福の夜。   改めてSABU監督独自の脚本の語り口の面白さと寡黙にひたすら歩き続ける五十嵐役=   寺島進氏の佇まいの説得力、そして終劇間近の感情の揺れから始まる映像の緩急の変化  が観終えた余韻として実に豊かな味わいとなって残る。そのささやかさが深い作品。 - ナビイの恋 -   久しぶりに鑑賞。島の暮らしの中に在る音楽の重要性が際立つ。中江監督のひとつの  到達点としてキャスティングもバランスよくテーマ曲になっている「十九の春」の魅力  がそのまま脚本の芯になっている。「幸福の鐘」と比べ西田尚美さんの伸びやかで溌剌  とした若さがまぶしい。 - ワンダフルライフ - 渋谷シネ・アミューズ/特別 ALL NIGHT上映   この作品に出会えたことの喜び、至福。初めてスクリーンで味わうことが出来、一層  感激し深く深く沁みる余韻を心ゆくまで堪能できた。俳優としてデビュー間もないARATA  氏の柔らかい佇まいの伝える微妙なニュアンスも伊勢谷氏の伸びやかさも、内藤剛志氏、  谷啓氏、寺島進氏の並ぶ個性豊かな顔ぶれの中、奇跡のような配分で成立している。   改めて自分にとって大切に思える1本であることを確信し直せた。

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