2003年へ。 2005年へ。
-全鑑賞List-:日本映画/外国映画
      1. 1.(Thu)
    - Beyond Borders(すべては愛のために) - 日比谷スカラ座
  現在のアンジェリーナ・ジョリーUNHCR 親善大使としての活動のきっかけとなった 
 作品が訴えかける余りにも絶望的な難民の現状。このリアルな実情をきっちりと脚本
 に描くためマーティン・キャンベル監督は極限状態故の純粋でリスクも大き過ぎる愛
 の行く末を主軸に据えた。その演出の確かさはカンボジアでの手榴弾をめぐるシーン
 に確かに認められる。心を強く揺さぶられる作品に出会った。
  1.2.(Fri) - 1980 - テアトル新宿   意外にも初監督ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品は得意の近過去胸キュン三姉妹  物語。いきなり蛭子さん画でプラスチックスだし脚本のこの独特の間が映画になって  も実に丁寧にライヴ感溢れる生きた台詞として充満しているのが凄い。 このネタと同時に惜しげもない友情出演の豊富さもさすが。
  1.10.(Sat) - my life without me(死ぬまでにしたい10のこと) - 銀座シネパトス   主演サラ・ポーリーの柔らかい表情・声のトーン。この作品のささやかな在り様が  何より大事な部分であるし、イザベル・コヘット監督自身のペンによる脚本の見事さ  も日常のごくありきたりな風景の幸福をきっちりと丁寧に描写することに細心の神経  を使っているようだ。切なくも暖かさにみちたラストショットはじんわりと余韻が胸  に迫る。
  1.12.(Mon) - 半落ち - シネプレックス10幕張   原作小説をまだ読んでいないので比較は出来ないが重厚で複雑な脚本に現実味を与  えることのできるキャスティングの見事なアンサンブルが素晴らしかった。控え目で  深い悲しみも背負った主人公の姿を寺尾聰氏が的確に表現し、県警本部、検察、報道  そして事件に関与する多種多様な人物を持ち味豊かな俳優陣がしっかりと脇を固める。  このような日本の姿を真摯に投影したドラマ作品が指示されヒットして欲しい。
  1.13.(Tue) - Bruce ALMIGHTY - シネプレックス10幕張   優しく見守るモーガン・フリーマンさえつられてしまう程いかにもジム・キャリー  らしいハイテンションなコメディ作品だが旧知のトム・シャドヤック監督はリアルで  さりげない普段着の彼の姿をきっちりと投影してみせる。荒唐無稽で娯楽に徹してい  るかに見えてドラマとしての味わい深さも残す。爽快で分かり易くただ面白かった。
  1.18.(Sun) - MYSTIC RIVER -   生きることの業がリアルに描かれた重厚で切ないドラマを視線と表情の微かな変化  も逃さず誠実に撮ったクリント・イーストウッドの無骨なまでの正攻法演出。揃った  のが奇跡と言えるショーン・ペンティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンの持ち味  が見事はまった配役、更にマーシャ・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニーと近作の充実  の仕事ぶりが一層このアンサンブルの至高を際立たせる。見応え十分の力作である。 - THE RECRUIT - シネプレックス10幕張   ぎらついて鋭く人間臭い信念のアル・パチーノの他の何者でもない神がかった姿が  一転、逸脱して予想を裏切る生身のありふれた凡百の表情を晒す不条理。C.I.A.内部  の知られざる実像はサスペンス脚本としての説得力を崩さぬままシェイクスピア悲劇  「リチャード3世」の哀れなる姿に重なる末路。面白かった。
  2.1.(Sun) - RUNAWAY JURY(ニューオーリンズ・トライアル) -   法廷サスペンス小説として誰より著名なグリシャム作品。キューザックにホフマン、  ハックマンにレイチェル・ワイズと渋い存在感のある俳優が揃って銃規制問題という  硬派なテーマに期待と願望を込め緊張感漲る意欲作が完成。クリストファー・ヤング  のスコアまで渋い。ゲイリー・フレダー監督はあの『デンバーに死す時』がデビュー  作だったなんて。改めて知って深く納得。 - SEABISCUIT - シネプレックス10幕張   寡黙なクリス・クーパーの静かなる闘志を秘めた眼差しが印象深い。不屈の競走馬  シービスケットについて、恥ずかしながら全くの無知であった。まあ、大恐慌時代の  復興時期のアメリカ競馬界までさすがに勉強していなかったのも当然だけど。そして  やはり、ゴールを目指すシーンの胸に込み上げる昂揚感は、また味わいたくなる個人  的にただ好きなシーン。このドラマが必ずしも万人受けするはずはないだろう。
  2.14.(Sat) - この世の外へ クラブ進駐軍 - シネプレックス10幕張   萩原聖人のサックスを抱えた姿、スティックさばきも見事画になるオダギリジョー  そして松岡俊介+村上淳の含みのある表情にMITCH の孤高のトランペット。きっちり  渋い演奏も聴かせてくれる本格ジャズバンドの在り様が背景となる戦時の世相を現在  に投影する祈りを込めた阪本順治監督のポジティブなメッセージを静かに訴える。
  2.17.(Tue) - 伝説のワニ ジェイク - 渋谷ユーロスペース   オネエ言葉の小説家:松尾スズキは勿論、政治犯で投獄中の野田秀樹他、それぞれ  実にユニークに愉しげに架空の人物を演じるこの企画そのものが面白い。脚本の独特  のタッチは犬童監督にとって得意分野のファンタジックな味わいであるのに描かれる  人物の虚構が妙に生々しく迫力をもって訴えかける。個人的にもうとにかく大好きな  作品に出会えた。
  2.28.(Sat) - 恋する幼虫 - テアトル新宿   大人計画人脈であの「アトピー刑事」のインパクトそのままに展開する井口昇監督  のシュールな世界。内臓や傷口のような粘着性の部位への偏愛がこれだけ描かれても  不思議なほど嫌悪感はなく、どこかユーモラスな味わいなのもかなり微妙だが、でも  ダメな人ががんばって観る内容ではないし。松尾スズキ演じる彼氏が自然に倒錯して  いるっていう匙加減も凄い。それ以前に荒川良々主演って、「TingPong」以来だし。
  3.1.(Mon) - THE LAST SAMURAI - シネプレックス10幕張   武士道精神をテーマにあの「戦火の勇気」のエドワード・ズウィック監督が脚本を  手がけ演出するのだからこそ、勘違いされずにここまで理性的に描けたのだろう。   結果的に日本映画で特異な魅力のある俳優をハリウッドに紹介する役割が付加され  たのは歓迎したいし、新しい表現手段で邦画の在り様を探求されていく礎になる作品  として映画史に刻まれ朽ちずに残っていくことを期待したい。
  3.4.(Thu) - ゼブラーマン - ユーカリが丘マイカルシネマズ   宮藤官九郎脚本がどこまで意識的に物語構造に盛り込んだか不明だが、間違いなく  これは「マトリックス」である。ネオにモーフィアス、トリニティばかりかスミスも  登場(こちらは「義男」」という名)。となると大杉漣=アーキテクトだしオラクル  は渡部篤郎か。面白かったんで、勝手にこんな想像でつい遊んでしまう。   となるとやはり次回作は「ゼブラーマン・リローデッド」ということで。
  3.7.(Sun) - ONCE UPON A TIME IN MEXICO(レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード) -
シネプレックス10幕張  
  ロバート・ロドリゲス監督の作品鑑賞はこれが初めて。灼熱の都市に極彩色の暴力  満載の濃い作品。アントニオ・バンデラス+ジョニー・デップ、ウィレム・デフォー  にミッキー・ロークと単なるハイテンションとは一味違う匂いたつような男臭さ充満  で展開するガン・アクションはやはり往年のウェスタンにかなり近いのでは。
  3.13.(Sat) - クイール -   「刑務所の中」に続き崔洋一監督の作品を鑑賞。ユーモア描写も手馴れた表現だが  今回はつい期待が上回りすぎてしまった。これが原作である本と既にビデオ化されて  いるモノクロ映像作品に比べどうしても説得力が弱く思えてしまった。最も感動した  エピソードが脚本構成上削除されてしまっていたのも残念。でも、配役は見事。 - 花とアリス - シネプレックス10幕張   「LoveLetter」の中から純度の高い思い込み期間=中学時代の嵐のごとき何気ない  日常を抽出したかのような淡色の光景。ハレーションがその時期独特の輪郭の曖昧さ  を言い訳のように物語るかのようだ。脚本のベースに「泣いた赤鬼」というのがまた  何ともユニーク。岩井俊二監督は力作「リリイ・シュシュのすべて」を経てなお、更  に新たな表現手法の確信を手に入れたようである。
  4.1.(Thu) - MASTER AND COMMANDER THE FAR SIDE OF THE WORLD -   ピータ・ウィアー監督が正面からダイナミックに描く帆船時代の大英帝国。主演の  ラッセル・クロウの豪胆な存在感を際立たせているポール・ベタニーの的確さが巧い。  スケール感のある本格的スペクタクル映像がベースであるのに、実に人物描写が印象  深くきめ細かいため、その緩急自在な演出力による絶妙な構成が凄い。面白かった。 - Something's Gotta Give(恋愛適齢期) -   最近本当に大好きなのでただもうジャック・ニコルソン出演というだけで心待ちに  していた。自らの「老い」を正面から笑い飛ばしてしまおうとハイテンションで突っ  走る彼に全くひけを取らないダイアン・キートンて凄い。その上キュートだし。脚本  の虚実入り混じった不思議な説得力はナンシー・メイヤーズ監督の懐の深い穏やかな  視点そのものなのだろう。   直接の関連はないが「デブラ・ウィンガーを探して」を思い出す。 - ホテルビーナス - シネプレックス10幕張   チョナン・カン主演、全編ハングル&日本語字幕というかなり実験的なスタイルを  結構正攻法で演出しようと格闘していたタカハタ秀太監督の志がきっちり評価されて  欲しいと思う。ドラマ描写そのものより、音楽を含めた表現スタイル自体への神経の  使い方は面白かったがハードルを高く設定しすぎたように思えてそこだけが残念。
  4.3.(Sat) - きょうのできごと a day on the planet - シネプレックス10幕張   ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」みたいだ。出来事は、こんな  ささやかな日常に綴れ織られている。言葉のまろやかさが余韻として残る。期待して  公開を待ち望んでいた作品だがこの何気なさに出会えてよかった。
  4.15.(Thu) - GOOD BYE LENIN! - 東ドイツ製のピクルスがなぜそれほどに大事なのか?心臓発作で伏した母への息子  の思いは単純に説明がつく類いのものではなく根底から変わろうとする世界へのごく  ささやかな無意識の抵抗も反映している。レーニン像が中空を行く夕景の中、母は既  に気づいた嬉しい嘘に沈黙を守りかつて夢を馳せた宇宙空間に散ったのだろう。更に  そのフィクションであるニュース映像を頼まれた以上にこだわり抜いて製作する映画  マニアな友のキャラクターも最高。 - IN THE CUT - シネプレックス10幕張   ジェーン・カンピオン監督は「ピアノ・レッスン」以来であった。ミステリアスな  脚本よりかなり匂いたつ濃密な体液の実感。知的に言語への没頭も理性下に制御でき  ていたはずの自我が偶然の出来事を引き金に性的な本能に予測外に開花していく自己  との間で揺れ動くメグ・ライアンは、その合わせ鏡である分身=腹違いの妹を演じる  ジェニファー・ジェイソン・リーと共鳴しながらも、どちらの描写にも官能性が希薄  なのが不思議。でもそこに説得力があって深く納得できた。導入と結びで流れてくる  「ケ・セラ・セラ」が妙に耳に残る。
  4.24.(Sat) - ディボース・ショウ(INTOLERABLE CRUELTY) - シネプレックス10幕張   コーエン兄弟が仕掛けるこの台詞劇は毒を含みながら実にテンポよくどんでん返し  の妙味を堪能させてくれる職人芸。日常の些細な出来事へのごくありきたりな結論を  嘘だらけの虚勢の中からどうやって抽出するか、その離れ業的脚本のアイデアが見事。  「バーバー」から一転して陽気にまくしたてるビリー・ボブ・ソーントンのキャラが  際立って濃く見えない不思議さ。冒頭からサイモン&ガーファンクルなのも個人的に  お気に入り。
  4.25.(Thu) - 恋人はスナイパー劇場版 -   TV放映版は知らずに先に完結編でもあるこの作品を鑑賞。さすがは君塚良一脚本と  思える娯楽性。体を張った主演2人のアクションもドラマ部分のエモーションも十分  見応えがあったのに、対する犯人のキャラクター造形に余り丁寧な描写が無く平板に  思えてしまった点で配役は面白いはずなのに少しだけ残念。 - CASSHERN - シネプレックス10幕張   新しい表現を求めて挑んだ紀里谷監督の映像と思想の世界観は過剰に濃密な極彩色  の幻影。テーマ自体をオリジナルのキャラクターから独自に咀嚼・解釈して練り上げ  更に説明的な台詞をかなり大胆に排除して選んだ言葉で構成された脚本であるはずな  のに伝わりにくいのは映像の過剰さによるのかもしれない。だからこそ意欲作として  大きな意味がある。
  5.15.(Sat) - BIG FISH - シネプレックス10幕張   『猿の惑星』以来バートン作品は久々。かつてエドワードは不器用なハサミの手を  持ち社会に背を向ける以外なかったが、今際を間近にして人生を振り返るエドワード  に家族が居る。バートン監督の目に移る光景は全くと言っていいほど変わっていない  が、エドワードは成長を遂げたのだ。   終わりの無い結末を味わい暖かい気持ちが余韻に残る。
  5.16.(Sun) - Lost In Translation - シネプレックス10幕張   スカーレット・ヨハンソンの視線の焦点。ホテルの窓の外は不思議な慣習の東洋人   の街、東京。孤独をより強く感じる稀有の都会の喧騒は自らが幾度も滞在した経験を  もつソフィア・コッポラ監督の脚本に見事に言い尽くされていた。はっぴぃえんどの  「風をあつめて」が穏やかに響く余韻が心地よい。
  5.23.(Sun) - 死に花 -   この人物描写の躍動感。「伝説のワニ・ジェイク」でも存分に発揮されていた陰影  の深いキャラクターが原作小説に独自の膨らみを付加して老いたその先にある輝きを  魅力的に映し出す。犬童一心監督の脚本が山崎努を筆頭に茶目っ気たっぷり熱っぽく  息吹を与えられてエネルギーを溢れさせている。面白かった。 - GIRL WITH A PEARL EARLING(真珠の耳飾りの少女) - シネプレックス10幕張   フェルメールの絵画に秘められた官能がフィルムの質感にありありと蘇る至福。   スカーレット・ヨハンソンの繊細で寡黙な存在感はほぼ全編一切台詞らしい言葉も  ないまま十分に訴えかけてくる。光の艶やかさは陰によって浮き立つのだという事実  が内奥に狂おしいばかりの情熱を隠し少女の内面を合わせ鏡に自らの表現を得た希代  の画家の姿として語られる。コリン・ファースの抑制の効いた説得力。
  6.1.(Tue) - THE LADYKILLERS -   コーエン兄弟の脚本によるコメディ作品が続いて登場、しかもトム・ハンクス主演  で。余りにも見事な伏線の小技にスコアはお馴染みカーター・バーウェル+Tボーン  ・バーネット選りすぐりのゴスペル。これがメジャーだろうがインディペンデントで  あろうが無関係でアクの強い作家性そのものである。思えばSABU監督作品と意外にも  スタンスはまるで一緒なのかもしれない。だからヨーロッパでも評価されるのだろう。 - キューティーハニー - シネプレックス10幕張   佐藤江梨子+村上淳+市川実日子のちとユルい感じのテンションがなんだか絶妙の  ハマり具合。篠井英介=シスター・ジルっていう説得力も凄いし一瞬登場の永井豪氏  も含め配役は楽しかった。ロケーションやセットは逆にもっと極端にとことんチープ  な方が盛り上がったかもしれない。庵野監督らしい構図も控えめだったし。
  6.6.(Sun) - 21 Grams - シネプレックス10幕張   魂の質量を示すその大きさに意味があるのか。命題は深く静かに問いかけるが人生  に正解など存在しない。パズルのピースの如く時間軸が錯綜する独特の語り口の質感  のリアル。「チョコレート」同様に社会階級を異にする人物像が照射する人間模様の  妙と死者の遺した絆が沁みる。
  6.14.(Mon) - Les Invasions barbares(みなさん、さようなら) - シネスイッチ銀座   この普遍的な命題が偶然にもティム・バートン作品と一致するなんて。偏屈だが味  のある性格が息子と相容れず原題の暗喩にも関連してくる癌に冒された身体を抱える  父。その虚勢こそが魅力であったのを周囲の知人達が証明する。それにしても人物の  それぞれの描写がさりげない風景の美しさも含め実に味わい深くて素敵だった。 - 下妻物語 -   嶽本野ばら氏の原作はまだ読んでいないがこのやけにハイテンションな濃厚映像は  やはり中島哲也監督らしい暑苦しさである。見るからにオイシイ配役は荒川良々だと  思いきや樹木希林、いや阿部サダヲ?この賑やかさは石井克人監督に匹敵。   当然のように登場するSTUDIO4℃の脱力エピソード部分も凄い。 - 海猿 - シネプレックス10幕張   すでに原作を読んで知っているだけに展開上の部分は了解していたが正攻法で丁寧  に描かれていて思わず力が入るクライマックスが素晴らしかったし、テンポよく前半  訓練部分を紹介する手法もさすがは「踊る」スタッフといった職人芸。
  6.26.(Sat) - ラブドガン - テアトル新宿   なんといっても主演:永瀬正敏の佇まいが鮮烈。彼のスタンスはTV版・濱マイクを  経て新たな境地に達したんじゃないだろうか。脚本・監督:渡辺謙作の描く世界観が  刺激に溢れ映像話法もかなり個性的な中、共演陣・岸部一徳、新井浩文、宮崎あおい  のハードボイルドなアンサンブルの妙はむしろ王道。
  6.27.(Sun) - SILMIDO/実尾島(シルミド) -   壮絶なドラマである。隠蔽された極めて政治的な事件が分断された朝鮮半島の歴史  そのものである。わずか30年前なのかはるか30年前なのか。息絶えた兵士達の未来に  言葉は無い。 - 天国の本屋〜恋火 - シネプレックス10幕張   『昭和歌謡大全集』『深呼吸の必要』にひき続き篠原哲雄監督の精力的な作品発表  となった本作、でも情感はきちんと丁寧に描写されているし竹内結子がラスト近くで  見せる表情の雄弁さはここ数作で着実にキャリアを重ねた充実振りだしそれは共演の  新井浩文にも言える。余韻が胸に染む温かい気持ちに包まれたこの味わいは好き。
  7.1.(Thu) -世界の中心で、愛をさけぶ - シネプレックス10幕張   喉仏の骨、病院のひっそりとした廊下、波打ち際の水面のきらめき、ヘッドフォン  の音に純化されていく心、死者との対話。自身の作品ばかりか遡って岩井監督の映像  まで思い出させる様々な光景はやはり篠田昇氏のカメラだからなのだろうか。切なく  温かく痛々しさはそのままに過去を包み込んで暮らす現在を見つめる眼差しはこんな  にも晴れやかだ。
  8.14.(Sat) - last life in the universe(地球で最後のふたり) - 渋谷シネアミューズ   タイランドに流れる悠久の時間感覚と兄・妹の死を目撃して黄泉の光景をはからず  も知ってしまった男女の共有するある種の倦怠と厭世観、その終末的な孤独から醸成  される情感が不思議な恋愛として結実する。うっすらと蒼い空間の映像が美しく印象  深く惹きこまれた。
  8.15.(Sun) - THUNDERBIRD -   何しろあの島である。プールの下から1号機、ヤシの木が倒れて2号機っていう基地  のアクションが実写映画でもなんだか人形劇と同じ味わいだったのが嬉しい。監督は  実はオリジナルシリーズは知らなかったというのに、そのツボを外さないのは見事。  キャラとしてはやはりというかペネロープ&パーカーがよかった。 - SPIDER-MAN 2 - シネプレックス10幕張   原作の熱心なファンではないが、この敵役ドック・オクにアルフレッド・モリーナ  という配役が素晴らしかった。前作もウィレム・デフォーならではの複雑な人物造型  が刺激的だったが続編として期待を軽く凌駕しているキャラにストーリーテリングの  的確さも加わりVFXが全く気にならないドラマとしてのリアリティを堪能できた。
  8.22.(Sun) - 誰も知らない - 有楽町シネカノン   すでにこの上映がカンヌでの受賞後の凱旋公開であるため連日満席の大盛況。   是枝監督らしい脚本の視点、東京での夜の光景のひっそりとした空気感。堂々たる  主演を務めた柳楽優弥くんの深く澄んだ瞳も大好きな作品「ワンダフルライフ」との  共通項が見え隠れして嬉しかった。切なくいとおしいラストに響く「宝石」の言葉に  励まされ背中を押された気がした。出会えてよかった。
  8.28.(Sat) -父と暮せば - 岩波ホール   舞台上演用戯曲を前提として書かれた原作を誠実に正面から格闘してフィルム映像  化した黒木監督の真摯なメッセージ。この作品をまだ夏を感じる時期に観る事が出来、  嬉しかった。最後に視線を上げてカメラが覗く天井はステージとは別物の映画でこそ  の表現。それにしても3人の俳優のニュアンスに富んで個性溢れる存在感が凄い。
  9.1.(Sun) - 誰も知らない -   なんとか時間に都合がつき1000円なので、またあの子たちに会いに来てしまった。  ここで描かれている状況は悲劇なのだという現実が主題なのではなく、真実はもしか  したら全く違った顔を覗かせていたのかもしれないという日常の豊かさ、家族の絆を  どこまでも信じられる強さについて考える試みがそこにあったのではなかろうか。   母が戻らぬまま迎えた妹の誕生日、兄が誓った約束はそれは何か儀式のように叶っ  たのだ。 - FAHRENHEIT 9/11(華氏911) - シネプレックス10幕張   現在の政権が誕生し、9/11を迎える必然。国民が選択した見えにくい現実の出来事  に素直に疑問を感じるマイケル・ムーア監督の作家性が明確に示されるフィルム。   かなり政治色の濃いこのドキュメンタリー作品がいとも軽く娯楽として成立できて  いるのは監督が自然に身に付けたユーモアの感覚があってこそであろう。
  9.5.(Sun) - 茶の味 - シネマライズ渋谷   石井克人監督久々の長編作品。極上の和のテイストが美しく、まるで新しい表現の  ようでいて全くこの監督にしか創造出来ない世界。胸に染むおじいの遺したものにも  確かな温度が感じられて、ハジメくんの思春期全開リビドーでさえ何か爽快な味わい。  堂々たる日本映画の大傑作かもしれない。
  9.12.(Sun) - 珈琲時光 - 新宿テアトルタイムズスクエア   淡々と、ゆったりと過ぎる時間の心地よさ。主人公を包み込んでくれている空間の  人の温かさが与えてくれる安心感。さざ波のように少しだけ気ぜわしさがやってくる  けど、大丈夫。その思いが主題歌『一思案』の言葉に覗えるのではないだろうか。
  9.26.(Sun) - TAKING LIVES -   猟奇殺人サスペンスというジャンルでの脚本としては物語自体目新しさは既にない  のだが、カナダ・モントリオールというロケーションで暗中模索するプロファイラー  としてのアンジェリーナの陰影の濃いキャラクター造型は興味深かった。不気味さを  内包する悲しくも危険な人物像を微妙な表情で見せるイーサン・ホークの挑戦も同様  の意味で支持。それでも比べてしまうと『レッド・ドラゴン』のが上回ってるけど。 - SURVIVE STYLE 5+ -   妙なセットの配色でキテレツなキャラクター設定、フレームには物語進行に無関係  だけどやたらに印象に残る無駄な情報量が一杯。配役の面白さは余りに見事すぎだが  中でもやはり出色はヴィニー・ジョーンズ+荒川良々コンビ。 - スウィングガールズ - シネプレックス10幕張   矢口監督による『ウォーターボーイズ』の姉妹版作品であるこの路線、今回の舞台  は山形県置賜地方の雄大なロケーションでビッグバンド・ジャズというマッチングの  妙がまず面白い。ギャグそのものはいつも通りだし脚本も実にシンプルだけどそれが  きっちり新鮮味を保っているから娯楽作として骨格がしっかりしているのだろう。
  10.10.(Sun) - Monster -   実際に起こったこの痛ましい事件の結末が映画の公開にまでリンクしている因縁。  アメリカ銃社会の病巣をリアルに再現する形で「ボーイズ・ドント・クライ」に似た  後味の悪さが残る結末だがここでシャーリーズ・セロンが体現した女性の生き様には  諦念ではない達観があったようでただ切なく悲惨、ではない気がする。  - DEEP BLUE - シネプレックス10幕張   何しろ撮影に何年もかけ徹底して膨大な映像を集積しただけに息を呑む迫力の海洋  の生物群のありのままの姿がまるでストーリーを持っているかのように映し出されて  いる。そのドラマを演出するのはベルリンフィル、これが映画での初仕事。これだけ  で贅沢だ。
  10.17.(Sun) - Radio(僕はラジオ) - 日比谷シャンテ・シネ   実話であるから、凝った演出上の工夫なんて虚飾になってしまうだけだ。故に演者  はただ人物のあるがままの心情に近づき表現を開放することに専念すれば自ずと物語  は成立しそうである、が、実際にはとても難しい。エド・ハリスの深い慈愛の眼差し  と満面の笑み、キューバ・グッディングJr. の屈託の無い伸びやかな表情の中にふと  もらす逡巡が本当に味わい深く見えるのはきっとそのせいだ。 - デビルマン - シネプレックス10幕張   かなり頑張って丁寧にビジュアルを構築しても、原作マンガの持つ神話性や強烈な  批評性を十分に実写の映像作品として成立させるのは至難の業なんであろう。21世紀  の幕開けに世界情勢が原作の世界観にシンクロするかのようなタイミングでこの難題  をクリアできたりしないのは当たり前。だけどもう少し若い主演俳優陣の演出部分は  説得力とテンションを込めて欲しかった。
  11.1.(Mon) - SECRET WINDOW -   くたくたで綻びさえあるバスローブを無造作に羽織ったジョニー・デップの作家姿  はどこか「ワンダーボーイズ」のマイケル・ダグラスにも通じて妙に説得力がある。  それにしても、スティーブン・キング原作の心理劇をなんだかちょっとお茶目な表情  で演じてしまうのも結構大胆。種明かしが始まってから一気にねっとりとしたダーク  で不気味なトーンに様変わりする自ら脚本も兼ねるデヴィッド・コープ監督の匙加減  の的確さも惹きこまれた。 - いま、会いにゆきます - シネプレックス10幕張   竹内結子主演で、なんだか同じような設定だなと感じる作品がだいぶ続いている気  がする。でもこの原作小説が持っていた物語世界は、ただファンタジックなだけでは  ない喩えれば「ターン」に出会ったときのような軽やかな展開の裏切りの心地よさに  出会えた。それにしても、主演の彼女の存在感は本当に魅力的で惹きこまれた。
  11.7.(Sun) - Diarios de motocicleta(モーターサイクル・ダイアリーズ) -   チェ・ゲバラの人物については事前にほぼ全く知識が無かった。この作品での彼の  屈託の無い笑顔、その伸びやかな表情の奥に南アメリカの過酷な現状がフィルターも  なしに次々と示されていく。半世紀前に実在の彼が辿った時も撮影されたフィルムに  もただ単に自分探しの旅などでは終われない重要な財産が言葉に出来ない確実な手応  えとしてそこにある気がした。 - OLD BOY -   カンヌで既に高い評価を得、パク・チャヌク監督のこの新しい作品の公開をずっと  待っていた。小気味よいテンポ+独特のユーモアを含む細部まで凝りまくった圧倒的  ハイテンション映像の至福。更にキャラクターの魅力的造形を十二分に体現する配役  の相乗効果の素晴らしさ、日本のマンガを原作に大胆な変更を加えて到達した脚本の  究極的な完成度。出会えてよかった、特にカン・ヘジョンに。 - 隠し剣 鬼の爪 -   永瀬正敏氏は本当に魅力的で味のある映画俳優である。改めてこの主演作品を観て  思った。山田洋次監督が「たそがれ清兵衛」に次ぐ藤沢周平原作となる本格時代劇を  こんな形で丁寧なタッチで描いた拘り。これが代表作である必要はない。佳作であり  永く時代に古びずに残っていくであろう作品になってほしい。 - 笑の大学 - シネプレックス10幕張   既に舞台で高い評価を得た脚本である。何しろ、喜劇を愛する三谷氏の情熱の深さ  が台詞に溢れている。それにしても、なかなか意外な組合せでこの二人芝居が実現し  想像を遥かに凌ぐ化学反応が起こって映像に昇華しているこの作品は幸福である。
  12.1.(Wed) - THE POLAR EXPRESS -   何と言っても列車から飛び出して真夜中の冬空を自由に舞う乗車チケットである。  これぞロバート・ゼメキス監督の刻印ではないかと思ってしまう。まるで自身の作品  「フォレスト・ガンプ」の鳥の羽根の再現であるのだが、そこが嬉しい。加えて自在  にキャラクターを行き来するトム・ハンクス。これがCG処理された作品であることに  途中から全く意識が行かなくなったほどトム・ハンクスそのものの人物の動作。 - いま、会いにゆきます - シネプレックス10幕張   1000円デーを利用してまたこの家族に会いに出かけてきてしまった。そういえば、  この作品で最初に画面に登場するのが松尾スズキ氏だった。エンドロールでの絵本の  中身披露がやはり嬉しい。
  12.5.(Sun) - 海猫 -   森田芳光監督は「模倣犯」以来だ。伊東美咲の印象的な目がただ悲劇的なだけでは  ない不思議な表情を見せる。「失楽園」で描いた成熟した性愛の関係より更に不器用  な生き様であるのにその行動原理がむしろ肯定的な言及になっているのが興味深い。 - 血と骨 - シネプレックス10幕張   ビートたけし氏の演技にこれまで覗えた照れは一切なかった。真剣勝負。それゆえ  対する鈴木京香も新井浩文も松重豊も田畑智子も素晴らしく輝いている。時代が変転  する昭和の年代記、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ジャパンを朝鮮からの移民  してきた家族として描き出したようである。エネルギッシュ。
  12.19.(Sun) - 僕の彼女を紹介します WINDSTRUCK -   やはり『猟奇的な彼女』を想起せずにはいられぬ内容。脚本も自身が手がけている  クァク・ジェヨン監督、そのちょっといたずらっぽい個性が様々な細かい要素として  映像の中に仕込まれていて楽しいが最後のオチは禁じ手じゃないかとも思う。 - MAN ON FIRE(マイ・ボディガード) - シネプレックス10幕張   「ザ・ハリケーン」を経てからのデンゼル・ワシントンは漂わせる存在感の凄みが  人間臭いキャラクターに相俟って鬼気迫る。原作小説から大きく設定上の改変もあっ  たようだが、さすがブライアン・ヘルゲランドの脚本は説得力十分で素晴らしかった。  実際の登場シーンの時間で考えればかなり短いはずだがダコタ・ファニングの表情の  鮮やかな明るさが印象深く残った
  12.24.(Fri) - 恋の門 - シネ・リーブル池袋   松尾スズキ氏渾身の長編作品。カメオ出演を含む人脈の凄さに言葉の面白さ、意外  に真っ向勝負のテーマ性、その混沌はタイプが違っても舞台での表現と同根である。  ただこの異常なほどぎっしりの情報量は映画作品であればこそ。後半唐突に出現する  忌野清志郎+サンボマスターの魂の共演にただもう感激。
  12.26.(Sun) - ヴィタール - 新宿K's cinema   スクリーンで塚本晋也監督の作品を観るのは今回が初めて。過去、混沌の中の狂気  と都市の野生を過激な描写で表現してきた監督の印象から随分異なるひそやかで静謐  な荘厳なイメージ。交通事故により記憶を失った医大生の潜在化の無意識が垣間見る  魂の視座。肉体そのものが全身であってもその人の存在の中のひとつの要素に過ぎぬ  というごく控え目な言及に地道な検証により得た深い洞察が覗える。

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