notes of cinema 03.
外科室  
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冒頭にクライマックスを迎え、ゆったりと穏やかな淡い世界が綴られる、
贅沢で至福の味わいの50分間。
通常の映画興行形態からすれば規格外である。
この作品が映像の中に刻み込んだ和風な侘び寂びの美しさは、もっと広く評価されていいはずだ。

notes 01.主演:吉永小百合   :パンフレット掲載原稿より
これは、究極の恋愛小説である
雑誌の紹介記事で泉鏡花の『外科室』を知ったのは、数年前のことです。
余分なものを何もかも削ぎ落とした、純粋な愛が、そこにはありました。
壮絶に生きた貴船夫人を演じてみたいと思いました。
しかし、二つの場面だけで構成された短篇を映像化することは無理だと思いましたし、
鏡花の妖しい美の世界は、私には表現できないかも知れないと、諦めました。
昨年のはじめ、玉三郎さんから、この『外科室』を映画化したいというお話を伺いました。
玉三郎さんなら、鏡花の世界を映像化することが出来る、貴船夫人を御自身で演じられたら、
きっと素晴らしいものになる−そう思いました。
「女形は舞台だけ、映画は女優さんが演じるものですよ」
玉三郎さんのお言葉に、私は揺れました。
いつも究極の美の表現者として憧れていた方です。
その方の前できちんと演技することが出来るのでしょうか……。
玉三郎さんの心になって演じてみよう
心に決めました。
姿・形は違うけれど、玉三郎さんの鏡花に対する深い思い入れを、私が代わって表現してみたいと思いました。
そして、一つ一つの台詞の言い廻しを教えていただきました。
声のトーンも、メークアップもかえました。
真っ白い気持で、貴船夫人の中に入って行ったのです。
「古い屋敷の暗い廊下をイメージして下さい。」
そういう表現で演技指導を受けました。
新鮮で、すてきな映画づくりでした。
『外科室』は、私にとって大切な作品になりました。

notes 02.監督:坂東玉三郎
『演出のことば』   :『外科室』の映画化は、長年、私が抱いていた夢でした。
私はいく度か泉鏡花の作品を演じているうちに、その美とロマティシズムの魅力を、映像の形で表現してみたいと思うようになりました。
当初は16ミリで20分程度の習作を、と考えていましたが、プロデューサーを始め、
吉永さん、中井さん、加藤さん、そして多くのスタッフ、キャストとの出会いに支えられて、
このような形で皆様にご覧いただけることになりました。
望外の喜びであることは言うまでもありません。



吉永小百合

加藤 雅也
鰐淵 晴子
広田玲央名
毬谷 友子
南 美江
伊井義太朗
芳村伊四郎
中村浩太郎
中村勘九郎

中井 貴一
坂東玉三郎 監督
製作:小田 久栄門 奥山和由 荒戸源太郎
原作:泉 鏡花
企画:秋山道男 伊藤寿
脚本:橋本裕志 吉村元希 坂東玉三郎
挿入曲「しぐれの曲」「夜の夏草」
作曲・演奏:川瀬白秋 作詞:宇野信夫 唄:坂東玉三郎
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 作品19 
ヨーヨー・マ(チェロ)エマニュエル・アックス(ピアノ)<ソニーレコード>