notes of cinema 09.
トキワ荘の青春  
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『この映画は
今から40年ほど前に
「トキワ荘」というアパートに
暮らしていた、若い漫画家たちの
青春を、史実に基づいて描いた
フィクションです』
パンフレットより

「東京兄妹」で、自分は初めてスクリーンでの市川準作品に出会った。
あまり饒舌には語られない、行間の味わいに浸ることの多いシーンで綴られた映像は痛々しく、切なかった。
以前から、藤子不二雄氏の「まんが道」を読んでいたこともあり、
その中で自分がイメージしていた雑然とした「トキワ荘」の世界とは少し雰囲気の違う、
またしても痛々しく、切ない作品であった。
notes 01.監督:市川 準   アパートの映画を撮りたかった:パンフレットより
そこの前を通る度に、なにか懐かしさでほっとしてしまうような
古い木造モルタルアパートが近所にあったんですが、
2年前のある日、出張から帰ると一瞬にして取り壊されて消えていた。
その瞬間、そこに暮らしていた慎ましい人々も
一緒に消えてしまったようなとても寂しい気がしたんですね。
アパートの映画を撮りたい、と思ったのはその時でした。
そして「トキワ荘」を僕なりに再発見したわけです。
そして調べれば調べるほど僕向きの題材だと思えてきました。
あまりにも自分の好きな世界だったんで気合いが入りすぎたくらいですが、
そういう気合いが、色んなツキをよんで、実現した映画のような気がしています。
美術とセットには最も時間と労力をかけました。
漫画家の先生方の談話やアルバムを手がかりに、
柱、廊下、机、調度類等、隅々まで本当に丁寧に再現してもらえました。
この美術の力は大きいと思います。古い東京の空間のイメージをとり入れたくて、
木村伊兵衛さんと田沼武能さんの写真を随所に引用させていただきました。
それとちょっと冒険でしたが、
全編に古い歌謡曲を流し、
日本の50年代のラジオデイズの感覚を蘇らせたいと思いました。

役者さんたちについては、映画がはじめてという人が多くて、
みんなそれぞれプレッシャーというか興奮をもって現場に来たと思うのだけど、
そういう一人一人の熱気や想いがフィルムに焼き込まれているような気がします。
そこに寺田役の本木さんの静謐といってもいい抑えた演技が置かれているところが、
この映画らしさになっていると思います。



-スタッフ-
脚本:市川準・鈴木秀幸・森川幸治
音楽:清水一登・れいち
美術:間野重雄
原案協力
「トキワ荘の時代」梶井 純 著<筑摩書房 刊>
「まんが道」藤子不二雄A 著<中央公論社 刊>
「トキワ荘青春日記」藤子不二雄A 著<光文社 刊>
「まんがのカンズメ」丸山 昭 著<ほるぶ出版 刊>
「トキワ荘の青春物語」手塚治虫他 著<蝸牛社 刊>
「トキワ荘の青春」石ノ森章太郎 著<講談社 刊>

監督:市川 準
-CAST-
寺田ヒロオ:本木雅弘
安孫子素雄:鈴木卓璽
藤本弘:阿部サダヲ
石森章太郎:さとうこうじ
赤塚不二夫:大森嘉之
森安直哉:古田新太
鈴木伸一:生瀬勝久
つのだじろう:翁華栄
水野英子:松梨智子
手塚治虫:北村想
石森の姉:安部聡子
寺田の兄:時任三郎(友情出演)
藤本の母:桃井かおり(友情出演)