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「痛ーよ、ベック」 船長室に主の不満そうな声が響く。 ベッドに座るシャンクスは、無くしてしまった腕の手当てを受けていた。 怪我からくる熱のせいか、軽口を叩きながらもその瞳はどこか虚ろだ。 手当てをしているのは副船長。 彼は険しい顔付きで未だ血の止まらない腕に包帯を巻いていく。 シャンクスは必要以上にきつく巻かれていく包帯に眉を寄せた。 「当たり前だ。こんな状態で痛くねぇ方がおかしいだろ」 副船長は表情を変えることなく、淡々と作業を進める。 「何だよ。もっと優しくしろよ」 「いいからちょっと黙ってろ」 全く取り付く島もない。 シャンクスは仕方なく口を噤み、目の前の男を見つめた。 いつも変わることのないポーカーフェイス。 けれど、もう長い付き合いだ。僅かな変化も見逃さない。 「随分とご機嫌斜めだな。怒ってるか?」 「…………」 沈黙――― 問い掛けに答える気はないようだ。 それどころか彼は目を合わせようともしなかった。 ただ白い包帯に滲む血の色を険のある目付きで見つめている。 不器用な男だと、シャンクスは苦笑した。 「悪かったよ、心配かけて」 包帯を巻き終え、漸く顔を上げた副船長に向かって呟いた。 真っ直ぐに視線を交わす。 「――あんたはいつも無茶しすぎる」 硬い声。思っていたより怒りは深いようだった。 「あの場合しょうがないだろ。ルフィは俺の大切な友達だ。放ってはおけないだろ?」 そんなことはわかっている。 あの場でルフィを見捨てるような奴なら、ついていこうとは思わなかった。 こんな所で死ぬような男ではないことも良く知っている。 それでも、あの一瞬だけは血の気が引いた。 「あんまり驚かせないでくれ」 「だから、悪かったって」 シャンクスはそう言うと、自分を見上げる不機嫌そうな男にキスをした。 掠め取るようなキスに、副船長は軽く目を見張る。 漸く崩れたポーカーフェイスに、シャンクスはしてやったりと口端を上げた。 「機嫌直せよ、なっ?」 眩しいほどの満面の笑みに、副船長はやれやれと溜息を吐く。 「まったく、あんたって人は…」 こんな子供だましのキスと、笑顔で溶かされる心。 それも仕方がない。 この赤い髪の子供のような男に、身も心も捧げてしまっているのだから―― やっと笑みを見せた男に、シャンクスは残った右腕で抱き付いた。 そして再び唇を重ねる。 さっきとは明らかに違う深いキス――― いつもより熱いその唇に溺れそうになるのを副船長の理性が止めた。 「煽るなよ、シャンクス」 抱き付くシャンクスを引き剥がし、体を離す。 そんな男の態度を余裕の笑みを浮かべて見遣り、シャンクスは男の腕を引っ張りベッドに倒れ込んだ。 自然とシャンクスの上に伸し掛かる格好となり、副船長は困惑する。 痛々しい傷跡。 普通ならば絶対の安静が必要だ。 けれど――― じっと見上げてくる瞳に逆らえる奴なんているだろうか… ここまでされて黙ってはいられない。 「傷が悪化しても知らねぇぞ」 「心配するな。その時はまたお前に手当てしてもらうから」 当たり前のように言い放つシャンクスに眩暈がした。 「たいした男だよ、あんたは…」 当然だというように笑うシャンクスにキスをする。 彼の望み通りの甘くて熱いキス。 そして二人は甘い熱に溶けていった――― 〜E N D〜 |