Fear







生きることも
死ぬことも
一緒だと思っていた
何もかもが面倒で
ただ流されるままに生きて…
いつ朽ち果てても構わない
だから
銃を持つ手に迷いなどなかった

けれど―――

初めて

―――初めて怖いと思ったんだ







「どうしたの、それ」
 モノトーンで統一された無機質な部屋。
 必要最低限の家具しか置かれていない空間は、住人の心を映すかのように冷えていた。
 全く生活感を感じさせないこの部屋を訪れたマコトは、主の腕に巻かれた包帯に眉を顰めた。
 出迎えたKKはすっと視線を逸らし、さっさとリビングに戻るとソファに腰を下ろして煙草を咥えた。
「…ああ、これか。清掃作業中にちょっと引っ掛けたんだ」
 口端に笑みは浮かべられているものの、瞳にはそれ以上の説明を拒む強い意志が宿っている。
 後から着いてきたマコトはKKの前に立ち、彼のそんな表情に軽く肩を竦めた。
「そうやって嘘を吐いて俺を拒むの?」
 隣に座るとKKの咥えた煙草を奪い取り、瞳を覗き込みながら優しい口調で問い掛ける。
 奪われてしまった煙草を恨めしげに見遣りながら、KKは沈黙を守った。
 下手な誤魔化しはあっさり見破られてしまったが、本当のことを言うつもりはない。
 頑ななKKに、マコトは仕方がないな、と笑って手負いの恋人を抱き締めた。
 いつもなら飄々とその腕を抜け出すはずのKKは、何を思っているのか大人しく身を委ねている。
  「……お前になんて会わなければ良かった」
 暫しの静寂の後、ようやく聞こえてきた声は硬い。
 マコトの腕の中で、KKはきつく眼を閉ざした。
 今まで知らなかった感情に支配され、自分で自分を制御できない。
 そんな不甲斐なさに苛立ち、小さく舌打ちをした。

 出会わなければ―――

「ほら、また嘘を吐く。一人で背負って、心を閉ざして…俺がいるのにどうして一人で苦しむかな」
 背を抱く腕に僅かに力が籠められた。
 腕の傷に触れぬようさりげなく配慮されていて。
 耳元で冗談めかした口調で囁かれた言葉。
 決して追い詰めようとはしないその優しさに、今日負った痛みを思い出した。


 一瞬の躊躇いが引き金を引く手を遅らせた。
 響く銃声。
 腕に走った焼き付くような痛み。
 流れ出した鮮血。
 崩れ落ちた標的。
 見慣れている筈の光景。
 いつもなら何の感慨ももたらさない。
 それなのに。

      ―――怖かった。


 銃を手にした瞬間、脳裏に浮かんだ顔。
 面倒だと思っていた関係が、いつの間にか自分をこの世に繋ぎ止めていた。
「ガキが格好付けてんじゃねぇよ、馬鹿」
「馬鹿でも良いよ。傍で笑っててくれるなら」
「…恥ずかしいヤツ」

 死ぬことなど怖くない。
 ただ―――
 もう少しだけ傍で
 ―――生きていたいと・・・


I don't fear to die.
But...
I fear that it becomes impossible to see you...


                       〜E N D〜

ちょっとこれは、どうなんだろう…
突然思いついたイメージを書き止めたら、良く分からないことに。。。
英語と関わらなくなって久しいので、特に最後の英文はあまり触れないで下さい(逃)

2004/02/25