如何せんともし難い恋心 2








関口のイチゴ大福を榎木津が食べたことに、
一体どう中禅寺が関係してくるというのだろうか。

「お前がこの猿ばかり構っているのが悪い。
僕は退屈で欠伸を26回もしたんだぞ。僕を欠伸のしすぎで殺す気か!」
「榎さん……」
呆れてものが言えないとはまさにこの事だ。

いい年こいた男が構って欲しさに盗み食いなど、常識的に考えてあり得ないだろう。
関口はすっかり無視をきめこむ姿勢の中禅寺を横目に見やり、
仕方なく大きな子供のような男へと向き直った。

「欠伸のしすぎで死んだなんて話は聞かないよ、榎さん」
「馬鹿者め。立て続けにやれば呼吸困難で死ぬかもしれないじゃないか。
…そんなことより猿。お前はいつまで僕と京極の邪魔をするつもりだ?」
「失礼だな。ここへは僕の方が早くに着いていたんですよ?
そんな言われようは…」
「先でも後でも関係ない。僕が邪魔だといったら、猿はウッキキっと言って帰るべきだ!そうだろう、京極!」

再び振られてきた話に面倒臭そうに視線を上げた中禅寺は、
憤慨した様子の関口に目をやった後、疲れた溜息を吐き、
「退屈だというのなら、関口君を話し相手にすればいい」
「猿には人語が解せないのだから、話なんて出来るわけがないぞ」
「ひ、ひどいじゃないか、榎さん!」
「なにがひどいものか。猿を猿と言ってなにが悪い?僕は真実しか述べてないさ」
「なっ、なにをっ…」
「関口君、やめたまえよ」

相手の言いように頭に血がのぼっていくのを感じ、
耳まで真っ赤になった関口は飄々と笑う探偵を剣呑な目で睨み据えた。
が、溜息混じりな制しの声に遮られ、怒りは中途半端なまま宙に浮く。

「そうは言うが京極堂っ」
「ここは僕の家だ。二人とも騒ぐなら他所へいってやってくれ」
そう告げるとまたもや書籍へと目を落とした相手に、
暫くは無言のまま榎木津を恨めしく睨んでいたものの、
しんと静まった空間になにやら居心地の悪さを感じ、関口は敷いていた座布団から立ち上がった。

「おお、やっと帰るのか」
立ち上がった関口を見、榎木津が嬉しそうな声で問う。
それへ眉を顰めつつも頷いて返し、
「今日の話はまた後日にでも聞きに来させてもらうよ」
それだけ言うと関口は榎木津と相変わらず本から顔を上げない書痴に背を向け、
煮え切らない想いを抱えたまま中禅寺の自宅を後にした。
 



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