問題ナンバー 10の答え ★電子探偵団の会話をどうぞ……★
『みずき「そう?その子が決勝戦だけ、調子をくずしたってことはないの?」
ダイ「いやあ、だとしても、あそこまできゅうに腕が落ちるわけないよ。」
マコト「となると、やはりなにかあったと考えるのが自然だろうな。では、なにがあったのか?さっきのダイの話で、ぼくにはひとつ気づいたことがあるんだけど、みんなはどうかな?」
飛鳥「わかってるよ、マコトのいいたいことは。」
飛鳥「帽子、だろ。」
ダイ「そうだろうなあ。」
みずき「やっぱりねっ。」
飛鳥「決勝戦がはじまるまえと、はじまったあととではどこがちがうか?帽子をぬいだことだけだよね。だったら、それが原因だったとしか考えられない。」
そこまではいい。しかし、問題はその先だった。ダイが疑問を投げかけてきた。
ダイ「飛鳥のいうとおりなんだけど、でもね、だからどうしたっていうんだ?たかが帽子をぬいだくらいで、将棋そのものまであんなにひどくなるなんて、ぼくは信じられないよ。」
みずき「それはさっきダイくん、自分でも説明してたじゃん、帽子がお守りみたいなものだったんじゃないかって、ジンクスってあるじゃん。きっと、それだよっ。帽子をかぶってないと、その子、ぜんぜんだめになっちゃうんだ。きゅうにおどおどした態度になったっていうのも、そのせいだよっ。」
ダイ「そうかなあ。」
マコト「それじゃ、なんだか、おとぎ話にでてくる魔法の帽子みたいじゃないか。」
みずき「うーん、やっぱり、むりがあるかあ……」
飛鳥「こうは考えられないか。そいつはなにかの理由で、帽子をかぶることにすごくこだわっていたんだ。なのに、それを神長名人に注意されたもんで、すっかりヤル気をなくしちゃった。で、ふてくされて、わざといいかげんな将棋をさした。どうかな?」
ダイ「そんな感じじゃなかったけどなあ。あれはわざとじゃなくて、本気で弱かったよ。」
飛鳥「そうか……。」
だれからもことばがでてこなくなった。ワープロのなかに、「なぞ」という名の霧がいっぱいにたちこめたみたいだった。
ネロ「飛鳥、マコト、きみたちがいったことはいいとことをついていると、わたしは思う。飛鳥がいったとおり、少年は帽子にこだわっていたのだろう。理由は、マコトがいったように、それが魔法の帽子だったからだ。」
マコト「えっ?」
飛鳥「どういうこと?」
ネロ「そのまえに、ダイにたしかめておきたいことがある。百人ほどの観衆がいたといったな。それで、会場はもうぎっしりだったのかね?」
ダイ「そうでもないよ。広い会場だったし、二百人分ぐらいの席は用意されてたもの。まえのほうの席だって、バラバラあいてたよ。」
ネロ「やはりそうか……。さて、そうだとすると、ここにふじぎな事実がひとつある。はじめのほうのダイの説明のなかに『わざわざうしろのほうから、双眼鏡でのぞきこんでる人もいた。』とあっただろう。しかし、なぜそんなことをしなければならなかったのかね。熱心な将棋ファンだったとしても考えられるが、それならばなおのこと、あいているまえのほうの席で観戦するのがふつうではないかね。
では、なぜそうしなかったのか?」
全員「……。」
ネロ「答えはひとつだろう。まえの席では、ぐあいがわるかったからだ。なぜなら、超満員ではなかったとはいえ、まえのほうは周囲に人がいる。その人間はどうしても、人目につかないうしろのほうにいる必要があったのだ。」
みずき「どうしてえ?どうして人目についちゃいけないの?それよりなにより、そのこととさっきの魔法の帽子と、どう関係があるの、ネロ?」
ネロ「マコト、飛鳥、ダイ、そしてみずき。わたしはきみたちを、心のまっすぐな子どもと思っている。だからこそ、こんなことは考えてもみもしなかったのだろう。これからいうことは、あくまでわたしの想像にすぎない。しかし、それですべてのつじつまがあうこともまた事実だ。ひとつずつ、項目だてて述べてみるが、いいかね。
一つ・双眼鏡の人物とその少年とは、じつは知りあいだった。
二つ・双眼鏡の人物と将棋の腕は、プロ級だった。
三つ・双眼鏡の人物は、どこかに小型の無線マイクをかくしもっていた。
四つ・少年の帽子の耳あてのなかに、小型の受信装置がはいっていた。
この想像が正しかったとしたら、どうなるかね?」
マコト・みずき・飛鳥「あっ!」
すべてのなぞがとけた。もう書くまでもないだろう。双眼鏡の人物が、双眼鏡で将棋盤をのぞいて、次の手を無線マイクで少年に教えていたのだ。人目についてはまずかったのも当然だ。で、少年はそのとおりに将棋をさしていたというわけだ。ならば、プロ級の強さだったのもふしぎではなかった。