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市川崑
プーサン ぷうさん
監督 市川崑
公開年 1953年
評点[C]
感想  今日は、市川崑監督の『プーサン』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 補習学校(現在の予備校)で数学を教えている中年男の野呂(伊藤雄之助)は要領が悪く、やることなすこと上手くいかない。しかしそれでも、なんとかして生きて行くしかないのだ。

 原作は横山泰三の風刺マンガ『プーサン』ということになっているが、題名と僅かなアイデアを借りただけで、ほとんどオリジナルらしい。しかし、横山泰三のマンガが映画化されるほど人気があったとは隔世の感だ。今では『サルまん』のネタにされるくらいなのに。今の有名予備校の講師は高給取りで華やかな面もあるが、かつては冴えない職業の代表だったらしい。
 この作品は戦後の日本を諷刺して評価を受けたらしいが、個人的には全く好きにはなれなかった。諷刺といっても、人間の卑しく弱い面ばかりをクローズアップしただけで、ユーモアが感じられない。当時の観客は笑えたのかなぁ…。カリカチュアライズとはいうものの、人間の醜いところを大写しにして否定するだけなのは、傲慢だとさえ思った。
 当時はこういうものが求められたのだろうか。でも、現在の私には良さがわからなかった。時代に密着した作品なので、時の経過に弱い面もあるかもしれない。(2000/12/14)

日本橋 にほんばし
監督 市川崑
公開年 1956年
評点[B]
感想
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日本橋
日本橋

 今日は、市川崑監督の『日本橋』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 日本橋の芸者お孝(淡島千景)は、清葉(山本富士子)と張り合って彼女の鼻を明かすことならなんでもやり、清葉にふられた医学士・葛木晋三(品川隆二)を情夫にする。しかし、かつて同じく清葉にふられてお孝に拾われ、お孝に入れあげて破産した五十嵐伝吉(柳永二郎)の存在が彼らに影を落とす。

 泉鏡花の原作の映画化(脚本:和田夏十)で、当然の如く明治もの。シャープな絵作りは美しいが、衣笠貞之助作品のような絢爛さには欠けているような感がある。時々用いられる市川崑流の黒バックや
顔のアップも、明治ものの中では浮いているような。全体に淡々とした演出という感じで、悪い出来ではないのだが、泉鏡花ものは溝口健二か衣笠貞之助で観たい気がする(溝口健二にはサイレント時代の作品に『日本橋』があるが現存せず)。
 出演者の中では、淡島千景の表情が良い。表情豊かで、ラスト近くは非常に美しく感じられた。船越英二の演ずるお人よしの警官も良い。淡島千景の妹分の芸者として若尾文子が出演。(2003/02/15)

炎上 えんじょう
監督 市川崑
公開年 1958年
評点[A]
感想
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炎上
炎上

 今日は、市川崑監督の『炎上』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。原作は三島由紀夫の『金閣寺』。

 若い学僧の溝口吾市(市川雷蔵)は、酷い吃音(どもり)ゆえに、亡き父親に聞かされていた驟閣寺(映画では金閣という名を使えなかった)の美しさのみを心の支えとして生きてきた。しかし、偽善の横行する世間や俗気にまみれた老師(中村雁治郎)に絶望し、ついには驟閣に火を放つ。

 いや、凄い迫力。当時アイドル的な人気を誇っていた市川雷蔵が、所属する大映の反対を押し切って初の汚れ役に挑戦し、ほとんどノーメイクで迫真の演技をしている。脚本(和田夏十&長谷部慶治)も良い。未読なので原作ではどうか知らないが、老師を単なる悪人のようには描いていないのでキャラに厚みがある。主人公にとってメフィストフェレス的な存在の足の悪い友人を演ずる仲代達矢も凄みがあった。雁治郎の娘の中村玉緒も出演している。また、宮川一夫のカメラも素晴らしい。
 この作品の鑑賞中、観客は自らの劣等コンプレックスをギリギリと刺激され続ける。もし、これを観て全く複雑な思いを抱かない人がいるとすれば、それは心身共に恵まれた幸福な人間か、あるいは徹底的に無神経な人間か、どちらかだ(笑)。(2000/12/04)

ぼんち ぼんち
監督 市川崑
公開年 1960年
評点[A’]
感想
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ぼんち
ぼんち

 今日は、市川雷蔵主演の『ぼんち』を観た。監督は市川崑で、昭和三十五年(1940)の作品。

 大阪の船場(せんば)で五代続く足袋問屋の跡取り息子・喜久治(市川雷蔵)は、女遊びを止めるためにとあてがわれた妻(中村玉緒)を母(山田五十鈴)と祖母(毛利菊枝)にいびり出されてから、ぽん太(若尾文子)・幾子(草笛光子)・比沙子(越路吹雪)・お福(京マチ子)と女性遍歴を重ねる。

 山崎豊子の原作の映画化(脚本:和田夏十)。冒頭で登場した市川雷蔵の姿にちょっとビックリ。ごく一瞬だが、誰だかわからなかった。また、この作品は中村鴈治郎を非常に贅沢な使い方をしている。
 女だらけの作品で、原作を読んだことがないのだけれども、この映画では日本的母性社会の不気味さが強調されているような気がした。主人公の母と祖母(=実の母娘)がいつもベッタリしていて、実に気味悪い。他の女性たちも女臭さが強調されていて、女性の美よりも男の全てを支配しようとする不気味さを感じた。しかし、それに完全に圧倒されるでもない飄々とした主人公像を雷蔵が巧みに演じている。やはり彼は喜劇的な雰囲気のある役が上手い。
 原作者の意図に沿っているかどうかはわからないが、独特な女性観とユーモラスな雰囲気を感じさせる雷蔵&雁治郎が印象に残る作品。
 撮影は宮川一夫で、カラー時代の大映作品なので保存状態がよく、映像が美しい。(2003/03/21)

おとうと おとうと
監督 市川崑
公開年 1960年
評点[B]
感想
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おとうと
おとうと

 今日は、市川崑監督の『おとうと』を観た。昭和三十五年(1960)の作品。

 ある大作家(森雅之)の家では、母(田中絹代)がリューマチの持病で体が不自由なので、ほとんど娘げん(岸恵子)が家事をし、弟・碧郎(川口浩)の世話をしていた。母は継母であるため家庭の中はしっくり行かず、碧郎は不良仲間と付き合うようになり、無頼な生活の中で結核を病む。

 幸田露伴の娘である幸田文の自伝的小説の映画化(脚本:水木洋子)。撮影は宮川一夫で、“銀残し”という特殊な手法で処理されているそうだが、私が観たのはビデオ版なので、残念ながら単に褪色したように見え、銀残しの色合いは味わえなかった。
 母親の田中絹代が体を病んだため心まで歪んでしまっている様子や妙に色気のある娘の岸恵子が家庭の中で神経をいらだたせる様が執拗に表現され、岸田今日子が登場することや、芥川也寸志の奇妙な音楽ともあいまって、前半は一種のホラー的な雰囲気さえ漂う。
 弟が病に倒れる後半は、濃厚すぎるほどの姉妹愛や家庭的には無力だった父親が最も息子を可愛いと思っていたことが知られ、なんだかホッとする。
 海外だと姉と弟の関係が近親相姦的に解釈されることがあるというのは、川の字で寝る習慣が無いことも一因だろうか。

 市川崑作品のラストは唐突に見えることが多いが、この作品は姉の心を映して上手いと思った。(2002/05/24)

黒い十人の女 くろいじゅうにんのおんな
監督 市川崑
公開年 1961年
評点[A’]
感想
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黒い十人の女
黒い十人の女

 今日は、市川崑監督の『黒い十人の女』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 テレビ局のプロデューサー・風(船越英二)には妻(山本富士子)の他に、9人の愛人(岸恵子・宮城まり子・中村玉緒・岸田今日子など)がいた。たまりかねた10人の女たちは、風をこらしめてやろうという相談から始まって、彼を殺してしまおうという話になる。追いつめられていく男。

 非常にスタイリッシュな映像表現で、現在、再評価されている作品。コントラストを強調した白黒画面が美しい。
 ストーリーも皮肉が効いていて、テンポ良く現代的。宮城まり子の使い方が面白い。中村玉緒がカワユイ(笑)。声は少しハスキーな感じだが、今とは全然違う。岸恵子って、いい女っすね。対する船越英二は、いかにも現代人然とした情けない男を好演。『熱中時代』の校長先生が…(爆)。
 俳優の演技は、全体に少しデフォルメされた感じだが、戦後社会をカリカチュアライズした作品だから、それで良いのだろう。(2000/11/28)

破戒 はかい
監督 市川崑
公開年 1962年
評点[B]
感想
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破戒
破戒

 今日は、市川雷蔵主演の『破戒』を観た。監督は市川崑で、昭和三十七年(1962)の作品。

 日露戦争の頃、長野の高等小学校教師・瀬川丑松(市川雷蔵)は、被差別部落出身であることを隠し通せという父(浜村純)の戒めを堅く守っていた。しかし、その父の死と部落解放運動家の猪子蓮太郎(三国連太郎)との出会いによって、丑松の心は揺れる。

 島崎藤村の同題小説の映画化(脚本:和田夏十)。シリアスな主題の原作だけに、映画の雰囲気も超シリアスで、原作の通りに作りました、という雰囲気。いや、私は原作を読んだことが無いのだけれども……。
 この主役を演ずることを熱望した雷蔵が熱演しているが、ちょっと最初から最後まで暗くて一本調子な感もある。重いものを背負っているのだから当然かもしれないけど、出自を隠しているときは無理にでも明るくしているようなところがあっても良かったかも。
 しかし、ラストの旅立ちのシーンは良い。“ゆで卵”が重要なアイテムとなっている(謎)。
 丑松の親友・土屋が儲け役で、長門裕之が結構いい。中村鴈治郎が、『炎上』の役と似ている清濁併せ持つ僧侶を演じているのも面白い。
 昭和二十三年には木下恵介監督/池部良主演の『破戒』も作られたそうなので、そちらも観てみたい。(2002/11/01)

雪之丞変化 ゆきのじょうへんげ
監督 市川崑
公開年 1963年
評点[A’]
感想  今日は、長谷川一夫主演の『雪之丞変化』を観た。監督は市川崑で、昭和三十八年(1963)の作品。

 近頃、江戸の市村座で売り出し中の女形・中村雪之丞(長谷川一夫)は、長崎奉行と商人たちに陥れられた長崎の大商人の息子だった。彼は両親の仇を討つため、元長崎奉行の土部三斎(二世中村鴈治郎)
に接近する。

 長谷川一夫の主演三百本記念映画で、若い頃に主演した作品のリメイク。雪之丞を陰ながら応援する義賊・闇太郎(長谷川一夫の二役)や女盗賊お初(山本富士子)などキャラが魅力的で、なかなか面白いストーリー。長谷川一夫の雪之丞と闇太郎の演じわけは見事。男まさりの女を演じた山本冨士子もいい。
 ただ、この作品を楽しめるかどうかは、カラーのシャープな映像で映し出された女形の顔に耐えられるか否かにかかっているのかもしれない。(2002/12/04)

映画女優 えいがじょゆう
監督 市川崑
公開年 1986年
評点[C]
感想  今日は、NHK衛星で放映された市川崑監督の『映画女優』を観た。昭和六十一年(1986)の作品。吉永小百合の主演99本目の映画。

 大正末期から半世紀以上にわたって映画界で活躍し、“映画女優”の代名詞となった女優・田中絹代(1909-1977)の半生。

 いやぁ、驚いた。噂には聞いていたけれども、別の意味でこれほど凄い作品だとは思わなかった。登場人物たちが感情も状況も台詞で全て説明してしまい、会話のシーンは妙なカット割りで話がかみ合っておらず、各々勝手にしゃべくりまくっているように見えるし。
 田中絹代と運命的な関係にあった溝口健二……いや、彼をモデルとした溝“内”健二役に菅原文太。文太兄ィとは……まぁ、頑固そうな感じはよく出ていた。実在した人物の多くが仮名になっている。田中絹代の若い頃の一時期“事実婚”状態にあった清水宏は清光宏(渡辺徹)、彼女の初主演作品を監督した五所平之助は五生平之助(中井貴一)、松竹大船撮影所長の城戸四郎は城都四郎(石坂浩二)……というように。
 吉永小百合も、頑張ったんだろうけどねぇ……田中絹代と比べてしまうと……。それに、あのラストはなんだろう。まさしく尻切れトンボ。
 でもまぁ、観るべき所を映像に見つけられなくもない。昭和初期の撮影所の風景や、古い日本家屋の暗い室内に陽光が差し込んでくる様子が、よく再現されている。(2000/12/10)

市川崑
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