Return to監督別邦画備忘録Top pageHOME PAGE
家城巳代治
激流 げきりゅう
監督 家城巳代治
公開年 1944年
評点[評点なし]
感想  今日は、家城巳代治監督の『激流』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 舟木鉱業の鉱山で働く若手技術者の風見謙介(小沢栄太郎)は、石炭増産のため新たな技術の導入を舟木社長(斎藤達雄)に提案して受け入れられるが、幼なじみの女性ゆき(水戸光子 )の父でもある現場責任者の泉千吉(東野英治郎)の不興を買う。

 家城巳代治の監督デビュー作(原作・脚本:森本薫)。戦時中のため石炭増産がテーマの国策映画である。
 CS放送局の衛星劇場によって、不完全であるが高峰三枝子が出演している貴重な作品なので放映するという主旨のお断りが冒頭に流されたが、実際観てみると欠落がもの凄い。まとめて欠落している部分があるだけでなく、人物が話している途中でもブツブツ切れて会話が成立しなくなっていたり、果ては作品の冒頭にあるべきと思われるシーンが終盤に登場したりする。
 この状態では作品の完成度を云々することは難しい。せめてシーンの順番の誤りだけでも松竹が修正できなかったのだろうか。
 なんとか理解できる部分だけを観てみると、戦後作品では悪役的な役柄がほとんどの小沢栄太郎(小澤栄)が生真面目な若者を演じているところが面白い。独特の野卑な笑い方を全くせず、いつ“正体”を見せるのかと期待していたら最後までそのまま(笑)。また、炭鉱での掘削作業や出水事故をリアルに描いたり、労働者が表彰されるシーン、そして社長までもが坑道に入って働くシーンなどは、戦後は独立プロに転じた家城監督が国策映画という制限の中で自身の思想をなんとか反映させようとした部分のように見えた。(2005/04/26)

雲ながるる果てに くもながるるはてに
監督 家城巳代治
公開年 1953年
評点[A]
感想
Amazon
雲ながるる果てに
雲ながるる果てに

 今日は、家城巳代治監督の『雲ながるる果てに』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 昭和二十年四月、九州南端の基地で出撃の時を待つ特攻隊員たち。学徒出陣で海軍に入った若者たちは、生真面目な大瀧(鶴田浩二)・繊細な深見(木村功)・無頼の松井(高原駿雄)・ひょうきんな笠原(沼田曜一)など各々個性に溢れていたが、待ち受ける運命は一つであった。

 戦没飛行予備学生の遺稿『雲ながるる果てに』を基にした作品(脚本:直居欽哉・八木保太郎・家城巳代治)で、初めて特攻隊を正面から採りあげた映画だという。レッドパージで松竹を追われた家城監督が独立プロダクション製作(重宗プロ)で復活した第一作。
 終戦からわずか8年後に登場人物と同世代の俳優たちが演じていることもあって、特攻隊員たちそれぞれの個性ある人間像の描き方が実に見事。ストーリーがあるわけではない原作を基にして、いくつものエピソードを作り巧みに構成している。カラリとした性格で無頼を気取る松井が一番の儲け役だが、確実な死に直面して悩む大瀧や深見の姿には感動させられざるを得ない。そして終盤は……ただ涙。
 独立プロ製作映画の一つではあるが、人間の描き方が紋切り型ではなく左翼映画とか反戦映画という枠を越えるものがある作品だと思う。家城監督の演出はかなりパセティックというかセンチメンタルなものを感じさせ、日本人好みの“情”に訴えてくる作品。
 ただし、一部の高級士官の描き方は図式的で、ラストシーン近くでリアリティを損ねて最後に画竜点睛を欠いてしまった感があるのは、ちょっと残念だ。
 映像的にはオーソドックスだが(撮影:中尾駿一郎・高山弥)、飛行機の飛行シーンがほとんどないのは技術的・予算的にいたしかたないのだろうか。

 松竹の二枚目スター俳優だった鶴田浩二が意欲的に出演し、彼が特攻隊出身だと自称するきっかけとなった作品でもある。深見に思いを寄せる女性の瀬川(山岡比佐乃)を演じているのは、のちの山岡久乃だというのでビックリ。若い!(2005/01/10)

家城巳代治
掲示板 Return to監督別邦画備忘録Top pageHOME PAGE