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今井正
青い山脈 あおいさんみゃく
監督 今井正
公開年 1949年
評点[B]
感想
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青い山脈 前・後篇
青い山脈
前・後篇

 今日は、今井正監督の『青い山脈』と『続青い山脈』を続けて観た。共に昭和二十四年(1949)の作品。当時のロードショーは一週間交替だったので、今の続編ものとは異なり、正続編は一つのストーリーから成っている。

 封建的な気風の残っている地方都市の女学校で、健全な男女交際を説いた若い女教師の島崎雪子(原節子)と生徒の寺沢新子(杉葉子)が、生徒と教員双方からの非難にさらされる。新子のボーイフレンドの高等学校生・金谷六助(池部良)と友人のガンちゃん(伊豆肇)、そして島崎先生に思いを寄せる校医の沼田玉雄(龍崎一郎)や新子の後輩の笹井和子(若山セツコ)と和子の姉の芸者・梅太郎(木暮実千代)たちは、島崎先生と新子を救おうと奮闘する。

 石坂洋次郎の同題作品が原作の、青春映画の元祖のような作品。何の疑問もなく戦後民主主義を謳歌しているようで、観ている方が気恥ずかしくなるが、これも歴史的意義のある作品なのだろう。なんだか非常にわかりやすい演出と演技で、特に脇役の女生徒たちは『中学生日記』みたい(笑)。ラブレターで「恋」と“変”、「悩」と“脳”とを間違える有名なギャグ(?)は続編の方にある。
 三十過ぎで男子高等学校生を熱演し、海に向かって「好きだー」と大声で叫んだりした池部良は、本当に御苦労さんって感じだ(笑)。原節子は華やかな雰囲気で、いかにも進歩的な教師という演技をしていた。
 正編のオープニングの主題歌が大変有名なのだけれども、今井監督は入れるのを嫌がったそうだ。そういえば、宮崎駿監督も『風の谷のナウシカ』に安田成美の歌を入れさせなかったな。(2000/12/21)

また逢う日まで またあうひまで
監督 今井正
公開年 1950年
評点[C]
感想
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また逢う日まで
また逢う日まで

 今日は、今井正監督の『また逢う日まで』を観た。昭和二十五年(1950)の作品。

 戦争末期、山の手に住む学生の田島三郎(岡田英次)は町で空襲に遭って避難した地下鉄のホームで偶然、小野螢子(久我美子)と出会う。たちまち惹かれあった二人だが、時代の波は容赦なく押し寄せる。

 極めて真面目な映画を作られた今井正監督だけに、徹底して主人公たちを戦争の犠牲者として描いている。しかし、田島が非常にセンチメンタルに戦争を嫌悪してばかりいるので、かえって現実逃避的な無責任な人間のように見え、現代人の私から観ると共感できない。これもまた、同時代に観ないと良さがわからない作品なのかもしれない。
 時々挿入される田島の甘ったるい声のモノローグも邪魔。若き日の久我美子の可憐さだけが見所か。日本映画ベストなんとかの本の類で上位にあるのが、ちょっとわからない。(2001/02/16)

にごりえ にごりえ
監督 今井正
公開年 1953年
評点[B]
感想
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独立プロ名画特選 DVD-BOX 3 女性編
独立プロ名画特選
DVD-BOX 3 女性編
にごりえ
婉という女
女ひとり大地を行く

 今日は、今井正監督の『にごりえ』を観た。昭和二十八年の作品。全3話のオムニバス。

 第一話「十三夜」:せき(丹阿弥谷津子)は長屋住まいの娘から高級官吏の妻となり、婚家で手ひどい仕打ちを受けて実家へ帰ってきたが、家族のことを思って婚家へ戻ることを決意する。その帰り道で乗った人力車の俥夫は幼なじみの録之助(芥川比呂志)だった。
 第二話「大つごもり」:両親を失って叔父(中村伸郎)に育てられた娘みね(久我美子)は、叔父の家を救うために女中奉公先の主人の奥方に借金を頼むが、相手にされない。思いあまって奉公先の家の金に手をつけてしまうが……。
 第三話「にごりえ」:新開地の銘酒屋の酌婦おりき(淡島千景)は、美貌と客あしらいの上手さでNo.1だった。彼女は、妻(杉村春子)も子もありながら自分に入れ込んで身代を潰した源七(宮口精二)から二枚目の結城(山村聡)に乗り換えようとして……。

 樋口一葉作品の映画化(脚本:水木洋子・井手俊郎)。脚本監修として久保田万太郎が名を連ねている。レッド・パージで東宝を追われた今井監督が文学座と提携して作った作品なので、出演者の多くが文学座の俳優。それだけに、長台詞は上手すぎて舞台演劇的に見える部分もあった。絵的には、長屋や和服姿の登場人物をとらえた白黒画面が美しい(撮影:中尾駿一郎)。
 「十三夜」の前半は長屋の部屋での会話が続くため、特に舞台的。それに、暗い雰囲気が続くので、ちょっときつかった。「大つごもり」も明るい話ではないが、久我美子の魅力で助けられる。また、ストーリー自体も3話の中で最も抑揚があって面白い。時代劇で観たことがあるような筋だったが、元ネタは樋口一葉だったのか。
 「にごりえ」は1時間ほどあって、一番長い(映画全体は131分ほど)。淡島千景がハマり役。めずらしく底意地の悪い人間の役ではない杉村春子は、上手いが長台詞で源七を攻めたてるので、そこはちょっときつかった。

 この作品は溝口健二の『雨月物語』や小津安二郎の『東京物語』といった超名作を押さえて昭和二十八年度のキネ旬ベストワンに輝いている。昭和二十年代の観客は、明治初期の貧しい人々の暮らしが描かれた『にごりえ』に深く共感したのだろうか。時代の流れを感じさせられる。
 今観ると、良い作品だとは思うが、暗い雰囲気が続いてちょっと重いし(原作がそうなのだが)、溝口・小津両監督の作品には及ばないような気がするのだけど……。(2002/03/06)

キクとイサム きくといさむ
監督 今井正
公開年 1959年
評点[C]
感想
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独立プロ名画特選 DVD-BOX 4 社会編
独立プロ名画特選
DVD-BOX 4 社会編
キクとイサム
橋のない川 第一部
橋のない川 第二部

 今日は、今井正監督の『キクとイザム』、もとい、『キクとイサム』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 黒人米兵と日本人女性との間に生まれたキク(高橋恵美子)とイサム(奥の山ジョージ)の姉弟は、母親も亡くなって祖母(北林谷栄)の手で育てられている。好奇と差別の目にさらされながら苦難の道を歩む三人。

 今井監督の作品だけに、当時の社会問題を真正面から取りあげた実に真面目な作品。だが、今観ると重い。実に重い。キクを演じた高橋恵美子は素人だったそうだが、とても演技が上手い。それだけに、かえってきつい。題材も取りあげ方も真面目で、当時この作品を撮ることには大きな意義があったのだろう。しかし、現在から観ると、もう少し違った角度での切り方はなかったかな…と思ってしまう。(2001/03/20)

今井正
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