Return to監督別邦画備忘録Top pageHOME PAGE
稲垣浩(稻垣浩)

[1] [2] [3]

放浪三昧 ほうろうざんまい
監督 稲垣浩
公開年 1928年
評点[C]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『放浪三昧』を観た。監督は稲垣浩で、昭和三年(1928)の作品。

 時は幕末、所は地方の小藩。自他共に認める剣の腕を持つ伊達主水(片岡千恵蔵)は幸せに暮らしていたが、予期せぬ事件によって一人息子(中村寿郎)と共に放浪の旅に出ることになる。

 千恵蔵プロダクション第2作目で、現存する片岡千恵蔵出演作の最も古いものの一つ。それだけに、千恵蔵が痩せていて大変若々しい。
 脚本は伊丹万作で意外な展開が数度あるが、ちょっと唐突で、観ていてすんなり飲み込みづらい。前半のユーモラスな雰囲気は割りと楽しめたのだけれども。フィルムに欠落があるわけでもないと思うが……。剣の道、恋愛、そして勤皇佐幕の対立などの要素を詰め込みすぎたのではないだろうか。また、せっかく後半は子連れ旅をする設定なのだから、前半のような牧歌的な雰囲気もあっても良かったと思った。(2003/12/09)

番場の忠太郎 瞼の母 ばんばのちゅうたろうまぶたのはは
監督 稲垣浩
公開年 1931年
評点[A’]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『番場の忠太郎 瞼の母』を観た。監督は稲垣浩で、昭和六年(1931)の作品。

 幼い頃に母と生き別れ父を亡くして渡世人になった江州番場生まれの忠太郎は、いつも母の面影を追い求めていた。噂を頼りに江戸に出て数年、これはという人に出会ったが……。

 御存知、長谷川伸の原作(脚本:稲垣浩)の最初の映画化。有名な加藤泰監督版の中村錦之助は美青年という雰囲気だったが、この作品の若き日の千恵蔵は、若さと渡世人らしい鋭さも兼ね備えていて大変良い。弟分を助けるシーンは実にカッコイイ。そして母を求める弱さも見せる。忠太郎の妹役の山田五十鈴も可憐。
 サイレント完成期の作品のためか、映像と字幕のリズムが心地よく、田舎の牧歌的な描写や江戸の雪が印象的。プリントの傷で始終雨が降りまくりの古い画面だが、それが効果的になっている面もあるかも? ラストは、確か原作者の許可を得たという話を聞いたことがある。(2001/01/12)

決闘高田の馬場(血煙高田の馬場) けっとうたかだのばば
監督 マキノ正博(雅弘)・稲垣浩
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『決闘高田の馬場』を観た。昭和十二年(1937)の作品で、監督はマキノ正博(雅弘)と稲垣浩。

 浪人の身の中山安兵衛(阪東妻三郎)は、喧嘩の仲裁を仕事のようにして飲んだくれてばかりいる。ただ一人の親類である叔父・萱野六郎左衛門(香川良介)だけは安兵衛に説教するが、同輩の村上庄左衛門(尾上華丈)の恨みを買い、彼の一味と高田馬場で決闘をすることになってしまう。例によって酔いつぶれていて、それを遅れて知った安兵衛は、“韋駄天走り”で高田馬場へ駆けつけるが…。

 講談で昔の日本人にはおなじみだった“高田馬場の決闘”を元にした作品。阪妻が中山安兵衛(のちの堀部安兵衛)を好演。かなりコミカルなキャラクターで驚いた。こういう役はほとんど初めてだったのではないだろうか。阪妻のオーバーな演技がハマっている。
 監督は二人名義だが、事実上マキノ正博だけが監督していたらしい。コミカルな演出とモブシーンは、さすが。現存している版では50分の小品だが、終始退屈させない佳作。安兵衛と同じ長屋に住む講釈師に志村喬、同じく隣人の大工・熊公を無声映画時代のチャンバラ映画スター市川百々之助が演じている。(2001/11/14)

出世太閤記 しゅっせたいこうき
監督 稲垣浩
公開年 1938年
評点[B]
感想  今日は、嵐寛寿郎主演の『出世太閤記』を観た。監督は稲垣宏で、昭和十三年(1938)の作品。

 のち豊臣秀吉となる木下藤吉郎(嵐寛寿郎)は、実父が戦で死に母(吉田一子)が再婚したことで無類のいたずら坊主となり、故郷を出奔して織田信長(月形龍之介)に仕えるようになる。藤吉郎は、いつか一城の主となって家族を呼び寄せ母と再会する日を目指して努力を続ける。

 少年時代から、“一夜城”を建てるまでの物語で、おなじみの太閤記もの。オーソドックスな展開と絵作りで特に傑出したところはないが、藤吉郎が単なる出世欲に駆られているのではなく母親への愛情を軸に描いているので、要領よく出世していく姿にも抵抗を感じないと思う。寛寿郎の藤吉郎はちょっと立派で、終盤に口ひげ・あごひげを生やしていた場面は貫禄があった。
 撮影は宮川一夫で、古い作品なので宮川一夫らしさはあまり明白でないが、擬似夜景の巧みさにそれを彷彿とさせるものがあるだろうか。(2003/06/19)

闇の影法師 やみのかげほうし
監督 稲垣浩
公開年 1938年
評点[A’]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『闇の影法師』を観た。監督は稲垣浩で、昭和十三年(1938)の作品。

 時は大政奉還の頃。譜代大名の土井家は佐幕の方針を固め、家老の川勝丹波(香川良介)が中心となって勤皇派を弾圧していたが、“闇の影法師”と名乗る謎の人物が志士たちを助けていた。その頃、領内の商人宿“南屋”に煙草の行商をしている松造と名乗る男(阪東妻三郎)が長逗留していた。

 のちに『無法松の一生』など多くの傑作を生んだ阪東&稲垣コンビの第一作だという。冒頭からエンドマークが出るまで画面に大雨が降りまくりなのでビックリ(笑)。ただし画質は酷いが音声が意外とクリアなのでストーリーがわからないほどではない。しかし、フィルムの欠落が多い。
 定番ネタの勤皇の志士ものかと思ったら、冒頭の立ち回りが終わって場面が南屋に移ると雰囲気が明るくなり、明朗時代劇の雰囲気になる。南屋の息子と嫁(沢村国太郎&中野かほる)、南屋の娘おつる(轟夕起子)と松造の掛け合いが楽しいし、泊り客の猿回し(市川百々之助)もいい味を出している。それと、南屋の隠居(藤川三之祐)が寝ている寝床にはビックリ。誰のアイデアだろう……監督か脚本家か(原作・脚本:飯沼成治)。
 娘おつるの松造に寄せる淡い想いもストーリーの核の一つで、おつるが胸の内を打ち明ける海岸のシーンでは叙情あふれる稲垣演出が炸裂。懸命に想いを語る轟夕起子とそれを聞く阪妻の無言の演技、砂浜のきらめく波が相まって忘れがたい名場面となっている。宮川一夫の撮影も光る。
 脇役では、とぼけた妙味を感じさせる沢村国太郎と市川百々之助の他に、松造の同志・嶺秀坊を演じた山本礼三郎もチラッと登場するだけなのに存在感がある。

 海岸のシーンだけでも見ごたえがある作品なので立ち回り部分の欠落や話が所々飛ぶのはあまり気にはならないが、やはりもう少しマシなプリントは残っていないだろうか。戦前の日活作品だから、残っているだけでもありがたいと思わねばならないが……。(2004/07/14)

宮本武蔵 みやもとむさし
監督 稲垣浩
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演の『宮本武蔵』を観た。監督は稲垣浩で、昭和十五年(1940)の作品。

 剣の修行に励む宮本武蔵(片岡千恵蔵)は、お通(宮城千賀 )のことや仕官の夢などの煩悩を断てないことに悩みながら修行を続け、ついに佐々木小次郎(月形龍之介)との決闘を迎える。

 稲垣宏監督の最初の宮本武蔵映画。現在残されているフィルムは総集編的なもので、武蔵と伊織(宗春太郎)が江戸に来たところから始まるし、話の展開が妙に早いところもある。しかし、原作にあって内田吐夢監督版の『宮本武蔵』シリーズにないシーンもあり、お通やお杉婆(常盤みどり)の方から観た描写もいくつかあって、それらが魅力的。特に、愚堂禅師(東明二郎)に教えを求めるシーンの千恵蔵は若き武蔵の苦悩を見事に表現していていた。お杉の心境の変化も丁寧に描かれていて良い。
 映像的には劣化が目立つが、宮川一夫も撮影を担当しているので、所々印象に残るシーンがある。特に海を背景にしたところが良く、巌流島に旅立つ直前の千恵蔵の顔が美しい。決闘シーンも、もちろん良い。(2003/06/04)

宮本武蔵 一乗寺決闘 みやもとむさしいちじょうじけっとう
監督 稲垣浩
公開年 1942年
評点[B]
感想  片岡千恵蔵主演の『宮本武蔵 一乗寺決闘』を観た。監督は稲垣浩で、昭和十七年(1942)の作品。

 剣の修行の旅に出た宮本武蔵(片岡千恵蔵)は、京都の吉岡道場に行き門弟たちをことごとく打ち破る。当主の吉岡清十郎(浅香新八郎)や、その弟の伝七郎(仁札功太郎)、そして宝蔵院での槍相手の試合を経て、ついに一乗寺下がり松での吉岡一門との最終決戦を迎える。

 吉川英治の原作の一部を映画化した作品(脚本:稲垣浩)。吉岡一門との戦いや宝蔵院での試合、また、日観和尚(藤川三之祐)や本阿弥光悦(香川良介)と出会って武蔵が精神的に成長する過程を上手く抜粋して描いている。ただ、内田吐夢版同様、オチはちょっとだけ中途半端な感はあるが。
 独特のちょっと生硬な緊張感が全体に漂っている内田吐夢監督の宮本武蔵シリーズとは異なり、ナチュラルな絵作りという印象がする。一乗寺の決闘は内田吐夢版には及ばないが、それなりに雰囲気を出している。日観和尚や吉野太夫(市川春代)との対話のシーンが良い。吉野太夫が非常に美しく撮られている。(2003/06/05)

無法松の一生 むほうまつのいっしょう
監督 稲垣浩
公開年 1943年
評点[超A]
感想
Amazon
阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX
阪東妻三郎傑作選
DVD-BOX
王将
素浪人罷通る
伊賀の水月
無法松の一生
剣風練兵館
木曾の天狗
狐の呉れた赤ん坊
月の出の決闘
富士に立つ影
国定忠治

 今日、追悼・宮川一夫という企画で『無法松の一生』を観てきた。昭和十八年(1943)の作品。

 ただただ「素晴らしい!」の一言!!阪妻こと阪東妻三郎の演ずる富島松五郎の純情、宮川一夫の超絶的な技巧のカメラ、そして稲垣浩の叙情あふれる演出。全て文句なし。途中から完全にウルウル状態になってしまいました(笑)。
 戦時中にこれだけの作品を作るんだから、昔の日本人って凄かったんだな。やはり、明治生まれにゃかなわない?(笑)時の経過を表す人力車の車輪の回転や少年時代の松五郎が放浪する場面、松五郎の“祇園太鼓の暴れ打ち”からラストにかけての象徴的な表現などは映像詩の域に達し、今から観ても充分斬新っす。
 この名作のビデオはレンタル禁止で簡単に観られないのが実に残念…。

 ぢつはこの作品、私が中学生か高校生の頃にNHKかなんかで放映されて、観たことがあるのだけれど、ほとんど忘れてました(爆)。それに、イイ話だとは思ったが、それほど感動しなかった記憶が。まだガキだったんだなぁ…。
 名作って本当にわかるのは大人になってからなのかもしれない。池波正太郎も、十代の頃にジョン・フォード監督の『駅馬車』を観て、時間が経ってから見直すと若い頃には気づかなかった部分が見えてきた、と書いていたし。私が最近、溝口健二作品に触れたのは良いタイミングだったのかも。溝口作品は女性を描いたものが多いから、以前だったら理解できないし面白く感じなかったと思う。色々と知ってからでないと。(2000/05/28)

狼火は上海に揚る のろしはしゃんはいにあがる
監督 稲垣浩
公開年 1944年
評点[B]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『狼火は上海に揚る』を観た。監督は稲垣浩で、昭和十九年(1944)の作品。

 文久三年(1963)、上海に入港した日本初の交易船には、幕府の役人らと共に長州藩士・高杉晋作(阪東妻三郎)、薩摩藩士・五代才助(月形龍之介)、佐賀藩士・中牟田倉之助(石黒達也)の三人の若者が乗っていた。高杉晋作は、ふとしたことから太平天国軍の指導者の一人である沈翼周(梅憙)と親しくなり、アジアを支配しようとする英米の陰謀を知る。

 大映と“中華電影公司”との共同制作ということになっていて、監督として稲垣浩と岳楓・胡心靈という名が並ぶ(脚本:八尋不二)。満州に侵入したソ連軍によって接収され、近年ロシアから里帰りしたフィルム。
 「アジア諸国が協力して米英を追い出そう」というメッセージを伝えるための国策映画。しかし、高杉晋作にしてはちょっとオッサン臭いが、阪妻がいつもながらの熱演。そして、重要な役を演じた梅憙という中国人俳優もなかなかの好演で、力強い映像(撮影:青島順一郎)ともあいまって、作品として充分に成立していると思う。沈翼周というキャラと高杉晋作の交流を中心に据えた脚本が巧み。
 モブシーンに迫力があり、ラスト近くの日本のサムライ(阪妻)が中国の荒野を放浪する場面も、なんだか面白い。

 冒頭の一巻が欠落しているらしいが、字幕説明で補足されているので、わかりづらくはない。戦時中の作品としてはかなり画質が良い。音質は所々今ひとつ。中国語の会話場面では字幕が入っているが、かなり見づらいところがある。特に見づらいところではNHKが上から新たに字幕を重ねて入れているが、全編そうしても良かったと思う。(2003/08/07)

東海水滸伝 とうかいすいこでん
監督 伊藤大輔・稲垣浩
公開年 1945年
評点[A’]
感想  今日は、伊藤大輔・稲垣浩共同監督の『東海水滸伝』を観た。昭和二十年(1945)の作品。

 清水の次郎長(阪東妻三郎)は、やくざ稼業から足を洗い喧嘩をやめることを宣言し、自分の刀を森の石松(片岡千恵蔵)に預けて金毘羅様に奉納させる。代参を済ませた石松は人から預かった百両の大金を懐にしたまま鳥の吉兵衛(遠山満)のところで道草を食ってしまい……。

 おなじみ清水の次郎長の話だが、実質的な主人公は石松。三十石船での「江戸っ子だってね、寿司食いねぇ」や石松の闇討ちなどの定番ネタに加えて、幼なじみの娘おりき(花柳小菊)と淡い想いを交わすエピソードがオリジナルで加わっている。そのおりきと川べり(?)で語り合うシーンや盆踊りをするシーンの雰囲気が良く、映像も美しい(撮影:宮川一夫・石本秀雄)。
 石松の兄貴分の小松村の七五郎として市川右太衛門が出演していて、かなり貫禄のある七五郎になっている。さすがに右太衛門では他の次郎長もののように情けない七五郎にするわけにはいかなかったのだろうか。これは儲け役。
 対して次郎長の印象が薄い感じがする。序盤にやくざから足を洗うと決心して、終盤に石松のために誓いを破って立ち上がる理屈がちょっと弱い。脚本にもう一工夫あったら、より傑作になったかもしれない(脚本:八尋不二)。
 とはいうものの、石松が狙われたところや終盤の立ち回りもカットされずに残っているし、おりきとのカラミのシーンも良いので、終戦の年に作られた作品としては水準の高い佳作レベルの一本だと思う。戦争協力的な内容もないし。立ち回りを伊藤大輔、石松×おりきのシーンを稲垣浩、と分担して撮ったのだろうか。そんな截然と分けられるものではないだろうが。(2004/07/18)

[1] [2] [3]

稲垣浩(稻垣浩)
掲示板 Return to監督別邦画備忘録Top pageHOME PAGE