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稲垣浩(稻垣浩)

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或る剣豪の生涯 あるけんごうのしょうがい
監督 稲垣浩
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『或る剣豪の生涯』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 豊臣秀吉の死後1年の京都。武勇と教養そして巨大な鼻で知られる駒木兵八郎(三船敏郎)は、早くも大きな顔をし始めた家康の家臣たちを懲らしめていた。そんな折、旧知の公家の姫君・千代姫(司葉子)と美男子の苅部十郎太(宝田明)がお互いに思いを寄せていることを知り、兵八郎は無骨者の十郎太のために力を貸してやるが……。

 原作は御存知『シラノ・ド・ベルジュラック』。その翻案としては新国劇で上演されていた『白野弁十郎』が有名だが、この映画は稲垣浩によるオリジナルの脚本らしい。
 武勇と教養と心意気、全てを兼ね備えながらも巨大な鼻ゆえに自ら進んで恋の道化師を演じたシラノの物語は有名だが、この才能ある詩人(歌人)であるキャラを三船敏郎が好演。稲垣監督の脚本も詩の言葉をそれらしく翻案してあまり違和感なく、兵八郎の豪快さと哀愁を描き分けた演出も良い。特に冒頭の芝居小屋での騒動とラストの寺のシーンが傑出している。粗筋は知ってはいたものの、あらためて感動させられた。それだけ原作が優れているということだが、この作品は以前観た洋画版(監督:マイケル・ゴードン/主演:ホセ・フェラー/1950年)にも劣らないと思う。
 宝田明はいかにも時代劇慣れしていない感じだが、眉目秀麗にして長身の若武者という役には合っている。司葉子の姫君には、もう少し高貴さが欲しい気がした。平八郎のなじみの居酒屋の主人の藤原釜足は相変わらずいい味出している。
 この作品の冒頭に出てくる見世物小屋の孔雀は動物園から借りてきた本物で、なかなか羽を開かず困ったそうだ。(2005/05/25)

大坂城物語 おおさかじょうものがたり
監督 稲垣浩
公開年 1961年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『大坂城物語』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 田舎から大坂(大阪)に出てきた茂兵衛(三船敏郎)は、旧知の薄田隼人正(平田昭彦)とその同志の阿伊(香川京子)が豊臣と徳川に和を結ばせるため苦心しているのを知る。阿伊に惹かれた茂兵衛は霧隠才蔵(市川団子、のち市川猿之助)と共に、千姫(星由里子)誘拐の陰謀や徳川方に鉄砲弾薬を売り渡そうとする商人(香川良介)と戦う。

 村上元三の原作の映画化(脚本:稲垣浩・木村武)。特技監督の円谷英二も参加している、東宝の一連の大作時代劇の一本。淀殿として山田五十鈴、秀頼として岩井半四郎、その他に久我美子も出演してキャストも豪華。丹波哲郎も今のイメージからするとちょっと意外な役で出演。
 主人公・茂兵衛は元々侍ではない暴れん坊が戦に参加するという設定で、どこか『七人の侍』の菊千代をちょっと彷彿とさせるキャラになっている。コメディリリーフ的な登場人物(上田吉二郎)とのかけ合いもあったりして、大阪の陣を題材にした映画にありがちな悲壮感は薄く、明るい雰囲気の作品になっている。
 序盤は戦後の稲垣作品にしてはテンポが良く、茂兵衛の空回り気味の奮闘がユーモラス。中盤は少々中だるみ気味だが、終盤の茂兵衛の活躍はいささか非現実的な点もあるものの、強引に押し切る演出と三船の熱演、そして特撮の迫力で一気に見せられる。特撮はミニチュアっぽいところや合成がわかるところもあるが、質感が一様な現在のCGよりもリアルな部分もある。(2005/03/18)

忠臣蔵 花の巻 雪の巻 ちゅうしんぐらはなのまきゆきのまき
監督 稲垣浩
公開年 1962年
評点[B]
感想
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忠臣蔵 花の巻・雪の巻
忠臣蔵
花の巻・雪の巻

 稲垣浩監督の『忠臣蔵 花の巻 雪の巻』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 元禄十三年三月十四日、播州赤穂浅野家当主・浅野内匠頭(加山雄三)は江戸城松ノ廊下で吉良上野介(市川中車)相手に刃傷事件を起こし、その身は切腹、浅野家は断絶となった。浅野家筆頭家老・大石内蔵助(八世松本幸四郎、のち松本白鴎)は主君の仇を討つことを決意する。

 忠臣蔵ものの一つ。3時間弱の大作で、展開のテンポもさほど早くはないが、ダラダラしている感も無い。松本幸四郎の大石内蔵助が素晴らしい。何回かある泣くシーンも、臭さを感じさせず本当に悲しそうに見えた。吉良は従来のイメージ通りの因業爺ィという感じ。この作品では寺坂吉右衛門(加東大介)にスポットが当てられていて、『仮名手本忠臣蔵』のように、お軽(団令子)が吉右衛門の妹という設定になっていた。
 岡野金右衛門(夏木陽介)の「恋の絵図面取り」など定番エピソードも含まれているけれども、松ノ廊下での吉良の服装(大紋ではなく狩衣が正しい)や四十六士(この作品では寺坂吉衛門脱落説を採っている)の討入り時の服装(黒小袖以外は各々まちまちの服装)など、かなりリアルに考証されているのが良かった。そのためか、講談ネタが元の完全に架空のキャラである俵星玄蕃(三船敏郎)のエピソードが浮いていたような気がする。(2002/12/21)

秘剣 ひけん
監督 稲垣浩
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、稲垣浩監督の『秘剣』を観た。昭和三十八年(1963)の作品。

 寛永年間の豊前小倉藩。剣の達人だが性狷介な早川典膳(市川染五郎、のち松本幸四郎)は、客として主家を訪れた宮本武蔵(月形龍之介)を侮辱して逼塞を申し渡されると脱藩して山中で修行し、秘太刀を生み出したと自称する。一方、典膳と幼なじみで無二の親友の細尾長十郎(長門裕之)は上意討ちの追っ手として選ばれてしまう。

 『柳生武芸帖』などの五味康祐の小説の映画化(脚本:稲垣浩・木村武)。
 剣の達人である典膳を名人としてではなく、人間的に未熟で平和な世には無用な一種の欠陥人間として描いている。実際、観ていると主人公にはイライラさせられるほど。染五郎(現・松本幸四郎)のまだ生硬な演技も相乗効果になっているかも。典膳に魅力がないので、追う側の長十郎の心理描写などがもっと欲しかった。長門裕之の演技は悪くないのだが、全体に第三者的な視点からの淡々とした描写が続いてちょっと退屈させられる。
 老境の宮本武蔵を演じた月形龍之介が実に素晴らしい。もの凄い貫禄。その他、登場シーンの多い藩の老臣を演じた左卜全や目付の三井弘次の演技が軽快で、作品の息抜きになっていた。脇役の描写が良く、映像もモノクロ画面が重厚で時折使われる凝った構図が効果的なので(撮影:山田一夫)、もう少しテンポ良く展開し、長十郎の苦悩がもっと描かれていれば、より傑作になったかもしれない、と思った。(2005/06/04)

士魂魔道 大龍巻 しこんまどうだいたつまき
監督 稲垣浩
公開年 1964年
評点[B]
感想  今日は、稲垣浩監督の『士魂魔道 大龍巻』を観た。昭和三十九年(1964)の作品。

 大阪夏の陣の最後の日、豊臣方の深見重兵衛(市川染五郎、のち松本幸四郎)・草薙修理(佐藤允)・奥野久之助(夏木陽介)の三人の若武者はそれぞれの道を行くことを決めて別れた。重兵衛は秀頼の遺児・国松を守って腰元の小里(星由里子)と共に逃れたが、国松を徳川方に奪われ、小里とも離れてしまう。やがて、三人は豊臣再興を大義名分とする欲望の渦に巻き込まれていく。

 南條範夫の小説を基にした時代劇だが(脚本:木村武・稲垣浩)、特技監督に円谷英二を迎えた特撮映画でもある。縮小模型で撮ったと思われる城の炎上や爆発シーンはかなりリアルで、最近の大河ドラマのしょぼいCGよりずっと良い。かけられた費用も時間もケタ違いだろうから、単純な比較は無意味かもしれないが。題名の竜巻も、当時としては非常にリアルだと思う。
 内容的には、若武者たちの三者三様の生き方や、小里とその姉・菊江(久我美子)ら女たち、そして豊臣再興を名目として欲望に走った武藤満太(戸上城太郎)・鷲尾九十郎(稲葉義男)といったキャラたちを平行して描いていて、巧みに映画的に構成された脚本だと思う。そのためか、まとまりに欠ける感もあり、一応主人公の重兵衛の陰が薄くなったのはちょっと惜しい。
 市川染五郎の演技は若い感じがするが、歌舞伎の人にしてはかなりナチュラルで映画向き。殺陣もまぁまぁ。ただし、まだ線が細く存在感は今ひとつな感じ。演技陣の中では、悪役の稲葉義男と戸上城太郎のセコさとふてぶてしさを併せ持った存在感が目立った。(2003/05/03)

暴れ豪右衛門 あばれごうえもん
監督 稲垣浩
公開年 1966年
評点[A’]
感想  今日は、稲垣浩監督の『暴れ豪右衛門』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 加賀の国を治める加賀七党の中の一派を率い、周囲の大名にも勇名を轟かせている豪右衛門(三船敏郎)は侍嫌いで、百姓の側に立って戦うことに誇りを持っていた。そこに、隣国の大名・円城寺家の人質となっていた豪右衛門の弟たち弥籐太(佐藤允)と隼人(田村亮)が帰ってくる。弥籐太は豪右衛門を尊敬の眼差しで見るが、若い隼人は粗野な長兄に反発する。

 守護大名を追い出した加賀の国人一揆を題材にした作品で、原作はなく井手雅人と稲垣監督のオリジナル脚本らしい。
 題名どおり主人公は荒武者そのものなのに侍を嫌っているというのが面白い。実際は戦国時代には武士と農民が截然と分かれていたわけではなく、土豪(国人)も自分を侍だと思っていただろうから、ちょっと変なのだけれども、暴れん坊が武士嫌いという矛盾が面白い設定になっている。
 また、豪右衛門は強いだけではなく、周囲をまとめる人間的魅力も持っていることがわかる脚本・演出になっている。三船も悪い時の一本調子の演技ではなく、この作品ではそのあたりを演じ分けているように見えるのは、稲垣演出のおかげだろうか。
 上記のように設定に疑問があり、登場人物が“平和”を求めたりするなど戦後民主主義的な臭いもし、オチの付け方もちょっと食い足りない感がある。しかし、主人公と二人の弟たちや風来坊の謎の浪人(加東大介)・近隣の朝倉家の家臣で豪右衛門一派を滅ぼそうとする但馬(西村晃)といったメインキャラクターたちが各々個性豊かに描けていたので個人的には好きな作品だ。イマイチという人もいるかもしれないけど。(2005/01/28)

風林火山 ふうりんかざん
監督 稲垣浩
公開年 1969年
評点[B]
感想
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風林火山
風林火山

 今日は、稲垣浩監督の『風林火山』を観た。昭和四十四年(1969)の作品。

 浪々の身から武田家の軍師となった山本勘助(三船敏郎)は姦計によって隣国の諏訪家を滅ぼし、その遺児の由布姫(佐久間良子)は武田晴信(中村錦之助、のち萬屋錦之介)の側室にされた。勘助は由布姫とその子・勝頼(中村勘九郎、のち中村勘三郎)のために尽くすことを決意し、やがて晴信から信玄と名を改めた主君と共に川中島での上杉謙信(石原裕次郎)との対決に臨む。

 三船敏郎の三船プロダクションによる井上靖原作の映画化(脚本:橋本忍・国弘威雄)。同じく独立プロを率いていた中村錦之助と石原裕次郎が共演している。
 冒頭は主人公が計略を以って武田家にもぐりこんで活躍する展開なので、戦国の非情な弱肉強食の世界を描いているのかと思ったら、意外や勘助はロマンティストでメロドラマ的になるので拍子抜け(?)。
 ただし、かなり甘い感じのキャラクターたちとストーリーではあるものの、2時間45分の大長編ながらも展開に抑揚があり、セットや登場人物の衣装そして合戦シーンなど大がかりで見ごたえがあるので結構楽しめる。さすがに途中で集中力を持続するのに努力を要するところもあったが。悪くすると冗長になってしまうこともある、ケレン味のない稲垣演出も、この作品では男のロマンと哀愁をかもし出して成功したか。
 終盤の川中島合戦では霧の深さと規模に驚いた。スモーク焚きまくりで大変だったろう(撮影:山田一夫)。(2005/04/16)

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