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伊藤大輔

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御誂次郎吉格子 おあつらえじろきちごうし
監督 伊藤大輔
公開年 1931年
評点[A]
感想  今日は、伊藤大輔監督の『御誂次郎吉格子』を観た。昭和六年(1931)の作品。

 江戸から上方に逃れた鼠小僧こと次郎吉(大河内傳次郎)は、悪党の仁吉(高勢実乗)から薄幸の少女お喜乃(伏見信子)を救おうとする。次郎吉に惚れているが振り向いてもらえない商売女お仙(伏見直江)は次郎吉のために……。

 伊藤大輔監督のサイレント作品の中で完全に近い形で現存するのはこれだけだと言われている(近年発見された『忠治旅日記』は欠落が多い)。原作は吉川英治(脚本:伊藤大輔)。
 サイレント映画らしく小気味良いリズムでショットを積み重ねてテンポ良く進む一方で、情感ある場面ではじっくりと見せる。その対比が効果的で、映像作家としての伊藤大輔の力量を知ることができる。伊藤大輔作品で有名な移動撮影や立ち回りはほとんどないが、終盤に押し寄せる御用提灯の迫力は圧倒的。
 まだ若さを残している大河内傳次郎はもちろん良いし、伏見信子やヴァンプ的女優として有名だった伏見直江も好演。高瀬実乗も小悪党的いやらしさを存分に見せ付けてくれる。
 やはり、伊藤監督のサイレント作品がほとんど残っていないことが残念だ。(2004/10/08)

鞍馬天狗 黄金地獄(鞍馬天狗 横浜に現はる) くらまてんぐおうごんじごく
監督 伊藤大輔
公開年 1942年
評点[C]
感想  今日は、嵐寛寿郎主演の『鞍馬天狗 黄金地獄』を観た。監督は伊藤大輔で、昭和十七年(1942)の作品。

 時は明治四年。政府の横浜運上所は、関税の中に金の割合が低い不良通貨が大量に混入しているため対策に頭を痛めていた。その相手は政府の蒸気船建造を請け負っている大商人ヤコブ(上山草人)なので、軽々しく手を出せない。その頃、横浜をにぎわせているサーカス団の下働きに、ぼんやりの倉田を略して“ぼんくら”と呼ばれている浪人・倉田典膳(嵐寛寿郎)がいた……。

 おなじみ大佛次郎原作の鞍馬天狗だが、この作品は伊藤大輔のオリジナル脚本。時代を一気に維新後に移してしまっている。
 鞍馬天狗が身を隠している場所の設定が面白く、序盤から中盤あたりまでは明治初年の横浜の町の風情やサーカス団の華やかなパレードと裏方の対比などが面白い。なぜか杉作(澤勝彦)たちとは初対面という設定が不思議だが……。
 しかし伊藤大輔らしく工夫された脚本だが、中盤以降はテンポが鈍り、舞台が地下道や夜の室内に移るので、何をやっているのかよくわからなくなってしまう。アイデアは良いのだが、当時の技術的限界に足を引っ張られてしまった。また、鞍馬天狗をスーパーマンではなく人間らしく描こうとしたのかもしれないが、強さが失せて終盤は後味の悪い展開になってしまったように思う。

 それと、これは伊藤大輔監督が嵐寛寿郎に300m駆けながら立ち回りする大移動カットを強いて寛寿郎が見事やり遂げたことで有名な作品だが、それらしい殺陣のシーンに意外と迫力が無かった。あるいは、現在残っているプリントはオリジナルより短いようなので、戦後の再公開時に(『黄金地獄』は再公開時のサブタイトル。公開当時は『横浜に現はる』だったらしい)GHQをはばかって殺陣の部分をカットしてしまったのだろうか?
 サイレント時代にハリウッドで活躍したという上山草人の外人っぷりはさすがだった。終盤の悪役としての迫力も満点。(2004/07/04)

宮本武蔵 金剛院の決闘 みやもとむさしこんごういんのけっとう
監督 伊藤大輔
公開年 1943年
評点[A’]
感想  今日も、片岡千恵蔵主演の『宮本武蔵 金剛院の決闘』を観た。監督は伊藤大輔で、昭和十八年(1943)の作品。原題は『二刀流開眼』で、戦後の公開時に『金剛院の決闘』に改められたらしい。

 沢庵和尚(香川良介)によって姫路城内に三年間閉じ込められていた最中に万巻の書を読んで人の道を知った武蔵(片岡千恵蔵)は剣の道に生きることを決意する。金剛院の山伏相手に試合の際に二刀流へのヒントを得、やがて柳生の里を訪れ、柳生石舟斎(高山徳右衛門)との面会を求める。

 これも吉川武蔵の一部の映画化(脚本:伊藤大輔)。監督が伊藤大輔になり、お通が宮城千賀子から相馬千恵子に交替し、沢庵などのキャストも変わっている。厳しさ・たくましさを感じさせる香川良介の沢庵が特に良い。
 ズームやオーバーラップなどが多用され、かなり凝った絵作り。戦中の作品にしては画質も良いこともあって、現代的な印象さえ受ける。
 かなりオリジナルのエピソードが入っているようだが、全体に武蔵が圧倒的に強く見える。それがあるためか、柳生の城での石舟斎の言葉が印象に残る。飄々とした雰囲気もある“柳生四高弟”や老成した雰囲気を見せる石舟斎がいい感じ。(2003/06/06)

宮本武蔵 決闘般若坂 みやもとむさしけっとうはんにゃざか
監督 伊藤大輔
公開年 1943年
評点[B]
感想  今日は『宮本武蔵 決闘般若坂』も観た。監督は伊藤大輔で、昭和十八年(1943)の作品。

 武蔵(片岡千恵蔵)が試合で倒した金剛院の院主は、実は鎖鎌の達人・宍戸梅軒(月形龍之介)の弟だった。武蔵を仇と狙う宍戸梅軒や金剛院の山伏たちが武蔵を狙う。

 宍戸梅軒がメインのエピソードで、月形龍之介はまさに適役。あばた面のメイクはちょっとやりすぎだが。武蔵は敵だらけで、本当にトラブルメーカーと言うか強すぎると敵ができるものだなあ、と思った。この編では朱美(市川春代)と又八(原健作)が話に絡んでくる。
 この作品もオリジナル部分が多いようだが、村祭りと殺陣を組み合わせて盛り上げる構成が見事。(2003/06/07)

東海水滸伝 とうかいすいこでん
監督 伊藤大輔・稲垣浩
公開年 1945年
評点[A’]
感想  今日は、伊藤大輔・稲垣浩共同監督の『東海水滸伝』を観た。昭和二十年(1945)の作品。

 清水の次郎長(阪東妻三郎)は、やくざ稼業から足を洗い喧嘩をやめることを宣言し、自分の刀を森の石松(片岡千恵蔵)に預けて金毘羅様に奉納させる。代参を済ませた石松は人から預かった百両の大金を懐にしたまま鳥の吉兵衛(遠山満)のところで道草を食ってしまい……。

 おなじみ清水の次郎長の話だが、実質的な主人公は石松。三十石船での「江戸っ子だってね、寿司食いねぇ」や石松の闇討ちなどの定番ネタに加えて、幼なじみの娘おりき(花柳小菊)と淡い想いを交わすエピソードがオリジナルで加わっている。そのおりきと川べり(?)で語り合うシーンや盆踊りをするシーンの雰囲気が良く、映像も美しい(撮影:宮川一夫・石本秀雄)。
 石松の兄貴分の小松村の七五郎として市川右太衛門が出演していて、かなり貫禄のある七五郎になっている。さすがに右太衛門では他の次郎長もののように情けない七五郎にするわけにはいかなかったのだろうか。これは儲け役。
 対して次郎長の印象が薄い感じがする。序盤にやくざから足を洗うと決心して、終盤に石松のために誓いを破って立ち上がる理屈がちょっと弱い。脚本にもう一工夫あったら、より傑作になったかもしれない(脚本:八尋不二)。
 とはいうものの、石松が狙われたところや終盤の立ち回りもカットされずに残っているし、おりきとのカラミのシーンも良いので、終戦の年に作られた作品としては水準の高い佳作レベルの一本だと思う。戦争協力的な内容もないし。立ち回りを伊藤大輔、石松×おりきのシーンを稲垣浩、と分担して撮ったのだろうか。そんな截然と分けられるものではないだろうが。(2004/07/18)

素浪人罷通る すろうにんまかりとおる
監督 伊藤大輔
公開年 1947年
評点[A’]
感想
Amazon
阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX
阪東妻三郎傑作選
DVD-BOX
王将
素浪人罷通る
伊賀の水月
無法松の一生
剣風練兵館
木曾の天狗
狐の呉れた赤ん坊
月の出の決闘
富士に立つ影
国定忠治

 今日は、阪東妻三郎主演の『素浪人罷通る』を観た。監督は伊藤大輔で、昭和二十二年(1947)の作品。

 時は八代将軍吉宗(守田勘弥)の頃。紀州の若い山伏・天一(片山明彦)は、将軍の落胤と称して江戸に向かった。やくざや浪人が天一を担ぎ上げる中、彼の思いを知った浪人・山内伊賀亮(阪東妻三郎)は父子対面のため命を賭ける。

 有名な天一坊事件を基にした作品だが、キャラクターはほとんどオリジナルに近い(脚本:八尋不二)。冒頭とラストに入った字幕には驚かされたが、進駐軍に対するエクスキューズだろうか。あまり気にしない方が良いかもしれない。あれにこだわらなくても、いち人間の悲劇を描いた作品として観ることができると思う。
 阪妻の超オーバーな演技や濃いメイクが所々気にはなったが、親しみを持てる庶民的な面と威厳とをあわせ持った存在感は素晴らしい。阪妻が寺子屋で授業しながら天一坊を助けることを決意するシーンやラストシーンでの無言の演技が良い。特に、天一坊を助けることを決意するシーンは、外から聞こえる音や寺子屋の子供達、そして阪妻とその妻(平井岐代子)といった様々な要素が組み合わさって阪妻の心の動きを表現していて、脚本と演出が非常に巧みだと感じた。
 天一坊は十代の若者という設定だから仕方ないのかもしれないが、もう少し存在感が欲しかった。それに、演技も未熟に感じた。(2003/09/16)

王将 おうしょう
監督 伊藤大輔
公開年 1948年
評点[超A]
感想
Amazon
阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX
阪東妻三郎傑作選
DVD-BOX
王将
素浪人罷通る
伊賀の水月
無法松の一生
剣風練兵館
木曾の天狗
狐の呉れた赤ん坊
月の出の決闘
富士に立つ影
国定忠治

 今日は、阪東妻三郎主演の『王将』を観た。監督は伊藤大輔で、昭和二十三年(1953)の作品。

 大阪は天王寺の裏長屋に住むぞうり職人の坂田三吉(阪東妻三郎)は、字も知らないほど無学だが、将棋だけはめっぽう強かった。ろくに仕事もせず将棋に夢中な夫に一度は愛想を尽かした妻の小春(水戸光子)も、三吉の将棋への熱意を見て、彼を支えていくことを決意する。プロになった三吉は、老いた妻と美しく成長した娘・玉枝(三條美紀)に見守られながら、アマ時代からの宿敵である東京の関根金次郎(瀧澤修)と対決する。

 「銀が泣いている」の名台詞や演歌の『王将』で知られる坂田三吉の半生。原作は北條秀司の戯曲(脚本:伊藤大輔)。戦後しばらく、時代劇映画を作りづらくなっていた時期に阪妻が『無法松の一生』同様、貧しい庶民の姿を演じている。
 阪妻はまさにオーバーアクションなほどの大熱演。水戸光子も三條美紀も同様な熱演をしている。小津安二郎が伊藤大輔監督の『我幻の魚を見たり』を観て「ギョギョギョだ」と言ったように、人によっては好みに合わないかもしれないが、この作品では伊藤演出が成功していると思う。個人的には、棒読みのような台詞回しや“自然な演技”よりも、こういう演出のほうが映画らしい映画だという気がする。もちろんそれには限度があるだろうが……。
 各エピソードも巧みで、妻の小春が夫を支えることを決意する場面や娘の玉枝が父に意見するシーンは感動的だし(原作にあるのかもしれないが)、絵作りも古典的ながらもパワフル。史実とは異なる部分もあり、阪妻の三吉は実際の坂田三吉像とは異なるらしいが、とにかく人に訴える力の強い名作だと思う。
 三吉が鏡を見たところは本当に凄い。ラストシーンも不思議だが余韻が残る。あれ、阪妻本人がやったのかな?(2002/11/26)

レ・ミゼラブル あゝ無情 れみぜらぶるああむじょう
監督 伊藤大輔・マキノ雅弘
公開年 1950年
評点[A]
感想  今日は、伊藤大輔・マキノ雅弘両監督の『レ・ミゼラブル あゝ無情』を観た。昭和二十五年(1950)の作品。

 茶碗一杯の飯を盗んだ罪で獄に繋がれた岩吉(早川雪洲)は出獄後も荒んでいたが、ミリエル司教(F・シュバリエ)の温情により改心して名を変え前歴を隠し、社会のため尽くそうと働いて財を成すに至った。かつて瀕死の女お絹(小夜福子)に託された小雪(早川富士子)の成長のみを楽しみとして生きていたが、法の権化である熊谷警部(薄田研二)はそんな彼の過去を執拗に追う。

 題名が示すように、かのビクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の舞台を明治維新頃の日本に翻案した作品(構成:八木保太郎/脚本:棚田吾郎・舟橋和郎)。前編・後編で4時間近くなる大作映画だったようだが、私が観ることができたのは前後編を合わせて2時間11分ほどにした総集編。それでも山場たっぷり見どころたっぷりの大作だった。
 若い頃は一時キリスト教に傾倒し後に共産主義運動に移ったという伊藤大輔監督の原作に対する思い入れが強いのか、演出もロマン主義的(?)で出演者たちが目一杯の演技を繰り広げる。今の人間の目で観ると大芝居だが、シラケや照れのない真正面の力押しの演出でしか生まれない感動を味わえるのも確か。設定を日本に置き換えるとちょっと不自然なところをものともせず感動のラストシーンまで突き進む。
 サイレント時代のアメリカで大俳優だった早川雪洲は大熱演でジャン・バルジャンの岩吉を演じきる。熊谷警部(ジャベル)の薄田研二もあの鋭い顔立ちと痩身がぴったりハマっている。小雪(コゼツ)の早川富士子は雪洲の娘だそうで、特に上手さは感じさせないが可憐ではあった。出演者は全体に大芝居だが、お絹(ファンティーヌ)の小夜福子はちょっとやりすぎだったような……。
 前編が伊藤監督で後編がマキノ監督らしいが、総集編で観るとトーンは一定しているので、マキノ監督が伊藤監督に合わせたのだろうか。総集編でも不自然なところは感じさせないけれども、山田宏一が『次郎長三国志 マキノ雅弘の世界』(ワイズ出版)という本で書いていた、この作品の印象的なシーンのいくつかが無かったりしたので、できれば前後編を観てみたい。残っているかな?(2004/11/09)

大江戸五人男 おおえどごにんおとこ
監督 伊藤大輔
公開年 1951年
評点[A]
感想  今日は、伊藤大輔監督の『大江戸五人男』を見た。昭和二十六年(1951)の作品。

 江戸の町を二分するの町奴の頭目・幡隋院長兵衛(阪東妻三郎)と旗本奴の頭目・水野十郎左衛門(市川右太衛門)。水野は長兵衛の男としての器を認めるが、周囲の状況は二人を決定的な対立へと追い込んでいく。

 阪妻・右太衛門・月形龍之介・山田五十鈴・高峰三枝子・高田浩吉・高橋貞二などのスターが総出演した松竹創立三十周年記念作品。歌舞伎の『幡隋院長兵衛』や『魚屋宗五郎』『番町皿屋敷』を巧みに組み合わせたストーリーで、脚本が秀逸(八尋不二・柳川真一・依田義賢)。歌舞伎の粗筋の非論理的な部分を補って、長兵衛と水野が対決せざるを得なくなる過程が比較的無理なく描かれている。
 長兵衛の阪妻も水野の右太衛門も男っぷりが見事で、二人が直接対決するラストは感動的。それと、劇中劇で『皿屋敷』を演ずる水木あやめ役の河原崎権三郎も良い。色男の白井権八役の高橋貞二は、現代風の演技が他の戦前からのスターの時代劇的な演技から少々浮いているような気もするが、軽い若者の雰囲気は出せていたかもしれない。(2002/07/03)

春琴物語 しゅんきんものがたり
監督 伊藤大輔
公開年 1954年
評点[C]
感想  今日は、伊藤大輔監督の『春琴物語』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 明治初期、大阪の大きな薬種問屋の次女・春琴(京マチ子)は、幼時に視力を失ってから琴・三味線の道に打ち込み、師匠から名をもらうほどだった。誇り高く気難しい彼女は、店の奉公人だった佐助(花柳喜章)にだけ身の回りの世話をさせていた。

 谷崎潤一郎『春琴抄』の二度目の映画化。まだ三度目の山口百恵&三浦友和版しか観ていないので、それと比べると、この『春琴物語』はかなりオリジナル要素が多いような印象を受ける。琴の道でのライバル心を抱くキャラ(杉村春子)が増やされて、大店の若旦那(船越英二)が春琴に言い寄るエピソードの伏線になっている。
 脚本(八尋不二)も演出も全体的にわかりやすくしようと心がけているようだが、やり過ぎで観客の想像の余地を残しておいた方が良かったと思う。京マチ子は非常に美しいし(ちょっと付けマツゲが長いけど)、生真面目そうな花柳喜章は佐助に合っていたが。エピローグ部分も蛇足。
 映像(撮影:山崎安一郎)は、伊藤大輔らしく所々かなり凝った撮り方がされていたし、京マチ子を撮った屋外の露出オーバー気味の映像は、確かに若旦那が見とれるほど京マチ子の整った顔立ちが強調されていた。(2004/05/02)

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伊藤大輔
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