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川島雄三

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還って来た男 かえってきたおとこ
監督 川島雄三
公開年 1944年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『還って来た男』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 時は戦時中、召集解除になった若い軍医(佐野周二)が虚弱児童のための施設を作ろうと思い立ち、父親(笠智衆)に財産を譲ってくれと頼む。父親は快諾するが、ただ一つの条件として見合いをして結婚しろと言う。
 一週間後に見合いを控えているのに、せっかちな彼は慰問袋を送ってくれた女性の家に御礼を言いに行ったり、戦死した旧友の妹に会いに行ったり、忙しく動き回る。元軍医でハンサムな彼は出会った女性全ての関心を惹くが、本人はそんなことには気づかない。そんな中、偶然出会った女性(田中絹代)が見合い相手だとわかり…。

 川島監督の第一作で、まだ若い感じで『幕末太陽伝』ほどの完成度は無く、大爆笑というほどではないが、戦時中の作品とは思えないほど明るいコメディの佳作。
 ちょっとだけ「増産のために工場に働きに行く」などのスローガン的なものがあるけれども、佐野周二は背広にネクタイ姿で、女性教師役の田中絹代などもスーツのような洋服を着ていて、全体に戦時中の作品とは思えない雰囲気。こういう点が官憲には不評だったようだ。
 佐野周二のコメディ演技は、まぁまぁという感じだったが、田中絹代以外の女性との関係をサラッと流したのは、川島監督らしいと思った。のちの『洲崎パラダイス 赤信号』を思い起こさせる。佐野周二と笠智衆が親子というのは小津監督の『父ありき』(1942)に続いて2作目。笠の演技は、小津作品よりは自由なような感じがする。(2000/08/28)

深夜の市長 しんやのしちょう
監督 川島雄三
公開年 1947年
評点[C]
感想  今日は、川島雄三監督の『深夜の市長』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 戦中に冤罪で死刑になった兄の無実を明かすため奔走する黒市憲三(安部徹)は、事件の裏を知る溝呂木文吉(山内明)を探す。そのころ街で偶然知り合った旗江(空あけみ)は偶然にも文吉の妹だった。そんな彼らを“深夜の市長”と呼ばれる謎の男・室戸(月形龍之介)が見つめる。

 川島監督の4本目で、デビュー作『還って来た男』に告ぐ長編2作目。といっても73分ほどの中編。海野十三の同題小説が有名だが、この作品と関係はないらしい(脚本:陶山鉄)。
 のちに悪役俳優として活躍する安部徹が二枚目の主役を演じているので驚かされる。金子信雄や名和宏や南原宏治もキャリア初期は二枚目役を演じていたから、二枚目→悪役というのは、びっくりするようなことではないのかもしれないが。
 安部徹はまだデビュー数年目で演技が硬いのは別として、女性よりも背が低いような三井秀男が頑張って悪の一味を演じていたりして、まずミスキャストが気になる。その上、演出が一本調子でテンポが悪い。旗江の空あけみと室戸の情婦役の村田知英子、ヒロイン級の女優二人が双方とも魅力がないのも厳しい。本当にその辺の姉ちゃんにしか見えないのだもの。松竹もこの頃はスター以外の中堅層が手薄だったのかしら。
 出来が今ひとつなのは自他共に認めていたそうで、この作品のあと監督から助監督に戻され、1年あまり自分の作品を作らせてもらえなかったらしい。ありふれた言い回しだが、まだ若書きの域という感じがする。(2006/01/15)

オオ!市民諸君(シミキンのオオ!市民諸君) おおしみんしょくん
監督 川島雄三
公開年 1948年
評点[C]
感想
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シミキンのオオ市民諸君
シミキンの
オオ市民諸君

 今日は、川島雄三監督の『シミキンのオオ!市民諸君』を観た。昭和二十三年(1948)の作品。

 骨董マニアの成金・丸屋銀造(高屋朗)は、茶碗の沼津島とカン違いしてナマズ島という無人島を買ってしまった。転んでもタダでは起きない彼は、そこに歓楽街を作ろうとするが、島には三村金八(清水金一)以下5人の漂流者たちが住みついていた。金八を籠絡して彼らを追い出そうとする銀造一味と島の住人たちが引き起こす大騒ぎ。

 川島監督の、短編も含めると8作目の作品。題名にもあるように、主人公が5人しかいない島の住人に対して「市民諸君」と呼びかけたり、なんでも投票して決めるなど、当時の戦後社会を諷刺した作品らしい。
 しかし、後の川島作品に見られるような毒が無く、ギャグも古典的なドタバタで、当時ならともかく今観ると古臭い喜劇という感じ。まだ、川島監督らしさはあまりないと思う。ラスト近くだけ少し面白く感じたが。あと、金八の彼女のアン子を演じた勅使河原幸子は今から観ても可愛い。(2001/05/19)

女優と名探偵 じょゆうとめいたんてい
監督 川島雄三
公開年 1950年
評点[C]
感想  今日は、川島雄三監督の『女優と名探偵』を観た。昭和二十五年(1950)の作品。

 自称名探偵(日守新一)は銀座でぶつかってきた若い女(西條鮎子)に謝られてニヤニヤしていると、財布をすられていたことに気づいて呆然。ボロアパートに待ち受けていた金融業者(河村黎吉)やアパートの管理人(坂本武)から逃れるように町に出て、女スリを見つけて後を追うと、彼女はなぜか松竹大船撮影所に入っていった。

 川島監督の9本目で、上映時間31分の短編。“原案”として監督の瑞穂春海の名がある(脚本:中山隆三)。
 主人公の探偵がちょびヒゲを生やしてステッキを持っていることが示しているように、チャップリンその他の外国製喜劇映画を意図的にパクっている作品。ドタバタも最初のうちは面白いが、そのうち少々くどく感じられるようになってくる。以前、川島監督自身が「自作を語る」で「おまえはあいているから、というんで、短編の仕事がまわってきました。意気消沈の時で、ただやっている、という感じ」と語っているのを読んでしまっていたので、先入観が影響したのかもしれないが。
 ただし、終盤のナンセンスな展開は川島雄三らしさが多少なりとも感じられるような気がする。とは言うものの、映画館の番組の埋め草的な印象は否めないと思う。
 佐野周二に始まって、田中絹代・高峰三枝子・木暮実千代・淡島千景などなどの当時の松竹スターたちがカメオ出演しているのと、撮影所内の様子が見られることは興味深い。(2006/01/12)

とんかつ大将 とんかつたいしょう
監督 川島雄三
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、川島雄三監督の『とんかつ大将』を観た。昭和二十七年(1943)の作品。

 浅草の亀の子横丁に住むとんかつ好きの医師・荒木勇作(佐野周二)は皆から“とんかつ大将”と呼ばれて慕われていた。とんかつ大将は、若い女院長(津島恵子)が経営する長屋裏の病院の拡張による長屋の立ち退き問題や、かつての恋人(幾野道子)との再会など様々な事件に巻き込まれる。


 あの『姿三四郎』の作者・富田常雄の原作の映画化だという(脚本:川島雄三)。
 下町人情物のフォーマットにのっとったストーリーという感じで、坂本武などが演ずる長屋の住人たちや元恋人とその夫とのエピソードなどは、今の目で観てしまうとちょっと類型的。しかし、主人公に影があるように見える理由や女院長のと関係はオリジナリティを感じさせ、とんかつ大将の同居人である艶歌師(三井弘次)がいいキャラクターになっている。
 この作品も川島監督が職人としての腕を見せたという感じでエキセントリックなところはないが、一見人情家で実はいい加減なところが強調されているような長屋の住人の描き方に彼らしさが出ているだろうか。原作どおりかもしれないが。
 とんかつ大将を慕う女性(角梨枝子)の弟として高橋貞二が出演。このころはまだ主役を張る前の段階だったのだろうか。(2005/08/01)

お嬢さん社長(お孃さん社長) おじょうさんしゃちょう
監督 川島雄三
公開年 1953年
評点[B]
感想
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美空ひばり DVD-BOX 2
美空ひばり
DVD-BOX 2

『お嬢さん社長』
『陽気な渡り鳥』
『ひばりの陽気な天使』
『青春ロマンスシート
青草に坐す』

 今日は、川島雄三監督の『お嬢さん社長』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 “日本一乳菓”のワンマン社長・小原重三郎(市川小太夫)が健康を害して会長に退き、孫娘マドカ(美空ひばり)が社長に就任することになった。歌手志望のマドカは社長になる前からたびたび浅草の稲荷横丁に行っていたが、そこにレビュー歌手だった亡き母の父・桜川一八(坂本武)が住んでいることはまだ知らなかった。一方、会社にも奸物の専務(多々良純)らが巣食っていた。

 美空ひばり主演映画の一本(脚本:富田義朗・柳沢類寿)。16歳という設定で、このころになるともう子供っぽくなく、のちのイメージに近くなっている。
 歌+恋愛+人情噺という美空ひばり映画のフォーマットに沿っていて、さすがに川島監督も奇をてらったようなところはほとんどなく、おとなしい作りで無難な映画になっている。
 ただし、幇間である一八の弟子として登場する桂小金治は、妙な踊りを見せたり、いいかげんだったり、浅草の連中がマドカをちやほやする中で一人だけマドカを金づるとして見ているような内心を暗示したりして、ちょっと薬味を添えている。川島監督お気に入りだった小金治は、この作品では、美空ひばりをちょっと皮肉っぽく見ていたであろう川島監督の分身といった役どころなのだろうか。
 また、マドカがテレビ番組に出演して大活躍したりして、テレビ放映が始まったばかりの時点で川島監督がテレビ時代を予見していたのもたいしたものかもしれない。(2005/07/15)

愛のお荷物 あいのおにもつ
監督 川島雄三
公開年 1955年
評点[A]
感想
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愛のお荷物
愛のお荷物

 今日は、川島雄三監督の『愛のお荷物』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 厚生大臣・新木錠三郎(山村聡)は、国会で戦後の人口急増の対策を野党議員(菅井きん)に追求されたものの、巧みな弁舌で一蹴する。しかし、彼が帰宅すると、四十過ぎの夫人(轟夕起子)から妊娠を告げられ、さらに息子(三橋達也)が自分の秘書(北原三枝)とデキていて、彼女が妊娠してしまったことを知らされる。

 川島監督の、日活での第一作。出生率の低下と高齢化社会が問題になっている今観ると隔世の感だが、人口増加はベビーブーム直後の当時としては深刻な社会問題だったのだろう(脚本:柳沢類寿・川島雄三)。
 妊娠がテーマだが、ちょっぴり艶笑風味という感じで下品にならず、各出演者もテンポよく動き回っているがドタバタギャグにもならず、川島監督の上手さを感じさせられる作品。川島監督と三橋達也両人の日活第一作のためか、あまりシニカルにもなっていないのはかえって意外。
 山村聡も轟夕起子も、喜劇的な役が意外と上手い。三橋達也も彼にしては珍しい三枚目の役だが、結構良い。北原三枝は、自他ともに美人であることを認めているという感じのいつもの雰囲気だが、役に合っているかも。
 新木錠三郎の父として東野英治郎、錠三郎の三女の婚約者としてフランキー堺、薬種問屋をしている新木家の番頭として殿山泰司、錠三郎のかつての愛人として山田五十鈴、さらに元“突貫小僧”の青木富夫まで出演していて、今からすると非常に豪華なキャスティング。(2003/05/11)

あした来る人 あしたくるひと
監督 川島雄三
公開年 1955年
評点[C]
感想
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あした来る人
あした来る人

 今日は、川島雄三監督の『あした来る人』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 大阪の大実業家・梶大助(山村聰)は、洋品店を持たせて世話している女・山名杏子(新珠三千代)がいるが、仕事のことで忙しく彼女と深い付き合いをしているわけではない。そんな関係を物足りなく思い始めた杏子、そして梶の一人娘で夫(三橋達也)との結婚生活がうまくいっていない八千代(月丘夢路)は、各々偶然の出会いによって変わりはじめる。

 井上靖の原作の映画化(脚本:菊島隆三)。実に手堅い“文芸映画”という感じで、複雑な人間関係を巧みに映像化している川島監督の手腕はさすがだは思うが、川島監督らしい機知や皮肉、映像的な工夫はほとんど見られなかった。カジカ研究家を演じた三國連太郎だけは面白かったが。
 2時間弱だが、少々長めに感じられる作品だった。(2002/10/20)

洲崎パラダイス 赤信号 すざきぱらだいすあかしんごう
監督 川島雄三
公開年 1956年
評点[A]
感想
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洲崎パラダイス 赤信号
洲崎パラダイス
赤信号

 今日、川島雄三監督の『洲崎パラダイス 赤信号』を観たです。昭和三十一年(1956)年の作品で、コント赤信号主演(嘘)…ではなくて、三橋達也&新珠三千代主演。『幕末太陽傳』で川島監督に興味を惹かれて、もう一つの代表作も借りちゃった。

 ストーリーは、でかい図体して甲斐性の無い男と奔放な女がくっついたり離れたりで、その他いくつかのカップルや夫婦の離別を描く…という感じで、大した筋ではないけれども、売春防止法直前の特飲街の頽廃的な雰囲気がよく再現されていたと思うっす。でも、飲み屋のオバチャンがあんな目に遭うのはかわいそうすぎるな〜(謎)。
 特筆すべきストーリーではないのに結構面白かったのは、役者がみんな上手いっすね。それに、テンポがよかった。やはり演出の腕かなぁ。しかし日本映画って、なぜ貧乏とか水商売とか娼婦とかを描くのが上手いんでしょう(笑)。そういえば、溝口健二の『赤線地帯』も同じ年の作品だな。(2000/04/22)

幕末太陽傳(幕末太陽伝) ばくまつたいようでん
監督 川島雄三
公開年 1957年
評点[超A]
感想
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幕末太陽傳
幕末太陽傳
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幕末太陽傳 コレクターズ・エディション
幕末太陽傳
コレクターズ・
エディション

 今日は川島雄三監督の『幕末太陽傳』を観たデス。昭和三十二年(1957)の作品。

 あの『栄光なき天才たち』(原作:伊藤智義/作画:森田信吾  集英社)に取りあげられた喜劇映画の傑作として有名デスね。川島監督の作品で一般に知られているのはこれ一本だけなのが川島ファンにとっては不満らしいのだが、確かにとても面白かったデス。
 フランキー堺の名演のせいか、あるいは川島の演出のためか、溝口や小津の作品ばかり観ていた目にはずいぶんと軽快なテンポの作品に見えたデス。デスデス言って変な文体で書いているけど、川島監督の口調を真似たのデス。彼は「生きることは恥ずかしいことデス」と言っていたそうデス。
 『栄光なき天才たち』で読んだことあるけど、川島雄三は45歳で早世しちゃったんだよなぁ。筋無力症だったか、ずっと不治の病を背負っていて。それでこの作品の主人公の居残り左平次を肺病病みにしちゃうんだから凄いデス。
 この作品のオチが、川島監督が最初主張していた通り、フランキー堺が撮影所から逃げ出して現代の街を走っていくようになってたら、どうなっていただろう。(2000/04/18)

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川島雄三
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