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木下恵介(木下惠介)
陸軍 りくぐん
監督 木下恵介
公開年 1944年
評点[C]
感想
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木下恵介 DVD-BOX 1
木下恵介 DVD-BOX 1
二十四の瞳
花咲く港
生きてゐる孫六
歓呼の町
陸軍
大曾根家の朝
わが恋せし乙女
結婚
不死鳥

 今日は、木下恵介監督の『陸軍』を観た。昭和十九年(1944)の作品。木下監督4本目の作品。

 父の高木友彦(笠智衆)は日露戦争に行き、息子の伸太郎(星野和正)は満州事変に出征し、父子二代続けて軍人になった北九州に住む高木家の物語。原作は火野葦平の同題小説。最近、中公文庫から復刊されたそうだ。

 まぁ、時期が時期だけに最初から最後まで「お国のために頑張ろう」という内容。特に、出征した息子のことを心配している老人(東野英治郎)に対して登場人物の一人が「貴公の息子一人が生きようが死のうが大したことない。男らしくせい!」と言うところはゾッとした。今になって観ると、全てアナクロ…というか、むしろシュール(笑)。ただ、一応は映画の形を成しているから不思議だ。
 しかし、有名なラストの、出征する息子を母親(田中絹代)が走って追いかけていくシーンは、目頭が熱くなった。やはり、田中絹代は上手い。彼女は生涯、母親になったことは無いのに…。ここだけは見所だ。実際、このシーンのせいで監督は軍部に睨まれたらしいし。(2000/12/12)

 おんな
監督 木下恵介
公開年 1948年
評点[A’]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第2集
木下惠介 DVD-BOX 2
カルメン故郷に帰る

肖像
破戒
お嬢さん乾杯
四谷怪談(前後篇)
破れ太鼓
婚約指環

 今日は、木下恵介監督の『女』を観た。昭和二十三年(1948)の作品。

 ダンサーの敏子(水戸光子)はゴロツキの正(小澤英太郎)と別れたいと願いながらも腐れ縁が続いていた。この日も、妙にあわてて浜松に行こうという正からなんとか逃れようとするが、引きずられていく。

 メインキャストは水戸光子と小澤栄太郎の二人だけで、ほとんどロケーション撮影という“天才”木下恵介監督らしい異色作。
 ほとんど全て二人芝居で、クローズアップや超クローズアップが多く、ちょっと画面が暑苦しい感があるし、小澤英太郎は小悪党らしいものの女を惹きつけ続けるだけの魅力を出せているかどうか疑問だが、ユニークな作品。トンネルを使った演出が面白く、終盤は怒涛の展開。大物俳優が二人だけなのは、終盤に予算を使うためだったのか? と思うくらい(笑)。
 描かれている男女像は図式的だが、表現のユニークさで記憶に残る作品。(2004/04/13)

破れ太鼓 やぶれだいこ
監督 木下恵介
公開年 1949年
評点[A]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第2集
木下惠介 DVD-BOX 2
カルメン故郷に帰る

肖像
破戒
お嬢さん乾杯
四谷怪談(前後篇)
破れ太鼓
婚約指環

 今日は、木下恵介監督の『破れ太鼓』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 一代で土建業を築き上げた津田軍平(阪東妻三郎)は、時代錯誤的な雷親父だった。時代の変化の中、彼のおかげで豊かな暮らしをさせてもらっていた家族たちも、ついに離反し始める。

 戦後民主社会における家父長制度の崩壊を描いた作品だと言われている。しかし、妻(村瀬幸子)は別として、4人の息子(上から太郎=森雅之/平二=木下忠司/又三郎=大泉滉/四郎=大塚正義)も2人の娘たち(上から秋子=小林トシ子/春子=桂木洋子)も、誇張が加えられているとはいえ今から観ると自分勝手に見え、父親が一番マトモな人間のように思えて共感してしまった(笑)。
 秋子の恋人の野中茂樹(宇野重吉)とその両親(滝沢修・東山千栄子)の芸術家一家も、時代を考えると非現実的。三人ともまだ映画慣れしていなかったのか、演技が舞台的な感じ。
 演出は、全体にデフォルメされた演技で、途中まではドタバタしている印象が強かった。しかし、後半は阪妻の演ずる父親像に涙…実に素晴らしい。やはり男は阪妻だ。(2001/02/24)

カルメン故郷に帰る かるめんこきょうにかえる
監督 木下恵介
公開年 1951年
評点[A’]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第2集
木下惠介 DVD-BOX 2
カルメン故郷に帰る

肖像
破戒
お嬢さん乾杯
四谷怪談(前後篇)
破れ太鼓
婚約指環

 今日は、木下恵介監督の『カルメン故郷に帰る』を観た。昭和二十六年(1951)の作品。

 ある時、浅間山麓で牧畜をしている正さん(坂本武)の家出娘が突然帰ってきた。ド派手な洋服で村人を驚かせたリリイ・カルメンこと娘きん(高峰秀子)とその友人マヤ(小林トシ子)は自称芸術家、実はストリップの踊り子だった。正さんや小学校の校長先生(笠智衆)の渋い顔をよそに、カルメンとマヤは村を闊歩して騒ぎを巻き起こす。

 日本初の総天然色映画すなわちフルカラー作品として知られている作品で、しかも国産フジカラーの技術だという。木下恵介監督のオリジナル脚本で、感度の低い初期カラーフィルムでは光量を稼ぐためロケ撮影が必須だったことから、この設定になったそうだ。現在でもほとんど褪色せず浅間山麓の北軽井沢の景色が美しい。ただし、かなりノイズのようなものが乗っているのは何だろう。
 歴史に残るべき日本初のカラー映画の主人公がストリッパーというのも妙な気がするけれども、ド派手な衣装の色や当時としては傑出した高峰秀子のスタイルの良さを活かすためだろうか。木下監督は、この頭のネジが外れているカルメンというキャラを高峰秀子のために書いたというが、どういう意味かな?(笑)
 カルメンとマヤが草原で伸びやかに踊る姿は楽しく、校長先生も含めて“芸術”や“文化”のなんたるかがよくわからず右往左往する村人の姿はコミカルで面白い。戦争に負けたとたん「文化国家建設」を標榜し始めた日本人への皮肉か。戦争で失明した田口(佐野周二)というキャラが存在するのは、目先のことに惑わされぬ盲人のみが真実を見抜いていたという逆説を示すためだろうか。
 しかし、カルメンがおバカな女という設定や田舎者が滑稽に描かれているところなどは単なるコメディではないえぐみを感じ、木下恵介の他のコメディ(とされる)作品に共通するシニカルな視線もあるような気がする。(2004/01/13)

風前の灯 ふうぜんのともしび
監督 木下恵介
公開年 1952年
評点[D]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第4集
木下惠介 DVD-BOX 4
喜びも悲しみも幾歳月
風前の灯
この天の虹
風花
惜春鳥
今日もまたかくてありなん
春の夢

 今日は、木下恵介監督の『風前の灯』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 郊外の畑の中に建つ一軒家に押し入ってやろうと狙う不良たち。しかし、その家は人の出入りが激しくてなかなか近づけない。その家は、老婆(田村秋子)と養子夫婦(佐田啓二&高峰秀子)が住んでいて、老婆が強欲ならば、息子夫婦は遺産を狙っていた。そこに様々な訪問者が顔を出す。

 木下監督による、佐田&高峰コンビの一連の作品の一つ。登場人物が、そろって性格が悪いので、観ていて腹が立ってくる(誇張ではない)。コメディ作品とされていて、それなりの評価も受けているらしいが、公開当時の観客は楽しめたのだろうか。木下監督の底意地の悪さが出ているような(脚本も木下恵介)。
 つまるところ人間とは嫌なものだ、ということを描いているのだろうが、そんなことは監督に教えてもらわなくても承知している。その嫌なところを笑い飛ばしてしまえ、という意図なのかもしれないけれども、皮肉ばかりでユーモアが感じられないので、私は笑えなかった。(2002/04/07)

女の園 おんなのその
監督 木下恵介
公開年 1954年
評点[A’]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第3集
木下惠介 DVD-BOX 3
野菊の如き君なりき
善魔
少年期
海の花火
カルメン純情す
日本の悲劇
女の園
遠い雲
夕やけ雲

 今日は、木下恵介監督の『女の園』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 京都にある正倫女子大では戦前以来の厳しい良妻賢母教育がおこなわれ、学生たちの生活にも思想にも自由は無かった。それに対して、ついに反旗が翻される。

 国文学の教授にして舎監(寮長)であり、学生たちを容赦なく取り締まる五条真弓(高峰三枝子)・一度社会人を経験したため勉強についていけず苦しむ出石芳江(高峰秀子)・奔放に自由を求める滝岡富子(岸恵子)・財閥の娘で特別待遇を受けていながら学生の先頭に立つ村野明子(久我美子)などメインキャラは数多いが、それぞれの個性が巧みに描き出されている。
 しかし、今から観ると豪華なキャストだ。高峰三枝子は超悪役(笑)。ほとんど初めて根暗な役を演じた高峰秀子も、ちょっと重苦しい感じはしたものの、上手い。
 学園生活の自由を求めて立ち上がる学生、それを扇動する左翼、学生側の内通者や仲間割れ、そして真面目に勉学しようとする学生が一番の犠牲になることなど、少し後の時代の学生運動を完全に先取りしていて見事。原作(阿部知二『人工庭園』)を踏襲しているのかどうかは、未読なので知らないが。
 作中、男性陣は完全に脇役となっている。出石芳江の恋人役に田村高廣。滝岡富子のボーイフレンド役は、のちに小津作品に出演する田浦正巳。学生指導の教員は金子信雄。

 ただし、全体に重く深刻なので141分は長いように感じた。小津映画とはまた違った長さ。もう少し詰めても良いような…?(2001/03/03)

二十四の瞳 にじゅうしのひとみ
監督 木下恵介
公開年 1954年
評点[A]
感想
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木下恵介 DVD-BOX 1
木下恵介 DVD-BOX 1
二十四の瞳
花咲く港
生きてゐる孫六
歓呼の町
陸軍
大曾根家の朝
わが恋せし乙女
結婚
不死鳥

 今日は、木下恵介監督の『二十四の瞳』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。原作は、誰でも知ってる(よね?)壺井栄の同題作品。

 昭和三年、小豆島の岬の分教場に赴任してきた大石先生(高峰秀子)。十二人の新入生を受け持つことになり、彼らの瞳を曇らせることなく伸ばしてやりたいと願うのであった。しかし、少年と少女たちの行く手には、貧困と戦争が待ち受けていた。
 有名な原作を木下監督が完全映画化。今から観ると少々冗長に感ずるところもあり(実際156分の長尺)、登場人物がよく泣いて濡れ濡れの演出には少々困るところもあった。だが、十二人の生徒たちの運命を見ると感動せざるを得ない。日本的センチメンタリズムの極致で、“泣かせ”にかかる作品ではこれ以上のものは無いのでは。
 二十歳過ぎから四十歳くらいまでの大石先生を演ずる高峰秀子の美しいこと。そして演技力。同僚の“男先生”は笠智衆。大石先生の夫役は、なんと天本英世で、若い頃は長身痩躯のイイ男。(2000/09/11)

惜春鳥 せきしゅんちょう
監督 木下恵介
公開年 1959年
評点[C]
感想
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木下惠介 DVD-BOX 第4集
木下惠介 DVD-BOX 4
喜びも悲しみも幾歳月
風前の灯
この天の虹
風花
惜春鳥
今日もまたかくてありなん
春の夢

 今日は、木下恵介監督・脚本の『惜春鳥』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 会津若松で生まれ育った若者たちが、久々に友人の一人が東京から帰省してきたのをきっかけに旧交を暖める。しかし、歳月は皆を変えていた。

 40年前の地方の若者たちって、こんなに友情に篤(あつ)かったのかな?と思わされる作品。すぐ抱き合ったり泣いたり、女々しい…というと女性に失礼だが、ベタベタした感じ。
 津川雅彦が若者の一人で、濃い顔の二枚目。ただ一人東京の大学へ進学し、帰省してきた若者役に川津祐介。その他の若者を演じたのは石浜朗・小坂一也・山本豊三で、計5人。佐田啓二と有馬稲子が登場する意味がよくわからない。若者たちと対照的な人物像として描いたのだろうけど…。また、若者の一人を身体障害者にした意味もわからない。
 全体に、今観ると時代の違いを感じざるを得ないような作品。映像的には、カラーなので会津の自然が美しかった。(2001/03/26)

笛吹川 ふえふきがわ
監督 木下恵介
公開年 1960年
評点[B]
感想  今日は、木下恵介監督の『笛吹川』を観た。昭和三十五年(1960)の作品。

 戦国時代、甲州の武田家が絶え間なく起こす戦に翻弄される、おじい(加藤嘉)・息子の半平(織田政雄)・半平の子の定平(田村高廣)・その嫁おけい(高峰秀子)・そして定平とおけいの子供などの一族の約半世紀にわたる物語。

 木下恵介監督による『楢山節考』に続く深沢七郎原作の映画化(脚本:木下恵介)。
 貧しい百姓の一家を一貫して戦の被害者として描いている非常に反戦メッセージの強い作品。今の目で観てしまうと、展開が一本調子でどうしてもそのメッセージ性の強さが気になってしまうし、登場人物たちが常に被害者的で庶民の強さがないので、もう少し視点の広さが欲しいような気もする。原作が原因なのかもしれないが。
 とはいっても、ここまで悲惨さを徹底するのも大したものだとも思う。合戦シーンの格好よさを排除した乾いた描き方も印象的。田村高廣と高峰秀子の老け演技はちょっと頑張りすぎだけれども。定平の少年時代を田村高廣の弟の田村登志麿(阪妻の次男)が演じていて、俳優にはならなかった彼の唯一の出演作らしい。
 映像的にはモノクロ画面に一部着色した特殊カラーで有名な作品(撮影:楠田浩之)。面白いが、ちょっと前衛的過ぎる。(2005/06/22)

永遠の人 えいえんのひと
監督 木下恵介
公開年 1961年
評点[C]
感想  今日は、木下恵介監督の『永遠の人』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 昭和七年、さだ子(高峰秀子)には上海事変に出征中の川南隆(佐田啓二)という思い合っている相手がいた。しかし、先に負傷して帰還してきた小清水平兵衛(仲代達也)は地主の子である権力を傘に着て、さだ子を手ごめにして妻に迎えてしまう。その時から二人の憎悪に満ちた日々が始まった。

 おなじみ木下・高峰・佐田トリオの顔合わせで、木下監督が高峰秀子のためにオリジナル脚本を書き下ろしたという。
 とにかく平兵衛とさだ子二人の憎しみ合いが凄いのだが、特にさだ子は二十四時間ぶすっとした不機嫌な顔をして平兵衛を罵っているような感じ。確かに最初は被害者ではあるが、被害者の立場にあぐらをかいているように見え、平兵衛が気の毒になってしまう。それ以前に、本当に相手を憎悪しているなら四六時中相手に辛く当たるのではなく、面従腹背して、いざという時に相手を裏切るような行動に出るのではないだろうか。
 不寛容は相手だけではなく自分も不幸にしてしまうということがテーマらしいが、さだ子のキャラクターが非現実的で素直に受け取れなかった。時折、なんと熊本弁の歌詞のフラメンコが流れるのもビックリ(作曲:木下忠司/フラメンコギター:ホセ勝田/歌:宇井あきら)。
 木下恵介監督が音楽担当の木下忠司に、音楽はシャンソンかフラメンコでいきたいとの意向を示し、木下忠司はどちらともダメだと言ったものの押し切られてしまったらしいが。(2005/03/27)

木下恵介(木下惠介)
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