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小林正樹
あなた買います あなたかいます
監督 小林正樹
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、小林正樹監督の『あなた買います』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 プロ野球の東洋フラワーズのスカウト岸本(佐田啓二)は、大学リーグで大活躍中の栗田五郎(大木実)の獲得を目指して動き出した。栗田には野球の恩師だという謎の男・球気一平(伊藤雄之助)がまとわりついていて、岸本は他チームのスカウトたちではなく球気が当面の敵だと思ったが……。

 社会派的作品で知られる小林監督がこれまた社会派的作品の多い松山善三の脚本(松山善三は脚本家としては娯楽作品も多いが)を映画化(原作:小野稔)。
 野球には疎いのでよくわからないが、長嶋茂雄のプロ入りより数年前のこの頃には既に野球選手の多額の契約金や年俸が話題になっていたのだろうか、いわゆるストーブ・リーグでの各球団やマスコミの狂奔を風刺した作品になっている。
 しかし、小林監督と松本善三の生真面目さのためか風刺といってもキャラクターの戯画化が中途半端で、風刺喜劇なのか社会派作品なのか中途半端な感がある。伊藤雄之助を始めとして多々良純や山茶花究などの個性俳優たちを今ひとつ活かしきれていないと思う。監督が彼らに芝居を持っていかれるのを抑えようとしたのかもしれないが。
 またテーマ自体が、江川問題などを経験した現代人にとっては今さらという感じがぬぐい切れない。五十年前なら新鮮だったのだろうが、時の経過によって生命力が薄れてしまった作品の一つかもしれない。当時は意外であったろうオチも、今観るとなんとなく途中で読めてしまうし。
 撮影は小津作品で有名な厚田雄春で、この作品ではごくオーソドックスな撮り方をしている。(2006/02/19)

怪談 かいだん
監督 小林正樹
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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怪談
怪談

 今日は、小林正樹監督の『怪談』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の“Kwaidan”から、「和解」「雪女」「耳なし法一の話」「茶碗の中」のエピソードを基にしたオムニバス。「和解」だけは「黒髪」と改題されている。

 どれも、恐怖よりは映像美を重視しており、セットが豪華。中でも「雪女」と「耳なし法一」は様式化された舞台的なセットが面白い。特に後者は、壇ノ浦の合戦と、法一(中村賀津雄)が平家の亡霊の前で琵琶を弾き語りするシーンの処理が見事で美しい。法一を迎えに来る武者の亡霊が丹波哲郎ってのはハマり過ぎで面白い(笑)。彼の体に経文を書く住職に志村喬。「雪女」は岸恵子で、彼女を妻にする青年は仲代達也。(2001/07/19)

切腹 せっぷく
監督 小林正樹
公開年 1967年
評点[A’]
感想
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切腹
切腹

 今日は、小林正樹監督の『切腹』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 泰平の世が定まった寛永年間。譜代大名・井伊家の玄関に初老の浪人・津雲半四郎(仲代達也)が現れ、ここで切腹させてくれと乞うた。井伊家の家老・斎藤勘解由(三國連太郎)は当家ではそのようなゆすりたかりは通用しないと言い、先日ここで見苦しい切腹をした若い浪人(石浜朗)の話をしたが、津雲は強く切腹を願う。ついに切腹の用意が整うと、津雲は介錯人を三人まで指名したが、なぜか全員いなかった。

 小林正樹監督の代表作で、武士道・封建制度を批判した作品として有名な一本。
 登場する武士・浪人たちは皆能面のように表情を崩さず重々しく喋る。全体に硬質な演技と演出。徳川封建制の冷厳さを表しているのだろうか。その中で、津雲の回想シーンでは仲代達也の持つ、どことなくひょうきんな面が現れていて印象に残る。終盤の殺陣は様式的ではなく、かなりリアル。
 演技・演出と同じく硬質な映像美も印象的(撮影:宮島義勇)。出演した丹波哲郎の証言によると、仲代達也VS丹波哲郎の対決シーンは空に雲が出るまで宮島義勇が撮ろうとせず15日間待ち続けたという……。時々用いられるダッチアングル(斜め構図)も効果的だった。
 この作品で描かれている武士像は少々図式的で、いかにも後世の人間が考えたもののように見える点に疑問が残るが、戦後に作られた一連の武士道批判映画の中でも完成度の高さで頂点に立つものだろう。橋本忍の脚本の構成も巧み(原作:滝口康彦)。(2004/05/25))

小林正樹
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