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小森白
皇室と戦争とわが民族 こうしつとせんそうとわがみんぞく
監督 小森白
公開年 1960年
評点[B]
感想  今日は、小森白監督の『皇室と戦争とわが民族』を観た。昭和三十五年(1960)の作品。

 神武天皇(嵐寛寿郎)が東征して橿原に都を定められてから、皇統は二千六百有余年連綿として続いてきた。昭和十二年の盧溝橋事件以来、日本は太平洋戦争への道をたどり、国民は敗戦の苦汁を嘗め国土は荒廃した。しかし戦後、日本国民は昭和天皇を中心として一致団結し目ざましい復興に成功したのであった。

 新東宝の『明治天皇と日露大戦争』以来の天皇ものの一つ。やはり嵐寛寿郎が神武天皇役を務める。さすがに、当時在位中だった昭和天皇は象徴的に表現され、役者が演技する姿は登場しない。昭和天皇の御真影や実写フィルムは使いまくっているが。
 序盤の神武天皇軍の東征シーンで、ハリボテに金紙を貼った八咫烏(やたがらす)が登場したときは、どうなることかと思った。今だったらCGでどうにでもなるが、当時でもアニメーション合成くらいできなかったのだろうか。予算の都合か。
 それが終わると、いきなり盧溝橋事件を昭和天皇に報告する御前会議の場面になり、それ以降太平洋戦争の終結に至るまで、昭和天皇が常に戦線拡大に反対し平和を願っていたことが強調される。そして、終戦後の後半は昭和天皇の地方行幸や皇太子(今上天皇)御成婚などの実写フィルムがほとんどで、あたかも皇室アルバムと化す。
 六十年安保当時の社会風潮に対する政治的意図が露骨で、映画としてはバランスの悪い作品。脚本(内田弘三)にも演出にも当時の新東宝社長の大蔵貢の意向が強く反映されているのだろう。

 ただし、中盤の宮中の場面や終戦に反対する一部青年将校たちが決起した事件の場面などは、俳優たちの緊張感ある演技によって見ごたえのある映像になっている。登場場面の多い木戸内大臣(佐々木孝丸)を始めとして東條英機(嵐寛寿郎、二役)・米内海相(近衛敏明)・近衛公(細川俊夫)など重臣を演ずる俳優陣は皆重厚さを感じさせてくれる。
 終戦反対工作の部分では、中心となる畑中少佐を演じた宇津井健がかなり良い。こういう硬い役柄が合っているのだろうか。他の作品ではあまり強い印象を残さない明智十三郎(殺害された森師団長の役)や沼田曜一(田中軍司令官の役)も、佐官や将官らしい威厳と迫力を感じさせる。日本の俳優は兵隊役だと外れがないというが、軍隊を生で知っている世代は特にそうなのだろう。今の人間がやると、ここまでハマるかどうか。若き日の菅原文太も決起将校の一人として登場。(2004/12/23)

小森白
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