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熊井啓
海と毒薬 うみとどくやく
監督 熊井啓
公開年 1986年
評点[A]
感想
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海と毒薬 デラックス版
海と毒薬
デラックス版

 今日は、熊井啓監督の『海と毒薬』を観た。昭和六十一年(1986)の作品。

 昭和二十年五月、九州の某帝国大学の医学部では、学部長の座を第一外科の橋本教授(田村高廣)と第二外科の権藤教授が争っていた。橋本教授は少しでも立場を有利にするため、第一外科も陸軍の西部軍と組んで撃墜されたB29の搭乗員の生体解剖をおこなうことにし、下っぱ研究員・勝呂(奥田瑛二)と戸田(渡辺謙)もそれに巻きこまれていく。

 遠藤周作の同題作品の映画化(脚本:熊井啓)。熊井監督が映画化を構想してから実現するまで時間がかかったらしい。
 原作の、キリスト教的信仰をもたない日本人と良心の不在から、映画は人間の一般的な良心の問題にテーマを少し移しているので、よりわかりやすくなっていると思う。モノクロの映像と出演者たちの抑制された演技(悪役的な登場人物は少々ステロタイプ的ではあったが)のおかげで、映画が原作の深みに負けていない稀有な作品。
 緊迫感のある手術シーンと、床を流れる“赤い”血が素晴らしい。また、高みから当事者たちを一方的に断罪するような描き方をしていないのも好ましい。(2002/06/16)

千利休 本覺坊遺文(本覚坊遺文) せんのりきゅうほんかくぼういぶん
監督 熊井啓
公開年 1989年
評点[A’]
感想
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千利休
千利休

 今日は、熊井啓監督の『千利休 本覺坊遺文』を観た。平成元年(1989)の作品。

 江戸時代初期、数少なくなった戦国生き残りの織田有楽斎(萬屋錦之介)は、利休の高弟だった本覺坊(奥田瑛二)に千利休(三船敏郎)の死の真相を問いただそうとする。本覺坊は、利休と彼に関わる太閤秀吉(芦田伸介)・古田織部(加藤剛)・山上宗二(上條恒彦)などの追憶を語る。

 井上靖の『本覺坊遺文』の映画化(脚本:依田義賢)。ほぼ同じ時期に勅使河原宏監督の『利休』が公開され、競作の形になった。
 私は、映画化されたあとに原作を読んだことがあって(映画を観たのは今日が初めて)、これを映像化するのは難しいだろうな……と思っていたし、なぜ“社会派”の熊井啓監督? という感じもしたが、映画は原作をかなり独自に解釈し、非常に独特な作品になっている。
 原作では秀吉が利休に切腹を命じた理由は、秀吉の戦国乱世の大名としての荒々しい気性がそうさせたのではないか、と推測されていた(ただし記憶は曖昧)。対して映画では、少し違った方向に解釈し、さらには利休およびその周りの人間たちが切腹によって死んでいったことに注目し強調している。登場人物が皆、座ってばかりだし女性が一人もいないので、面白い作品というのとは違うが、妙というか異様な力を感じさせられる一種の怪作かもしれない。
 そうそうたる顔ぶれの中で奥田瑛二は頑張っている。千利休の三船敏郎は、戦国大名みたい。これが最後の映画出演となった萬屋錦之介が凄い。濃い演技だが、威厳があって織田信長の実弟という雰囲気をかもし出し、ラストも大熱演でさらっていく。
 好き好きはあると思うが、とにかく個性的な作品。(2003/01/20)

熊井啓
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