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マキノ雅弘(マキノ正博/マキノ雅広/マキノ雅裕)

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恋山彦(戀山彦) こいやまびこそうしゅうへん
監督 マキノ正博
公開年 1937年
評点[C]
感想  今日は阪妻主演の『恋山彦(総集編)』を観た。監督はマキノ正博(雅弘)で昭和十二年(1937)の作品。原作は吉川英治、脚本は比佐芳武。

 伊那の里の主である伊那の小源太(阪東妻三郎)は、お品(花柳小菊)という旅の女を妻に迎えることになる。彼女は三味線の名人の娘で、三味線の名器“山彦”を柳沢吉保(河部五郎)に所望され拒んで殺された父親の遺志を継ぎ、“山彦”を守ろうとしていた。将軍綱吉(尾上菊太郎)の失政と柳沢吉保の専横に憤った小源太は、ついに幕府に対して反旗を翻すが…。

 これは“総集編”と銘打ってあるように、本来は2編あった作品を編集したものらしい。それゆえ、展開が雑で話が見えづらいところがあるのが残念。この総集編は1時間と四十数分だが、2時間くらいは欲しかった。
 阪妻たちの演技は、今観ると少々オーバー。将軍や柳沢吉保を非難するときに声が裏返っちゃうのは、ちょっと変。立ち回りや合戦、そしてモブシーンなどにはマキノ監督らしいダイナミックさがあると思う。(2001/01/06)

決闘高田の馬場(血煙高田の馬場) けっとうたかだのばば
監督 マキノ正博(雅弘)・稲垣浩
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、阪東妻三郎主演の『決闘高田の馬場』を観た。昭和十二年(1937)の作品で、監督はマキノ正博(雅弘)と稲垣浩。

 浪人の身の中山安兵衛(阪東妻三郎)は、喧嘩の仲裁を仕事のようにして飲んだくれてばかりいる。ただ一人の親類である叔父・萱野六郎左衛門(香川良介)だけは安兵衛に説教するが、同輩の村上庄左衛門(尾上華丈)の恨みを買い、彼の一味と高田馬場で決闘をすることになってしまう。例によって酔いつぶれていて、それを遅れて知った安兵衛は、“韋駄天走り”で高田馬場へ駆けつけるが…。

 講談で昔の日本人にはおなじみだった“高田馬場の決闘”を元にした作品。阪妻が中山安兵衛(のちの堀部安兵衛)を好演。かなりコミカルなキャラクターで驚いた。こういう役はほとんど初めてだったのではないだろうか。阪妻のオーバーな演技がハマっている。
 監督は二人名義だが、事実上マキノ正博だけが監督していたらしい。コミカルな演出とモブシーンは、さすが。現存している版では50分の小品だが、終始退屈させない佳作。安兵衛と同じ長屋に住む講釈師に志村喬、同じく隣人の大工・熊公を無声映画時代のチャンバラ映画スター市川百々之助が演じている。(2001/11/14)

自来也 忍術三妖伝 じらいやにんじゅつさんようでん
監督 マキノ正博(雅弘)
公開年 1937年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ正博(雅弘)監督の『自来也 忍術三妖伝』を観た。昭和十二年(1937)の作品。

 信州の城主・更科輝隆(市川正二郎)は野武士の佐久間正盛(河部五郎)・五十嵐典膳(尾上華丈)・矢尾郡太夫(志村喬)らに殺され、その一子の太郎丸(宗春太郎)は深い土牢に投げ込まれ餓死を待つだけとなった。しかし一夢仙人(香川良介)に助けられて妖術を学び、長じて自来也(片岡千恵蔵)と名乗って佐久間らに復讐の刃を向けた。

 題名通りの忍術映画だが(原作・脚本:比佐芳武)、昭和十二年の段階ではちょっと珍しいネタではないだろうか。
 これでもかとばかりに当時としてもチープに見えたかもしれない特撮が多用されているが、マキノ正博監督の父マキノ省三監督&目玉の松っちゃん(尾上松之助)主演作品の定番ネタだったので、オマージュの意味で作ったのだろうか。特撮の多用も空回りせずなんとも楽しく、千恵蔵もマキノ監督の意図を理解しているようで、いつも以上に重々しくオーバーな演技をしている。
 忍術以外にもラブコメの要素まであり、自来也とは別に佐久間正盛を狙う綱手姫(星玲子)と自来也との掛け合いが楽しく、綱手姫に横恋慕する大蛇丸(瀬川路三郎)というキャラもおかしい。
 57分ほどの短編の中によくまとまった忍術コメディ(?)作品。(2005/03/20)

鞍馬天狗 角兵衛獅子 くらまてんぐかくべえじし
監督 マキノ正博(雅弘)・松田定次
公開年 1938年
評点[B]
感想  今日は、嵐寛寿郎主演の『鞍馬天狗 角兵衛獅子』を観た。監督はマキノ正博(雅弘)と松田定次で、昭和十三年(1938)の作品。

 京で角兵衛獅子をしている杉作(宗春太郎)と新吉(旗桃太郎)が稼いだ金を落としてしまって困っていると、倉田という侍が金をくれた。実は彼こそは勤皇の志士を助けて近藤勇(河部五郎)以下の新選組と戦う鞍馬天狗(嵐寛寿郎)であった。

 大佛次郎原作の『鞍馬天狗』シリーズの現存しているものでは最も古い部類に入る作品だろうか。冒頭の方は画質・音質とも酷いので驚かされるが、観つづけていくうちに画質は良くなっていく。音質は悪いが、努力すれば聞き取れないほどでもない。所々わからない台詞があったが。
 現存しているフィルムは五十数分の小品だが、鞍馬天狗ものの基本が詰まっているという印象を受ける。特に、鞍馬天狗は子供が大好きなのが印象的だった。子供を虐待する者に対しては容赦しない。
 撮影は宮川一夫。画質が今ひとつなのが残念だが、冒頭の節分会の場面の、吊り下げられたお面をなめながらの移動撮影に、のちの宮川撮影の片鱗が見えているかもしれない。期待していたほど殺陣のシーンは多くなかったが、火事になった寺の中での殺陣が凄かった。ホントに燃やしたのだろうか。
 西郷吉之助(隆盛)役として志村喬が出演。眉毛を太く描いていてビックリ。(2003/07/28)

忠臣蔵 天の巻・地の巻 ちゅうしんぐらてんのまきちのまき
監督 マキノ正博・池田富保
公開年 1938年
評点[C]
感想  今日は、阪妻主演の『忠臣蔵 天の巻・地の巻』を観た。昭和十三年(1938)年の作品。『天の巻』の監督はマキノ正博(雅弘)、『地の巻』の監督は池田富保。

 御存知、主君・浅野内匠頭(片岡千恵蔵)の仇・吉良上野介(山本嘉一)を討った大石内蔵助(阪東妻三郎)以下四十七士の物語。マキノ正博が、大作『実録忠臣蔵』のフィルムを焼失させてしまった父マキノ省三の無念を晴らしたといわれる作品。

 内容は解説するまでもない忠臣蔵ストーリーだが…思い入れたっぷりに台詞を語る“大芝居”の連続で、いささか参りました。今から観ると演技がオーバーすぎて…。舞台の演技だ。ラストの討ち入りは、思ったよりアッサリしていた。阪妻や嵐寛寿郎や月形龍之介が出ているのだから、もう少し立ち回りがあるかと思った。しかし、現在残っているフィルムは完全版ではないようなので、カットがあるのかもしれない。
 片岡千恵蔵が浅野内匠頭と立花左近の二役を演ずるなど、一人二役のキャスティングが多い。嵐寛寿郎が脇坂淡路守と清水一角(一学)、月形龍之介が原惣右衛門と小林平八郎の、それぞれ二役を演じている。(2000/12/19)

弥次喜多道中記(彌次喜多道中記) やじきたどうちゅうき
監督 マキノ正博(雅弘)
公開年 1938年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ正博(雅弘)監督の『弥次喜多道中記』を観た。昭和十三年(1938)の作品。

 町奉行の息子・遠山金四郎(片岡千恵蔵)は、家督の相続争いを嫌ってふらりと旅に出た。旅先で偶然、義賊の鼠小僧次郎吉(杉狂児)と出会い、二人が弥次喜多コンビと間違えられたのを幸いとして、互いに本名や素性を明かさず一緒に旅をする。再会を約した半年後の日本橋で二人は互いの意外な姿を見る。

 翌年の有名な『鴛鴦歌合戦』と同様に歌が多く、これも時代劇オペレッタと言われているが、本物の弥次郎兵衛(楠木繁夫)と喜多八(ディック・ミネ)や旅芝居の一座は歌を唄いまくるものの、金四郎と鼠小僧はほとんど歌わない。
 しかし、二人が旅芝居一座に入って見せるギャグが面白く、旅役者の姉弟との触れ合いのエピソードではジーンとさせられる、充実感のある作品。作品の保存状態が悪く、時々コマ飛びするのが残念。(2002/07/05)

鴛鴦歌合戦 おしどりうたがっせん
監督 マキノ正博(雅弘)
公開年 1939年
評点[A]
感想
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 鴛鴦歌合戦 コレクターズ・エディション
鴛鴦歌合戦
コレクターズ・エディション



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鴛鴦歌合戦
鴛鴦歌合戦

 今日は、マキノ正博(雅弘)監督の『鴛鴦歌合戦』を観た。昭和十四年(1939)の作品。

 木刀を作って暮らしている浪人・浅井礼三郎(片岡千恵蔵)は、隣の日傘作りの浪人・志村狂斎(志村喬)の娘お春(市川春代)と仲がいい。しかし、礼三郎は近くに別邸がある大商人の娘おとみ(服部富子)や、かつての同僚の娘・藤尾(深水藤子)にも好かれていてモテモテ王国状態。そんな時、狂斎と同じく骨董品マニアの殿様・峰沢丹波守(ディック・ミネ)が、お富やお春に興味を示したことから騒動が持ち上がり……。

 チョンマゲつけた登場人物の演ずる喜劇をミュージカル仕立てで描いた“時代劇オペレッタ”として名高い作品。ディック・ミネはもちろん、志村喬や片岡千恵蔵まで唄ってくれるのだからたまらない。ただ、マキノ監督の証言によると千恵蔵はちゃんと歌を唄えず(唄おうとせず?)、彼の部分だけは吹き替えだったという。志村喬はかなり上手い。♪さーて さてさて この茶碗〜 ちゃんちゃん ちゃわんと音(ね)も響く〜♪
 脚本家として江戸川浩二という名が記されているが、架空の人物で、その場のノリで撮っていったものだという。昭和十四年という時代は俗に言われているほど暗黒時代ではなく、映画も溝口健二監督の『残菊物語』や吉村公三郎監督の『暖流』などの傑作を輩出した年なのだが、それにしても戦前にこんな楽しい作品が作られているとは感心する。
 映像的にも、日傘が効果的に使われていて楽しい。モノクロだが時には色を感じさせるほど。所々画質が劣化しているのが惜しいが。

 「♪日傘さす人作る人〜 とかくこの世はままならぬ〜」
(2002/06/22)

續清水港(続清水港/清水港代参夢道中) ぞくしみずみなと
監督 マキノ正博(雅弘)
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、マキノ正博(雅弘)監督の『續清水港』(『清水港代参夢道中』は戦後再公開時の改題)を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 もうすぐ初日を迎える『森の石松』を演出している舞台演出家の石田勝彦(片岡千恵蔵)は、役者も脚本も口うるさい劇場の幹部も気に入らず、イライラしっぱなし。彼を助けようとする秘書の黒田文子(轟夕起子)とも衝突してしまい、劇場の自室のソファでふて寝する。目覚めると、そこは清水の次郎長の家で、自分自身がチョンマゲを結った石松になっていた……。

 戦前映画では珍しいタイムスリップもの。SF時代劇とでも言おうか。夢の世界を舞台にするという発想は昔からあっただろうが、この作品のヒントはどこから得たのだろうか(脚本:小国英雄)。
 これまた珍しく片岡千恵蔵がピシッと真中分けの髪型にネクタイを締めた洋装をしているのが面白い。まだ顔も身体も痩せているので、割りと似合っている。タイムスリップ直後のとまどった様子と、その後次第に本当に石松になった気分になって和服での立ち居振舞いも板についてくる様子を演じ分けていたのが巧み。劇場の専務と小松村七五郎の二役の志村喬が、戦後の黒澤映画とは全く異なる関西弁でおしゃべりなキャラクターを演じていたのが面白い。
 脚本は最後の解決の仕方がちょっと尻切れトンボな感じがした。戦後に沢島忠監督が中村錦之助(萬屋錦之介)主演でリメイクした『森の石松鬼より怖い』では、どうなっているのだろうか。こちらも是非とも観てみたい。(2003/10/05)

風雲児信長(織田信長) ふううんじのぶなが
監督 マキノ正博
公開年 1940年
評点[A’]
感想  今日は、片岡千恵蔵主演、マキノ正博(雅弘)監督の『風雲児信長』を観た。昭和十五年(1940)の作品。初公開時の題名は『織田信長』。

 世間から「こんこんうまのキツネ丸」と呼ばれ、うつけ者と言われている若き日の信長(片岡千恵蔵)。しかし、父の信秀(香川良介)の葬式での抹香投げつけ事件や守り役の平手正秀(志村喬)の切腹などの様々な出来事を通して成長していく。
 全て周知のエピソードだが、中盤の斎藤道三との対面は非常に面白く描かれていて、このあたりからテンポ良く面白くなっていく。最後、「戦いはこれからだ!」という感じで終わって、もう少し観たいという気にさせられるものの、ラストシーン自体は結構いい。ファーストシーンでは、いきなり水中撮影をしたり、序盤の信長が馬を乗りこなすシーンでは馬の蹴り上げる前足のカットを挿入してモンタージュの手法を用いていたり、その他モブシーンも効果的に使われていた。さすが職人マキノ。

 片岡千恵蔵が若く、まだ太っていなかったので信長が意外とハマっていた。濃姫は宮城千賀子、斎藤道三は高木永二、奇妙な友情を結ぶ人質の松平竹千代(のちの徳川家康)には山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壺』で“ちょび安”を演じていた宗春太郎。(2000/11/19)

昨日消えた男 きのうきえたおとこ
監督 マキノ正博(雅弘)
公開年 1941年
評点[B]
感想  今日は、マキノ正博(雅弘)監督の『昨日消えた男』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 江戸は本所のある裏長屋で、大家で金貸しでもある勘兵衛(杉寛)が殺された。彼をやってやると冗談で公言していた文吉(長谷川一夫)・借金のかたとして娘お京(高峰秀子)を取られそうになっていた浪人の篠崎源左衛門(徳川夢声)・挙動不審な居合抜き芸人の松下(鬼頭善一郎)・近ごろ金回りの良くなった錠前師の太三郎(清川荘司)など容疑者があまたあるなか、第二の事件が起こる。

 時代劇推理ドラマといった独特の作品。外国作品にヒントがあるらしいが、私は未読。文吉のケンカ友達の芸者・小富を山田五十鈴が演じていて、長谷川一夫・山田五十鈴主演と最初にタイトルが出る。
 他にあまり類を見ない作品で、長谷川一夫が演ずる文吉のお調子者っぷりが楽しく、徳川夢声などの長屋の住人の人間模様も見事だが、もう少し展開のテンポが速いと良いと思った。また、真犯人は、反則ではないかな? 世評の高い作品だったので、ちょっと期待が大きすぎたのかも。
 個人的には翌年の『待って居た男』の方が好きかな。(2002/11/07)

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