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丸根賛太郎
小太刀を使ふ女(美女劍光録/美女剣光録/小太刀を使う女) こだちをつかうおんな
監督 丸根賛太郎
公開年 1944年
評点[B]
感想  今日は、丸根賛太郎監督の『小太刀を使ふ女』を観た。昭和十九年(1944)の作品。

 時は西南戦争の頃。薩摩軍が大分の旧臼杵藩城下に攻め寄せてきた。士族の池田家の長女・律(初代水谷八重子)は出陣した弟・健一郎(原健作)の妻たか(月丘夢路)と共に、避難した町人たちを守るため町外れの寺に入ったが、町家の出であるたかは恐怖に震えるばかりであった。その寺にも薩摩軍が迫る。

 原作は村上元三(脚本:依田義賢)。戦争も大詰めの時期の作品だが、銃後の守りを固める婦女子が主人公なので制作されたのだろうか。
 序盤から中盤までは凛とした武家娘が臆病な町人娘を引っ張っていくというコチコチの展開で、やや硬質な美貌の水谷八重子とちょっと下がり眉の月丘夢路が各々の役柄にハマっているだけあって、少々肩がこる。
 律とたかが危機に遭い打ち解けあう終盤近くになると急にキャラクターが活き活きしてくるしユーモアも感じられるようになるので、丸根監督の力量を発揮するにはもう少し尺に余裕が欲しかったかもしれない。1時間5分強では窮屈だったような。戦中の作品なので仕方ないが……。ラストシーンがちょっと洒落ていて印象に残る。
 私が観た版は一般の観賞には向かないと思われるほど音質が悪い。もっとマシなプリントは無いだろうか。画質はあまり劣化していないので惜しい。撮影は宮川一夫で堅実な映像だが、やはり戦争末期で撮影条件が悪かったのか擬似夜景が全く夜らしく見えないのは残念。

 『美女劍光録』は戦後の再映時の題名らしい。昭和三十六年には京マチ子主演(監督:池広一夫)でリメイクされている。(2004/11/11)

狐の呉れた赤ん坊 きつねのくれたあかんぼう
監督 丸根賛太郎
公開年 1945年
評点[A’]
感想
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阪東妻三郎傑作選 DVD-BOX
阪東妻三郎傑作選
DVD-BOX
王将
素浪人罷通る
伊賀の水月
無法松の一生
剣風練兵館
木曾の天狗
狐の呉れた赤ん坊
月の出の決闘
富士に立つ影
国定忠治

 今日は、阪東妻三郎主演の『狐の呉れた赤ん坊』を観た。監督は丸根賛太郎で、昭和二十年(1945)の作品。

 江戸時代の大井川は江戸を守るため橋が無く、川越え人足が人を担いで渡していた。その人足の一人の寅八(阪東妻三郎)は人を化かす狐退治に出かけ、狐が化けた赤ん坊を拾ってくる。しかし、実は本物の人間の赤ん坊で、困惑していた寅八も育てているうちに本当の父親のようになっていく。その子・善太は、なぜか生まれながらの威厳があった。

 終戦直後の作品で、進駐軍をはばかってチャンバラ映画を作れなかった時期のため、“殺陣の無い時代劇”として知られている。
 戦中の『無法松の一生』やこの作品の後の『破れ太鼓』同様、阪東妻三郎の演ずる父親像は素晴らしい。大きな目をむいて豊かに変わる表情が、父親の愛情を豊かに表現している。『無法松』や『決闘高田の馬場』にも観られるような、阪妻独特の走り方も楽しい。
 殺陣がない代わりに、阪妻に目いっぱい走らせたりしてアクションを多くして動きの豊かな映像を作ったり、阪妻の感情の動きを丹念に追った演出も見事。質屋の大黒屋峰左衛門(見明凡太郎 )や喧嘩ばかりしている馬方の丑五郎(光岡龍三郎 )、力士の賀太野山(阿部九州男)などの脇役キャラも生き生きしている。(2003/08/09)

殴られたお殿様(毆られたお殿樣) なぐられたおとのさま
監督 丸根賛太郎
公開年 1946年
評点[C]
感想  今日は、市川右太衛門主演の『殴られたお殿様』を観た。監督は丸根賛太郎で、昭和二十一年(1946)の作品。

 旅芝居の一座がつぶれて路頭に迷った中村三津蔵(羅門光三郎)と東家勘平(原健作)は金持ちの御隠居と従者に化けて無銭宿泊をしようと図る。そんな彼らとたまたま連れになった渡世人の夕立金左衛門(市川右太衛門)は圧政に苦しむ農民たちのため一肌脱ごうとするが、たちまち三人は牢にぶちこまれてしまう。しかし、幕府の巡察使が町人姿で領内に近づいているという知らせが届き……。

 終戦直後の時代劇なのでチャンバラはない。それだけではなく、民主主義を啓蒙するメッセージ性が非常に強く、いわゆる“アイデア・ピクチャー”と呼ばれたものの一つなのだろうか。
 なんというか、藩の役人は全員悪人で愚か者のようにカリカチュアライズされていて藩主は事なかれ主義、対する農民町人は虐げられている被害者と、見事なまでにステレオタイプ化されている上に、右太衛門は藩主や役人たちを面罵し農民町人をアジってオルグしてしまうという、お定まりのストーリー。
 現在の視点から観て楽しめという方が無理だと思うが、原作・脚本も担当した丸根監督はどういう思いで作ったのだろうか。思い切り内容をステレオタイプ化し、キャラをカリカチュアライズしたことで皮肉っているのかな……どうもわからない。類似の画面をリフレインする手法は面白かった。(2004/08/11)

天下の若君漫遊記 てんかのわかぎみまんゆうき
監督 丸根賛太郎
公開年 1955年
評点[C]
感想  今日は、丸根賛太郎監督の『天下の若君漫遊記』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 仕官のツテも無い、その日暮らしの浪人・団九郎(千秋実)たちは、どことなく気品のある風来坊・長吉(明智十三郎)を松平忠直の遺児・長七郎に仕立てあげ、旅籠で飲み食いしまくる。団九郎たちが逃げたあとも長吉は泰然としてタダ働きをしたり人助けをしたりする。はたして彼はただの風来坊なのか……。旅籠を出ると、団九郎と再会。偶然のことから幕府転覆の陰謀に巻き込まれる。

 サブタイトルに「前後編」とついているように、コミカルな前編と活劇的な後編に分かれている。前半は、千秋実や旅籠の主人役の益田喜頓のとぼけた味が面白い。そのため、主人公であるはずの明智十三郎が目立たない。
 後半は殺陣の多い活劇だが、お約束的なありふれたストーリーで、その上かなりテンポが悪い。省略可能な描写が多すぎるような気がした。また、時々殺陣にコマ落としの動きが混じるように見えるのが、不自然。
 丸根賛太郎監督は一部で人気の高い監督なので期待して観たのだが、この作品はハズレだったようで少々残念。(2003/04/07)

丸根賛太郎
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