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増村保造
暖流 だんりゅう
監督 増村保造
公開年 1957年
評点[B]
感想  今日は、増村保造監督の『暖流』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 志摩院長(小川虎之助)が一代で築き上げた志摩病院も、経営は傾き院長自身も死病に冒されていた。かつて院長の恩を受けた日疋祐三(根上淳)が病院改革に乗り出し、看護婦の石渡ぎん(左幸子)を右腕として大鉈を振るっていく。日疋は一方で院長令嬢の志摩啓子(野添ひとみ)が気になっていた。

 岸田国士原作の二度目の映画化(脚本:白坂依志夫)。昭和十四年の吉村公三郎監督版とはかなり展開やキャラクターの性格が異なる。舞台が昭和三十二年になっているようで、時代の違いを反映させるためか二人の女性キャラ、特に石渡ぎんが異常なほど積極的になっている。
 吉村版と違う作品にしようとしすぎたためか、登場人物が早口でしゃべくりまくる増村節がいつも以上だし、ぎんや志摩啓子の婚約者・笹島(品川隆二)も、ちょっとありえないという感じの人物になってしまっているように思う。左幸子は非常な熱演だが。また、吉村版と異なり、志摩啓子も息子の志摩泰彦(船越英二)も金持ちの子女には見えない。
 ただし、奇妙な歌を唄いまくる船越英二の怪演は見もので、目が釘付けになる(笑)。(2004/04/11)

巨人と玩具 きょじんとがんぐ
監督 増村保造
公開年 1958年
評点[A’]
感想
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巨人と玩具
巨人と玩具

 今日は、増村保造監督の『巨人と玩具』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 ライバル会社と熾烈な売上争いを続ける製菓会社の宣伝部の新入社員・西洋介(川口浩)は才能ある上司の合田課長(高松英郎)を尊敬している。合田は街で見かけた素人娘の島京子(野添ひとみ)をスターに仕立てあげたりして宣伝競争を仕掛けるが、次第に自らが作り出した状況に振り回され始めて……。

 増村監督の代表作の一つ。開高健の小説を白坂依志夫がもの凄い台詞の両の脚本にしている。
 増村作品独特の大声かつ早口でしゃべくりまくる台詞回しは古い邦画に慣れた耳で聞くとちょっと面食らうものの、現代社会のせわしさを表現するには効果的だと思う。時代劇の『曽根崎心中』では少々不自然だったが。全体に、五十年代前半までの映画とはかなり異なる雰囲気を感じた。
 いかにも“現代人”という感じのキャラクターの描き方や映像表現は、さすがに現代の目で観ると多少類型的だが、今から観ても充分面白く、公開当時は斬新な表現だったことがうかがえる。のちのテレビドラマのために頑固おやじという印象が強い高松英郎がキザな二枚目を演じているのも、個人的には面白かった。(2002/07/25)

最高殊勲夫人 さいこうしゅくんふじん
監督 増村保造
公開年 1959年
評点[C]
感想  今日は、増村保造監督の『最高殊勲夫人』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 三原商事を経営する三原家の長男・一郎(船越英二)と次男・次郎(北原義郎)は、それぞれ野々宮家の長女・桃子(丹阿弥谷津子)と次女・梨子(近藤美恵子)と結婚していた。彼らは三原家の三男・三郎(川口浩)と野々宮家の三女・京子(若尾文子)をも結婚させようとし、二人は反発するが、しだいに惹かれあっていく。

 増村監督が現代社会を描いた一連の作品の一つで(原作:源氏鶏太/脚本:白坂依志夫)、カリカチュアライズされた設定と演出のもと、登場人物がテンション高くしゃべくりまくる。
 戯画化されているにしても、桃子はちょっとステロタイプ的過ぎるようなキャラに見えた。また、全体にブルジョアが恋愛お遊戯をしているようで、あまり共感できるストーリーではなかった。テンポが良いので、それなりに楽しむことは出来たが。(2002/09/22)

からっ風野郎 からっかぜやろう
監督 増村保造
公開年 1960年
評点[B]
感想
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からっ風野郎
からっ風野郎

 今日は、三島由紀夫主演の『からっ風野郎』を観た。監督は増村保造で、昭和三十五年(1960)の作品。

 朝比奈組二代目の朝比奈武夫(三島由紀夫)は、対立する相良組の相良雄作(根上淳)を殺しそこなって重傷を負わせて刑務所に服役し、出所の日を迎えていた。腕も度胸もない朝比奈は相良の復讐に脅える日々を過ごすが、朝比奈組の持つ映画館の受付嬢だった小泉芳江(若尾文子)と出会う。

 作家の三島由紀夫の初主演作。自己顕示欲が強かった人だけに、非常にノリノリで演技しているという感じ。思ったほど下手ではないが、上手いというほどでもなく若尾文子と一緒の画面に出ると、彼女の貫禄に押されてしまっているようにも見える。情けないヤクザのカッコ悪さもちょっと足りなかったように感じた。朝比奈の側近役を演じた船越英二が良い。
 ヤクザを美化しない脚本(菊島隆三・安藤日出男)は当時としては目新しかったのだと思うが、今観ると普通のものに見えてしまうのは、いたしかたないところか。演出は、増村監督にしてはエキセントリックなものが無かったが、大作家相手に遠慮するところがあったのだろうか?(2003/09/06)

好色一代男 こうしょくいちだいおとこ
監督 増村保造
公開年 1961年
評点[A’]
感想  今日は、 市川雷蔵主演の『好色一代男』を観た。監督は増村保造で、昭和三十六年(1961)の作品。

 京の大両替商・但馬屋の跡取りである世之介は、根っからの女好きで若い頃から放蕩三昧。父親(中村鴈治郎)に修行として江戸支店に行かされたが、そこでも遊びまくってついに勘当。しかし、それでめげるはずもない世之介は、全国を渡り歩いて女遍歴を重ねる。

 有名な井原西鶴の同題作品の映画化(脚本:白坂依志夫)。市川雷蔵が活き活きと動いて、名コメディアン(仏語では“俳優”の意)ぶりを発揮してしている。関西出身だけに、増村保造流の過剰なまでの台詞の多さも流麗な上方弁のおかげで気にならない。
 世之介を取り巻く若尾文子・中村玉緒・水谷良重などなどが演ずる女性たちも、それぞれ巧みに描かれている。増村監督は溝口健二の助監督についていたことが多少関係しているのだろうか。
 増村監督初の時代劇だそうだが、切れ味よい演出がハマって、テンポよく時間が進んでいく。ただ、ひたすら脳天気に見える世之介が時々封建社会批判的なことを言うのが気になったが、それもあったから、より印象に残る作品になったのかな……という気もする。ちょっと社会派臭が露骨な気がしたけど。あるいは、井原西鶴の原作に内包されている風刺を観客にわかりやすく表現した……と解釈することもできるかな。
 とにかく「面白い」作品だった。喜劇的な作品の雷蔵は素晴らしい。ただ、女性が観るとどうなのだろーか。この雷蔵みたいな男性には惹かれるのかな?(2003/03/28))

妻は告白する つまはこくはくする
監督 増村保造
公開年 1961年
評点[B]
感想
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妻は告白する
妻は告白する

 今日は、増村保造監督の『妻は告白する』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 登山の最中、滑落して宙吊りになった自分と夫(小沢栄太郎)を支える幸田修(川口浩)を助けるため、夫のザイルを切断した彩子(若尾文子)。はたして彼女に殺意はあったのか。

 女の情念を描いた作品で、その激しさは若尾文子が演じきり、充分に描かれていた。ただ、ヒロインが単にエキセントリックな女に見えてしまう感も無いではないので、女の悲しさ・切なさがもっと表現されていると良かったかもしれない。もうすこし、彩子の深い描写が欲しかった。
 コントラストの強い白黒画面は作品の内容に合っていて美しい。(2002/10/21)

黒の試走車 くろのてすとかあ
監督 増村保造
公開年 1962年
評点[A’]
感想  今日は、増村保造監督の『黒の試走車(テストカー)』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 新車種発売間近のタイガー自動車は、その秘密がことごとくライバルのヤマト自動車の馬渡(菅井一郎)に盗まれていることを知る。タイガーの企画一課の小野田(高松英郎)と朝比奈豊(田宮二郎)は、馬渡に対抗してヤマトをスパイしようと必死になる。

 結果として大映の“黒シリーズ”の第一弾となった作品で、原作は梶山季之(脚本:舟橋和郎・石松愛弘)。同じ増村監督の『巨人と玩具』の役を彷彿とさせるモーレツ社員(←死語の世界)を高松英郎が演じていて、どう見ても彼が主人公。一般には田宮二郎主演作とされ、オープニングタイトルでも田宮二郎が一番最初に出るのだが。
 とにかく、高松英郎の暴走っぷりが凄く、観ていると彼のやっていることは正しい、と錯覚させられるほど。馬渡やタイガーの社長の娘婿という設定の平木(船越英二)などのキャラクターも、類型的ではあるが、俳優の演技が良くて、それらしく見える。田宮二郎は色々な意味で中途半端に見えた。(2003/02/26)

 まんじ
監督 増村保造
公開年 1964年
評点[A’]
感想
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卍

 今日は、増村保造監督の『卍』を観た。昭和三十九年(1964)の作品。

 ある大作家(三津田健)のもとを訪れた園子(岸田今日子)は、彼女と徳光光子(若尾文子)、その愛人・綿貫(川津祐介)、園子の夫・孝太郎(船越英二)の四人が陥った卍のような異様な関係を語りだす。

 谷崎潤一郎の小説を映画化した作品(脚本:新藤兼人)。原作からして倒錯した世界を描いているのだろうが、いやはや、岸田今日子が凄すぎ。もの凄い変態映画!(笑)
 若尾文子も船越英二も役にハマっていて良いが、岸田今日子が作品を支配している。90分の作品だが、全てが濃いので長く感じて、ちとしんどかった。出来が悪くて観つづけるのが辛い、というのとは違うが。(2002/10/06)

曽根崎心中 そねざきしんじゅう
監督 増村保造
公開年 1978年
評点[C]
感想  今日は、増村保造監督の『曽根崎心中』を観た。昭和五十三年(1978)の作品。

 醤油屋平野屋の手代・徳兵衛(宇崎竜童)と曽根崎新地の女郎屋天満屋の遊女・お初(梶芽衣子)は、本気で惚れ合っていた。しかし、互いに結婚話と身請け話が持ち込まれ、加えて徳兵衛には冤罪も着せられ、二人は心中することを決心する。

 近松門左衛門の代表作の一つ『曾根崎心中』を映画化。原作を読んだことのある私の目から観ても、この脚本(白坂依志夫・増村保造)はかなり忠実に再現していると思う。対して、演出の方は…この監督の作品を観るのは初めてなのだが…。
 登場人物たちが終始、息せき切ったような台詞回しなので、オーバーアクトに見えるというか一本調子というかなんというか…観続けるのに多少忍耐力が必要だった。溝口健二も出演者に目一杯演技させるタイプの演出だけれども、それとも違うように見えた。少なくとも、主人公二人が死を決する前と後とでは、様子が異なるのが自然だろう。
 “道行”の最中に事件の経過を回想することにした構成や、徳兵衛が袋叩きに遭うところとラストシーンのねちっこい演出など、見るべきところも一応はあるのだが…。同じ近松門左衛門原作の溝口健二監督作『近松物語』と比べてしまうと…。(2001/05/01)

増村保造
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