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中川信夫

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日本一の岡っ引 にほんいちのおかっぴき
監督 中川信夫
公開年 1938年
評点[A’]
感想  今日は、中川信夫監督の『日本一の岡っ引』を観た。昭和十三年(1938)の作品。

 自称“日本一の岡っ引”達磨の八兵衛(高勢実乗)は、巾着切りのトンビの勘六(小笠原章二郎)を追い詰めるが、渡し舟で逃げられる。しかし、対岸で山添数馬(沢村昌之助)という若侍と三人組の侍たちとのいざこざに巻き込まれ、そのまま戻ってくるはめに……。

 前年の『日本一の殿様』と同じ主演のコンビによる作品。小粋なコメディの前作とは異なり、この作品は主役二人が走り回るドタバタギャグ的要素が多くを占め、ちょっとしつこいと感じさせるところもあるので、前作には及ばない感じ。しかし、若々しい小笠原章二郎が中和してくれている面もある。
 勘六が宿屋に忍び込むシーンは面白いし、大八車や馬を駆使した街道での追いつ追われつや終盤の立ち回りシーンはなかなかスピーディで楽しい。三人組の侍のうちの一人が進藤英太郎らしいが、メイクが濃くてわからなかった(笑)。(2004/08/01))

月下の若武者 げっかのわかむしゃ
監督 中川信夫
公開年 1938年
評点[C]
感想  今日は、中川信夫監督の『月下の若武者』を観た。昭和十三年(1938)の作品。

 平家の落人が開いたという三輪の里に住む由良ノ三郎兼盛(長谷川一夫)は、あたりで恐れられている乱暴者の真刈ノ秀熊(高堂黒天)の一行と争いを起こす。その直後、兼盛は秀熊のもとに輿入れする桔梗姫(花井蘭子)を心ならずも奪い、怒った秀熊によって三輪の里は焼き討ちされてしまい……。

 主人公の由良ノ三郎兼盛や彼が兄と慕う乳兄弟の各務ノ十郎保盛(丸山定夫)、そして敵役の真刈ノ秀熊に至るまで全て初耳なのだが、戦前は知られていた人物なのだろうか。あるいは脚本の八木隆一郎が創作したオリジナルキャラクターなのか。
 登場人物になじみがなく時代設定もわかりづらいため、物語の中に入っていきづらい。主人公の兼盛の行動も行き当たりばったりで無責任。トホホな若者にしか見えず、全く共感できない。今残っている一時間弱のプリントは初公開時よりも20分ほども短くなっているのが大きな原因なのかもしれないが、ストーリーの展開も主人公の行動も唐突。
 また、長谷川一夫が未熟な若者を演ずるときの鼻にかかったような甘ったるい声の出し方はちょっと……。映像は所々雲など美しいが、夜のシーンが多いため、今のプリントでは何をやっているのかよくわからないところが多いのが残念(撮影:伊藤武夫 )。(2005/07/17)

エノケンの頑張り戦術 えのけんのがんばりせんじゅつ
監督 中川信夫
公開年 1939年
評点[B]
感想  今日は、エノケン主演の『エノケンの頑張り戦術』を観た。監督は中川信夫で、昭和十四年(1939)の作品。

 お隣どうしの稲田(榎本健一)と三田(如月寛多)は「防弾チョッキ株式会社」の同僚でもあるが、意地っ張り同士で仲が悪く、両家の妻(宏川光子・渋谷正代)は困っていた。両家族は夏休みに海へ旅行に行き、金があるわけでもないのに見栄を張り合って旅館の最高級の部屋に泊まってしまうが……。

 題名どおりエノケン主演の一本だが、彼が背広を着て口ひげ生やしてポマードで髪を撫で付けたサラリーマンを演ずるのはちょっと珍しいと思った(脚本:小国英雄)。それとも、私がまだ観ていないだけなのだろうか。
 サラリーマンものといっても、エノケンと如月寛多がすぐ喧嘩したり旅行先でも大立ち回りがあったり、アクションが多い。ただし、エピソードは色々工夫されているが、ドタバタが多すぎて少々まとまりに欠け、今で言う放送禁止ネタもあまり愉快でない部分がある。しかし、有名な「防弾チョッキテスト」のシーンなど面白いところもあった。
 また、防弾チョッキテストの前に「巷間、ややもすればこの防弾チョッキをつけることは卑怯なることと卑しむ風がありますが(引用中略)戦いはただいたずらに死ぬことだけが勇敢なることではありますまい(下略)」という台詞があってちょっと驚く。日中戦争中なのに、これほどあからさまな風刺ネタが許されていたとは。公開がまだ映画法の施行前だったからだろうか。もう少し遅れると引っかかったかも。
 それと、オープニングクレジットに「関東水上スキー連盟」という団体の名が出るが、今の水上スキーとは全く異なるものであるのが面白い。(2005/09/17)

新編丹下左膳 隻眼の巻 しんぺんたんげさぜんせきがんのまき
監督 中川信夫
公開年 1939年
評点[A’]
感想  今日は、大河内傳次郎主演の『新編丹下左膳 隻眼の巻』を観た。監督は中川信夫で、昭和十四年(1939)の作品。

 丹下左膳(大河内傳次郎)は、親の仇である明石の殿様を討とうとして左手に加えて左眼まで失ってしまう。吉野屋半左衛門(御橋公)に助けられた左膳は、吉野屋の娘お春(高峰秀子)と、ひととき平和な日を暮らす。しかし、同志の小田井三之助(黒川弥太郎)と故郷に残したお志保(山田五十鈴)のことを思うと、いつまでも安穏としていられないと思うのであった。

 おなじみ大河内傳次郎主演の『丹下左膳』シリーズだが、戦前の作品は貴重かな? 原作が川口松太郎ということになっているけど(脚色:貴船八郎)、林不忘の没後に書かれたので“新編”という言葉が冠されているのだろうか。
 丹下左膳の物語の粗筋を知っていなければストーリーがわかりづらい面もあるかもしれないが、お春と平和な生活をしている左膳と終盤に左手一本で血刀を振るう左膳との対比が凄い。小生意気な高峰秀子が可愛い。また、殺陣の場面で挿入される、落ち葉がつむじ風で渦巻く映像や御幣が風に揺らされる映像が効果的。(2002/11/11)

エノケンの弥次喜多(エノケンの彌次喜多) えのけんのやじきた
監督 中川信夫
公開年 1939年
評点[B]
感想  今日は、エノケン主演の『エノケンの弥次喜多』を観た。監督は中川信夫で、昭和十四年(1939)の作品。

 喜多八(榎本健一)は強盗を働いた夢を見て現実とかん違いし、むりやり弥次郎兵衛(二村定一)を連れて江戸から逃げ出した。途中で夢だったことに気づいたが、武田家の財宝のありかを記す絵図を巡る武田家の末裔の九重姫(若原春江)や泥棒(如月寛多)・浪人(山野一郎)らの争奪戦に巻きこまれて、なかなか江戸へ帰れず……。

 エノケン主演の弥次喜多ものだが、ストーリーはオリジナル(原作:波島貞/脚本:八住利雄)。
 昭和十四年の年末が公開初日のお正月映画なので、タイトルが出る前に操り人形(マリオネット)の弥次喜多が出てきて新年の挨拶をしたりする。作中に人形を使った特撮(?)もあるので、これは製作主任(チーフ助監督)として名前が出ている市川崑が担当したのだろうか。確か初演出作は人形アニメだったはずだから。
 弥次喜多ものなので旅が舞台のロードムービー風の作りで、絵図を巡る“追っかけ”などのアクションが主体の作品。アクションやギャグが盛りだくさんでそれぞれ工夫されているものの、上掲あらすじのキャラ以外にも仇討の姉弟がいたりしてメインキャラクターが多いこともあって、かなりまとまりを欠く印象がある。新春作品だし、同時代のエノケンファンなら楽しめたと思うが、現代人の目で観てしまうと、脚本の完成度が今ひとつでちょっと散漫な作品という印象が残る。
 とはいっても、人形の特撮や終盤に“アノネのオッサン”高瀬実乗が登場する部分は目を惹くものがある。特に妙なコスチュームの高瀬実乗は強烈。
 その他、新年の顔見せなのか、高峰秀子や堤真佐子など当時の東宝の若手女優たちが振袖姿で出てきて挨拶するだけのシーンがあったりするのが面白い。(2005/06/14)

エノケンの誉れの土俵入(エノケンの譽れの土俵入) えのけんのほまれのどひょういり
監督 中川信夫
公開年 1940年
評点[A]
感想  今日は、エノケン主演の『エノケンの誉れの土俵入』を観た。監督は中川信夫で、昭和十五年(1940)の作品。

 力自慢の勇蔵(榎本健一)は村相撲で庄屋の息子(成田孝)を投げ飛ばして重傷を負わせてしまい、村から出奔せざるを得なくなる。勇蔵は比類のない大飯食らいのため、どこへ行っても飯のことでしくじり、江戸へ流れて相撲の力士になるが……。

 エノケンとその一座総出演の作品で、1時間に満たない短編(原作しかし、短編だが、その中には様々なアクションやギャグがいっぱいに詰まっていて見た後の満足感は2時間の作品にも劣らないと思う。
 この作品のギャグは“反復”が非常に効果的に用いられている。相撲のシーンも“しょっきり”のようなコミカルなものを見せたかと思うと、身体を張ったアクロバティックなアクションも見せる。
 この尺の短さから現在残っているプリントは短縮版なのかと思っていたら、最初からこの長さだったらしい。徹底的に無駄を削ぎ落としテンポを良くした、この思い切った編集も作品に貢献していると思う(編集:後藤敏男)。小品ながら、佳作を超えた良作とも言っていいかもしれない。(2005/11/30)

ほらふき丹次 ほらふきたんじ
監督 中川信夫
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、中川信夫監督の『ほらふき丹次』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 大正末期の北海道。男やもめの丹次(藤田進)は村や町の者からホラ吹きと言われていたが、村人(小澤栄)を殺した脱獄囚(稲葉義男)を捕らえて大いに面目をほどこす。しかし、殺された村人の美しい娘はつ子(安西郷子)が丹次の家に世話になることに決まると、丹次ののんきな暮らしに変化が訪れる。

 藤田進が原作を気に入り、自ら映画化権を獲得して作られた作品だという(原作:寒川光太郎/脚本:八木隆一郎)。
 冒頭から中盤までののんびりしたエピソードや田舎町の暮らしはほのぼのしていて、本物の北海道ロケではないとは思うが田畑や森の映像も大変美しい(撮影:河崎喜久三)。そこまで観て、これはほのぼのした作品なのかな……と思っていると後半で急展開。原作がそうなのだろうが、唐突で驚かされる。人によって受け取り方は異なるとは思うけれども、私はちょっと意外に感じてしまった。中盤までの丹次のキャラクターが良かっただけに。ただし、その緊迫感は中川監督の手腕のおかげだろうか。
 東野英治郎の演ずる村の駐在所の老巡査が主人公に負けないほど大活躍したのは面白かった。(2005/06/08)

怪異宇都宮釣天井 かいいうつのみやつりてんじょう
監督 中川信夫
公開年 1956年
評点[A’]
感想
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怪異宇都宮釣天井
怪異宇都宮釣天井

 今日は、中川信夫監督の『怪異宇都宮釣天井』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 将軍家光(沼田曜一)の日光参詣が近い日、宇都宮十五万石の城下に隠密・利根柳太郎(小笠原竜三郎)が潜入した。彼はすぐ、城主・本田上野介(江見渉)の家臣・河村靱負(江川宇礼雄)が豪商・鍵屋(三島雅夫)と組んで腕利きの大工を集めて怪しげな細工をしていることを嗅ぎつけた。そんな彼を謎の覆面男・黒住典膳(丹波哲郎)が襲う。

 題名通り“宇都宮吊天井”を題材にした作品(原作:伍堂徹二/脚本:武部弘道・仲津勝義)。
 序盤から中盤までは題名とは異なり“怪異”の雰囲気はあまりなく、オーソドックスな時代劇の感じで進む。主演の小笠原竜三郎にはあまり華がなく、全体的に地味な雰囲気だが、いわくありげな山娘(筑紫あけみ)や謎の覆面男、そして吊天井の謎解きなどが絡みテンポ良く進んで飽きさせない、サスペンス時代劇といった感じ。中川監督の演出の巧みさを感じた。
 終盤には題名通り“怪異”の要素が加わってスパイスになる。上映時間は80分少々で短い作品だが、よくまとまった時代劇の佳作といっていいかもしれない。吊天井の仕掛けも、まずまず迫力がある。
 丹波センセイは出番が多いがほとんど顔を隠しているので、ちょっと損な役かも?(笑)(2004/09/07)

風雲急なり大阪城 真田十勇士総進軍 ふううんきゅうなりおおさかじょうさなだじゅうゆうしそうしんぐん
監督 中川信夫
公開年 1957年
評点[C]
感想  今日は、中川信夫監督の『風雲急なり大阪城 真田十勇士総進軍』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 関が原の合戦の後、紀州の九度山に蟄居していた真田幸村(田崎潤)は大坂城に入ることを決意し、全国の豊臣恩顧の大名に檄を飛ばした。使者として発った猿飛佐助(天城竜太郎)・霧隠才蔵(小笠原竜三郎)・三好清海入道(舟橋元)らは、徳川家康(石山竜次)の策謀と戦う。

 オープニングから『荒城の月』のメロディで始まったり劇中で春の景色でもないのに『さくら』が流れたりして、音楽の使い方が独特な作品(音楽: 佐野日出男)。ちょっと違和感がなくもない。
 忍術映画らしくトリック撮影が多用されているが(撮影:西垣六郎)、リアル志向ではなく猿飛佐助などの念力で敵の動きが早くなったり遅くなったり、果ては逆回しになったりする。序盤は真田十勇士たち同士のコントみたいのがあったりするので、コミカル路線を狙ったのかもしれないが空回り気味で、成功しているかどうか……(脚本:仲津勝義・武部弘道)。
 今の目で観ると、若き日の丹波哲郎が悪役、それもちょっと情けないキャラを演じているのが面白い。(2005/09/27)

毒婦高橋お伝 どくふたかはしおでん
監督 中川信夫
公開年 1958年
評点[B]
感想
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毒婦高橋お伝
毒婦高橋お伝

 今日は、中川信夫監督の『毒婦高橋お伝』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。

 すりや万引きを稼業にしている高橋お伝(若杉嘉津子)は宝石店で捕まったが、若い巡査・並河和馬(明智十三郎)を色仕掛けでたぶらかして逃れた。その後、手口をすっかり見抜いていた宝石店の主人・大沢伊兵衛(丹波哲郎)の情婦にされ彼の悪事を手伝って金を得るが、お伝には金を稼がねばならない事情があった。

 明治時代初期の伝説的な悪女お伝を描いた作品。実際とはかなり異なり、ストーリーはほとんどオリジナルのようだ(脚本:仲津勝義・中沢信)。新東宝らしいエロ路線を狙った作品だが、もちろん中川監督だけに、それだけではない。
 明治時代の街並みをなかなか頑張って再現しているし、偶然が作用しすぎる脚本にちょっと無理があるが、お伝が単なる悪女ではなく悪事へと引き込まれていく運命が描かれている。また、鏡や窓を使った演出も面白い。
 “お伝をめぐる五人の男”といった感じの構成だが、一番重要な並河和馬にあまり魅力を感じられないのは、弱々しい“色男”にしてしまっている脚本のせいか、あるいは演技のせいか……。丹波センセイは若い頃から迫力がある。(2004/07/24)

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