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中平康
狂った果実 くるったかじつ
監督 中平康
公開年 1956年
評点[A’]
感想
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狂った果実
狂った果実

 今日、『狂った果実』を観た。石原裕次郎主演で中平康監督。昭和三十一年(1956)の作品。

 鎌倉に住む資産家の息子の夏久(石原裕次郎)は悪友と自堕落に遊び回っていた。純情な弟の春次(津川雅彦)は兄たちに半ば反発し半ばあこがれている。ある時、春次が偶然知り合った美女・恵梨(北原三枝)とつきあい始めたので、夏久たちは驚く。だが、夏久と恵梨は互いに興味を示し始め…。

 “太陽族映画”の第二作目で、第一作では脇だった石原裕次郎の初主演作。若い頃の裕ちゃんは童顔で、長身とのアンバランスさがウケたのかな。北原三枝は美しい。
 弟を演じた津川雅彦が上手い。ラストシーンの表情とか。対する裕次郎の演技自体は…。津川雅彦は二世役者であるためか、お坊ちゃんらしさがよく出ていた。しかし、数十年後に東条英機を演じたり大河ドラマでチョンマゲコントのような怪演をしようとは…(笑)。夏久の友人を演じた岡田真澄も良かった。
 太陽族映画ってどんなもんだろう、と思っていたが、予想よりは面白かった。もちろん時代を感じさせる部分はあるし、当時の観客が受けた衝撃を共有することはできないが、意外と乾いた描写が古びていない。
 にしても、この程度でも当時は社会の敵あつかいされたのね…。(2000/09/27)

狙われた男 ねらわれたおとこ
監督 中平康
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、中平康監督の『狙われた男』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 銀座の商店街で殺人事件が発生する。バーのマダム牧子(南寿美子)の弟・吉夫(牧真介)には前科があったので疑われてしまい、彼は自ら真犯人を探そうとする。

 石原裕次郎主演の『狂った果実』が第一作とされている中平監督の、真の初監督作。完成後お蔵入りになり、公開は『狂った果実』のあとになったという珍品。
 いざ観てみると、お蔵入りになってしまったのもうなづけるような……。後年の中平監督のキザなほど洒落た演出や絵作りはほとんど無く、ストーリーも平板で退屈(脚本:新藤兼人)。1時間枠のテレビドラマで充分といった感じ。モノクロの映像そのものは美しいが……。天才肌の監督の習作、と考えれば良いのだろうか。(2002/09/14)

紅の翼 くれないのつばさ
監督 中平康
公開年 1958年
評点[A’]
感想
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紅の翼
紅の翼

 今日は、石原裕次郎主演の『紅の翼』を観た。監督は中平康で、昭和三十三年(1958)の作品。

 日本遊覧航空の石田(石原裕次郎)は、破傷風にかかった子供のため八丈島へ血清を運ぶセスナ機を操縦する。特ダネねらいで強引に同乗した女性記者(中原早苗)とセスナをチャーターした男(二谷英明)が乗客となったが、男は逃亡中の殺し屋だったことがわかってしまう。

 『脂肪の塊』や『駅馬車』といった作品に端を発する“乗り合わせもの”とでもいう物語(原作:菊村到/脚本:中平康・松尾昭典)。裕次郎も中平康も生きの良かった頃の作品で、メインの登場人物は少ないし狭い場所が舞台だが、絵作りが上手く演出もテンポが良いので面白い佳作。さすがに中盤がダレたのが、ちょっと惜しい。裕次郎は演技が上手いわけではないが、小生意気な若いパイロットが似合っていた。

 宮崎駿が飛行機をテーマとしたアニメの題名にいただきたかった気持ちはわかるけれども、自らを投影したキャラを裕次郎になぞらえたのは不遜のそしりを免れ得ないのでは……?(笑)(2003/02/20))

あいつと私 あいつとわたし
監督 中平康
公開年 1961年
評点[A’]
感想
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あいつと私
あいつと私

 今日は、中平康監督の『あいつと私』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 日米安保条約改定問題で世間が騒然としている中、東京郊外の大学に通う浅田けい子(芦川いづみ)は、男女のクラスメートたちと学生生活を謳歌していた。そんな中、天衣無縫にふるまうお坊っちゃんの“あいつ”こと黒川三郎(石原裕次郎)のことが気になって…。

 石坂洋二郎の小説が原作(脚本:池田一朗・中平康)で、石坂作品らしい明朗青春ドラマ。
 当時は、まだ大学にいけるのは恵まれた環境にある若者が多く、苦学生や大学に行けない若者の存在や安保問題などが一応は描かれてはいるが、それはお義理で触れられているという雰囲気で、監督は資産家の息子で東大を出ていて、主役の一人の石原裕次郎も慶応出なので演出も演技も全く屈託なく、社会派的な雰囲気はほとんど無い。それゆえかえって時代を感じさせられることは無いが、当時は反感を抱く観客も多かったかもしれない。
 黒川三郎が複雑な家庭環境に生まれたことも描かれるけれども、暗さは無い。正直、深みは無いが中平監督の少々誇張された喜劇的な歯切れの良い演出と、芦川いずみと石原裕次郎の若々しい演技が楽しめる作品。特に、作品によっては演技力が気になる裕次郎は、この作品では地で行っているような生き生きとした若者らしさが良い。
 黒川の母親に轟夕起子、父親に宮口精二、黒川の母親の元恋人に滝沢修。浅田けい子の妹に吉永小百合。中でも、『七人の侍』の剣豪役とは全く異なる宮口精二が面白い。(2002/02/20)

若くて悪くて凄いこいつら わかくてわるくてすごいこいつら
監督 中平康
公開年 1962年
評点[B]
感想  今日は、中平康監督の『若くて悪くて凄いこいつら』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 大学生の納屋浩(高橋英樹)・松村俊夫(和田浩治)・寺田新子(和泉雅子)らは、ひょんなことから歴代疑獄事件の秘密を握る佐倉総一郎(清水将夫)と知り合う。浩たちは“佐倉ノート”を狙う黒幕たちを相手に回して戦うことにする。

 柴田錬三郎による原作の映画化(脚本:池田一朗)。この『眠狂四郎』で知られる時代小説作家が現代ものも書いていたとは寡聞にして知らなかった。
 冒頭から自動車の中で俊夫が新子の服を剥いで一枚ずつ投げ出したり、浩たちの友人の伯母や黒幕の手下のやくざが奇矯なキャラクターだったり、中平監督らしい遊びがある。テンポ良い演出や歯切れの良い映像(撮影:姫田真佐久)も中平監督らしい。しかし中盤以降は失速し、題名の割りにおとなしい展開になってしまい、やや竜頭蛇尾の感がある。原作がそういうストーリーなのだと思うが。
 高橋英樹は声も姿も若々しく活きが良い印象。現代劇だとかなり長身に見える(実際、公称181cmだが)。彼が歌う谷川俊太郎作詞の主題歌が面白い。(2005/10/14)

危いことなら銭になる やばいことならぜにになる
監督 中平康
公開年 1962年
評点[A]
感想  今日は、中平康監督の『危いことなら銭になる』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 紙幣用の透かし入り用紙10億8000万円分が強奪される大事件が発生した。金の匂いを嗅ぎつけた事件屋の“ガラスのジョー”(宍戸錠)と“計算尺の哲”(長門裕之)そして“ダンプの健”(草薙幸二郎)の三人は、偽札の原版作りの名人・坂本(左朴全)の身柄を奪い合って紙幣用紙強奪の黒幕に高く売りつけようとするが……。

 主演は宍戸錠のアクション映画だが、中平監督らしいおふざけたっぷりのアクション・コメディといった感じの作品になっている。
 “ガラスのジョー”はガラスをこする音を聞くと腑抜けになってしまい、“計算尺の哲”は片足が不自由、紅一点のヒロイン的存在のキャラは痩せて小柄な浅丘ルリ子なのに柔道と合気道の有段者でジョーより強い、と奇妙な登場人物がテンポ良く動き回る。左朴全の怪演も相変わらずで、その妻(武智豊子)も面白い。
 以上のようなヘンテコな人物ばかりが忙しく動き回るが、ストーリーの骨格はシンプルなためか、見ていて混乱することはない。様々な種類の拳銃に対するこだわりやジョーが乗っている二人乗り小型自動車(メッサーシュミット)など、しゃれたセンスも覗かせている。
 原作(都筑道夫)があるらしいが、かなり脚色しているのではないだろうか(脚本:池田一朗・山崎忠昭)。中平監督流の遊びと才気が良い方に出た快作だと思う。この作品、アニメの『ルパン三世』に影響を与えているらしい。『カリオストロの城』は偽札の話だし、男三人と紅一点というキャラの組み合わせが同じだ。設定は全然違うけど。(2005/08/19)

光る海 ひかるうみ
監督 中平康
公開年 1963年
評点[C]
感想  今日は、中平康監督の『光る海』を観た。吉永小百合&浜田光夫主演で、昭和三十八年(1963)の作品。

 卒業式を迎えた大学の英文学科は、多くの女学生に対して男子は7人のみである。その中でも野坂孝雄(浜田光夫)は人気があって、バーを経営している母親(高峰三枝子)と母一人子一人の石田美枝子(吉永小百合)と、葉山和子(十朱幸代)の二人と友達づきあいをしている。孝雄は特に和子のことが気になって、和子も意識しているが、お互い一歩を踏み出せない。一方、三枝子も孝雄が好きだが、母親の再婚話がもちあがって……。

 原作は石坂洋二郎(脚本:池田一朗)。原作者の作風に加えて、中平監督の演出で登場人物たちの軽快な会話が続くが、しゃべりっぱなしという印象がある。また、美枝子の母親の再婚話が進むとシリアスになっていくが、他の部分とちょっとバランスが悪いような気がする。
 美枝子の母親の再婚相手に森雅之。その妻(作中で死亡)役は田中絹代。ベテラン俳優たちの中でも、田中絹代の大物感が凄い。(200/02/28)

月曜日のユカ げつようびのゆか
監督 中平康
公開年 1964年
評点[B]
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月曜日のユカ
月曜日のユカ

 今日は、中平康監督の『月曜日のユカ』を観た。昭和三十九年(1964)年の作品。主演は加賀まり子。

 横浜のナイトクラブで働く18歳のユカ(加賀まり子)には“パパ”と呼ぶパトロン(加藤武)がいて、若い恋人のオサム(中尾彬)もいる。彼女は男を喜ばせることを自らの喜びとしてきたが、ふとしたことから自分の生き方に疑問を覚える。しかし、あくまで奔放に振る舞う彼女に周囲はついていけなくなっていく。

 中平監督の映像感覚が思う存分炸裂している。キザっぽくて鼻につくところもあるし、横浜という土地のエキゾチズムに頼りすぎるようなところもあったが、今でも新鮮。
 純真無垢な人間の持つ怖さというのは何度も描かれてきたテーマだし、ユカという人物にはどうにも共感を抱けない(共感する必要も無いのだが)。しかし、中平康の映像と若き日の加賀まり子のコケティッシュな美しさが作品に魅力を与えているのだろうか。(2000/10/19)

黒い賭博師 くろいとばくし
監督 中平康
公開年 1965年
評点[A’]
感想
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黒い賭博師
黒い賭博師

 今日は、中平康監督の『黒い賭博師』を観た。昭和四十年(1965)の作品。

 ギャンブラーの氷室浩次(小林旭)は同業者の犬丸(小池朝雄)に大勝し、彼の愛人である玲子(富士真奈美)に付きまとわれるようになる。氷室はその後、怪しげな中国人・楊(高橋昌也)のイカサマを見破れず大敗。しかし、楊の裏に国際賭博団が存在することを知る。

 中平監督の“ギャンブラー”シリーズの一作。この作品の人気が特に高いようだ。小林旭に鋭さがあって、そのためにキザったらしさがギャグにならずに踏みとどまっているように感じた。中平監督一流のキザな雰囲気やおふざけも、あまりやりすぎず、ほどほどなので観やすい。小池朝雄の、悪役とも言い切れぬ小者っぽい雰囲気が良い。
 私はギャンブル嫌いで作中に登場するゲームのルールは一つもわからないのだが、それでもテンポよい展開と洒落た雰囲気を楽しめる佳作。氷室の愛人(横山道代)の演技が過剰に戯画化されていて、作中で浮いていたのが気になった。(2003/10/29)

黒い賭博師 悪魔の左手 くろいとばくしあくまのひだりて
監督 中平康
公開年 1966年
評点[A’]
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黒い賭博師 悪魔の左手
>黒い賭博師
悪魔の左手

 今日は、小林旭主演の『黒い賭博師 悪魔の左手』を観た。監督は中平康で、昭和四十一年(1966)の作品。

 中東の小国・パンドラ王国の“国立賭博大学”の教授(二谷英明)は日本で闇カジノを開き、日本の富を吸い上げようとしていた。日本一のギャンブラー氷室浩次(小林旭)が邪魔になるため、三人のギャンブラー(原泉/天坊準/ジュディ・オング)を日本に送って倒そうとする。しかし、なぜかパンドラ王(大泉滉)の第三王妃(広瀬みさ)も密かに来日していた。

 “ギャンブラー”シリーズ第八作で、『黒い賭博師』と同じく中平康が監督している。のっけから中平監督らしいお遊びが始まって(全員が見るからに日本人のパンドラ王国!)、この作品で描かれるのが一種のファンタジーの世界であることを暗示する。
 ギャンブルの種としてカジノ内のカードやダイスだけでなく競艇まで登場し、そこでちょっと驚くアクションが展開されるのが見もの。また、ジュディ・オングの登場の仕方も今から見ると意外。二谷英明はこの作品でも非常に損な役(笑)。
 中平監督の、くどさのない軽妙な演出が楽しめる一本。(2004/05/05)

中平康
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