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成瀬巳喜男

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めし めし
監督 成瀬巳喜男
公開年 1951年
評点[A]
感想
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 1
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 1
『めし』
『浮雲』
『娘・妻・母』
『乱れる』
『女の中にいる他人』
「愛蔵写真集」

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めし
めし

 今日は、成瀬巳喜男監督の『めし』を観た。昭和二十六年(1951)の作品。

 反対を押し切って夫・岡本初之輔(上原謙)と結婚したものの、5年経つと妻の三千代(原節子)は日々の生活に倦怠を覚えていた。そんな中、初之輔の姪・里子(島崎雪子)が家出して岡本家に転がり込んでくる。若い彼女に心乱される三千代。

 原作は林芙美子の同題作品。作者が急逝して未完に終わったので、この映画のラストはオリジナルだそうだ(脚本:井出俊郎・田中澄江/監修:川端康成)。
 上原謙の演ずる夫は『山の音』とは全く異なる好人物。良かった(笑)。夫婦の間の機微が時にはユーモラスに描かれていて、心温まる作品。里子の“アプレ娘”ぶりが面白い。三千代の母親役の杉村春子も良い。
 やはり、原節子は小津作品よりも成瀬作品の方が演技が自然で上手く見える。(2001/02/19)

お國と五平(お国と五平) おくにとごへい
監督 成瀬巳喜男
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『お國と五平』を観た。昭和二十七年(1952)の作品

 ある街道を、行き交う人々の目を惹く美しい武家の妻女風の女と若い男の従者が歩いていた。その女お國(木暮実千代)は、夫の伊織(田崎潤)を彼女に想いを寄せる友之丞(山村聡)に闇討ちされ、若党の五平(大谷友右衛門、のち中村雀右衛門)を連れて仇討ちの旅に出たのだ。しかし、お國はそんな生活に疑問を感じはじめて……。

 成瀬監督には珍しい時代劇で、谷崎潤一郎原作の映画化(脚本:八住利雄)。時代劇とはいっても、もちろん殺陣が繰り広げられるわけではなく、男女の心理のせめぎあいの描写が続く。重苦しい展開が連続して正直結構きついものがあった。しかし、説明的な台詞は少なく演技と行動で揺れる男女の心理を表現するのは、演出の賜物というべきだろう。
 ただし、溝口作品のキャラクターのような内に秘めた情熱を暗示させるような面がないので少々物足りないような気がする。後味の悪い結末は原作のせいだろうから(未読)しかたないだろう。
 山村聡が情けない男の役をやっているのは珍しい。若者役というのも、ほとんどないのでは?(2004/07/07)

おかあさん おかあさん
監督 成瀬巳喜男
公開年 1952年
評点[A’]
感想  『おかあさん』は昭和二十七年(1952)の作品。香川京子と田中絹代の主演。

 福原年子(香川京子)は、クリーニング屋の両親(三島雅夫&田中絹代)・兄(片山明彦)・妹(榎並啓子)、そして甥(伊東隆)と共に暮らしている。兄は奉公先で病気になって帰って来て、父もしばらくして過労で倒れるなど、生活は厳しい。そんな家族を見守り続ける“おかあさん”の姿。

 戦前からおこなわれていた児童作文指導の、『綴り方教室』の一編を基にした作品(脚本:水木洋子)。終戦直後の貧しい庶民の暮らしが克明に描かれていて、小綺麗な小津作品とは全く異なる世界が繰り広げられている。
 香川京子は長身で顔が小さくスタイルが良すぎて、貧しい下町の中ではちょっと浮いて見え、文字通り“掃きだめに鶴”って感じ(笑)。でも、美しい。“おかあさん”の田中絹代はまさにハマり役。彼女は実際に母になったことはないのに、不思議。
 ジャンルとしては“母もの”で、湿っぽい話ではあるが、所々に笑いがあるので娯楽性は保っている。これが、今井正作品とは異なるところかも。成瀬監督に、これほどユーモアの感覚があるとは思わなかった。
 特に、ヒロインに惚れている近所の平井ベーカリーの息子・信二郎を演じた岡田英次の三枚目っぷりは爆笑もの。岡田英次に、こんな面があったとは…。また、途中で観客の誰もがアッと驚く1カットがある。ネタバレになるので説明しようがないが、これは必見かも。
 成瀬作品の中では特に名作とはされていないが、意外な掘り出し物だったかも。(2001/06/11)

夫婦 ふうふ
監督 成瀬巳喜男
公開年 1953年
評点[A’]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『夫婦』を観た。昭和二十八年(1953)の作品。

 転勤で東京に出てきた中原伊作(上原謙)・菊子(杉葉子)夫妻は家がなかなか見つからず、伊作の会社の同僚・武村良太(三国連太郎)が妻を失って一人暮らしになったばかりなので、彼の家に間借りすることになる。倦怠を覚えていた夫婦にとって良太の存在は何かと新鮮で、菊子と伊作の仲は微妙になる。

 成瀬監督の夫婦ものの一作。『青い山脈』の杉葉子が、若いが所帯じみている妻を好演していて、これはちょっと意外だった。上原謙も、同じ成瀬監督の『めし』『山の音』と同様に、かったるい感じのサラリーマンそのものの姿になりきっていた。
 平凡な夫婦たちの暮らしが実に淡々と描かれ、その中でも小事件が起こって人々の心をかき乱しはするものの、やはり日々は変わらず流れていく。人生とは退屈に耐えなければならないということなのか。しかし、はたから見るとつまらないことで当事者の心が乱されたりいらだったりする様子が上手く表現されているのは成瀬監督の手腕か。ただ、疲れているときに観ると眠くなっちゃうかも(笑)。
 菊子の妹として岡田茉莉子、兄として小林桂樹、父として藤原釜足が出演。(2003/05/24))

山の音 やまのおと
監督 成瀬巳喜男
公開年 1954年
評点[A]
感想
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 2
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 2
『山の音』
『流れる』
『女が階段を上がる時』
『放浪記』
『乱れ雲』
「特典ディスク」

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山の音
山の音

 今日は成瀬巳喜男監督の『山の音』を観た。昭和二十九年(1954)の作品。

 鎌倉で二世代同居している尾形信吾(山村聰)は、外に愛人がいる息子の修一(上原謙)の妻の菊子(原節子)を不憫に思う。何かにつけてやさしくするのだが、それがかえって家族の間に波紋を広げる。

 成瀬巳喜男作品をようやく観ることができた。この作品の舞台(鎌倉)や題材はちょっとだけ小津作品に似ているようだ。しかし、厳格な様式美の小津安二郎やドラマティックな溝口健二に比べると、演技も映像もナチュラルな印象だった。舅と若く美しい嫁との微妙な関係を細やかな演出で表現しきっている。
 原節子は小津作品よりも演技が上手く見えた。修一ってヤなやつだねぇ(笑)。しかし、上原謙って山村聰よりも年上のはずだけど、違和感が無い……。
 出来にバラツキがあるそうだが、他の成瀬作品も観たくなった。(2001/01/01)

晩菊 ばんぎく
監督 成瀬巳喜男
公開年 1954年
評点[B]
感想  今日は、成瀬巳喜男監督の『晩菊』を観た。昭和二十九年の作品。

 元芸者で現在は金貸しをしている中年女・倉橋きん(杉村春子)は、金を貯めることだけが生きがいで、元芸者仲間の小池たまえ(細川ちか子)や鈴木とみ(望月優子)に陰口を叩かれても気にしない。彼女たちそれぞれにとっての小事件が起こり、各々の生活に波風が立つかと思われたが…。

 最初の方は、中年女たちのトゲのある会話ばかりなので、40分ほどは忍耐が必要かも(笑)。しかし、中盤以降は話が動いてくる。といっても、大きな出来事があるわけではなく、“寂しい人々”がそれなりに生き抜いていく様子を淡々としかも克明に描いている
 映画では主演の少ない杉村春子だが、やはり上手い。共演者も見事。きんのもとを訪れる昔の男たちは、上原謙と見明凡太郎。とみの娘に有馬稲子。(2001/12/29)

浮雲 うきぐも
監督 成瀬巳喜男
公開年 1955年
評点[A]
感想
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 1
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 1
『めし』
『浮雲』
『娘・妻・母』
『乱れる』
『女の中にいる他人』
「愛蔵写真集」

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浮雲
浮雲

 成瀬巳喜男監督の『浮雲』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 戦時中、仏印(仏領インドシナ=現在のベトナム)で知り合って深い仲になった富岡兼吉(森雅之)と幸田ゆき子(高峰秀子)。戦後の激動が彼らを襲い、富岡の周りには女の姿が絶えないが、二人は別れることができず、共に流れていく。

 成瀬監督の最高傑作とされている作品。同年の『キネマ旬報』ベストテン第一位で、小津安二郎監督も、『浮雲』を溝口健二の『祇園の姉妹』と並ぶ邦画の傑作として認めていたという。
 高峰秀子と森雅之、二人の主演俳優が素晴らしい。現状が良いとは思っていないが腐れ縁で離れることのできない男と女の、けだるい雰囲気を上手く出している。実際、終戦直後の人間のやつれた感じを出すために、撮影中は極端な食事制限をおこなっていたそうだが(笑)。映像も、奇をてらったところは無いが、モノクロ画像の安定した美しさがある。登場人物の視線に意味をもたせた演出が面白い。ストーリー(原作:林芙美子/脚本:水木洋子)も、主人公二人の関係を中心として、各々にからむ男女が巧みに散りばめられている。
 ただ、今から観ると、かなり重い感じがするかもしれない。これは私の嗜好のせいでもあるが、通しで観ると少々へヴィだった。「成瀬巳喜男初心者には向かない」という意味の意見をどこかで見かけたことがあるが、一理あるかも。(2001/07/01)

流れる ながれる
監督 成瀬巳喜男
公開年 1956年
評点[超A]
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 2
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 2
『山の音』
『流れる』
『女が階段を上がる時』
『放浪記』
『乱れ雲』
「特典ディスク」

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流れる
流れる

 今日は、成瀬巳喜男監督の『流れる』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 柳橋の芸者・つた奴(山田五十鈴)が持っている芸者置屋「つたの屋」は経営が傾きつつあった。そこに集う様々な人間たちの群像を、新たに住み込みの家政婦としてやってきた梨花(田中絹代)の視点で描く。原作は幸田文(脚本:田中澄江・井手俊郎)。

 山田五十鈴と田中絹代以外にも、料亭「水野」の女将・お浜(栗島すみ子)、つた奴の娘・勝代(高峰秀子)、つたの屋の芸妓・染香(杉村春子)、同・なな子(岡田茉莉子)など、大物女優が総出演している。特に、サイレント時代の大女優で戦前に引退していた栗島すみ子は特別出演で、他の女優たちはもちろん成瀬監督よりも先輩であるため、撮影中に監督を「巳喜ちゃん」と呼んでいたという話がある。
 昭和三十年代初頭、既に衰えつつあった花柳界を多くの女優たちの個性を活かして描ききっている。ミスキャストは一人も無く、当時の映画界の層の厚さを知ることができる。溝口賢二監督の『祇園の姉妹』から20年を経て、生活に疲れた様子を見せながらも色香を残している中年の芸者を演じた山田五十鈴がハマリ役だし、軽薄な染香の杉村春子も面白い。もちろん、玄人の世界に飛び込んだ素人のおばさんを演じた田中絹代も見事。
 どこかで「芸者の話なのに“お座敷”のシーンは全く出てこない」と指摘されているのを読んだが、その通りだった。梨花がやってきてすぐに、つた奴が「梨花さんっての呼びにくいから、お春さんにするわ」と言うのは笑った。脈絡ゼロ(笑)。
 原作も良いのだろうが、それを混乱することなく映像化した成瀬巳喜男監督の演出の手腕には感服いたしました。今では姿を消した、本当の大人向けの映画という感じがする。(2001/07/08)

乱れる みだれる
監督 成瀬巳喜男
公開年 1964年
評点[B]
感想
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成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 1
成瀬巳喜男
THE MASTERWORKS 1
『めし』
『浮雲』
『娘・妻・母』
『乱れる』
『女の中にいる他人』
「愛蔵写真集」

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乱れる
乱れる

 今日は、成瀬巳喜男監督の『乱れる』を観た。昭和三十九年(1964)の作品。

 夫を戦争で失った礼子(高峰秀子)は、十八年間ほとんど一人で嫁ぎ先の酒屋を切り盛りしてきた。苦労の絶えなかった礼子だが、最近は義弟の幸司(加山雄三)の放蕩とスーパーマーケットの進出で一層悩みの種が増えていた。

 加山雄三の成瀬作品初出演作。テストのたびに演技が変わって困った、というような意味のことを高峰秀子が語っていたのをチラッと読んだことがあるが、やや硬めながらもさほど悪くない演技に見えた。むしろ一本調子気味に見えたが、同じような印象を与える演技をしたところを切り取った演出者の手腕か。
 未亡人と義弟の心の葛藤を中心とした作品で、これが成瀬作品の最高傑作とする人もいるようだが、その良さを理解するためには、私はもっと大人にならなければならないようだ。淡々とした展開の中で、唐突なラストシークエンスにはビックリ。蛇足では? なんとなく、脚本(松本善三)の第一稿にはなく監督の意向で付け加えられたような気がするが……。(2004/03/21)

ひき逃げ ひきにげ
監督 成瀬巳喜男
公開年 1966年
評点[C]
感想  成瀬巳喜男監督の『ひき逃げ』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 伴内国子(高峰秀子)は、大企業の重役・柿沼久七郎(小沢栄太郎)の運転手に一人息子(宮康弘)をひき殺された。いったんは示談に応じたが、真犯人(司葉子)が別にいることを知った国子は復讐を誓う。

 一連の成瀬監督と高峰秀子のコンビの作品。この作品は、男女間の恋愛が主題ではなく増加しつつあった交通事故を描き(当時、既に“交通戦争”という言葉があっただろうか)、国子という女性を通してであるが社会派的なテーマを扱っている。
 しかし、主人公にはあまり魅力が無いし共感も感じづらい。上映時間は1時間35分程度だが、かなり長いような気がした。亡き子を思っているにしても高峰秀子の演技はちょっと暗すぎるように思ったが、この脚本(松山善三)では成瀬監督も演出しづらかったのではないか。重役の会社がオートバイメーカーだというのもテーマ性が露骨なのでは。
 成瀬作品は男女の交情を中心としていないと、イマイチなような気もする。(2002/08/21)

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成瀬巳喜男
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