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野淵昶
女殺し油地獄 おんなごろしあぶらじごく
監督 野淵昶
公開年 1949年
評点[B]
感想  今日は、野淵昶監督の『女殺し油地獄』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 豊島屋(志村喬)の娘お吉(日高澄子)と好き合っていた大坂の商人・河内屋与兵衛(阪東好太郎)は、幕府の貨幣改鋳を批判して大坂から追放される。母おわさ(浦辺粂子)や義兄の和泉屋太兵衛(月形龍之介)は彼を案じて田舎でおとなしくしているよう諭すが、与兵衛はお吉を忘れられない。

 幾度も映画化されている近松門左衛門の『女殺油地獄』が原作ということになっている。しかし、題名とクライマックスのシーンを借りただけで、ほとんど野淵昶のオリジナル脚本に近い。
 宮川一夫の撮影はローキーと言うのだろうか、基調は暗くドキュメンタリータッチという感じ。特に夜間の室内は江戸時代の行燈やろうそくの明かりらしさを出しているが、時には大胆なシルエット処理をしていて面白い。監督の方針だろうか、映像に加えて演出や演技も様式的ではなく全体にリアルタッチになっている。
 近松ものという先入観をもって観始めると予想を裏切られるユニークな作品で一見の価値はあるかも。上田吉二郎や加東大介が演ずるオリジナルの脇役たちもいい味を出している。
 ただし、登場人物の何人かは江戸時代ではなく近代人のようだし、主人公の与兵衛の性格がどうにも魅力がない。その上、ラストシーンはいささかずっこける。同監督の『滝の白糸』もそうだったが、監督の意向なのか会社(大映)側の要請なのか……?(2006/01/19)

滝の白糸(瀧の白糸) たきのしらいと
監督 野淵昶
公開年 1952年
評点[B]
感想  今日は、京マチ子主演の『滝の白糸』を観た。監督は野淵昶で、昭和二十七年(1952)の作品。

 美貌で人気の水芸師・滝の白糸(京マチ子)は、金沢興行の際にふとしたことで知り合った貧しい青年・村越欣彌(森雅之)に惹かれ、大学の法学部を卒業するまで仕送りしてやることを約束した。人気者とはいっても浮草稼業、仕送りは楽ではなく、白糸は無理に無理を重ね……。

 溝口健二監督/入江たか子主演のサイレント版が伝説的な、泉鏡花の原作による作品(脚本:依田義賢)。『滝の白糸』は計5回も映画化されているらしい(溝口版が最初で、野淵版は三度目)。
 この監督の名を聞くのは初めてで、観る前は正直どんなもんかなと思ったが、脚本:依田義賢/撮影:宮川一夫/照明:岡本健一と当時の大映の一流スタッフが揃い、キャストも京マチ子と森雅之の他、脇には浪花千栄子・進藤英太郎・殿山泰司など実力ある俳優が揃い、充実した画面と安定した演技を楽しむことができた。
 戦後の大映作品にしては少々画質が劣化しているが、撮影は美しく、脇役の中でも特に浪花千栄子と進藤英太郎はいつもながら上手い。浪花千栄子は敵に回すと恐ろしいが味方につけると頼もしい(笑)。

 しかし、ラスト近くの急展開には驚愕。ネタバレになるので書けないが、あれは会社側の意向なのだろうか……。泉鏡花の世界ではなくなってしまったと思う。存命中だった溝口もよく許したなぁ。まぁ、もしも永田雅一が求めたのだとしたら、溝口も認めざるを得なかっただろう。(2004/06/01)

野淵昶
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