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大庭秀雄
美しき隣人 うつくしきりんじん
監督 大庭秀雄
公開年 1940年
評点[B]
感想  今日は、大庭秀雄監督の『美しき隣人』を観た。昭和十五年(1940)の作品。

 東京で働いていた秋本邦子(水戸光子)は兄(笠智衆)が出征して母(飯田蝶子)一人になったため、会社を辞めて帰郷する。馬の世話など忙しく働く中、幼なじみの清(高倉彰)が満州開拓団に加わる夢を語り一緒に来ないかと言うが、邦子は母一人を置いていく気になれず……。

 冒頭に「指導 農林省馬政局」という字幕が出るので、作中で紹介される“軍用保護馬”という制度の宣伝が主題らしい(脚本:武井韶平)。
 軍用保護馬制度の他にも満州開拓団など出てくるので、体制協力色は濃い。頽廃的な都会人と堅実な地方人との対比という感じの描写もあったりする。しかし、その都会的な部分の描写が生き生きしているのが、作り手の好みが正直に出てしまっているようで面白い。
 ただし、松竹映画だけあって俳優たちの演技は巧みだし、田舎暮らしの描写も素朴な良い味を出している。前年の『暖流』(吉村公三郎監督)で人気絶頂となっていた水戸光子には輝きがあり、飯田蝶子も良い。
 脚本に所々矛盾があったり(山のスキー場に雪が積もっていても邦子の家の周りに全く雪がなかったりする)、やはり登場人物が“良い子”ばかりという感じはするが、水戸光子の魅力を見せることことには成功している一本。(2005/08/04)

社長と女店員 しゃちょうとおんなてんいん
監督 大庭秀雄
公開年 1948年
評点[C]
感想  今日は、大庭秀雄監督の『社長と女店員』を観た。昭和二十三年(1948)の作品。

 丸金デパートの社長・黒川金兵衛(柳家金語楼)は、デパートの店員たちがヤミ物資取り扱い反対運動をしていると聞いて一人で視察に行くが、高血圧のため店内で失神。親切に介抱してやった店員の三谷和子(月丘夢路)は、金兵衛を掃除夫募集の応募者と思い込んでしまう。

 メロドラマで有名な大庭監督作品だが、喜劇王・柳家金語楼主演の喜劇映画(脚本:津路嘉郎・光畑碩郎)。しかも、単なる喜劇映画ではなく闇物資横行を批判する社会派映画的な色合いが濃い。全体に古めかしい人情噺的展開、その上お説教臭い。デパートのセットもチャチで、今観ると時代を感じさせられてしまう。
 ただし、中盤で“あきれたぼういず”(坊屋三郎・山茶花究・益田喜頓)の歌とコントを見られるのが珍しい。また、大庭監督らしくヒロイン格の月丘夢路は終始美しく撮られていた(撮影:布戸章/照明:豊島良三)。戦前派の徳大寺伸がまだヒロインの相手役の二枚目を演じていて、同じく戦前世代の日守新一はダラ幹ぶりで妙味を出していた。

 この作品、オープニングでいきなりゴジラのテーマが流れてびっくりした。『ゴジラ』は昭和二十四年の作品なので、こちらが元祖ということになる。
 音楽の伊福部昭は旋律をよく使いまわしたそうで、例えば吉村公三郎監督の『偽れる盛装』を観た特撮映画ファンは怪獣映画で流れる「メーサー光線車マーチ」という曲を聞いて驚くという。音楽の使いまわしは他の映画音楽作曲家もやっているそうだが。(2005/10/12)

京化粧 きょうげしょう
監督 大庭秀雄
公開年 1961年
評点[B]
感想  山本富士子主演の『京化粧』を観た。監督は大庭秀雄で、昭和三十六年(1961)の作品。

 東京に住む翻訳家の山岡(佐田啓二)は、たまたま訪れた京都で知りあった芸者おその(山本富士子)に強く惹かれ、いつか一緒になりたいと手紙や金をしばしば送るようになる。しかし、二人の距離はあまりにも遠かった。

 大映専属だった山本富士子が松竹に招かれて撮った作品。お得意の芸者もの。絵に描いたような顔立ち――悪く言うと「作りもののような」顔ということになるが――の山本富士子は、演技に傑出したものがあるわけではないものの、芸者がハマリ役。佐田啓二は堅物の男という雰囲気は出ていたけれども、演技の方も硬いというか一本調子というか……。山本富士子の妹分の若い芸者・小菊として岩下志麻が出演していて、これが意外に良かった。彼女は“美人女優”のイメージがあったが、この作品では“可愛らしい”という印象。
 内容の方は、芸者を社会の犠牲者として描く王道パターンで古さを感じた。女性キャラが常に被害者ということになっていて、溝口監督作品の女性のような生命感が感じられない。ただ、おそのと小菊が二人でおそのの故郷を訪れ、河原で語り合ったり学校で遊ぶところは二人の女性の哀しさが表現されていて良かったと思う。また、京都の女は関東の男の手におえるものではない、ということも教えられた(笑)。
 映像は、松竹作品としては保存状態がかなり良く美しい。(2003/05/15)

大庭秀雄
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