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小津安二郎

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早春 そうしゅん
監督 小津安二郎
公開年 1956年
評点[A’]
感想
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早春
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集
小津安二郎
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第二集

 今日は、小津安二郎監督の『早春』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 蒲田に住む、スギこと杉山正二(池部良)は同じ三十歳前後の通勤仲間とグループを作ってよく遊んでいた。その中の蓮っ葉な女のキンギョこと金子千代(岸恵子)がハンサムな正二に興味を示したことから、グループ内や正二と妻の昌子(淡島千景)との間には波風が立ちはじめ……。

 決定版とも言うべき『東京物語』の次の作品で、これは親子関係ではなく夫婦の関係が主題で、若いサラリーマンのグループを描くなど、小津が新しい分野に挑戦している。ストーリー自体はコメディではないが、会社員のグループや正二の戦友会のコミカルな描き方が面白い。ただ、小津作品としては最も長いだけあって(145分)、少々冗長に感ずる部分もあったが…。
 高橋治が評価しているように、岸恵子は複雑な女をよく演じている。彼女が渡仏して小津の手元から失われてしまったので次作の『東京暮色』が上手くいかず、小津はまた親子を描く作品世界に戻ってしまったのか…。

 池部良って独得な顔だなぁ。個人的には『そよ風ときにはつむじ風』シリーズ(新潮文庫)等のエッセイの印象が強いが。当時は東宝に所属していた彼は小津に会ってしばらくして「お前は覚えがひどく悪いから早いとこ切り上げて勉強しなさい。東宝の俳優さんは覚えもよくないそうだが、人物の解釈が浅い。よく覚えれば解釈もどんどん深くなる。台詞覚えの悪いやつの芝居は人間的でないね。それが東宝育ちのお前さんによく出ている。はい、おやすみ」(『風が吹いたら』文春文庫)と、ガツン!と一撃喰らったそうな。(2000/09/19)

東京暮色 とうきょうぼしょく
監督 小津安二郎
公開年 1957年
評点[B]
感想
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東京暮色
東京暮色
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集
小津安二郎
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第二集

 今日は、小津安二郎監督の『東京暮色』を観た。昭和三十二年(1957)の作品。

 大銀行の監査役の父(笠智衆)は次女(有馬稲子)と2人暮らしだが、既に結婚していた長女(原節子)も夫と上手くいかず娘を連れて帰って来ている。
 次女は若い学生とつきあっていて、なぜか最近彼を追い回している。しかし男は逃げ回り、遊び仲間たちが通っている麻雀屋のオバサン(山田五十鈴)が実は昔、父の部下と駆け落ちした実の母親だと知った彼女は…。
 これは小津作品としては異例なほど暗く陰鬱。妊娠中絶まで登場するという内容もそうだが、物理的にも暗い画調に見えた。ラストも、なんらかの和解が成立する戦後の作品群の中で、これだけが全て未解決で終わる。

 公開当時、『キネマ旬報』のベストテンで小津作品としては異例に低い19位になり、失敗作と言われ、本人も「19位だからな」と自嘲していたという。う〜ん、駄作とは思わないけど、どこか全体に違和感が漂っているような気がしないでもない。評価を知っているからかもしれないけど。
 高橋治は『絢爛たる影絵』で有馬稲子を痛烈に批判していたが、当初の予定どおり岸恵子が次女を演じていたらどうなっただろう。有馬の演技はチョット暗すぎて一本調子かな。高橋が言っているように、山田五十鈴は見事。(2000/09/06)

彼岸花 ひがんばな
監督 小津安二郎
公開年 1958年
評点[B]
感想
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彼岸花
彼岸花
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
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第一集

 今日は、小津安二郎監督の『彼岸花』を観た。昭和三十三年(1958)の作品。小津初のカラー作品。

 商社の常務の平山渉(佐分利信)は、他人の娘の結婚や恋愛に関しては物わかりの良いことを言うが、自分の娘(有馬稲子)の恋人(佐田啓二)から結婚許可を乞われると、とたんに頑固おやじと化して猛反対。妻(田中絹代)や親戚の娘の幸子(山本富士子)はあきれてしまう。さて娘の恋は実るかどうか…。
 佐分利信の頑固おやじは見事にハマっていて、怒るシーンは怖すぎ(笑)。妻の田中絹代は、こういう力を抜いて演れる役柄だと上手いなぁ。佐田啓二は台詞棒読みで、有馬稲子や山本富士子など若い娘のメイクは妙に濃いというか時代を感じさせる。
 しかし、笠智衆が主役の父親を演ずる作品(これには脇役で登場)のような悲哀が無く、他愛が無いと言われれば、そうかもしれない。今一つ胸に迫るものが無い。職人芸的な上手さはあるけれども。よく指摘されるように、前年の『東京暮色』の失敗で安全策を採ったという面もあるだろうか。
 初のカラーで、有名な赤いヤカンが所々に顔を出す。ちょっとうるさいかな。翌年の『浮草』では宮川一夫カメラマンが嫌って置かせなかったというし。あと、やはり褪色している。松竹では三原色に分解したネガを残さなかったのか…大映の『地獄門』なんて、今でもどぎついくらい鮮やかなのに。これはイーストマンカラーであるためでもあるけど。(2000/09/23)

お早よう おはよう
監督 小津安二郎
公開年 1959年
評点[A’]
感想
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お早よう
お早よう
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
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第一集

 今日は、小津安二郎監督の『お早よう』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 この作品は娘が嫁に行く話ではなく(爆)、『生まれてはみたけれど』の系譜を引く、子供が主役のホーム・コメディ。世にも珍しい屁映画でもある。
 近所の子供たちの間で、お互い額を押して押された方が屁をするという遊びが流行っている、という設定。ホント、子供たちの小憎らしい面を描くのが上手いなぁ。
 小津監督は前年には紫綬褒章、同年には芸術院賞を受けていながら屁映画を作っちゃうってのが面白い。勲章を名誉に思ったことも間違いないとは思うが、「そんなの屁でもないよ」とでも言うように照れ隠し的な作品を作っちゃうのが凄い。溝口健二なら、かしこまっちゃうところだが。
 アニメの『サザエさん』の画面構成やポルカ風のBGMは小津のコメディー作品を模倣しているのでは、という説があるそうで、『お早よう』を観て、なるほどと思った。『サザエさん』のスタッフの年齢層は高そうだから、多少の影響は受けているかも。

 小津監督のカラー作品を初めて観た(これはカラー2作目)。有名な、赤に対するこだわりは見られたけど、少し褪色気味なのが惜しい。小津は渋い発色のアグファカラーを好んだそうだが、経年変化には弱いのか。溝口のカラー作品2本の方が鮮やかさを残している。こちらはイーストマンカラーだからかな。(2000/08/17)

浮草 うきくさ
監督 小津安二郎
公開年 1959年
評点[超A]
感想
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浮草
浮草

 今日は、小津安二郎監督の『浮草』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。主演は先代の中村雁治郎。

 ストーリーは、旅回りの嵐駒十郎(中村雁治郎)一座が、瀬戸内のある街(補注:正しくは南紀の志摩半島)に巡業でやって来た。公演中、なぜか駒十郎は小さな食堂に足しげく通う。実はそこに、昔の女(杉村春子)がいて、彼らの息子の清(川口浩)に叔父と称して会っていたのだ。たちまち駒十郎の今の女房(京マチ子)が勘づいて、嫉妬の炎を燃やす…といった感じ。小津作品にしてはドラマティックな展開で、溝口健二の作品みたい(笑)。戦前の『浮草物語』(1934)のリメイクだからかもしれない。

 これは小津が松竹ではなく大映に出かけて撮った作品。昭和三十一年に没した溝口健二が生前「今度うちでも撮ってくれないか」と頼んでいた約束を死後果たしたことになる。
 そのため、大映の京マチ子や若尾文子、川口浩などが顔を出す豪華キャストとなった。京マチ子と若尾文子は綺麗っす。演技では、やはり中村雁治郎と杉村春子がピカイチやね。でも、2人の息子が川口浩ってのは無理があるのでは。顔は似てないし、体型だって川口浩はずっと長身だし(笑)。
 また、大映の宮川一夫が撮影を担当して、小津流のローポジションの中でも切れを見せている。色彩の面では、松竹のカラー作品よりも色が良いような気がした。少々黄色味がかっていて少しだけ変色しているような感じはするけど、松竹のものよりも褪色は少ないようだ。大映の作品は保存が良いのかな。

 とにかく、充実した作品で大満足。やはり私はこのくらいドラマティックな方が好みかな。小津作品としては、私の中で『東京物語』に次ぐ作品となったかも。(2000/08/24)

秋日和 あきびより
監督 小津安二郎
公開年 1960年
評点[A’]
感想
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秋日和
秋日和
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
DVD-BOX
第一集

 今日は、小津安二郎監督の『秋日和』を観た。昭和三十五年(1960)の作品。

 母娘2人暮らしの三輪秋子(原節子)とアヤ子(司葉子)。娘が年頃だというので三輪の亡夫の旧友、間宮(佐分利信)・平山(北竜二)・田口(中村伸郎)の三人組が世話を焼こうとするが、アヤ子は母を残して嫁に行けないと乗り気でない。そこで、三人は秋子の方から話を進めようとして…。
 これは『晩春』のリメイク的な作品。かつては娘役だった原節子が母親になっている。さすがに四十になっていたのでオバサンっぽくなってはいるが美しいので、妙に美人の母娘というのも不自然にも見える(笑)。
 『晩春』よりは登場人物が増え、筋立ても多少複雑にはなっている。旧友三人組が面白い。やもめになっていた平山が秋子と結婚してはどうか、という話になって彼が有頂天になってしまう所など。それと、三人の間で交わされる猥談めいた話も。脚本を書いた野田高梧も小津も明治生まれの教養人だから上品な下ネタを書けたのかもしれない。戦後生まれの漫画家などが、エロマンガでないストーリーマンガの中で面白いと思って下ネタを使ったりしても悲惨なことになる。
 しかし、やはり“オリジナル”ほどの深みはないかなぁ。小津本人も自らあまり高い評価をしていなかったようだし…。それに、これで128分というのは長い。15分かそこらは切れそうだ。(2000/09/28)

小早川家の秋 こはやがわけのあき
監督 小津安二郎
公開年 1961年
評点[B]
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小早川家の秋
小早川家の秋

 今日は、小津安二郎監督の『小早川家の秋』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 京都の南、酒どころの伏見(補注:正しくは伏見ではなく[なだ]。メールでご指摘いただきました)にある造り酒屋の小早川家の大旦那(中村鴈治郎)は隠居しているが、最近かつての愛人(浪花千栄子)と再会して京都にある彼女の家に足しげく通っている。経営が楽でなく大会社との合併の話もある中、三女の紀子(司葉子)と死んだ長男の未亡人・秋子(原節子)に縁談が持ち込まれる。そんな中、大旦那が突然倒れる。

 小津監督が東宝で唯一撮った作品。関西で撮影したので、東宝の子会社の宝塚映画作品ということになっている。
 この作品は例によって娘や未亡人の縁談が一つのテーマになっているが、道楽者の大旦那の生と死を描くのも、もう一本のテーマである。むしろ、後者の方に比重が傾いているので、未亡人の秋子の再婚相手として何度か森繁久弥が登場するのが、ちょっと浮いているように見えた。当時、東宝の大人気スターだったので出演したのだが。
撮影中、小津監督とはしっくりしなかったのは有名。
 大旦那の行動はかなり喜劇的に撮られているが、なぜかもうちょっとのところで、私個人的には笑うところまでは行かなかった。どうしてだろう。人が死ぬのは小津作品としては珍しくないが、終盤にそれが強調されるのは珍しい。黛敏郎の音楽ともあいまって、何だか小津作品としては奇妙な印象が残る一作。

 他の晩年の小津作品同様、これもカラー作品。黒味が強めでコントラストがきつく、カラーが強調されているような感じもあって、少々人工的だが、あまり褪色はしておらず鮮やか。フィルムの傷もほとんど無い。最も作品数の多い松竹が一番保存が良くないというのは、どういうことだろう…。
 ただ、掲示板で指摘されたように、終盤の原節子と司葉子が屋外で会話する場面の切り返しで、空の色味が大きく異なるのは目についた。太陽の位置の関係だろうか。カラーもまだ初期のためか、屋外の緑も強すぎるように感じた。

 ちなみに、題名はコハヤガワと読ませる。コバヤカワだと音が強すぎるので小津が嫌ったと言われているが、本当だろうか。(2002/05/27)

秋刀魚の味 さんまのあじ
監督 小津安二郎
公開年 1962年
評点[A]
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秋刀魚の味
秋刀魚の味
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小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎
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第一集

 今日は、小津安二郎監督の『秋刀魚の味』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。小津の遺作。

 例によって娘が嫁に行く話(爆)。でも、原節子が娘役だった昭和二十年代の作品は娘がかなり理想化されていたりして、どこか作り話めいた面があったのに対し、この作品では娘を嫁にやり損ねた恩師の落魄の姿が描かれていたり、岩下志麻が不機嫌な様子を見せてディテールのリアリティが附加されていた。
 カラー作品で、例によって赤が強調されている。画面構成は凄く整えられていて様式美の極みだが、ちょっと窮屈にも思える。やっぱり私は溝口作品の宮川一夫カメラマンによる絵の方が好きかなぁ…。(2000/08/22)

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小津安二郎
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