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渋谷実(澁谷實/澁谷実)

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酔っぱらい天国 よっぱらいてんごく
監督 渋谷実
公開年 1962年
評点[B]
感想  今日は、渋谷実監督の『酔っぱらい天国』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 会社員の渥美耕三(笠智衆)は生真面目な会計課長だが、大の酒好きで酒が入るととたんにだらしなくなってしまう。息子の史郎(石浜朗)も酒に目がないが、妻を亡くしている耕三は一人息子を溺愛していた。ある日、史郎はキャバレーで友人とプロ野球投手の片岡(津川雅彦)との喧嘩を止めようとして片岡のバットで殴られ、危篤に陥ってしまう。

 “原案”も渋谷実名義で、脚本は松本善三。風刺的なところは渋谷監督の色で、社会派的なところは松本善三の色だろうか?
 酒によって引き起こされる不幸が中心のテーマで、酒(酔っぱらい)に寛容な日本社会を諷刺している。実際には酒が飲めなかった笠智衆による落魄の酔っぱらい爺さんの演技が巧みなだけに、あまりにも哀れで見ていられなかった。とにかく描き方がストレートなので、もう少し笑いが欲しいが……。下戸な私も日本人の酒の飲み方はだらしなさ過ぎると思うので、そのメッセージ性には賛成できるのだが……。
 それと、渋谷監督は野球嫌いだったのかなぁ。野球選手や監督(山村聡)の描き方もかなりきつい。あるいはアンチ巨人だったとか(片岡の所属チームは後楽園球場を本拠地にする“東京ファイターズ”という設定)。私は、渋谷実監督本人のことはほとんど知らないので、酒が好きだったかどうかを含めて興味が湧いてきた。(2004/09/24)

大根と人参 だいこんとにんじん
監督 渋谷実
公開年 1965年
評点[B]
感想  今日は、渋谷実監督の『大根と人参』を観た。昭和四十年(1965)の作品

 山樹東吉(笠智衆)は、長年働いて建てた自宅に妻(乙羽信子)と末娘の恵子(加賀まりこ)と住んでいる生真面目な会社員。大学時代の同級生の秋山(信欣三)が癌になり、告知すべきか否かで同じく同級生の鈴鹿(山形勲)と争ってしまう。その上、弟の康介(長門裕之)が会社の金を使い込んでしまったと泣きついてくると、東吉は思わぬ行動に出て皆を驚かせる。

 小津安二郎が遺作『秋刀魚の味』の次に監督する予定で野田高梧と共作した脚本を基にした作品で、「小津安二郎記念作品」と銘打たれている。ただし、この作品では脚本の名義は白坂依志夫と渋谷実になり、小津安二郎と野田高梧は“原案”とされている。
 実際観てみると、小津作品の雰囲気はほとんど無い。登場人物たちは多少の別はあるものの皆自分勝手で、彼らが早いテンポの会話を交わしながら話が進んでいく。メインキャストを笠智衆以外は小津作品とは縁のなかった面々にしたのも、演出意図の一環であるようだ。岡田茉莉子・司葉子・池部良・岩下志麻などなど、小津作品に出演した俳優たちも“特別出演”として顔を出してはいるが、脇役扱い。
 毒気のある登場人物が形作るコミカルな人間模様とテンポの速さは、まぎれもない渋谷実作品。人生の無常や人間の冷酷な部分を静かに感じさせる小津作品とは異なり、人間の愚かさを表に出して諷刺する渋谷監督のやり方を採っている。ありていに言えば、キャラがかなり下品になっている(笑)。確か、主人公が突飛な行動をする理由も原脚本とは別のものにされているはずだ。
 しかし、終盤はなるほど小津作品らしい雰囲気を見せている。また、題名が出る台詞や終盤に恵子が語る述懐など、キーとなる台詞は元の脚本を尊重しているらしい。
 渋谷監督らしい部分と小津ワールドの部分との違いがちょっとはっきり出すぎているような気がするが、渋谷監督が好きな人なら渋谷作品として楽しめると思う。小津好きの人はどう思うかわからないが。(2004/12/27)

喜劇 仰げば尊し きげきあおげばとうとし
監督 渋谷実
公開年 1966年
評点[C]
感想  今日は、渋谷実監督の『喜劇 仰げば尊し』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 瀬戸内海の島の小学校の老教師・浜口丈太郎(森繁久彌)を久しぶりに訪ねてきたかつての教え子・黒川(木村功)が自殺。ショックを受けた浜口は島に来た黒川の愛人・小林千律(佐々木愛)と共に、遺骨を黒川の妻(川口敦子)に渡すため上京して東京で昔の教え子たちに会う。

 渋谷実が松竹を出て東宝系の東京映画で作った唯一の作品で、遺作でもある(脚本:松山善三)。
 ストーリーの組み立ては『舞踏会の手帳』に倣ったもので、戦争から戦後にかけて大きく変わった人間そして日本がテーマ。生真面目な松山善三色が強いのか、社会批判がストレートに出てしまっていて松竹作品でのシニカルな渋谷監督らしい演出はあまり見られない(これが喜劇?)。ラスト近くの“事件”も、松竹時代だったらもっと面白くしていたと思う。
 また、かつてあったテンポの良さもなく森繁のオーバーな熱演ばかりが目立つ。なんだか、悲慷憤慨する浜口の姿に、テレビ時代についていけない渋谷監督自身を見ちゃったりして……というのは考えすぎかな?
 浜口のかつての教え子として三木のり平と田村高廣、三木のり平の妻として市原悦子、浜口の昔の恋人として京塚昌子が出演。(2005/06//16)

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