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白井戦太郎(白井戰太郎)
柘榴一角 ざくろいっかく
監督 白井戦太郎
公開年 1941年
評点[B]
感想  今日は、白井戦太郎監督の『柘榴一角』を観た。昭和十六年(1941)の作品。

 年老いた浪人・柘榴権太夫(阿部九州男)は、実は公儀の隠密。彼は江戸市中に蔓延する贋金を作っている播磨萬心(大瀬恵三郎)とその黒幕を追っていた。自分の身の危険を悟った権太夫は息子の一角(阿部九州男、二役)に初めて正体を打ち明けて仕事を手伝わせるが、権太夫を仇と狙う若侍・宇家田輝雪(近衛十四郎)が現れて……。

 『富士に立つ影』の白井喬二原作の映画化(脚本:湊邦三)で、戦前に存在した大都映画の現存する数少ない一本。近衛十四郎が主役かと思っていたら、戦後は主に東映で脇役を演っていた阿部九州男が一人二役で大活躍する主人公そのものだったので、ちょっと驚いた。戦後にテレビで人気者になった近衛十四郎もまだこのころは若手俳優の一人だったのか。
 阿部九州男が演ずる好々爺風の老人とのんきな若者は双方ともユーモラスで、一角の妹お鴇(琴糸路)もいかにも世間知らずのお嬢さんという感じで楽しい。宇家田輝雪の近衛十四郎も、堅物のようでいて戦後の作品で見せたユーモラスな雰囲気も漏らしている。対する敵方のキャラがあまりはっきりせず、悪役としての魅力にも欠ける。脚本で描かれていないのか、フィルムに欠落があるのか……。
 序盤から中盤にかけてはちょっと展開がもたついているが、中盤に宇家田輝雪が登場してからは話が生き生きと動き始める。映像も時々凝ったところがあり(撮影:広川朝次郎)、殺陣も時々コマ落としが混じるものの全体にスピーディー。

 惜しむらくは、現存プリントは台詞が聞き取れないところがあるくらい音声の状態が最低なこと。観る側がストーリーや設定を類推せねばならないところがあるほどで、音声の状態が良かったら、ユーモラスな雰囲気とアクションの双方を楽しめる娯楽作として、より高く評価できるのだが……。(2005/06/28)

富士に立つ影 ふじにたつかげ
監督 池田富保・白井戦太郎
公開年 1942年
評点[A’]
感想
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富士に立つ影
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 今日は、池田富保・白井戦太郎両監督の『富士に立つ影』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 江戸時代後期、将軍家斉(南條新太郎)は老中・松平定信(北龍二)の建議により、国防強化のため富士の裾野に調練城(軍事演習のための城)を作らせることにした。建設にあたる水野出羽守(沢村国太郎)は兵学の各流派から賛四流の佐藤菊太郎(阪東妻三郎)と赤針流の熊木伯典(永田靖)を候補として選び、両者の熾烈な戦いが始まった。

 サイレント時代と戦後に各一度ずつ映画化されている白井喬二の原作を、サイレント時代からのベテランである両監督が演出(脚本:八尋不二)。
 監督のキャリアが古いためか、登場人物が論争する場面は古典的な大芝居で台詞も難解な言葉を用いるため、よくわからないところも多い(笑)。しかし、中盤以降の富士山麓のロケシーンが素晴らしい。佐藤と熊木が実地検分する“逆さ富士”が移る湖の様子(どの湖だろう?)や、なんといっても木材を運ぶ馬車競争の迫力がもの凄い。日本映画らしからぬシーンでカメラアングルも工夫されており、アメリカの西部劇などを研究したのだろうか(撮影:石本秀雄・松井鴻)。私は戦後版しか観たことないが、戦前のサイレント版の『ベン・ハー』(1926年)の戦車競争に影響されたのかな?
 馬車競争の印象が強烈なので、そこで活躍する名主の娘お雪(橘公子)が儲け役で、戦後は脇役専門になってしまう(大映から独立しようとしたことがあるからだという)橘公子の演技も悪くない。三平(島田照夫)というキャラクターもメインの佐藤と熊木以上に活躍して印象的。

 モブシーンや両国の花火のシーンも非常に大がかりで、戦中ながら娯楽に徹した大作。(2005/04/06)

白井戦太郎(白井戰太郎)
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