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谷口千吉
銀嶺の果て ぎんれいのはて
監督 谷口千吉
公開年 1947年
評点[C]
感想
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銀嶺の果て
銀嶺の果て

 今日は、谷口千吉監督の『銀嶺の果て』を観た。昭和二十二年(1947)の作品。

 銀行を襲って大金を奪った野尻(志村喬)・江島(三船敏郎)・高杉(小杉義男)の三人組は、長野の温泉地に逃れる。そこからさらに山奥に入った野尻と絵島は山小屋で、その主の爺さん(高堂国典)と孫娘(若山セツコ)、そして登山家(河野秋武)といった自分たちの正体を知らない人々と同宿することになる。

 三船敏郎の初出演作として知られる作品。現在残されているプリントは最初のタイトルに『銀嶺の果て(新版)』と表示されるように再公開時のものなのか、出演者としては三船敏郎の名が最初に出る。しかし、主役は志村喬。この作品の三船敏郎は凄いハンサムだが単なる悪人で、のちの黒澤作品におけるような厚みは無い。志村喬の演技はオーバー気味だが上手い。
 この作品の脚本は黒澤明による。しかし、演出がオーソドックスで映像的にも目新しいところは無いので、黒澤監督作品とは印象が異なる。(2001/12/14)

ジャコ萬と鉄 じゃこまんとてつ
監督 谷口千吉
公開年 1949年
評点[A’]
感想  今日は、谷口千吉監督の『ジャコ萬と鉄』を観た。昭和二十四年の作品。脚本は黒澤明と谷口千吉。

 北海道のある漁場を支配する網元・九兵衛(進藤英太郎)。鰊(にしん)の群れを待っていると、彼の弱みを握る無法者・ジャコ萬(月形龍之介)がやってきて、嫌がらせの限りを尽くす。そこへ九兵衛の息子・鉄(三船敏郎)が復員してきてジャコ萬と対決する。

 同じ谷口監督の『銀嶺の果て』(昭和二十二年)で映画初出演をした三船敏郎の主演。『銀嶺の果て』に比べると、この作品は人物描写も映像表現も格段に進歩しているように思った。各キャラに厚みがあり、映像もスピード感がある。
 ジャコ萬の情婦のユキ(浜田百合子)の人物像は時代を感じさせるが、ジャコ萬も九兵衛も単なる悪役ではない深みを感じさせられる。月形のジャコ萬は凄みがあり、三船敏郎の鉄はかっこいい。二人のアクションシーンも良い。
 映像的には、雪景色の中での馬ぞりと犬ぞりの追っかけシーンや漁の場面に迫力がある。時々合成がまるわかりなのは時代的に仕方ないだろうか。
 ジャコ満を丹波哲郎、鉄を高倉健を演じたリメイク版(監督:深作欣二)もあるそうなので、機会があったら観てみたい。

 NHK BSの深夜放映だったが、台詞にカットされて口パクのところが数箇所あったのが残念。二つほどはわかったが、ジャコ萬が鉄に向かって「×××つもりでボルネオへ行ったんだろ」と言った部分はわからなかった。(補注:のちに音声ノーカット版を観たら「おめえ、いつかカムチャツカさ行くつもりでボルネオ行っちまったそうだな……だいぶ見当違いな野郎だっつうだ」だった。“めっかち”などは放送に相応しくない用語とされているが、カムチャツカの何が不都合なのだろうか? 単に放映されたプリントのサウンドトラック部分が痛んでいただけか?)(2001/12/16)

大盗賊 だいとうぞく
監督 谷口千吉
公開年 1963年
評点[B]
感想  今日は、三船敏郎主演の『大盗賊』を観た。監督は谷口千吉で、昭和三十八年(1963)の作品。

 堺の豪商・呂宋助左衛門(三船敏郎)は無実の罪を着せられて船で日本から脱出する。しかし嵐に遭い、さらに黒海賊(佐藤允)に財産を奪われて漂流し、異国に流れ着く。その国は暴君の悪名高き羅刹王(志村喬)に仕える宰相(中丸忠雄)が実権を握り、王女の弥々姫(浜美江)はそれを憂えていた。

 東宝の特撮冒険映画。特技監督は円谷英二。衣装などかなり丁寧に作られている。三船の演ずる主人公が単なるヒーローではなく、ひょうきんなところもあって面白い。物語の舞台が中東だか中央アジアだか国籍不明で、ストーリーやキャラクターなどは漫画的だが、衣装・セットなどの作りや演出は丁寧で、現在の目で観ても観賞に堪えると思う。時々セットなのが丸わかりだったりモブ(群集)シーンの人数が寂しいな、と感じるところがあった。今ならCGでごまかせるだろうか。
 悪人の餌食にされそうな姫、それを救う盗賊、礼拝堂の結婚式、悪役の死にざまなどいくつかのモチーフが、宮崎駿監督の『カリオストロの城』を彷彿とさせるのが意外な発見だった。『カリ城』にはフランスのアニメ『王様と鳥(やぶにらみの暴君)』の影響が強いことがよく言われるが、宮崎監督は当然ながら邦画も観ていたということなのだろう。
 現在なら絶対にアニメになってしまう作品だが、実写で観るのも面白い。今の日本ではこれだけの実写ファンタジー映画は作れないだろう。“妖婆”が天本英世だと知ってかなりビックリ。(2003/12/28)

奇巌城の冒険 きがんじょうのぼうけん
監督 谷口千吉
公開年 1966年
評点[B]
感想  今日は、谷口千吉監督の『奇巌城の冒険』を観た。昭和四十一年(1966)の作品。

 遣唐使と共に唐へ渡った僧・円済(中丸忠雄)は、仏舎利(釈迦の遺骨)を探すため大角(おおすみ:三船敏郎)を供として西の果てに向けて旅立った。仏舎利は見つかったものの二人はペシルの町で捕らえられ、そこの王(三橋達也)は大角を火あぶりの刑にするという。しかし、円済は仏舎利を日本人に渡すため三日間だけ大角を自由にし、その間は自分を身代わりにしてほしいと頼む。

 粗筋を見てわかるように原作は太宰治の『走れメロス』(脚本:馬淵薫)だが、前半はオリジナル。『大盗賊』(昭和三十八年)と同じく中央アジア(シルクロード)の異国情緒を前面に出したファンタジー作で、イランロケを敢行して前作よりもスケールアップしている。
 暴虐な王と悪い宰相(中丸忠雄)、宰相の部下の盗賊の頭目(佐藤允)、仙人(有島一郎)とお婆(天本英世)というキャラの設定は前作とほぼ同じで、演ずる役者も王以外は同じ。三船敏郎の演技は相変わらずだが、キャラには合っている。
 オリジナル要素の前半がテンポがゆっくりで退屈なのが残念だが、中盤以降はさすがに盛り上がってきて、終盤の緊迫感はドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』もかくやと思われるほど……というのは誉めすぎだが(笑)、観ているうちに徐々に引き込まれていく感じ。ロケの部分は本物の砂漠の迫力があり、対するセットがチープに見えたりするが、城の構造や登場人物の衣装などは工夫されていて見て楽しい。
 決して傑作や良作と言われるような作品ではないが、今観ると稚拙な特撮やチープなセットなども含めて娯楽性は充分な一作だと思う。(2005/03/11)

谷口千吉
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