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築山光吉
渋川伴五郎 しぶかわばんごろう
監督 築山光吉
公開年 1922年
評点[B]
感想  今日は、尾上松之助主演の『渋川伴五郎』を観た。監督は築山光吉で、大正十一年(1922)の作品。

 江戸の柔術師範・渋川幡龍軒(嵐璃珀)の跡継ぎ伴五郎(尾上松之助)は奸悪な門人の讒言によって勘当されたが、あるきっかけで有馬候(市川寿美之丞)に領内の妖怪退治を依頼される。伴五郎が妖怪と戦っている最中、江戸では奸悪な門人とその仲間が幡龍軒を狙い……。

 明治末期から大正時代の日本映画界のトップスターだった尾上松之助主演の一作。渋川伴五郎という人は初耳だが、講談ではおなじみの人だったらしい。
 オープニングタイトルに“旧劇”と銘打たれているように題材も立ち回りも古めかしい歌舞伎的なものだけれども、複数のプロットを平行させるストーリーの組み立て方や映像は意外と新しいものを見せている。特に映像面は、以前観た『尾上松之助の忠臣蔵』ではカメラが据えっぱなしという印象があったが、この作品では要所々々ではアップになったりしているので、この頃にはもう洋画から学んだ手法が一般化していたのだろうか(撮影:松村清太郎)。
 現代人の目で観るともちろん素朴すぎる作品ではあるが、サイレント特有のコミカルなオーバーアクションやテンポの良さ、工夫を凝らした特撮技術などは結構楽しめ、娯楽作としては今観てもまずまず及第点を与えられるかもしれない。完全に近い形で残されている尾上松之助主演作はこの一本だけだというのが残念だ。

 もう一つ印象に残ったのは、80年以上前の作品にもかかわらず今観られるプリントの画質が非常に良いこと。傷は多いけれどもピントはシャープで解像度は低くなく、グレーの階調も自然に出ている。ものの本によると、この頃のフィルムは赤色光に反応しないオルソ・フィルムというものしかなく白黒階調が極端なコントラストのきつい映像しか撮れなかったと書かれていたが、この作品では比較的ナチュラルなモノクロ映像になっている。(2005/07/24)

築山光吉
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