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内田吐夢

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血槍富士 ちやりふじ
監督 内田吐夢
公開年 1955年
評点[A]
感想  今日は、内田吐夢監督の『血槍富士』を観た。昭和三十年(1955)の作品。主演はジャン・クロード・チヤリ、じゃなかった、片岡千恵蔵御大。

 若侍(島田照夫 )の槍持ちとして旅を続ける権八(片岡千恵蔵)。旅の途中では侍に憧れる子供から盗賊に至るまで、様々な出会いがある。主人の若侍は好人物だが、酒乱癖があるのが玉に瑕。ある日、酒場で争いを起こして五人の侍に取り囲まれ…。

 旅ののどかな光景と終盤近くの殺陣が見事に対称をなす。身売り娘が出てきたり、若侍が身分制度に疑問を呈したりして、封建制度批判のメッセージ性が少々強いが、下郎を演じた片岡千恵蔵には殿様役とは違った味があるし、自己流で槍を振るった迫力ある立ち回りが凄い。(2000/8/14)

たそがれ酒場 たそがれさかば
監督 内田吐夢
公開年 1955年
評点[A]
感想  今日は、内田吐夢監督の『たそがれ酒場』を観た。昭和三十年(1955)の作品。

 専属の歌い手・丸山健一(宮原卓也)の歌声やレコード、時には客の歌も聞こえ歌声の絶えない庶民の憩いの場“たそがれ酒場”。そこに集う元軍人・ヤクザ・学生・声楽家などの客と従業員が繰り広げる様々なドラマを、常連の“先生”こと老画伯・梅田(小杉勇)の視点から描く。

 舞台が酒場の中だけに限られ作中の経過時間も半日ほどだが、多彩な登場人物が演ずる様々なエピソードが休みなく展開して全く飽きない。内田吐夢監督の演出力もあるだろうが、脚本にも脱帽ものだ(脚本:灘千造)。
 学生の会話や表を通るデモ隊の歌声に反発する元軍人(東野英治郎&加東大介)や政治談義をする学生など類型的なキャラクターもあるが、登場人物は全体として活き活きとしている。その中でも狂言回し的な役柄でありながらストーリーにもしっかりからむ梅田を演じた小杉勇の老け演技が素晴らしい。小杉勇の他にも、江川宇禮雄や高田稔といった戦前からの俳優が出演。(2004/02/21)

黒田騒動 くろだそうどう
監督 内田吐夢
公開年 1956年
評点[C]
感想  今日は、内田吐夢監督の『黒田騒動』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 江戸時代初期。筑前五十二万石を領する黒田家は、外様大名取り潰しを図る幕府の老中・土井大炊頭利勝(薄田研二)らに目をつけられていた。黒田家の当主・黒田長政(高堂国典)が没すると、跡を継いだ忠之(片岡栄二郎)は足軽あがりの倉橋十太夫(南原伸二、のち南原宏治)を重用して幕府をはばからぬ政策をおこない、それに対して筆頭家老の栗山大膳(片岡千恵蔵)は黒田家を守るため苦肉の策を実行する。

 お家騒動の映画で(原作:北条秀司/脚本:高岩肇)、お家を危うくする佞臣&傾城の美女VS譜代の忠臣という構図はお約束どおり。それに隠れキリシタンの陰謀などをからめてあるのだが、展開が遅い。中盤を過ぎて、幕府の大目付・竹中妥女正(大友柳太朗)が筑前に出向く段になって、やっと緊迫してくるので、それまでちょっと退屈させられるかも。
 後半、栗山大膳が黒田家を守るために続けておこなう意外な行動は、スケールが大きくて割りと楽しめる。ずいぶんと予算をかけたと思われたシーンもある。
 前半のペースの遅さと、片岡千恵蔵らに対して悪役の倉橋十太夫役の南原伸二が若すぎるのか、存在感に欠けるのが惜しい。(2003/05/05)

逆襲獄門砦 ぎゃくしゅうごくもんとりで
監督 内田吐夢
公開年 1956年
評点[B]
感想  今日は、内田吐夢監督の『逆襲獄門砦』を観た。昭和三十一年(1956)の作品。

 まさに幕末、薩長と幕府との対決が始まろうとする時期、ある天領(幕府直轄領)に赴任してきた代官・脇郡太夫(月形龍之介)は、幕府の財政を助けるため重税を課し、さらに江戸へ向かう街道沿いにいくつもの砦を作るため領民に強制労働を課す。重い負担に耐えかねた猟師の照蔵(片岡千恵蔵)ら民衆は、ついに立ち上がる。

 なんと、幕末の一時期に日本の片隅で共産主義革命がおこなわれた! という衝撃の事実を知ることができる作品(笑)。ストーリーの方は「ありえねえ」の連続。対して、映像の方は全編にわたって非常に力強い印象を与えてくれ、妙なミスマッチ感もある。
 ただし、郡太夫が照蔵父子に試練を与えるシーンには絶句。あのパロディとは……。また、そのシーンのために郡太夫は単なる卑劣な悪漢という印象になってしまっているが、私利私欲ではなく幕府大事という確固たる信念のもとに圧制を加えていた、とした方が民衆蜂起を感動的に描けたのではないだろうか。
 戦後しばらく中華人民共和国に抑留されていた内田吐夢監督が、一時期とはいえ思想が真っ赤になっていたことを知ることのできる作品。(2003/05/16)

浪花の恋の物語 なにわのこいのものがたり
監督 内田吐夢
公開年 1959年
評点[A’]
感想  今日は、内田吐夢監督の『浪花の恋の物語』を観た。昭和三十四年(1959)の作品。

 大阪の飛脚問屋・亀屋の一人娘おとく(花園ひろみ)の許婚として養子に入った忠兵衛(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は、悪友に無理やり連れて行かれた遊郭で、敵娼(あいかた)になった格子女郎の梅川(有馬稲子)に夢中になってしまう。忠兵衛は足しげく通うようになり、やがて彼に破滅が訪れる。

 近松門左衛門の『冥土の飛脚』の映画化(脚本:成澤昌茂)。文楽(人形浄瑠璃)として書かれたが、今では歌舞伎の“封印切”の場などで有名かもしれない。近松では定番の遊女と若者の悲劇だが、為替を扱って現金を運ぶ江戸時代の飛脚屋という職業が生かされたストーリーになっている。
 演出は意外と冷静で、シャープなカラー映像が忠兵衛と梅川を淡々と描写する(撮影:坪井誠)。近松門左衛門の脚本をそのまま映像化したのでは現代人に受け入れられづらいと考えたのか、忠兵衛たちを観察する近松門左衛門その人(片岡千恵蔵)を登場させ、その視点から描いているので、冷静な印象になったのかもしれない。ステレオタイプ的な絵に描いたような悪人がいなかったのは良い。
 錦之助は、“封印切”をしてしまうところの表情の演技が凄かった。ただ、そこに至るまでは、少々おとなしすぎるような感じもした。世間知らずのボンボンであったとしても。梅川の有馬稲子は、まずまずの演技。忠兵衛の姑を演じた田中絹代が、“熱演”ではなく枯れた老人の雰囲気を出していて良かった。(2003/08/30)

酒と女と槍 さけとおんなとやり
監督 内田吐夢
公開年 1960年
評点[B]
感想  今日は、内田吐夢監督の『酒と女と槍』を観たです。昭和三十五年(1960)の作品。主演は大友柳太郎。

 槍の腕と酒の飲みっぷりでは天下に並ぶ者無しの富田高定(大友柳太郎)。主君の関白豊臣秀次が秀吉に切腹を命じられ、続いて殉死しなかったのを一族の者たちに責められ、公開の切腹ショー(笑)をやろうとする。大評判となって見物客が集まるが、多くの人から末期の酒を勧められ、残さず飲み干して一寝入りしてしまったら、秀吉からの上使がやって来て殉死を禁じられた。
 あくまで高定は腹を切ろうとするものの、秀吉を恐れる一族は手のひらを返したように寄ってたかって切腹を止めた。すっかり武士というものが嫌になった高定は彼を慕っていた采女を妻にして、いったん山里に隠棲する。しかし、彼が最後に選んだのは愛では無かった…。

 なんといっても、題名がイイねぇ。男の夢を三つ並べちゃって。「おんなとやり!」なんて、フロイト説を持ち出すまでも無い(←バカ)。内容の方は、ちょっと劇終が唐突だったかな、という感じ。それに、高定の昔の女で、采女の姉貴分でもある左近(淡島千景)の最後の登場シーンの意味がよくわからなかった。
 でも、豪快な男の描き方は内田吐夢監督らしかっただろうか。前田利長(片岡千恵蔵)に槍を見つけられたあとのシーンが特に良かった。(2000/08/15)

妖刀物語 花の吉原百人斬り(花の吉原百人斬り) ようとうものがたりはなのよしわらひゃくにんぎり
監督 内田吐夢
公開年 1960年
評点[A]
感想  今日は、内田吐夢監督の『妖刀物語 花の吉原百人斬り』を観たっす。昭和三十五年(1960)の作品。

 顔の右半分一面を覆う醜い痣(あざ)のある織物問屋の主人、佐野次郎左衛門(片岡千恵蔵)は、初めて吉原へ行き、そこでも下っ端の遊女(水谷良重、現・二代目水谷八重子)をあてがわれる。しかし、生まれて初めて人に優しくされた彼はすっかり入れあげてしまい、家産を傾ける。金の切れ目が縁の切れ目…と愛想づかしをされ、だまされていたと知った次郎左衛門は妖刀“籠釣瓶”を抜き、彼から巻き上げた金で太夫の披露をする女の行列に斬り込んだ…。

 歌舞伎の『籠釣瓶花街酔醒』(かごつるべさとのえいざめ)を元にしたこの作品、脚本は依田義賢。溝口健二と組んでいた人だ。
 昭和三十五年は、邦画の全盛期を過ぎかけていたとはいえ、まだまだ映画に金をかけられた時代で、遊廓の建物はもちろん調度品に至るまでリアルに復元されている。最近の吉原を舞台とした映画には無い格調を感じる。これは俳優のせいでもあるだろうけど。
 題名から想像するよりも殺陣は意外と短いが、内田吐夢監督の時代劇はアクションシーンをダラダラ分散させず、終盤にまとめるから迫力があるんだな。(2000/08/29)

宮本武蔵 みやもとむさし
監督 内田吐夢
公開年 1961年
評点[A’]
感想
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宮本武蔵
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宮本武蔵 愛蔵BOX
宮本武蔵
愛蔵BOX

 今日は、内田吐夢監督の『宮本武蔵』を観た。昭和三十六年(1961)の作品。

 宮本村の新免武蔵(中村錦之助、のち萬屋錦之介)が、幼なじみの又八(橋本功)と共に関ヶ原の戦場から敗走し、村に戻って沢庵和尚(三國連太郎)に出会い、人としての道を教えられるまで。

 吉川英二原作の映画化(脚本:成沢昌茂・鈴木尚也)。シリーズ一作目で、最初から力が入っている。錦之助の演技もオーバー気味に見えるが、それがかえって粗暴な“たけぞう”時代の武蔵らしいのかもしれない。沢庵和尚が一番の儲け役で、三國連太郎の適度な胡散臭さが、道を説く僧侶らしいかも? 体が大きいのも、武蔵に負けない迫力を出していて良い。
 お通は入江たか子の娘の入江若菜だが、当時は新人とのことで、素人臭い。これから上手くなっていくのだろうか。又八に道を誤らせる女お甲は木暮実千代で、すごくエロい(笑)。
 ストーリー的にはまだまだこれからって感じだが、先を期待させられる作品。ただ、原作には無い映画オリジナル(多分)の、終盤近くの亡霊との対話は、あまりにもあんまりで笑ってしまった。(2002/01/02)

恋や恋なすな恋 こいやこいなすなこい
監督 内田吐夢
公開年 1962年
評点[A’]
感想  今日は、内田吐夢監督の『恋や恋なすな恋』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 平安時代、天文博士の秘伝書をめぐる争いによって阿部保名(大川橋蔵)は乱心し、既に没している恋しい榊の前(瑳峨三智子)の姿を求めて野山をさまよう。偶然、榊の前の妹である葛の葉(瑳峨三智子)に救われて一時の平穏を得るが、都からの追っ手に襲われる。傷を負って山に逃れた保名を助けたのは、また榊の前に似た娘(瑳峨三智子)だったが……。

 文楽などで有名な『保名狂乱』『葛の葉』(正式名称:『芦屋道満大内鑑』)として知られる物語の映画化(脚本:依田義賢)。
 多くの特殊効果を用いた作品として有名で、アニメーション合成の原画は東映動画の有名なアニメーター森康二(森やすじ)によるもので、美術協力の一人にはイラストレーターの蕗谷虹児の名がある。
 大川橋蔵は元々歌舞伎の人なので踊りのシーンなど見事。一人三役を演じた瑳峨三智子〔嵯峨美智子〕もどっちかというとキツネ系の顔なので(失敬)役柄に合っていた。保名と榊の前が拷問を受けるシーンや時代劇としてはかなり官能的なラブシーンなど、内田演出の力強さを感じさせた。
 特殊効果を用いた部分は、前半の狂乱した保名が踊るシーンの表現が実に美しく、そのあとのシーンへのつなぎ方もアッと驚かされた。序盤の天変地異の表現も、まずまずわかりやすい。中盤以降は、「それ、狐?」と言いたくなるような表現の仕方があったり、終盤の舞台的なセットも違和感があり“実験作”という感じがした。元々、超自然的・ファンタジー的な作品なので、終始前衛的な表現で通しても良かったかも……と思ったりもした。
 しかし、これほど実験的要素の強い作品だとは思わなかった。監督のチャレンジ精神は凄いと思う。(2005/10/27)

宮本武蔵 般若坂の決闘 みやもとむさしはんにゃざかのけっとう
監督 内田吐夢
公開年 1962年
評点[B]
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宮本武蔵 般若坂の決斗
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宮本武蔵 愛蔵BOX
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 今日は、内田吐夢監督の『宮本武蔵 般若坂の決闘』を観た。昭和三十七年(1962)の作品。

 沢庵(三国連太郎)に捕らえられ、姫路城で3年の読書三昧の日々を送った武蔵(中村錦之助、のち萬屋錦之介)は、仕官の誘いを断って修行の旅に出る。いったん京に行った武蔵は、兵法(武術)で名高い吉岡家との試合を後日に期して奈良へ行き、槍術で有名な宝蔵院で立ち合いをする。

 吉川英二原作(脚本:鈴木尚也・内田吐夢)のシリーズ2作目。全体にゆったりと、原作どおりはしょらず描いているという雰囲気。この作品は、まさしく起承転結の承という感じで、終り方も「戦いはこれからだ!」風。京都のシーンもあるが、全体にロングショットで撮られた田園風景が多く、昔の日本ってこんなだったんだろーな、という気になる。
 宝蔵院の老師・日観役に月形龍之介。吉岡家の若当主・吉岡清十郎役に江原真二郎。第一作では気づかなかったが、お通(入江若葉)が世話になっている竹細工屋の主人は宮口精二だったんだ。(2003/01/13)

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内田吐夢
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