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牛原虚彦
維新の曲 いしんのきょく
監督 牛原虚彦
公開年 1942年
評点[A’]
感想  今日は、牛原虚彦監督の『維新の曲』を観た。昭和十七年(1942)の作品。

 幕末、池田屋事件から禁門の変、そして寺田屋事件から大政奉還・戊辰戦争に至るまで、国事に奔走した坂本龍馬(阪東妻三郎)・桂小五郎(市川右太衛門)・西郷吉之助(片岡千恵蔵)・中岡慎太郎(羅門光三郎)・吉田稔麿(尾上菊太郎)ら勤王の志士たちと、崩れゆく幕府を支えんとした徳川慶喜(嵐寛寿郎)・松平容保(沢村国太郎)・近藤勇(阿部九州男)・沖田総司(南条新太郎)ら幕府側の人々の活躍を描く。

 大映の第一回作品。登場人物が多く、キャストも非常に豪華だが、実質上の主人公は坂本龍馬になっている。昭和になると、龍馬の活躍も一般に知られるようになっていたのだろうか。阪妻の豪放な演技で、豪快な坂本龍馬になっている。
 龍馬・桂小五郎・西郷吉之助らとそれに対抗する幕府方のキャラクターを中心とするメインストーリーに加えて、吉田稔麿・沖田総司という若者二人と彼らと触れ合う娘あき(琴糸路)の関係を描いた横糸をからめて構成されていて、それぞれあまり溶け合っておらず途中少々冗長に感ずる部分があるのが惜しいが、全体としては堂々とした印象の大作。溝口健二よりも古いキャリアを持つ牛原虚彦は、最後の監督作が1949年の『虹男』だそうなので、『維新の曲』はキャリア末期の作品ということになる。この作品は非常に堅実な造りの印象だが、他の作品はどうなのだろう。現存しているのだとしたら、観てみたい。
 桂小五郎と西郷吉之助はキャスティングが逆だと思ったが、右太衛門が意外と細かい演技ができて、世間一般のイメージから外れない小五郎像を演じられていたのが意外だった。西郷吉之助は龍馬と小五郎よりも目立たず、ちょっと損な役かも。戦中の作品だけれども、新選組が単なる悪役に描かれていないのは良い。(2003/12/23)

虹男 にじおとこ
監督 牛原虚彦
公開年 1949年
評点[C]
感想  今日は、牛原虚彦監督の『虹男』を観た。昭和二十四年(1949)の作品。

 新聞記者の明石良輔(小林桂樹)と鳥飼美々(暁テル子)が富豪の摩耶家で発生した殺人事件を取材すると、容疑者の小幡由利枝(若杉須美子)は偶然にも鳥飼の友人だった。その後も事件は続き、被害者は一様に「虹が見える」と謎の叫び声を発した。明石と鳥飼、そして警視庁の岡田警部(大日向傳)は摩耶家に乗り込んで謎を探る。

 サイレント時代の巨匠・牛原虚彦監督の作品。長寿の人だったが(1897-1985)、監督作品はこれが最後のようだ。原作は時代小説で有名な角田喜久雄(脚本:高岩肇)。
 作品の雰囲気は古典的な“スリラーもの”という感じ。それは良いのだが、登場人物、特に摩耶家の面々(摩耶龍造=見明凡太朗・摩耶志満子=平井岐代子・ 摩耶勝人=植村謙二郎・摩耶豊彦=宮崎準之助)の演技がちょっとオーバー気味で、サイレント的な匂いを感じた。これは先入観のせいかもしれないが、演出・演技が少々古典的なような。謎解きも、さほど意外性はない。パートカラー作品で、“虹”の表現は効果的で面白い。
 以前『維新の曲』を観た時は、特に牛原演出に対して古さは感じなかったのだけれども、様式的な時代劇では目立たないのだろうか。残っていたらサイレント時代の作品を観てみたい。(2004/06/06)

牛原虚彦
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